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大阪地方裁判所 昭和59年(む)546号 決定 1984年10月01日

主文

本件勾留場所の変更を求める準抗告の申立を棄却する。

接見禁止等の請求を却下した原裁判を取消す。

理由

本件準抗告の趣旨及び理由は要するに、本件については勾留場所を都島警察署留置所とすべき必要があるのに大阪拘置所と指定した原裁判及び本件について接見等を禁止すべき理由があるのにこれを却下した原裁判はいずれも不当であるから取消を免れないというのである。

よつて検討するに

一本件被疑事実は被疑者がけん銃を所持したうえいわゆるサラ金業者の店舗内において同店店員一名を殺害し現金約六〇万円を強奪したという事案であるが、一件記録によれば被疑者は元警察官であること、本件はその当日京都市内で発生した警官を殺害しけん銃を強奪した事件と関連するものと認められること、被疑者は本件被疑事実について犯行を全面的に否認していることが認められ、右の事情を考慮すると、被疑者の勾留場所を大阪拘置所としたことにより今後被疑者の行動経路について引き当り捜査を行う場合や被疑者に証拠品を提示する場合において何らかの支障を来たし捜査の遅延を招くことがあつても勾留場所を大阪拘置所と指定した原裁判の裁量に著しい不当があるとは考えられない。

二しかしながら前記の記録によれば、本件において、使用されたけん銃が未だ発見されていないこと等の事情に徴すると、弁護人以外の者との接見交通により他に移動隠匿される等罪証隠滅の虞れのあることは否定できないから本件接見等禁止請求は理由があり、これを却下した原裁判の判断には誤りがあり取消しを免れない。

三よつて、本件勾留場所を都島警察署留置所に変更することを求める準抗告の申立は理由がないから、刑事訴訟法四三二条、四二六条一項により、また接見禁止等の請求を却下した原裁判の取消し及び接見禁止を求める準抗告の申立は理由があるので、同法四三二条、四二六条二項により、それぞれ主文のとおり決定する。

(山田敬二郎 小林秀和 符川博)

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