大阪地方裁判所 昭和59年(わ)265号 判決 1984年5月11日
裁判所書記官
安永泰造
本店所在地
大阪府高石市高砂一丁目六番地
三栄工業
株式会社
右代表者代表取締役
青木茂夫
本店所在地
大阪府高石市高砂一丁目六番地
青木興業
株式会社
右代表者代表取締役
青木茂夫
本籍
福岡県大牟田市宝坂町一丁目二番地の二
住居
大阪府泉大津市東助松町二丁目二番二二号
会社役員
青木茂夫
大正一〇年七月一六日生
右の者らに対する各法人税法違反被告事件につき、当裁判所は、検察官竹下勇夫出席の上審理を遂げ、次のとおり判決する。
主文
被告人三栄工業株式会社を罰金一五〇〇万円に、被告人青木興業株式会社を罰金二四〇〇万円に、被告人青木茂夫を懲役一年二月に、各処する。
被告人青木茂夫に対し、この裁判確定の日から三年間、その刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人三栄工業株式会社は、大阪府高石市高砂一丁目六番地に本店を置き、土木建築請負業等を営むもの、被告人青木興業株式会社は、同所に本店を置き、荷役等各種工場内作業請負業を営むもの、被告人青木茂夫は、右両会社の代表取締役としてその各業務全般を統括しているものであるが、被告人青木茂夫は、青木政治、青木和利らと共謀の上、右両会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、
第一 被告人三栄工業株式会社の昭和五五年一月一日から同五五年一二月三一日までの事業年度において、その所得金額が一六〇、四一〇、〇三四円で、これに対する法人税額が六二、六〇九、〇〇〇円であるのにかかわらず、架空の人件費を計上するなどの行為により右所得の一部を秘匿した上、同五六年二月二八日、大阪府泉大津市二田町一丁目一五番二七号所在の所轄泉大津税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が一一三、九七四、二四四円、これに対する法人税額が四五、三三九、六〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により、法人税一八、五七四、〇〇〇円を免れ、
第二 同会社の同五六年一月一日から同五六年一二月三一日までの事業年度において、その所得金額が九〇、一四二、四四八円で、これに対する法人税額が三六、四六七、五〇〇円であるのにかかわらず、前同様の不正行為により右所得の一部を秘匿した上、同五七年二月二七日前記泉大津税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が四八、四四九、五八八円、これに対する法人税額が一九、四〇三、八〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により、法人税一七、四九八、八〇〇円を免れ、
第三 同会社の同五七年一月一日から同五七年一二月三一日までの事業年度において、その所得金額が一五三、三七二、八三三円で、これに対する法人税額が六二、八八七、七〇〇円であるのにかかわらず、前同様の不正行為により右所得の一部を秘匿した上、同五八年二月二八日前記泉大津税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が一〇四、三二三、〇三八円、これに対する法人税額が四二、九八三、七〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により、法人税一九、九〇四、〇〇〇円を免れ、
第四 被告人青木興業株式会社の昭和五五年一月一日から同五五年一二月三一日までの事業年度において、その所得金額が二二三、五〇〇、七九八円で、これに対する法人税額が八七、〇二一、二〇〇円であるのにかかわらず、前同様の不正行為により右所得の一部を秘匿した上、同五六年二月二八日前記泉大津税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が一五八、一八八、八四八円、これに対する法人税額が六一、〇四四、五〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により、法人税二五、九七六、七〇〇円を免れ、
第五 同会社の同五六年一月一日から同五六年一二月三一日までの事業年度において、その所得金額が二四〇、九五〇、九九一円で、これに対する法人税額が九六、九六二、七〇〇円であるのにかかわらず、前同様の不正行為により右所得の一部を秘匿した上、同五七年二月二七日前記泉大津税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が一二八、四一三、一五一円、これに対する法人税額が五一、〇七九、一〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により
法人税四七、二五八、五〇〇円を免れ、
第六 同会社の同五七年一月一日から同五七年一二月三一日までの事業年度において、その所得金額が一七二、五二八、二九二円で、これに対する法人税額が六八、七三九、四〇〇円であるのにかかわらず、前同様の不正行為により右所得の一部を秘匿した上、同五八年二月二八日前記泉大津税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が一二五、〇一〇、七四三円、これに対する法人税額が四九、〇六〇、三〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、法人税一九、六七九、一〇〇円を免れ
たものである。
(証拠の標目)
判示事実全部について
一 被告人の当公判廷における供述
判示冒頭の事実について
一 登記官安井惣七作成の三栄工業株式会社及び青木興業株式会社に関する各法人登記簿謄本
一 青木茂夫作成の三栄工業株式会社及び青木興業株式会社に関する各定款
判示第一ないし第六の事実について
一 被告人の検察官(三通)及び大蔵事務官(九通)に対する各供述調書
一 夏秋新の検察官及び大蔵事務官に対する各供述調書
一 西寿生の検察官及び大蔵事務官(二通)に対する各供述調書
一 法積睦子の検察官に対する供述調書
一 中野博次の検察官及び大蔵事務官に対する各供述調書
一 安藤浜枝の検察官及び大蔵事務官(二通)に対する各供述調書
一 末廣稔の検察官及び大蔵事務官(四通)に対する各供述調書
一 柿本章良の検察官(二通)及び大蔵事務官(八通)に対する各供述調書
一 新島慎吉の検察官に対する供述調書
一 青木和利の検察官(二通)及び大蔵事務官(一一通)に対する各供述調書
一 青木政治の検察官(二通)及び大蔵事務官(六通)に対する各供述調書
判示第一ないし第三の事実について
一 松本博の検察官に対する供述調書
一 久郷清の検察官に対する供述調書
一 大蔵事務官作成の三栄工業株式会社に関する査察官調査書二〇通
一 柿木章良作成の三栄工業株式会社に関する確認書
一 大蔵事務官作成の三栄工業株式会社に関する脱税額計算書三通
一 大蔵事務官作成の三栄工業株式会社に関する法人税確定申告書謄本三通
判示第四ないし第六の事実について
一 森田照代の検察官及び大蔵事務官に対する各供述調書
一 大濱義春の検察官に対する供述調書
一 佐貫文雄の検察官に対する供述調書
一 大蔵事務官作成の青木興業株式会社に関する脱税額計算書三通
一 大蔵事務官作成の青木興業株式会社に関する法人税確定申告書謄本三通
一 大蔵事務官作成の青木興業株式会社に関する査察官調査書一六通
一 柿木章良作成の青木興業株式会社に関する確認書二通
(法令の適用)
被告人青木茂夫の判示第一及び第四の各所為は、行為時においては、昭和五六年法律第五四号脱税に係る罰則の整備等を図るための国税関係法律の一部を改正する法律による改正前の法人税法一五九条一項に、裁判時においては、改正後の法人税法一五九条一項に該当するが、右は犯罪後の法令により刑の変更があったときにあたるから刑法六条、一〇条により軽い行為時法の刑によることとし、判示第二、第三、第五及び第六の各所為は、いずれも改正後の法人税法一五九条一項に該当するので、所定刑中いずれも懲役刑を選択し、以上は、刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第五の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で、同被告人を懲役一年二月に処し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から三年間その刑の執行を猶予する。
被告人青木茂夫の判示第一ないし第三の各所為は、いずれも被告人三栄工業株式会社の業務に関してなされたものであるから、同被告人会社については、判示第一の所為につき右昭和五六年法律第五四号による改正前の法人税法一六四条一項により改正前の法人税法一五九条一項の罰金刑に 判示第二および第三の各所為につき右昭和五六年法律第五四号による改正後の法人税法一六四条一項により改正後の法人税法一五九条一項の罰金刑に、各処すべきところ、情状により判示第三につき、法人税法一五九条二項を適用し、以上は、刑法四五条前段の併合罪であるから同法四八条二項により合算した金額の範囲内で同被告人会社を罰金一、五〇〇万円に処する。
被告人青木茂夫の判示第四ないし第六の各所為は、いずれも被告人青木興業株式会社の業務に関してなされたものであるから、同被告人会社については、判示第四の所為につき右昭和五六年法律第五四号による改正前の法人税法一六四条一項により改正前の法人税法一五九条一項の罰金刑に、判示第五および第六の各所為につき右五六年法律第五四号による改正後の法人税法一六四条一項により改正後の法人税法一五九条一項の罰金刑に、各処すべきところ、情状によりいずれも法人税法一五九条二項を適用し、以上は、刑法四五条前段の併合罪であるから同法四八条二項により合算した金額の範囲内で同被告人会社を罰金二、四〇〇万円に処する。
よって、主文のとおり判決する。
(裁判官 柴田秀樹)