大阪地方裁判所 昭和60年(ワ)4919号 判決 1985年12月27日
原告
ミノル建設株式会社
被告
ジヨンソン・グレゴリー・トーマス
主文
被告は原告に対し、金二二七万九、四八四円およびうち金一六七万九、一八四円に対する昭和六〇年三月一一日から支払済まで、うち金六〇万〇、三〇〇円に対する昭和六〇年一一月一九日から支払済まで各年五分の割合による金員を支払え。
原告のその余の請求を棄却する。
訴訟費用は被告の負担とする。
この判決は原告勝訴の部分に限り仮に執行することができる。
事実
第一当事者の求めた裁判
原告は主文同旨(但し、遅延損害金の起算日を昭和六〇年三月一一日とする。)の判決及び仮執行宣言を求め、被告は原告の請求を棄却する。訴訟費用は被告の負担とするとの判決を求めた。
第二当事者の主張
一 請求原因
(一) 事故の発生
1 日時 昭和六〇年三月一〇日午前六時四五分頃
2 場所 京都市伏見区深草東伊達町七一番地先交差点
3 加害車 普通貨物自動車(京四四た九五八二号)
右運転者 被告
4 被害車 訴外北岡尚三運転、原告所有の普通乗用自動車(京三三せ八五〇八号)
5 態様 本件事故現場は信号機により交通整理の行なわれていた交差点であつて、訴外北岡は被害車を運転して東西道路を東進し、対面信号青色に従つて本件交差点を直進していたところ、被告は加害車を運転して南北道路を北進中、対面信号が赤色を呈していたのにこれを無視して本件交差点に進入したため、両車両が出合頭に衝突
(二) 責任原因
一般不法行為責任(民法七〇九条)
被告は、加害車を運転して本件交差点を進行するに際しては、本件交差点が交通整理の行なわれている交差点であつたから信号機の表示に従つて進行すべき注意義務があるのに、これを怠り、対面信号が赤色を表示していたのにこれを無視して本件交差点に進入した過失により本件事故が発生した。
(三) 損害
1 被害車修理費
原告は、京都日産自動車(株)に本件事故による被害車の修理見積を依頼したところ、合計金一五〇万〇、三六〇円を要するとのことである。
2 車両価格落ち
被告車両は、昭和五八年式日産プレジデント車であつて、財団法人日本自動車査定協会京都府支所に本件事故による損傷箇所を修理復元して後の減価額の評価を求めたところ、三六万五、四〇〇円とのことであつた。
3 訴外井手方家屋等修理費
本件事故のために被害車は本件交差点北東角に所在の訴外井手氏方家屋に突入してその家屋等に損傷を与えたことから、原告は訴外高田工務店にこれの修理を依頼したが、右修理費として合計金六六万七、〇〇〇円を要し、原告は右金員を直接高田工務店に支払つた。
(四) 本訴請求
ところで、被害車を運転していた訴外北岡尚三にも、本件交差点を通過するに際し、指定制度速度を時速三〇キロメートルと指定されていたのに、これを超過する速度で東西道路を進行した過失があるから、その過失割合を一割とすると、原告は被告に対し、原告の受けた損害合計一八六万五、七六〇円の九割に相当する一六七万九、一八四円を民法七〇九条に基づき、訴外井手方家屋等の損害六六万七、〇〇〇円の九割に相当する六〇万〇、三〇〇円を民法四四二条に基づき、本訴請求の趣旨記載のとおりの判決(遅延損害金は民法所定の年五分の割合による。)を求める。
二 請求の趣旨に対する認否
(一)の事実中、1ないし4は認めるが、5は否認する。
(二)の事実は否認する。
(三)は不知。
三 抗弁
(一) 免責
本件事故は被害車を運転していた訴外北岡尚三の一方的過失によつて発生したものであり、被告には何ら過失がなかつた。
すなわち、被告は対面信号青色の表示に従つて南北道路を北進していたのに対し、訴外北岡は対面信号赤色の表示を無視して東西道路を東進していたものである。
(二) 過失相殺
仮に免責の抗弁が認められないとしても、訴外北岡は制限速度を超過する速度で本件交差点を通過しようとした過失があるから、訴外北岡の使用者責任を負う原告の損害につき、訴外北岡の過失を被害者側の過失として過失相殺されるべきである。
四 抗弁に対する認否
(一)の事実は否認する。
(二)の事実は認める。
第三証拠
記録中の書証目録及び証人等目録記載のとおり。
理由
第一本件事故の発生
請求原因(一)の1ないし4の事実は、当事者間に争いがなく、成立に争いのない甲第一、第六号証、証人北岡尚三の証言により原告主張通りの写真であることの認められる検甲第一ないし第六号証、証人北岡尚三の証言によれば、請求原因(一)の5の事実が認められる。
第二責任原因
成立に争いのない甲第一、第六号証、前掲検甲第一ないし第六号証、証人北岡尚三の証言によれば、請求原因(二)の事実が認められ、右認定を左右するに足る証拠はない。
第三損害
(一) 被害車修理費
証人北岡尚三の証言により真正に成立したものと認められる甲第二号証、前掲検甲第三ないし第六号証によれば、請求原因(三)1の事実が認められる。
右事実によれば、被害車の修理費として金一五〇万〇、三六〇円を要することが認められる。
(二) 価格落ち
証人北岡尚三の証言により真正に成立したものと認められる甲第三号証によれば、請求原因(三)2の事実が認められる。
右事実によれば、被害車両の本件事故による査定価格落ちとしては三六万五、四〇〇円であつたことが認められる。
(三) 訴外井手方家屋等修理費
証人北岡尚三の証言により真正に成立したものと認められる甲第四、第五号証、証人北岡尚三の証言によれば、請求原因(三)3の事実が認められ、また、右各証拠及び弁論の全趣旨によれば、原告は、遅くとも、原告が最終準備書面を提出した昭和六〇年一一月一九日までには訴外井手氏に対し、直接、訴外高田工務店に修理費六六万七、〇〇〇円を支払つたことが認められる。
第四過失相殺等
前記第二認定事実によれば、被告は対面信号赤色の表示を無視して南北道路を北進し、本件交差点を通過しようとした過失が認められるのであるから、免責の抗弁は理由がない。
しかしながら、被害車を運転していた訴外北岡尚三にも、本件交差点を通過するに際し、指定制限速度を時速三〇キロメートルと指定されていたのに、これを超過する速度で東西道路を進行した過失のあること、原告は訴外北岡を雇用し、訴外北岡は業務の執行中に本件事故を発生させたことは、当事者間に争いがなく、証人北岡尚三の証言によれば、訴外北岡は本件交差点を時速約五〇キロメートルの速度で通過進行しようとしたことが認められ、右事実によれば、訴外北岡の、制限速度を約二〇キロメートル超過した速度違反の過失があつたというのであつて、右の速度違反が損害を拡大させたことも否定しえず、そうすると、訴外北岡の過失を被害者側の過失として、原告の損害のうち一割を控除するのが相当であると認められる。
右によれば、訴外井手の損害については訴外北岡の雇用主であつて使用者責任を負う原告と、訴外北岡と共同不法行為責任を負う被告とは訴外北岡を介して不真正連帯責任があるものというべきところ、前記第三の(三)認定事実によれば、原告は訴外井手に対し、その損害を賠償したというのであるから、民法四四二条により、被告の過失に基づく負担割合につき、原告は被告に対して求償することができるものというべきである。
第五結論
右によれば、被告は原告に対し、金二二七万九、四八四円及び内金一六七万九、一八四円に対する本件不法行為の翌日である昭和六〇年三月一一日から、内金六〇万〇、三〇〇円に対する原告が右金員を支出した日以降であることが確実な昭和六〇年一一月一九日からそれぞれ年五分の割合による遅延損害金を支払う義務があり、原告の本訴請求は右の限度で正当であるから認容し、その余の請求は理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九二条、仮執行宣言につき同法一九六条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 坂井良和)