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大阪地方裁判所 昭和60年(ワ)8893号 判決

一 争点1(構成要件(四))について

1 「取出開口」及び「開口」について

(本件(二)発明は本件(一)発明に供給装置を付加しただけのものであり、構成要件(四)に関しては本件各発明に共通の問題であるから、以下本項に限り、両発明を包括して本件発明といい、公報等は本件(一)発明のものを引用する。)

(1) 本件特許請求の範囲には、「取出開口12」と「開口12」との記載があるが、いずれも同一箇所を指示する番号「12」が付記されているから、「取出開口」と「開口」とは同義と解すべきである。右の「取出開口12」及び「開口12」なる文言が海苔等シート状物の「取出し」を行う場所ないし空間としての開口部を指す言葉として用いられていることは、特許請求の範囲・発明の詳細な説明・願書添付図面の記載自体から明らかである。

(2) そこで、右の「取出し」の意義について考えるに、特許請求の範囲の記載及び、発明の詳細な説明中の、「本発明は、加工すべき海苔等のシート状物の積層から一枚宛自動的に取出す取出装置に関する。従来、味付け海苔等の加工に於て海苔は破れ易く、加工機へ機械的に自動供給することが困難なため、通常は作業者が海苔を一枚宛手作業により積層から取り出して供給する方法が採られている。このため加工能率が低く、量産化の障害となつていた。本発明は、積層最下部のシート状物を吸着して両端を下方へ曲げ、二枚との間に間隙を形成することによつて、二枚目以上は間隙中に受爪を挿入して支え、最下部のシート状物を下方へ取出すことにより、加工海苔の如く破れ易いシート状物の自動供給を可能と………するものである。」(公報1欄29~2欄6行目)、「両受爪50、50は、吸引筐2が積層シート状物を支持しているときは、互いに作動軸51下方に垂下し、吸引筐2の下降開始と同時に1/4回転して支持枠11下開口へ上昇して臨出し、積層下面を支持する。」(公報3欄29~33行目)、「加工機及び本発明の吸引装置4を作動するとき、支持枠11に対応せる吸引筐2の吸着面23、23には吸引力が作用して積層7の最下部の海苔71の両端部を吸着面23、23の曲面に沿つて吸着し、吸着された最下部の海苔71の両端部は二枚目の海苔から離れて間隙aを形成させる(第3図)。このとき、作動機構52が作動して支持枠11下開口両側の受爪50、50が支持枠11の下開口に両側から臨出して枠11中の積層7の最下面と二枚目との間の間隙aに係入し、積層の下面両端部を支持し、積層7の下降を止めている。次で吸引筐2が海苔を吸着して下降し下降端に達するとき………海苔71は吸着面23から解放される。」(公報4欄39~5欄12行目)との記載並びに本件発明の作動状況を説明する願書添付図面第3ないし第5図の記載(公報5頁)を総合すると、本件発明においては、吸引筐と受爪の作動によつて、積層シート状物から最下層のシート状物を分離把握することをもつて、「取出し」としているものと解することができる。本件発明の最も重要なポイントは、積層シート状物から最下層のシート状物を破れないように機械的に分離把握することにあると認められるのであつて、右分離把握後の移送過程までを「取出し」に含めて考えなければならない理由は見出し難い。

(三) 右分離把握の位置は、前項の各記載から明らかなように、吸引筐に吸着把握された積層シート状物の最下層シート状物が、間隙a内に挿入された受爪に支持されることになつた最下層から二枚目以上の積層シートとの間で積層関係を解消(積層関係から離脱)する位置、換言すれば、積層シート状物の最下降する(最下端)位置であるから、右の位置をもつて、本件発明にいう「取出し」位置というべきである。

(四) したがつて、本件特許請求の範囲にいう「取出開口」及び「開口」とは、支持枠下端の右の「取出し」位置すなわち右にいう高さ位置に相当する箇所を指すものと解すべきである。

被告は、「開口」とは、本来の装置の目的からみて、海苔が取り出され、その装置全体からの拘束を外れる箇所を意味する旨主張するが、本件特許請求の範囲にいう「取出し開口」及び「開口」は右のとおりと解すべきであるから、被告主張は採用できない。

(五) なお、本件特許請求の範囲には、「取出開口」及び「開口」は「支持枠11」の下端に設けられる旨明記されている。ところで、発明の詳細な説明及び願書添付図面によると、「支持枠」は、「開口12の四隅に枠材13を縦設して………形成」されるものであり、「該枠11内へ上方から海苔等のシート状物の多数枚を積層装填して積層7下面を吸引筐2の上面に支持」するものである(公報2欄16~19行目)と認められる。

右のとおり、「支持枠」は枠材によつて形成されるものであるが、枠材そのものではなく、積層シート状物を吸引筐の上面に支持する機能を持たせることを目的として設置されるものであると考えられる。したがつて、仮に枠材に右の機能と無関係な部分があるときは、その無関係部分は本件発明にいう「支持枠」には該当せず、枠材のうち右の支持機能を果たしている部分のみが本件発明にいう「支持枠」に該当するというべきである。願書添付図面に記載されている本件発明の実施例の図面(公報4、5頁)は、枠材に右の機能と無関係な部分がなく、図示の枠材全体が支持枠を形成する実施例を示しているものと認められる。

したがつて、本件発明にいう「支持枠」とは、前記高さ位置より上方にある枠材により、或いは枠材のうち前記高さ位置(「取出し」位置)より上方にある部分により形成されるものである。

2 被告物件について

被告物件においては、イ号、ロ号図面の各第4図上、受爪50、50の上面(積層海苔支持面)を結ぶ直線部分が、吸引筐に吸着把握された積層海苔の最下層海苔が間隙a内に挿入された受爪に支持されることになつた最下層から二枚目以上の積層海苔との間で、積層関係を解消(積層関係から離脱)する位置、換言すれば、積層海苔の最下降する(最下端)位置、すなわち構成要件(四)にいう「開口」に該当し、枠材13、13のうち右位置より上方の部分が同(四)にいう「支持枠」に該当すると認められるから、被告物件は構成要件(四)を充足するといわなければならない。

被告は、被告物件における前側(ローラ65側)の枠材13及び後側(ローラ65と反対側)の枠材13のいずれもが、その全体(下端から上端まで)が「支持枠」を形成している旨主張するが、被告物件にあつても、吸引筐による吸着把握前の積層海苔は、受爪により、枠材13、13のうち受爪上面の線より上方の枠材13、13内に支持されているものと認められるのであつて、枠材13、13のうち右位置より下方の部分が、海苔が吸引筐の上下動の影響によりはみ出し横ずれするのを阻止する機能を有するとしても、それは、本件発明をより効率よく実施するに当たつて生ずる実施上の問題を解決する手段に属するものであり、本件発明にいう前示の積層海苔の支持機能とは異なるものというべきである。被告物件における枠材13、13のうち右受爪上面の線より下方の部分は、本件発明にいう「支持枠」を構成するものではなく、これとは別の機能を持たせることを目的にこれに付加された構成と考えるべきである。

二 争点2(構成要件(七)、(九))について

本件(二)発明の特許請求の範囲中の、「該開口12の下方へ、前側壁が開口12の前辺より後退して位置する様………吸引筐2を昇降可能に配備して、………吸引筐2の降下位置には対をなすローラ65、66間に通気性無端ベルト67を懸けた送出し装置6を配備して、周面に吸引孔64を開設した一方のローラ65を開口12下方にて吸引筐2に隣接位置させており、………該吸気装置4は前記ローラ65の吸引孔64へ連通させた」(特許法第六四条の規定による補正の掲載公報)との記載、発明の詳細な説明中の、「吸引筐2は、………筐2の後側壁21を機台開口12の後辺に揃え且つ前側壁は開口12の前辺より後退した位置に設けられ、従つて吸引筐2の上面に海苔を吸着したとき、海苔の前部が吸引筐2から突出する様になす。」(公報2欄25~31行目)、「吸引筐2が海苔を吸着して下降し下降端に達するとき、………吸着面23、23の吸引が解消して海苔71は吸着面23から解放される。吸引筐2が下降端に達する直前で………下降した海苔の端部に対応せるローラ65上面に吸引孔64からの吸引力が作用して吸引筐2上の海苔の端部を吸着し、ベルト67の移行により吸引筐2上から送出し装置6に受渡し」(公報5欄9~20行目)、「吸引筐2の昇降動作だけで、最下部シートを積層から剥離し且つシートをベルト6へ移送でき、而もベルト6を懸ける一方のローラ65に吸引力を作用させるだけで、吸引筐2からベルト67上へシートの受渡しができる」(同6欄7~11行目)との記載、並びに願書添付図面第5図(公報5頁)の記載に照らすと、本件(二)発明における「吸引孔」は、本件(一)発明の取出装置の吸引筐によつて分離把握されたシート状物を、次の工程へ送り出す供給装置の無端ベルトに確実に載置する目的で設置されたものであり、吸引筐が下降端位置辺に達しその吸引力を解除され、吸引筐上のシート状物の前縁が吸引筐の前辺から更に前に突出し、その突出部が、無端ベルト上に乗せられたとき、構成要件(七)及び(九)のローラの吸引孔からの吸気作用で確実に無端ベルト表面に吸着されるようにしたものであり、したがつて、この吸引孔は、無端ベルトの駆動に関与するというローラ本来の機能とは全く無関係であつて、ローラが無端ベルトの先端に位置しシート状物を取出装置から供給装置に受渡しするときの接触点に所在し、吸気作用を働かせる適所に位置するため、この位置に設置されているものであることは明らかである。

したがつて、被告物件の、無端ベルトに吸気作用を働かせるために、上流側ローラ65の軸方向を、ローラの機能を持たせたローラ片とベルトの駆動に支障を生じさせないよう設計した間隔部とに分割し、隣り合うローラ片の間に間隔部を配置し、この間隔部94上面に、ベルトの上下の面間に取付けられ、ホース61を介して吸気装置4と連通している吸引ボックス87の端縁に設けた吸引口88を各一個宛開口(イ号物件の場合、短いローラ65を五本と四箇所の吸引口88を交互に設置)した構成は、右構成要件(七)及び(九)との関係では設計上の微差にすぎず、被告物件のローラ65及び吸引口88を開口した間隔部94を組合せた右構成は、右構成要件(七)及び(九)の「周面に吸引孔を開設した一方のローラ」と実質的に同一の構成であるというべきである。

以上のとおりであるから、被告物件は本件各発明の技術的範囲に属するものといわざるを得ない。

三 争点3(権利濫用)について

被告は、原告の本訴請求が権利の濫用に該当する旨主張するが、被告の全主張立証を参酌しても、右被告主張を採用することはできない。なお、被告の指摘する先願発明は、積層海苔の上方からその最上層一枚宛てを吸着するものであり、本件各発明の下方吸引方式に必須の、受爪との連動作用についての技術思想を全く欠いているから、本件各発明は先願発明を利用するものではないといわざるを得ない。

以上によれば、被告が業として被告物件を製造、販売することは、原告の本件(一)、(二)各特許権をいずれも侵害することになるというべきところ、被告には右侵害行為について過失があつたものと推定される。

四 争点4(原告が請求できる金額)について

1 不当利得金請求について

原告は、昭和五四年三月二日(本件(一)発明の出願公告日)から昭和五七年八月までの間に、被告が、イ号物件(W型)八〇台、ロ号物件(S型)七台を販売した旨主張するが、被告が認める、イ号物件(W型)五八台、ロ号物件(S型)七台を超える台数については、被告がこれを販売した事実を認めるに足りる証拠がない。この点に関し原告が提出・援用する証拠(甲二六、証人中村)は、被告提出・援用の証拠(乙八の一、二、乙九ないし二五、乙二六の一ないし四、乙二七の一、二、乙三〇、乙三一、証人近澤)に照し、販売時期の点で確実性を欠いていると認められるから、採用し難い。したがつて、同期間の被告物件の販売は、イ号物件(W型)五八台、ロ号物件(S型)七台と認めるほかない。

また、原告は、右販売により被告がイ号物件(W型)一台当たり二〇万円、ロ号物件(S型)一台当たり一五万円の利益を得、原告はそれと同額の損失を被つた旨主張するが、仮に被告が右主張額の利益を得たとしても、原告が同額の損失を被つたことを認定するに足りる証拠はない。しかし、特許権を実施するには相当の実施料を支払わなければならないことは明らかであり、特許権侵害者はこれを支払わず実施して、支払わなければならない実施料を支払わず、同額の利得を得たと認められ、他方、特許権者は、実施料の支払を受けることができず、これと同額の損失を受けたものということができる。したがつて、特許権の侵害があれば、特段の事由のない限り、常に侵害者に実施料相当額の不当利得が生じるということができるから、被告は原告に対し実施料相当額を不当利得として支払わなければならない。そして、後記認定の被告の得た利益金額及び弁論の全趣旨を総合して考えると、本件両特許権の実施料相当額合計は、イ号物件(W型)一台につき六万円、ロ号物件(S型)一台につき四万五〇〇〇円と認めるのが相当と考えられるから、結局、被告の支払うべき不当利得金は三七九万五〇〇〇円となる(五八×六万=三四八万。七×四万五〇〇〇=三一万五〇〇〇。三四八万+三一万五〇〇〇=三七九万五〇〇〇)。

2 損害金請求について

原告は、昭和五七年九月から平成元年末までの間に、被告が、イ号物件(W型)六五台、ロ号物件(S型)一二台(乙三一に基づく予備的主張では一三台)を販売した旨主張するが、被告が認める、イ号物件(W型)については、昭和五七年九月から昭和六二年一二月までの間五〇台(主張中で合計として認めるもの。)と昭和六三年一月から平成元年末までの間一三台(乙三〇で個別に認めたもの。これを整理すると、別紙「被告自認販売一覧表(イ号物件)」記載のとおりとなる。)の合計六三台、ロ号物件(S型)一三台(乙三一で別個に認めたもの。これを整理すると、別紙「被告自認販売一覧表(ロ号物件)」記載のとおりとなる。)を超える台数については、被告がこれを販売した事実を認めるに足りる証拠がない。したがつて、同期間の被告物件の販売は、イ号物件(W型)六三台、ロ号物件(S型)一三台と認めるほかない。

そして、被告が販売しなければ原告が販売できたはずの海苔自動供給機を被告の販売台数に対応するだけ販売できず、その結果、一台あたり、W型で四七万六九五八円、S型で二九万〇七〇円の得るべき利益を失つた旨の原告主張は認め難いけれども、証拠(甲二二、甲二四の一ないし五、甲二五の五、六、乙八の一、二、乙九ないし二五、乙二六の一ないし四、乙二七の一、二、乙二八、乙二九、証人中村、同近澤)を総合して考えると、被告がイ号物件(W型)を製造販売して得た利益は一台当たり平均二〇万円、ロ号物件(S型)を製造販売して得た利益は一台当たり平均一五万円と認めるのが相当であるから、結局、被告は右期間に被告物件を製造販売し合計一四五五万円の利益を得たと認めるのが相当である(六三×二〇万=一二六〇万。一三×一五万=一九五万。一二六〇万+一九五万=一四五五万)。原告は、被告の右販売以前から、本件各発明の実施品で、被告物件と同一の用途に供する海苔自動供給機を製造、販売している(証人中村)から、右被告の得た利益額一四五五万円が原告の受けた損害額と推定される。

3 被告の支払うべき金額合計

結局、被告は原告に対し右不当利得金三七九万五〇〇〇円と損害金一四五五万円の合計一八三四万五〇〇〇円を支払わなければならない。

〔編注1〕本件における原告の特許権は左のとおりである。

原告は次の特許権(以下、その特許発明を「本件(一)発明」、「本件(二)発明」という。甲一ないし甲三、甲四の一、二。別添公報参照。)を有し、海苔の供給機等を製造販売している(証人中村)。

1 本件(一)特許権

登録番号  第一〇五一〇一〇号

名称    シート状物の取出装置

出願日   昭和五〇年九月二二日(特願昭五一―〇七七四三三)

出願公告日 昭和五四年三月二日(特公昭五四―〇〇四一四八)

設定登録日 昭和五六年六月二六日

特許請求の範囲 「海苔等のシート状物を積層する支持枠11の下端にシート状物の取出し開口12を設け、該開口12に対し中空筐状の吸引筐2を昇降可能に配備して、該吸引筐2の上面に両側へ低く傾斜し且つ傾斜面上に吸引口24を開設した吸着面23、23を形成し、支持枠11の下方には積層下面の両端部を受止め或いは開放する一対の受爪50、50を開口12下方へ出没可能に配備して、両受爪50へ吸引筐2の昇降に対応して受爪50を開閉動作させる作動機構52を連繋し、前記吸引筐2には吸着面23、23へ積層最下部シートの両側端部を吸着させる吸気装置4を接続したシート状物の取出装置。」

2 本件(二)特許権

登録番号  第一〇五〇九八八号

名称    シート状物の供給装置

出願日   昭和五〇年九月二二日(特願昭五〇―一一五三六八)

出願公告日 昭和五四年二月一三日(特公昭五四―〇〇二七四三)

設定登録日 昭和五六年六月二六日

特許請求の範囲(特許法六四条の規定による補正後のもの)「海苔等のシート状物を積層する支持枠11の下端にシート状物の取出し開口12を設け、該開口12の下方へ、前側壁が開口12の前辺より後退して位置する様中空筐状の吸引筐2を昇降可能に配備して、該吸引筐2の上面に両側へ低く傾斜し且つ傾斜面上に吸引口24を開設した吸着面23、23を形成し、支持枠11の下方には積層下面の両端部を受止め或いは開放する一対の受爪50、50を開口12下方へ出没可能に配備して、両受爪50へ吸引筐2の昇降に対応して受爪50を開閉動作させる作動機構52を連繋し、吸引筐2の降下位置には対をなすローラ65、66間に通気性無端ベルト67を懸けた送出し装置6を配備して、周面に吸引孔64を開設した一方のローラ65を開口12下方にて吸引筐2に隣接位置させており、吸引筐2には吸着面23、23へ積層最下部シートの両側端部を吸着させる吸気装置4を接続すると共に、該吸気装置4は前記ローラ65の吸引孔64へ連通させたシート状物の供給装置。」

本件各発明の構成要件及び作用効果(甲三、甲四の一、二)

1 本件(一)発明の構成要件は、次のとおり分説するのが相当である。

(一) 海苔等のシート状物を積層する支持枠の下端にシート状物の取出し開口を設け、

(二) 該開口に対し、中空筐状の吸引筐を昇降可能に配備して、

(三) 該吸引筐の上面に両側へ低く傾斜し且つ傾斜面上に吸引口を開設した吸着面を形成し、

(四) 支持枠の下方には積層下面の両端部を受止め或いは開放する一対の受爪を開口下方へ出没可能に配備して、

(五) 両受爪へ吸引筐の昇降に対応して受爪を開閉動作させる作動機構を連繋し、

(六) 前記吸引筐には吸着面へ積層最下部シートの両側端部を吸着させる吸引装置を接続した、

(七) シート状物の取出装置

2 本件(一)発明は右構成を採ることにより、次の作用効果を奏する。

(一) 海苔等のシート状物の積層下面を吸引筐で支持し、吸引筐の吸着面に積層最下部の一枚のシートを吸着して下降し、下降端で送出装置に受渡すようにしたから、シート状物は摺擦、引掛りがなく従つて海苔の如く破れ易いシートといえども全然傷めず一枚宛円滑に自動供給出来る。

(二) また、積層が減つてくると、支持枠の上方からシート状物の補給ができ、加工機及び取出装置の運転を停止させる必要がない。

(三) 更に、吸引筐の吸着面は、両側へ低く傾斜させたものであるから、吸着面に吸引力を作用させるだけで最下部シートと二枚目シートとの間に受爪を挿入する間隙を形成でき、しかも吸引筐の昇降動作だけで、最下部シートを積層から剥離し且つシートを送出装置へ移送できるから、装置の構造及び動作が著しく簡略化され、装置の小型化を実現できる。

3 本件(二)発明の構成要件は、次のとおり分説するのが相当である。

(一) 海苔等のシート状物を積層する支持枠の下端にシート状物の取出し開口を設け、

(二) 該開口の下方へ、前側壁が開口の前辺より後退して位置する様中空筐状の吸引筐を昇降可能に配備して、

(三) 該吸引筐の上面に両側へ低く傾斜し且つ傾斜面上に吸引口を開設した吸着面を形成し、

(四) 支持枠の下方には積層下面の両端部を受止め或いは開放する一対の受爪を開口下方へ出没可能に配備して、

(五) 両受爪へ吸引筐の昇降に対応して受爪を開閉動作させる作動機構を連繋し、

(六) 吸引筐の降下位置には対をなすローラ間に通気性無端ベルトを懸けた送出装置を配備して、

(七) 周面に吸引孔を開設した一方のローラを開口下方にて吸引筐に隣接位置させており、

(八) 吸引筐には吸着面へ積層最下部シートの両側端部を吸着させる吸気装置を接続すると共に、

(九) 該吸気装置は前記ローラの吸引孔へ連通させた、

(一〇) シート状物の供給装置

4 本件(二)発明は右構成を採ることにより、次の作用効果を奏する。

(一) 海苔等のシート状物の積層下面を吸引筐で支持し、吸引筐の吸着面に積層最下部の一枚のシートを吸着して下降し、下降端で送出装置に受渡すようにしてあるので、シート状物は摺擦、引掛りがなく従つて海苔の如く破れ易いシートといえども全然傷めず一枚宛円滑に自動供給できる。

(二) また、吸引筐の昇降動作だけで、最下部シートを積層から剥離し且つシートをベルトへ移送でき、しかもベルトを懸ける一方のローラに吸引力を作用させるだけで吸引筐からベルト上へシートの受渡しができるから、装置の構造及び動作が著しく簡略化され、装置の小型化を実現できる。

〔編注2〕本件における目録は左のとおりである。

イ号物件目録

一 名称

海苔の取出及び供給装置(W型・海苔取出装置二基のもの)

二 図面の説明

第1図は機台のカバーを外した取出及び供給装置の正面図、第2図は平面図、第3図は一部省略斜視図、第4図乃至第6図は受爪と吸引筐の運動を示す説明図である。

三 符号の説明

1  機台

11  支持枠

13  枠材(後側)

13´ 枠材(前側)

16  支持腕

17  支持腕

2  吸引筐

21  後側壁

23  吸着面

24  吸引口

12  開口

12´ 被告が主張する開口

4  吸気装置

40  ブロワー

41  開口

42  蓋

44  レバー

45  ガイド

50  受爪

51  作動軸

26  可撓管

3  昇降機構

32  円板

34  回転軸

35  ロッド

61  ホース

64  貫通孔

65  ローラ

67  無端ベルト

7  海苔束

71  最下層の海苔

80  円板

81  リンク

82  レバー

82´ レバー

84  レバー

52  作動機構

53  カム

55  リンク

56  フオロワー

58  リンク

6  供給装置

85  回転軸

86  ローラ

87  吸引ボツクス

88  吸引口

89  開閉ダンパ

90  取付軸

91  連杵

92  支持軸

93  腕

94  間隔部

四 構造及び作業の説明

(一) 全体構造の説明

(1) 海苔を積層する支持枠11の下端に海苔の取出し開口12を設け、該開口12に対し中空筐状の吸引筐2を昇降可能に配備して、該吸引筐2の上面に両側へ低く傾斜し且つ傾斜面上に吸引口24を開設した吸着面23、23を形成し、枠材13´、13の下部の図示の位置には積層下面の両端部を受止め或は解放する一対の受爪50、50を開口12下方ないし12´上方の図示の位置へ出没可能に配備して、両受爪50へ吸引筐2の昇降に対応して受爪50を開閉作動させる作動機構52を連繋し、前記吸引筐2には吸着面23、23へ積層最下部海苔の両側端部を吸着させる吸気装置4を接続した海苔の取出装置。

(2) 海苔を積層する支持枠11の下端に海苔の取出し開口12を設け、該開口12の下方へ、前側壁が開口12の前辺より後退して位置するよう、中空筐状の吸引筐2を昇降可能に配備して、該吸引筐2の上面に両側へ低く傾斜し且つ傾斜面上に吸引口24を開設した吸着面23、23を形成し、枠材13´、13の下部の図示の位置には積層下面の両端部を受止め或は解放する一対の受爪50、50´を開口12下方ないし12´上方の図示の位置へ出没可能に配備して、両受爪50へ吸引筐2の昇降に対応して受爪50を開閉作動させる作動機構52を連繋し、吸引筐2の降下位置には対をなすローラ65、66間に通気性無端ベルト67を懸けた送出し装置6を配備して、一方のローラ65には、軸方向に間隔部94を複数箇所設けて、間隔部94に吸引口88を配置し、該吸引口88を開口12下方にて吸引筐2に隣接位置させており、吸引筐2には吸着面23、23へ積層最下部海苔の両側端部を吸着させる吸気装置4を接続すると共に、該吸気装置4はローラ65間に設けられた吸引口88へ連通させた海苔の供給装置。

(二) 支持枠11について

支持枠11は、二組が併設されており、それぞれは機台1の上板19に開設した開口12の内側四隅へ断面L字状の枠材13´、13を立てて構成している。

前側の枠材13´の下端は上板19の裏側下方へ延長しており、開口12の上方にある枠材13´の長さcは四四センチメートル。開口12の下方へ延長した枠材の長さdは四・五センチメートルである。

後側の枠材13も上板19の裏側下方へ延長されているが、L字状断面を構成する直交する二枚の板片の中、海苔の送り方向と平行する板片は受爪50の上方で止まり、他方の板片は受爪50の下方へ延長し、吸引筐の下降位置において板片下端を直角に屈曲して、吸引筐の下降側面に沿い海苔の送り出し方向に向けて横ガイド板18を突設している。

(三) 吸引筐2について

吸引筐2は、アルミニウム製の中空筐体であつて、上下に並べて基端を機台に枢支した一対の支持腕16、17の先端に取付けられており、垂直姿勢を保つたまま、昇降装置3によつて上下動可能に支持されている。

吸引筐2の下部は伸縮可能な蛇腹状撓管26を介して吸気装置4に連通する。

吸引筐2の上面は、両側へ低く傾斜する曲面に形成され、上壁の支持面から両側壁の上部に亙る傾斜面に細幅の吸引口24を複数条形成して、これを吸着面23となしている。

吸引筐2は、支持枠11の開口12下方に配置され、吸引筐2の後側壁21と開口12後辺との間隔bは標準二センチメートル、吸引筐の前側壁と開口12前辺との間隔aは標準で四センチメートルである。

(四) 昇降装置3について

(構 造)

昇降装置3は、回転軸34へ取付けた円板32の周縁部にロッド35の下端を枢支し、ロッド35の上端を吸引筐2へ連結したものである。

(作 用)

円板32の回転によつて、ロッド35下端の枢支点は偏心回転して、ロッド35を上下動させ、該ロッド35を介して吸引筐の昇降に変えている。

(五) 受爪50について

受爪50は、各枠材の下部の図示の位置の両側へ、海苔の送り出し方向と平行に配備した一対の作動軸51へそれぞれ取付けた板片である。作動軸51は後述する作動機構52によつて、約六〇度の範囲で往復回動し、両方の受爪50を同時に開口12下方ないし12上方へ水平に突出した図示の位置及び斜め内方下向きに退避した図示の位置へ回動させる。

(六) 作動機構52について

(構 造)

作動機構52は、回転軸34にカム53を取付け、中央を機台に枢支したリンク55の一端のフォロワー56をカム53に載せてカム53の回転によつて、リンク55を揺動させる。リンク55の他端にリンク58の下端を枢支し、そのロッド58の上端を、回転自在に支持された円板80の外面の偏心位置に取付ける。円板80の内面の中心対称の位置に二本のリンク81、81を枢支し、各作動軸51から突出した各レバー82に連絡する。また外側の作動軸51に設けた他のレバー82´をリンク83を介してそれぞれ開口12の内側の作動軸51のレバー84に連結する。

(作 用)

カム53の回転によるリンク55の揺動運動をロッド58、円板80、リンク81、レバー82を介して外側作動軸51の往復回動及びレバー82´、リンク83、レバー84を介して内側作動軸51の往復回動に変換して、一対の受爪50、50を同時に対称的に回動させ、開口12を開閉せしめる。

(七) 吸気装置4について

(構 造)

ブロワー40の吸気側を可撓管26を介して、吸引筐2に連通し、吸引筐2の吸引口24に吸気作用を及ぼしている。可撓管と吸引筐との接続部に開口41を設け、蓋42を開口41の一辺に枢支して、蓋が開口41を塞ぎ、吸引筐に負圧を及ぼしている。蓋42の回転軸85にレバー44が取付けられ、そのレバー44の先端に設けたローラ86が機台に設けたガイド45に接触している。

(作 用)

吸引筐の下降時はローラ86がガイド45の底部に接触し蓋42を内方に下げて開口41を大気に解放し、吸引筐には負圧を生じないから、吸引作用を失つている。

吸引筐が上昇して、ローラ86がガイド45の高所に載ると、蓋42が開口41にその内面から密着してブロワーからの負圧が吸引筐に及び、吸着面に吸引作用を生じる。

(八) 供給装置6について

供給装置6は、吸引筐の下降位置と、機台の端部とに設けた二つの回転ローラ65と66との間に、孔明き無端ベルト67を張設したものである。ベルトの上下の面間に吸引ボックス87が取付けられ、その吸引ボックス87の端縁に設けた複数の吸引口88を上流側ローラ65の間隔部94にそれぞれ挿入し、吸引ボックス87の側面にホース61を介して連通している。ベルト67の貫通孔64は、吸引口88に対応する部分において、ベルトの長さ方向に設けられている。

ホース61の途中には開閉ダンパ89が設けられ、該開閉ダンパ89の取付軸90を連杵91を介して前記の支持腕17の支持軸92に固定された腕93に連結され、吸引筐2が最下降位置にある時はダンパ89を開き、上昇状態にある時は閉じ、無端ベルト67が回転ローラ65の表面を通過中で且つ吸引筐2が下降状態にある時はベルトに開設された貫通孔64を通して、吸気作用がベルト表面に及んでいる。

(九) 全体の作用説明

第4図の如く、受爪50は、図示の位置に水平に突出して、支持枠11中の海苔束7を支持しており、吸引筐2は下降位置に待機している。

受爪50の回動と吸引筐2の昇降及び吸気装置4の吸気作用はタイミングを合わせて連動し、吸引筐の下降位置では、吸気装置は吸気作用を止めている。

吸引筐が第5図の如く上昇すると、海苔束は吸引筐の上面に支持され、持ち上げられて受爪から浮き上がる。これと殆んど同時に受爪は下向き回動して図示の位置に退避すると共に、吸引筐に吸引作用を生じて海苔束の最下層の一枚71が吸引筐の吸着面に引き寄せられ、下から二枚目の海苔との間に間隙を形成する。

次に受爪が逆回転して、第6図の如く水平に突出し、海苔束の最下層71と二枚目の海苔との間へ突出する。殆んど同時に吸引筐は下降して、海苔束の支持を受爪へ移し、下降位置で吸引を止めて、吸着していた一枚の海苔71を解放し、海苔束から一枚の海苔を分離して取り出す。

海苔束から取り出された海苔は、吸引筐の上面に乗つているが、その前縁は吸引筐の前辺から更に前へ突出して、無端ベルト67に掛り、ベルト上の貫通孔からの吸気作用によつて、ベルト表面に吸着される。従つて海苔は、ベルトの回転によつて吸引筐の上面から引出され、ベルトに乗つて外へ送り出され、次の工程へ供給される。

以上

イ号図面

<省略>

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(ロ号物件は省略)

〔編注3〕本件特許権(一)の図面は左のとおりである。

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(他は省略)

〔編注4〕本件特許権(二)の図面は左のとおりである。

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(他は省略)

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