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大阪地方裁判所 昭和59年(ヨ)5780号

申請人

西村好男

申請人

田村昭

申請人

門元隆美

申請人

溝上朝雄

申請人

浜板芳彦

申請人

徳野賢二

右六名訴訟代理人弁護士

後藤貞人

三上陸

菊池逸雄

被申請人

大阪地区生コンクリート協同組合

右代表者代表理事

三木哲夫

右訴訟代理人弁護士

清水伸郎

中井忠博

主文

本件申請をいずれも却下する。

申請費用は申請人らの負担とする。

理由

第一当事者の求めた裁判

一  申請の趣旨

被申請人は申請人らに対し昭和六〇年一月二八日から申請人らが就職するに至るまで毎月二八日にそれぞれ別紙(略)賃金表記載の金員を仮に支払え。

二  申請の趣旨に対する答弁

主文一、二項と同旨

第二当裁判所の判断

一  申請人らが砂利類販売、生コンクリート製造販売を主たる目的とする箕島興産株式会社(以下箕島興産という)に入社し、昭和五七年一一月一〇日解雇されるまで生コンクリートミキサー車の運転業務に従事していたこと、そのころ全日本運輸一般労働組合関西地区生コン支部(以下関生支部という)の組合員であったこと、被申請人は昭和五二年三月三日中小企業等協同組合法に基づいて設立された事業協同組合で、大阪市在住の生コン製造業者で構成されており、生コンクリートの共同販売を主たる目的とし、右箕島興産も被申請人の準組合員であったこと、被申請人理事会において昭和五七年一〇月二七日プラント廃業希望者を募ったところ箕島興産がそれに応じ、同社は工場を閉鎖し、全従業員を解雇したこと、申請人らが箕島興産を相手方として大阪地裁に従業員たる地位の確認等の仮処分を申請したこと、昭和五七年一二月一三日被申請人と関生支部との間に確認書が取り交わされ、右確認書には次のとおり記載されていること、

(1)  協同組合は箕島興産の次の労働者の雇用保障を行う。

松尾祥二、門元隆美、浜板芳彦、溝上朝雄、徳野賢二、西上敏男、平山誠二、田村昭、西村好男

(2)  年末一時金の差額については一二月一七日に支払う。

(3)  一一月分賃金差額ならびに工組連合会通達による一〇月、一一月分の最低保障については一二月二一日に支払う。但し、一〇月、一一月分最低保障については地位保全仮処分決定により箕島興産より支払われた場合は返済する。なお、九月分については解決後に清算する。

(4)  一二月分よりの賃金は三〇万円プラス交通費、社会保険負担分(七割)を加算した額を毎月二八日に支払う。

(5)  ダンプ一台は協同組合が買い上げる。額については別途協議する。

(6)  その他については協組、労組において継続して協議を行う。

申請人らは前記仮処分申請を取り下げたこと、被申請人は右確認を取り交した後昭和五八年五月まで申請人らに賃金相当額を支払ってきたが、同年六月分以降の支払を打ち切ったこと、申請人らは被申請人の賃金保障の打切りに対し昭和五九年四月二七日大阪地裁に賃金支払仮処分申請をし、同裁判所は同年七月三日次のような主文の決定をしたことはいずれも当事者間に争いがない。

主文

1 被申請人は、申請人らに対し、別紙賃金表記載の各三倍の金員を支払え。

2 被申請人は、申請人らに対し、昭和五九年七月から同年一二月までの間、毎月二八日限り、別紙賃金表記載の各金員をそれぞれ支払え。

但し、右期間中に、被申請人の斡旋により申請人らが就職した場合には、当該申請人に対しては、以後この限りでない。

3 申請人らのその余の申請は、いずれも却下する。

4 申請費用は、被申請人の負担とする。

二  申請人らは昭和五七年一二月一三日付確認書に基づき被保全権利が存在する旨主張するので、右確認書が現在においても効力を有するか否かについて検討する。

本件疎明資料によれば、阪南産業有限会社(以下阪南産業という)は生コンクリート製造プラントを建設し、生コンクリートの製造販売を営むべく被申請人に加入の申込みをしていたが、被申請人は当時製造プラントの新増設を認めないとの方針を取っていたので右申込みについて回答を留保していたところ、中小企業等協同組合法等の法の趣旨あるいは通産省からの強い行政指導もあり昭和五七年一〇月阪南産業の加入を認めることとなったこと、被申請人は阪南産業の加入を認めるとしても、プラントの新増設とならないようにいわゆるスクラップアンドビルド方式を採用することとし、プラント廃業企業を募集したところ同月二七日箕島興産がこれに応じたこと、関生支部はそのころ阪南産業が被申請人に加入することは大阪兵庫生コンクリート工業組合が実施した構造改善事業に伴う協定の精神からも認めることはできない旨主張し、箕島興産の廃業に反対していたが、その後被申請人に対し箕島興産の廃業、申請人らの解雇を認めるかわりに、<1>申請人らの就職を保障せよ、<2>それまでの間申請人らに対し従前箕島興産から得ていた賃金と同額の金銭を支給せよ、<3>箕島興産のシェアを凍結せよ、などと要求するようになり、被申請人は一二月に入り当面の事態収拾を図るために前記の確認書を取り交すに至ったことが疎明される。

右確認書の内容及びそれが取り交されるに至った経緯を考慮すると、右確認書は、申請人らの就職問題、金員支給の終期については後日にさらに両者において協議を行うこととし、後日の合意に至るまでの間暫定的に合意することとして作成されたものというべきである。

その後の経過について見るに、本件疎明資料によれば、被申請人は昭和五八年一月阪南産業に出荷を開始したところ、関生支部はこれを問題視して被申請人と関生支部との間に数回交渉が持たれたが、同年三月下旬には次のような方向で合意することとなったこと。

(1)  阪南産業の被申請人への加入についてはSB方式による箕島興産のシェア振替を認めるが、プラントの新設とならないよう配慮すること

(2)  箕島興産の分会員の就職先としてSB方式により阪南産業に被申請人が責任をもって斡旋すること

(3)  右分会員に対する賃金相当額の支給については、被申請人が阪南産業に就職の斡旋をした時、又はミキサー能力の差の調整終了時、もしくは昭和五八年八月末日までとすること

(4)  右分会員のうち阪南産業に就職しない者については退職扱いとし、具体的には協議して決めること

(5)  被申請人は本件問題の混乱につき運輸一般に陳謝の意を示すこと

被申請人と関生支部は申請人らを阪南産業に就職させることの調整がほぼついたとの認識のもとに、これによって申請人らの雇用保障問題については最終的に解決することとして関生支部と被申請人は昭和五八年四月一三日左記内容の確認書を取り交わしたこと、関生支部及び申請人らは阪南産業が同和問題に熱意のある会社であることを十分認識していたことが疎明される。

(1)  箕島興産廃業に際し、同社が事前協議を行わなかったことについての確認を怠ったことおよび当協組が労組との間で事前に充分な協議を行わなかったこと、ならびに阪南産業の員外利用に絡む諸問題で業界に混乱が生じたことについて陳謝する。

(2)  阪南産業のミキサー能力一七五〇lと箕島興産のミキサー能力五〇〇lとの差、即ち過剰能力一二五〇lについては昭和五八年八月末日までに当協組全体の責任において解決する。なお、この措置の受け皿となる会社のシェアはこのことをもって変動させない。

(3)  箕島興産に在籍した九名の雇用保障は当協組全体の責任において阪南産業に就職させるものとし、その賃金、労働条件については当該労使間で協議決定するものとする。

(4)  退職等に関する諸問題については委員会を設け、別途協議決定するものとする。

右事実、特に先の確認書は暫定的なもので後の合意に至るまでの一時的なものであったこと、被申請人と関生支部は後の確認書により申請人らの雇用保障問題を最終的に解決する意思であったことなどの事情を考慮すると、被申請人と関生支部が後の確認書を取り交すことにより先の確認書の合意は消滅したものというべきである。したがって、申請人の昭和五七年一二月一三日付確認書に基づく被保全権利の主張は理由がない。

申請人らは昭和五八年四月一三日の確認書に基づく申請人らを就職させる義務を履行していないと主張するので、この点について検討する。

先の確認書には「雇用保障を行う」と記載され、後の確認書には「九名の雇用保障は当協組の全体の責任において阪南産業に就職させるものとし」と記載されていることは前記のとおりであり、「就職させるものとし」という文言は雇用契約が成立するまでを意味することは明らかである。しかし、雇用契約を締結するのは申請人らと阪南産業であって雇用契約を締結するか否かは両者の意思に委ねられており、両者のささいな条件の不一致あるいは契約当事者の恣意により契約が成立しないことも十分予想しうるものであり、このような場合にも被申請人は就職させる義務を尽していないものとするならば、被申請人は際限なく雇用契約締結の義務を負担することとなって極めて不合理な条項と言わなければならない。それゆえ、「就職させるものとし」という文言は、被申請人において申請人らと阪南産業が通常の場合には雇用契約が成立するように両者の条件等を調整して就職を斡旋することと解すべきである。本件疎明資料によれば、阪南産業の榎並社長は申請人らを採用するにあたり面接することを希望し、昭和五八年五月二一日申請人らに対する面接が行われ、同社長は同和問題について質問したところ、申請人らはそのような質問を予期しておらず、全く答えなかったこと、しかし、その際同社長は申請人らに対し自己の生立ちなどを含め同和問題につき相当長時間にわたり述べたこと、同社長は申請人らに就職の意思があるように見えないと考えて不採用としたい旨表明したが、被申請人は同社長に対し申請人らについて同和問題の正しい認識を持ち、理解すること、そのための準備をするよう申入れるから再度採用面接を実施するよう要請し、同年六月八日再度採用面接を行うこととなり、被申請人は関生支部に対して申請人らが阪南産業に就職するためには同和問題に関し常識程度の正しい認識と理解がいるので、このことを申請人らによく説明し納得させて面接に行くよう指導するよう伝えたこと、阪南産業社長の要請により同日の採用面接には被申請人の立花副理事長が立会ったが、関生支部は被申請人の採用面接に関する右要請を申請人らに伝えることなく申請人らは漫然と面接に望んだので、面接当日は同和問題に関する試験が実施されたが、申請人らは自己の名前を記載したのみで数分で白紙の答案を提出し、その結果申請人らは不採用となったことが疎明される。右事実によれば、関生支部及び申請人らは後の確認書が取り交されるまでに阪南産業が同和問題に熱心な企業であり、採用面接にあたっては同和問題について理解を求められることは十分予想されていたのに、申請人らは極めて漫然として面接に望んでおり、関生支部は二度目の面接にあたり被申請人から前記のような要請を受けながらこれについて何ら申請人らに伝えていないものであるから、申請人らの不採用は阪南産業が取り立てて困難な条件を持ち出したことに存するものではなく、むしろ関生支部側にその原因があったものというべきであり、関生支部は被申請人に対し後の確認書に基づく就職斡旋義務を尽していないと主張することは許されないというべきである。それゆえ、右就職斡旋義務を尽していないことを前提とする申請人らの主張も理由がない。

三  申請人らが箕島興産を解雇され、右解雇の効力について争っていたところ、昭和五八年六月六日に和解が成立し、箕島興産から退職したこと、被申請人は昭和五七年一二月一三日付確認書に基づいて同年一二月から昭和五八年五月まで申請人らに対し賃金相当額を任意に支払い、さらに大阪地裁昭和五九年(ヨ)第一六三〇号事件の仮処分決定に基づき昭和五九年四月から同年一二月まで同じく賃金相当額の仮払いをしていることは本件記録上明らかである。

申請人らは解雇の無効を争って金員の仮払いを求めているものではなく、本件は期限が明示されていない雇用保障に基づき金員仮払いを求めているものであって、それについても通算して一年間以上の間賃金相当額の仮払いを受けていること、申請人らは交通事故その他により就労ができないものとして金員仮払いを求めているものではなく、申請人らが健康な成年であることを考えると、もはや自助努力によって生計を維持して行くことが可能というべきであるから、現時点においては保全の必要性も消滅しているものというべきである。

四  以上のとおり、申請人らの本件申請は結局その理由について疎明がないものというべく、疎明に代えて保証を立てさせて本件申請を認容することも相当でないから、本件申請はいずれも失当として却下することとし、申請費用の負担につき民訴法八九条、九三条に従い、主文のとおり決定する。

(裁判官 安齋隆)

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