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大阪地方裁判所 昭和59年(ワ)1998号・昭57年(ワ)8411号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【判旨】

第四 過失相殺

1 別紙交通事故が発生したことは、前記認定のとおりである。

2 <証拠>を総合すれば、次の事実が認められる。

(1) 本件交差点は、大阪臨海線と通称される南北道路(制限速度時速四〇キロメートル)と、福島桜島線と通称される東西道路の交差した、野田阪神南交差点と呼称される交差点であつて、別紙図面の如く本件交差点の南北道路北側の道路幅員が南側幅員に比して広く、また、東西道路が北東より南西方向へ交差する変形交差点であつて、事故発生時刻ごろには、雨が降つていた。

(2) 原告は、加害車を運転して、別紙図面①の地点で対面信号が青を表示しているのを確認し、本件交差点に進入したが、別紙図面②の地点で南北道路の南側歩行者用横断歩道を横断する被告を別紙図面の地点に認めたことから、直ちに急制動の措置を採つたがおよばず、約12.5メートル進行した別紙図面の地点で自車前部を被告に衝突させ、加害車は右衝突地点より約8.6メートル進行した別紙図面④の地点で停止したが、被告は約8.2メートルはねとばされた別紙図面の地点に転倒した。

(3) 被告は、事故当日の夜七時から九時ごろまで、大韓民国居留民団福島支部の監察委員として役員会に出席し、同日夜一〇時すぎから一一時ごろまで大阪市東成区今里に所在する料亭で支団長らと三名で飲食し(なお、事故後の計測では、呼気一リットルにつぎ0.35ミリグラムの飲酒量が確認されている)、その後、帰宅すべく支団長とタクシーに乗つて本件現場付近に至り、被告は、別紙図面三和銀行前南北道路を北進し、対面信号青の表示に従つて本件交差点を左折し、約一五メートル進行した同銀行北側入口前で停車したタクシーを下車して、右支団長と別れ、一人で南北道路交差点南側の歩行者用横断歩道を歩行していた際に別紙図面の地点で加害車と衝突した。

(4) 本件交差点の信号周期をみるに、事故当時においては、南北歩行者用信号は、青四三秒、青点滅五秒、赤一六秒、全赤三秒、赤六三秒、南北車両用信号は、青六一秒、黄三秒、全赤三秒、赤六三秒、東西歩行者用信号は、赤六四秒、全赤三秒、青四〇秒、青点滅七秒、赤一六秒、東西車両用信号は、赤六四秒、全赤三秒、青五七秒、黄三秒、赤三秒(一周期一三〇秒)となつていた。ところで、事故当時においては、本件交差点である野田阪神南交差点は、系統式地域制御信号機であつて、そのすぐ南側の信号機(江成町中交差点の信号機)とは連動子機信号機の関係にあり、野田阪神交差点の信号機を親として連動していた。

(5) 本件事故の結果、加害車には前部バンパー、ボンネット中央部等が凹損し、被告は、頭部外傷Ⅱ型、左側側頭部挫創、右膝関節内腓骨々折、右下腿皮下組織及び筋膜断裂、左膝挫傷、腰部挫傷、外傷性頸部症候群の傷害を負つた。なお、事故直後横断歩道附近にスリップ痕が残つていたものの、当時の天候が雨のため、実況見分時においては右スリップ痕は検尺されていない。

右によれば、被告の傷害の部位、程度をみるに、被告の右足に通常衝突した際に発生する傷害による受傷が認められるのに対し、被告の左側部分には、頭部挫創と膝の挫傷が認められるにすぎないのであつて、加害車両の前部が被告の右側に衝突したものと推認され、そうすると、被告は、前記横断歩道上を西から東に向け進行したのち、Uターンして、西に向いて右横断歩道を歩行ないし佇立中に本件事故が発生したものと推認される。

3 右事実によれば、原告は、加害車を運転して、南北道路を南へ進行し、本件交差点車両用対面信号が青を表示していたことから、本件交差点を南へ通過しようとした際、被告は、対面歩行者用信号が赤を表示しているのに、これを無視し、一度は、歩行者用横断歩道を西より東に向け歩行し、続いて、別紙図面の地点で西に向け歩行ないし佇立しているときに、本件事故が発生したものと認められる。

ところで、検証の結果によれば、本件事故の目撃者とされる証人梶原は、事故の目撃地点につき、事故直後における実況見分時と異なる地点を指示し、検証時における右梶原が乗車していた足踏二輪自転車を置いたと指示する地点と実況見分時の目撃地点とが、ほぼ合致することが認められる。しかしながら、右梶原の記憶としては、事故日より約一年四か月後になされた検証時における記憶に比し、事故直後における実況見分時における記憶に、より信用性があるものというべく、また、<証拠>により認められる、本件交差点における信号周期が交通量の少ない夜間が一周期一三〇秒であるのに対し、交通量の多い昼間では一周期一五〇秒となること、及び事故当時は雨が降つており、右梶原は飲酒してのち、傘をさして自転車を運転していたことなどの諸事情に照らせば、目撃者である右梶原の捜査段階における供述には、十分信用性が認められ、右供述は、検証時における検尺、検始とも、信号の表示を認定するうえで、基本的な部分で矛盾するものではない。また、飲酒した状態で事故に遭遇した被告の記憶に比し、原告の供述は、捜査段階のみならず、当法廷においても終始一貫しており、また、原告の供述は、事故態様における客観的事実(例えば被告の受傷部位、程度)とも合致しているのであつて、十分に信用することができるものといわなければならない。

4 右の如く、原告は、車両用対面信号青の表示に従い、加害車を運転して本件交差点を通過しようとしたのであるから、本件事故の発生原因の多くは、被告による歩行者用信号が赤色を呈していたのに、これを無視して前記認定の横断歩道上にいたことに求められる。しかしながら、原告においても、本件交差点の如く、変形交差点において、しかも、降雨中に本件交差点を通過するのであるから、前方を十分に注視して、歩行者との事故を避けるべく安全運転にこころがけなければならないのに、横断歩道上にいた被告の発見が遅れた点に過失が認められ、従つて、原告の主張する免責の主張は、その余の点を判断するまでもなく、採用することができないものの、原告の過失、被告の落度など、前記の如き、諸般の事情を考慮すれば、過失相殺として被告の損害のうち八割を減ずるのが相当と認められる。

(坂井良和)

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