大阪地方裁判所 昭和61年(ワ)9150号 判決
一 請求原因1の事実は原本の存在及び成立に争いのない甲第六号証並びに弁論の全趣旨によりこれを認めることができる。
二 同2の事実はいずれも成立に争いのない甲第一ないし第三号証によりこれを認めることができる。
三 同4の事実は、前掲甲第六号証、いずれも原本の存在及び成立に争いのない甲第七ないし第九号証並びに被告本人尋問の結果(いずれも後記認定に反する部分を除く)により、これを認めることができる(但し、本件製造販売行為の開始時期については、原告は昭和五七年九月ころからと主張し、前掲甲第七号証にはこれにそう記載があるが、前掲甲第六号証、第八号証及び第九号証並びに被告本人尋問の結果に照らし措信し難く、右各証拠によれば、本件製造販売行為の開始時期は昭和五七年一〇月ころと認められる。)。
被告は、共亜化学の従業員にすぎず、行為の独立性がない旨主張し、被告本人尋問の結果中右主張にそう供述部分があり、成立に争いのない乙第一号証(判決正本の写し)にも永沢が共亜化学の経営者で被告は工場長である旨記載されている。しかし、前掲甲第六号証(被告の司法警察員に対する供述調書)によると、被告は永沢と二人で共亜化学を経営するようになつた旨はつきりと警察で供述しており、被告本人尋問においても、被告は右供述調書の内容を承認してこれに署名押印した旨供述している。また、本項冒頭掲記の各証拠を総合すると、被告は共亜化学の製造部門及び仕入発注業務を完全にまかされていたこと、共亜化学は、永沢と被告及びその妻のほかには従業員は四人しかいない零細企業であり、永沢と被告は兄弟であること、被告の給料は永沢と殆ど同額で、他の従業員より高く定められていたこと、他の従業員は毎月定額の給料を受け取つていたのに、被告の給料の受取状況は一定せず、その月の共亜化学の利益に応じたと推認される変動があつたことがそれぞれ認められる。これらの点に照らすと、被告本人尋問の結果中被告主張にそう部分は措信することができず、被告は、肩書上は共亜化学の工場長にすぎないが、実質上は永沢とともに共同経営者の地位にあつたものと認めることができる。前掲乙第一号証も右認定の妨げとなるものではなく、他に右認定に反する証拠はない。従つて、被告の主張は採用することができない。
四 次に、請求原因5(一)の点についても、被告は月給約二〇万円で共亜化学に勤務していたにすぎず、本件製造販売行為によつて利益を得ていない旨主張するが、前示のとおり、被告らは共亜化学の実質上の共同経営者の地位にあつたのであるから、右主張は理由がなく、いずれも弁論の全趣旨により成立を認める甲第四及び第五号証、前掲各証拠並びに弁論の全趣旨によれば、請求原因5の事実はいずれもこれを認めることができる。
五 以上認定の事実によれば、原告の本訴請求のうち、商標法三六条、民法七〇九条、七一九条に基づく商標権侵害行為の差止め及び同侵害物件の廃棄並びに損害賠償の各請求はすべて理由がある(訴状送達の日の翌日が昭和六一年一二月四日であることは、本件記録上明らかである)から、これをいずれも認容する。
〔編註その一〕 本件における当事者の主張は左のとおりである。
第一 当事者の求めた裁判
一 請求の趣旨
1 主文第一ないし第四項と同旨
2 仮執行の宣言
二 請求の趣旨に対する答弁
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
第二 当事者の主張
一 請求原因
1 原告は、かばん類、袋物等の製造、販売を業とするフランス法人である。
2 原告は、別紙目録(一)、(二)記載の各標章(以下「本件各標章」という)につき、それぞれ左の(一)、(二)記載の商標権(以下「本件各商標権」という)を有している。
(一) 登録番号 第一四四八八一四号
出願日 昭和五二年五月二〇日
公告日 昭和五五年五月一三日
商品の区分 第一六類
指定商品 織物、その他本類に属する商品
連合商標登録番号 第一四四八八一五号
(二) 登録番号 第一四四八八一五号
連合商標登録番号 第一四四八八一四号
その余は(一)に同じ。
3 本件各標章は、原告が製造、販売する商品の表示として、遅くとも昭和五二年当初には日本において広く認識されるものとなつていた。
4 被告らの商標権侵害行為及び不正競争行為
被告及び分離前相被告金永沢(以下「永沢」という)は、共同して共亜化学又は共亜化工(以下、「共亜化学」という)の屋号でビニール原反の印刷、加工、製造、販売を業としていたものであるが、両名共謀のうえ、昭和五七年九月から昭和五九年五月までの間に、本件各標章を使用した偽造ビニール生地(以下「偽ルイ・ヴイトン生地」という)を少なくとも八万六〇〇〇メートル製造し、これを少なくとも合計金七七五〇万円で第三者に販売し、もつて原告の本件各商標権を侵害するとともに、原告の商品と混同を生ぜしめる不正競争行為をした。
5 原告は、被告の右商標権侵害行為及び不正競争行為により、左の損害を被つたし、今後も被告に商標権を侵害され、営業上の利益を害されるおそれがある。
(一) 被告らの利益相当の損害 一七三〇万円
原告は、日本国内においては特定の修理業者に対し原告製品の修理のためにのみ生地を販売して利益を得ているところ、被告らは、前記行為により、一七三〇万円を下らない利益をあげたから、商標法三八条一項又はその類推適用により、原告は被告らの右利益と同額の損害を被つたものと推定される。
(二) 信用毀損による無形損害 三〇〇万円
原告は、一八五四年に世界で最初の旅行かばん店としてパリに設立されて以来、極めて堅牢なフアツシヨン性に富む高級なかばん類、袋物類を販売し、名声を博してきた。原告が日本において販売する商品は、自らがフランスにおいて製造しその日本における子会社が輸入したもののみであり、これを子会社の直営店と特約店のみで販売して、品質の保持管理に努め、デザイン変更や安売りをしないことによつて、高級品のイメージを確保し、本件各標章の信用維持に努めてきた。しかるに、被告らが前記のとおり偽ルイ・ヴイトン生地を製造、販売したことにより、これを材料として原告製品の酷似的模倣品が製造され、安売りされ、原告はその信用を毀損された。原告は、被告らの右信用毀損行為によつて、前記(一)の損害以外に多大の無形損害を被つた。右無形損害の額は三〇〇万円を下らない。
(三) 弁護士費用 一〇〇万円
原告は、本件紛争解決のため代理人弁護士に対して訴訟委任を行ない、その報酬として一〇〇万円の支払を約したが、右金員も被告らの行為と相当因果関係のある損害である。
以上合計 二一三〇万円
6 よつて、原告は被告に対し、商標法三六条、民法七〇九条、七一九条に基づき、又は不正競争防止法一条一項一号、一条の二第一項、民法七一九条に基づき、商標権侵害行為ないし不正競争行為の差止め及び侵害物件の廃棄並びに損害賠償金二一三〇万円及びこれに対する不法行為後で訴状送達の日の翌日である昭和六一年一二月四日から支払ずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。
二 請求原因に対する認否
1 請求原因1ないし3の各事実はいずれも不知。
2 同4の事実は否認する。共亜化学の経営者は永沢であつて、被告はその従業員にすぎず、本件製造行為は永沢に命ぜられて行なつたもので、被告には行為の独立性がないから共同不法行為は成立しない。
3 同5の事実は否認する。特に、同5(一)の点については、被告は月給約二〇万円で共亜化学に勤務していたにすぎず、本件製造販売行為によつて利益を得ていない。