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大阪地方裁判所 昭和60年(ワ)8681号 判決

一 原告が本件実用新案権を有すること、本件考案の構成要件及び作用効果が請求原因2記載のとおりであること及び被告が昭和五八年以降、イ号物件を製造販売していることはいずれも当事者間に争いがない(イ号物件の特定の仕方、即ちイ号物件をいかに表示すべきかについては当事者間に争いがあるが、右はイ号物件の存在そのものを争う趣旨でないことは、被告の主張に徴し明らかである。)。

二 イ号物件の図面であることに争いのない別紙物件目録(一)の第一図ないし第三図、成立に争いのない甲第三号証の四、イ号物件の写真であることに争いのない検乙第二号証の四ないし八によれば、イ号物件の構成は、本件考案の構成要件との対比に便宜なように分説するとすれば、次のとおり分説するのが相当である。

(イ)´´ 水路又は水処理設備等に設置された除塵機に使用される無端帯状網からなるスクリーンであること

(ロ)´´ 網には、その幅方向一線上に適宜間隔をとつて列設された数個の金具片からなる列が、網の長手方向に所定間隔で多数設けられており、前記金具片は網の幅方向両端間に渡るごみ受棚兼用ネツトフレームの横フレームと網を介在して並置され、これらを挿通したボルトとナツトとにより固定されており、また、網の長手方向には縦金具がごみ受棚兼用ネツトフレームの縦フレームと網を介在して並置され、これらを挿通したボルトとナツトとにより固定されていること

(ハ)´´ 前記ごみ受棚兼用ネツトフレームの縦フレームの側端には、キヤリングチエンのピツチと同一ピツチに分割した側端連結材が取り付けられていること

(ニ)´´ 前記側端連結材がキヤリングチエンに取り付けられていること

(ホ)´´ 網には、ごみ受棚、横フレーム、縦フレーム、側端フレームが一体成型され正面視門状をなしたごみ受棚兼用ネツトフレームが装着され、横フレームには前記のとおり金具片列が装着されていること

三 そこで、本件考案の構成要件とイ号物件の構成を対比する。

1 原告は、イ号物件の構成(ロ)´´における数個の金具片からなる列を「横金具」と指称し、これが本件考案の構成要件(ロ)における補強材に該当すると主張する。しかしながら、成立に争いのない甲第二号証の本件公報の実用新案登録請求の範囲の欄には、右補強材は、単に「補強材」と記載され、それ以上何らの説明がないこと、同公報の考案の詳細な説明の欄における実施例の記載としても「棒状補強材2が…網1に…多数本編み込まれている」(同公報第二欄一八行目から二〇行目)といつた記載しかないことに鑑みれば、右補強材は、それを網に取り付けるための付属的な部材が存在し得ることは別として、それ自体で自己完結的に網の補強機能を発揮することのできる部材でなければならないと解され、また、本件公報の実用新案登録請求の範囲の記載によれば、右補強材は網の幅方向両端間に渡されたものでなければならないところ、原告がイ号物件において「横金具」と指称するものは、適宜間隔をとつて断片的に網に装着された金具片であつて、網の幅方向両端間に渡るごみ受棚兼用ネツトフレームの横フレームに網を介在して並置され、これらを挿通したボルトとナツトにより固定されている取り付け態様からすれば、それ自体では網の補強機能を有するものではないものと認められる。従つて、原告が「横金具」と指称するものをもつて本件考案の補強材と見ることはできない。

2 ところで、原告は更に、仮に原告が「横金具」と指称するものがそれだけでは補強機能を有しないとしても、それとごみ受棚兼用ネツトフレームの横フレームとが一体として補強機能を有するから、右の一体のものを本件考案にいう補強材と見ることができると主張する。

しかしながら、本件公報の考案の詳細な説明の欄の記載によれば、本件考案は、従来の除塵機用スクリーンが方形状のスクリーン枠組及びそれに伴つて防塵用ゴム体を必要とし、そのため右ゴム体の損耗が激しく取替えに手間を要するとともに、流水の有効通過面積が枠組体分だけ少なくなるという欠陥を有していたのに対し、スクリーン枠組をなくすることによつて右欠陥を免れることを目的とするものであつて、そのためには網に補強材を編み込むことが必要とされ、右補強材は網の外側に取り付けられるごみ受棚兼用補強材とは別の部材として構成されていることが認められる。この本件考案の補強材がごみ受棚兼用補強材とは別の部材とされていることは、本件公報の実用新案登録請求の範囲の記載にごみ受棚兼用補強材は補強材と「平行に」装着されるものとされていることからも明らかであり(「平行」とは、通常の語義に従えば、何がしかの間隔をおいて別個に存在することを予定しているものといわなければならない)、また本件補強材が一本の棒状のものであることは、本件考案の実施例の説明中に正にその旨の記載があるばかりでなく、本件考案の実用新案登録請求の範囲に「網にその幅方向両端間に渡された補強材」とあることからも明らかである。

したがつて、原告の前掲主張は牽強附会の感を免れず失当というほかはない。

3 してみると、イ号物件は、本件考案に言う補強材を有さず、本件考案の構成要件(ロ)を欠くから、その余の対比をするまでもなく、本件考案の技術的範囲に属しない。

四 従つて、その余の点を判断するまでもなく、原告の請求はいずれも理由がないから、原告の請求をいずれも棄却することとする。

〔編註その一〕本件における請求原因は左のとおりである。

1 原告は次の実用新案権(以下「本件実用新案権」といい、その考案を「本件考案」という)を有している。

(一) 考案の名称 除塵機用スクリーン

(二) 出願日   昭和五二年二月一八日

(三) 出願公告日 昭和五五年一月二一日

(四) 登録日   昭和五五年九月三〇日

(五) 登録番号  第一三四九二八七号

(六) 実用新案登録請求の範囲

別紙実用新案公報(以下、「本件公報」という)の該当欄記載のとおり

2 本件考案の構成要件及び作用効果は次のとおりである。

(一) 構成要件

(イ) 水路又は水処理設備等に設置された除塵機に使用される無端帯状網からなるスクリーンであること

(ロ) 網にその幅方向両端間に渡された補強材が網の長手方向に所定間隔で多数装着せられていること

(ハ) 前記補強材の端部に、キヤリングチエンのピツチと同一ピツチに分割した側端連結材が取り付けられていること

(ニ) 前記連結材はキヤリングチエンに取り付けられていること

(ホ) 網にはごみ受棚兼用補強材が前記補強材と平行に装着せられていること

(以下省略)

〔編註その二〕本件に関するイ号図面は左のとおりである。

<省略>

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〔編註その三〕本件実用新案の図面は左のとおりである。

<省略>

<省略>

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