大阪地方裁判所 昭和62年(ワ)2550号 判決
一 原告が本件意匠権を有すること及び被告がイ号ないしト号物件を業として、製造、販売していることは、当事者間に争いがない。
二 成立に争いのない甲第二号証(本件公報)によれば、本件登録意匠の構成は、次のとおりであると認めるのが相当である。
A´ 被告の主張1Aのとおり。
B´ 同1Bのとおり。
C´ 同1Cのとおり。
D´ 同1Dのとおり
E´ 同1Eのとおり。
三 イ号ないしニ号意匠の構成
イ号ないしニ号意匠の図面であることに争いのない別紙第一ないし第四物件目録記載のイ号ないしニ号図面及びそれぞれイ号ないしニ号物件であることに争いのない検甲第一ないし第四号証によれば、イ号ないしニ号意匠の構成は、次のとおりであると認めるのが相当である。
a´ 被告の主張2aのとおり。
b´ 同2bのとおり。
c´ 同2cのとおり。
d´ 同2dのとおり。
e´ 同2eのとおり
f´ 同2fのとおり。
g´ 同2gのとおり
四 ホ号ないしト号意匠の構成
ホ号ないしト号意匠の図面であることに争いのない別紙第五ないし第七物件目録記載のホ号ないしト号図面、それぞれホ号及びヘ号物件であることに争いのない検甲第五及び第六号証並びに弁論の全趣旨によれば、ホ号ないしト号意匠の構成は次のとおりであると認めるのが相当である。
a´ 被告の主張3aのとおり。
b´ 同3bのとおり。
c´ 同3cのとおり。
d´ 同3dのとおり。
e´ 同3eのとおり。
f´ 同3fのとおり。
五 要部
1 本件登録意匠の構成A´について
本件登録意匠に係る物品は食品用蓋物であるが、いずれも成立に争いのない乙第一、第三、第四号証、第六ないし第一七号証、第三〇及び第三一号証並びに乙第一号証の添付写真の復元写真であることにつき争いのない乙第二号証に開示された容器は、いずれも食品用蓋物として使用可能な容器であると認められるところ、本件登録意匠の構成A´のうち、<1>全体形状を矩形にした容器体1と蓋体2とからなるとの点は、右乙第一ないし第四号証、第七ないし第一七号証、第三〇及び第三一号証に開示された本件登録意匠の出願前に公知の構成であり、同じく、<2>蓋体2の周囲を不透明の額縁3として形成するとともに、該額縁3の中に段落状に透明窓4を形成する点は、右乙第一ないし第三号証及び第七ないし第九号証に開示された公知の構成であり、<3>蓋体2と容器体1を長手二辺において横長状の引つ掛け具5により係止させてなる点も、右乙第一ないし第四号証、第一一ないし第一七号証、第三〇及び第三一号証に開示された公知の構成であり、また、右<1>ないし<3>を組み合わせたこと自体には特に新規で創作的な点を見いだすことはできないから、結局、本件登録意匠の構成A´は公知意匠の寄せ集めにすぎず、本件登録意匠の要部ということはできない。
2 同B´について
前掲乙第一ないし第三号証及び第七ないし第九号証に照らせば、額縁3と透明窓4の幅寸法の比に関する構成B´も、特に新規な構成とみることはできないから、本件登録意匠の要部ということはできない。
3 同C´について
本件登録意匠における係止リブ6は、とりたてて特徴的な形状を有しているわけではなく、かつ、施蓋状態にあつては、引つ掛け具5と嵌合してしまつて目立たないから、特に看者の目を引く部分ではなく、これに関する構成C´も本件登録意匠の要部ということはできない。
4 同D´について
前掲乙第一ないし第四号証、第七ないし第一七号証、第三〇及び第三一号証に照らせば、容器体1の形状に関する構成D´も特に新規な構成とみることはできないから、本件登録意匠の要部ということはできない。
5 同E´について
前掲乙第一ないし第四号証、第一一ないし第一七号証、第三〇及び第三一号証に照らすと、本件登録意匠における引つ掛け具5は、右乙号各証に開示されたものとは異なる新規な形状のものと認められ、かつ看者の注意を引く部分であると認められるから、この点に関する構成E´が本件登録意匠の要部というべきである。
六 対比
1(一) そこで、本件登録意匠の要部である構成E´とイ号ないしニ号意匠の構成e´を対比すると、本件登録意匠の引つ掛け具5は、上部が横に細長いT字形をしており、上部の中央にはスリツト9dが、下部の左右には一対の切欠9c、9cが入つているため、全体として複雑な構造であるとの印象を与えるとともに、幅の狭い部分が多いためやや脆弱な感じを抱かせ、さらに、施蓋状態においても、係止リブ6a、6b、6bが覆い隠されないために、すつきりしない印象を拭えず、また耳部9b、9bが上部に位置するために、安定感が悪いという印象を看者に与える。これに対し、イ号ないしニ号意匠の引つ掛け具5は、基本的には、上下に幅のある板片9の上下縁をなす直線と左右のアール部の曲線だけから構成されていて、また、上下左右とも対称であり、蓋一三の各(イ)のないし体2の額縁3の口縁部3aとよく調和しており、しかも施蓋状態では板片9と軸受片10が連続面を形成し、係止リブは全く外部から見えないのであり、その結果、より洗練された、シンプルでバランスのとれたすつきりした美観を呈し、また、丈夫そうな印象を与えるものである。
(二) その余の構成を含めて、本件登録意匠とイ号ないしニ号意匠を全体的に対比すると、両意匠は、全体形状を矩形にした容器体1と蓋体2とからなり、蓋体2の周囲を不透明の額縁3として形成するとともに、該額縁3の中に段落状に透明窓4を形成した点などは共通するものの、主として、前述した引つ掛け具5の形状の相違により、本件登録意匠は、どちらかといえば、直線を基調とした、頭でつかちでややごてごてした印象を与えるものであるのに対し、イ号ないしニ号意匠は、曲線を強調した、シンプルでバランスのとれたすつきりした美観を呈するものであるから、両意匠は美観を顕著に異にするといわざるをえない。
したがつて、イ号ないしニ号意匠は本件登録意匠に類似しない。
2 ホ号ないしト号意匠は、容器体1を深型に形成したものであるため、イ号ないしニ号意匠に比べると幾分スマートさを欠くきらいはあるが、本件登録意匠との対比の結果は、イ号ないしニ号意匠の場合と特に異なるところはなく、やはり本件登録意匠に類似しない。
七 以上のとおりであるから、本件意匠権の侵害を理由とする原告の本訴請求はいずれも理由がないから棄却する。
〔編註その一〕 本件における当事者の主張は左のとおりである。
一 請求原因
1 原告は次の意匠権(以下、「本件意匠権」といい、これに係る意匠を「本件登録意匠」という。)を有している。
意匠に係る物品 食品用蓋物
登録番号 第六七〇八七〇号
出願日 昭和五八年一一月五日
登録日 昭和六〇年一〇月九日
登録意匠 別添意匠公報(一)のとおり
なお、本件登録意匠には次の類似意匠登録第一号が存在する。
意匠に係る物品 食品用蓋物
出願日 昭和五八年一一月五日
登録日 昭和六〇年一〇月九日
登録意匠 別添意匠公報(二)のとおり
2 本件登録意匠の構成
本件登録意匠の構成は、別紙意匠公報(一)(以下、「本件公報」という。)に示すとおりであり、その特徴は、全体形状を矩形にし、蓋体の周囲を不透明の縁として形成するとともに、前記の縁の中に段落状に透明窓を形成し、かつ蓋体と容器体を長手二辺において横長状の引つ掛け具により係止させた点にある。
本件登録意匠の特徴部分は前記の形状にあるが、さらに細部まで観察すると、前記引つ掛け具は、容器体の上部に回動自在として取り付けられており、蓋に突出形成した突起に係脱することにより、蓋体と本体を着脱させるようになつている。
3 被告は、昭和六二年一月五日から、別紙第一ないし第七物件目録記載の食品用蓋物(以下、それぞれ「イ号ないしト号物件」といい、これらに係る意匠をそれぞれ「イ号ないしト号意匠」という。)を業として製造、販売している。
4 イ号ないしト号意匠の構成は、別紙第一ないし第七物件目録のイ号ないしト号図面に示すとおりであり、その特徴は、全体形状を矩形にし、蓋体の周囲を不透明の縁として形成するとともに、前記の縁の中に段落状に透明窓を形成し、かつ蓋体と容器体を長手二辺において横長状の引つ掛け具により係止させた点にある。
イ号ないしト号意匠の特徴部分は前記の形状にあるが、さらに細部まで観察すると、前記引つ掛け具は、両端を円弧状に形成し、蓋体と容器体を着脱自在に係止させている。
イ号ないしニ号意匠は、容器体を浅く形成した浅型で、ホ号ないしト号意匠は、容器体を深く形成した深型である。
なお、イ号ないしニ号物件においては、容器体の中に衝立状の仕切具が入れられている。
5 対比
本件登録意匠及びイ号ないしト号意匠の特徴部分は、いずれも、全体形状を矩形にし、蓋体の周囲を不透明の縁として形成するとともに、前記の縁の中に段落状に透明窓を形成し、かつ蓋体と容器体を長手二辺において横長状の引つ掛け具により係止させた点にあるから、本件登録意匠とイ号ないしト号意匠は類似する。
特に、蓋体の周囲を不透明の縁として形成するとともに前記の縁の中に段落状に透明窓を形成した点は、この種物品の使用者にとつて最も目につきやすく、かつ注目される部分であり、この点を共通にすることは、本件登録意匠とイ号ないしト号意匠が類似することの重要な根拠になる。
なお、本件登録意匠とイ号ないしト号意匠の間には、引つ掛け具の具体的形状において差異があるが、この差異は部分的なものであり、両者が非類似であることの根拠にはならない。
また、イ号ないしニ号物件における仕切具は、付随的に容器体内に挿入されているものであり、意匠の類否判断の対象から除外されるべきものである。
6 したがつて、被告がイ号ないしト号物件を業として製造、販売する行為は原告の本件意匠権を侵害するものである。
7 よつて、原告は被告に対し、本件意匠権の侵害行為の差止め及び侵害物件の廃棄を求める。
二 請求原因に対する認否
1 請求原因1の事実は認める。
2 同2のうち、本件登録意匠の構成が原告主張の構成を含んでいることは認めるが、その余は争う。
3 同3のうち、被告がイ号ないしト号物件を業として製造、販売している事実は認める。
4 同4のうち、イ号ないしト号意匠の構成が別紙第一ないし第七物件目録のイ号ないしト号図面に示すとおりであり、原告主張の構成を含んでいることは認めるが、その余は争う。
5 同5及び6は争う。
三 被告の主張
1 本件登録意匠の構成
本件登録意匠の構成は次のとおりである(以下の番号及び記号については別紙説明図(一)ないし(四)参照。)。
A 全体形状を矩形にした容器体1と蓋体2とからなり、蓋体2の周囲を不透明の額縁3として形成するとともに、該額縁3の中に段落状に透明窓4を形成し、かつ蓋体2と容器体1を長手二辺において横長状の引つ掛け具5により係止させてなる。
B 蓋体2は、幅方向(平面図AlA線方向)に関して、額縁3の幅寸法Daに対する透明窓4の幅寸法Dbの比を約一対三・一に構成するとともに、長手方向(AlA線に直交する方向)に関して、額縁3の幅寸法Laに対する透明窓4の幅寸法Lbの比を約一対五・二六に構成している。
C 蓋体2は、額縁3の外周縁を下向きに折曲した口縁部3aを形成し、長手二辺における口縁部3aの外側面に係止リブを突設している。この係止リブは、中央に位置する長い係止リブ6aとこの長い係止リブ6a両端の延長線上に間隔をおいて位置する短い係止リブ6b、6bとからなる。
D 容器体1は、矩形の底壁7から周壁8を起立して形成した上部開口の箱形であり、上部開口縁に周壁8を外周側に折曲したフランジ8aを形成しており、幅方向(正面図視方向)に関して、周壁8の高さ寸法Haに対する底壁7の幅寸法Dcの比を約一対一.七一に構成するとともに・長手方向(側面図視方向)に関して、周壁8の高さ寸法Haに対する底壁7の幅寸法Lcの比を約一対二・八五に構成している。
E 引つ掛け具5は、容器体1の長手二辺においてフランジ8aの下側に枢支された概ねT形状の板片9からなる。
すなわち、この板片9は、基部9aに対して、上部より両端に突出する一対の耳部9b、9bを一体に有する。
この板片9の下縁の両端位置寄りには一対の切欠9c、9cが形成され、両切欠9c、9cの間でやや上方に偏位した位置に細長いスリツト9dを形成している。前記切欠9c、9cは、容器体1のフランジ8aの下側において外周方向に突設された一対の軸受片8bに嵌合され、上下方向に反転自在に枢支されている。したがつて、蓋体を取り除いて容器体1の上部を開口せしめた状態では、板片9は容器体1の両側において下向きに垂れ下がり状態となる。
容器体1の上部開口を蓋体2により施蓋し、引つ掛け具5により蓋体2を係止するに際しては、板片9を上向きに起立するように回動する。そうすると、板片9の一対の耳部9b、9bが蓋体2の短い係止リブ6b、6bの上に乗り、細長いスリツト9dが蓋体2の長い係止リブ6aの上に乗る。
この状態で、板片9の頂部が蓋体2の頂部よりも上方に突出している。
2 イ号ないしニ号意匠の構成
イ号ないしニ号意匠の構成は次のとおりである。
a 全体形状を矩形にした容器体1と蓋体2とからなり、蓋体2の周囲を不透明の額縁3として形成するとともに、該額縁3の中に段落状に透明窓4を形成し、かつ蓋体2と容器体1を長手二辺において横長状の引つ掛け具5により係止させてなる。
b 蓋体2は、幅方向(平面図A―A線方向)に関して、額縁3の幅寸法Daに対する透明窓4の幅寸法Dbの比を、イ号の場合で約一対七・五三、ロ号の場合で約一対六・八七、ハ号の場合で約一対五・八、ニ号の場合で約一対五に構成している。
また、長手方向(A―A線に直交する方向)に関して、額縁3の幅寸法Laに対する透明窓4の幅寸法Lbの比を、イ号の場合で約一対一一・四、ロ号の場合で約一対一〇、ハ号の場合で約一対八・七三、ニ号の場合で約一対七・四七に構成している。
c 蓋体2は、額縁3の外周縁を下向きに折曲した口縁部3aを形成し、長手二辺における口縁部3aの外側面に引つ掛け具5を枢支している。
d 容器体1は、矩形の底壁7から周壁8を起立して形成した上部開口の箱形であり、上部開口縁に周壁8を外周側に折曲したフランジ8aを形成しており、幅方向(正面図視方向)に関して、周壁8の高さ寸法Haに対する底壁7の幅寸法Dcの比を、イ号の場合で約一対三・八三、ロ号の場合で約一対三・四四、ハ号の場合で約一対三・〇、ニ号の場合で約一対二.六四に構成している。
また、長手方向(側面図視方向)に関して、周壁8の高さ寸法Haに対する底壁7の幅寸法Lcの比を、イ号の場合で約一対五・三九、ロ号の場合で約一対四・八九、ハ号の場合で約一対四・三三、ニ号の場合で約一対三・七八に構成している。
すなわち、容器体1は浅型である。
e 引つ掛け具5は、蓋体2の長手二辺において口縁部3aの側部に一体成形された細長い軸受片10に枢支された板片9からなる。すなわち、この板片9は、両端を半円状のアール部9e、9eに形成するとともに、上下縁にも肉厚方向に半円状となるアール部9f、9fを形成し、上縁中央部に形成した細長い切欠9gを前記軸受片10に嵌合され、上下方向に反転自在に枢支されている。なお、板片9の内側面の下縁寄り部分には係止リブ9hが突設されている。
軸受片10は、断面半円状に形成され・板片9の上縁アール部9fに合致するアール部10aを形成しており、したがつて、板片9と軸受片10とは、アール部9f、10aの連続面を形成する。
蓋体2を容器体1の上部から取り外した状態で、板片9は蓋体2の口縁部3aに対して下向きに垂れ下がり状態となる。
容器体1の上部開口を蓋体2により施蓋し、引つ掛け具5により蓋体2を係止するに際しては、板片9を外側にやや開き気味に回動した状態から下向きに垂下するように回動する。そうすると、板片9の係止リブ9hが容器体1のフランジ8aの下側に入り込む。この状態で、板片9及び軸受片10の頂部は蓋体2の頂部よりも下方に位置している。
f 色彩について、<1>容器体1と蓋体2をともに白色に着色した単一色のものと、<2>容器体1を白色、蓋体2を朱色に着色した色分け二色のものとがある。
g 容器体1の中には衝立状の仕切具11が装入されており、該仕切具11は、容器体1を蓋体2により施蓋した状態で透明窓4を介して外部より視認できる。
3 ホ号ないしト号意匠の構成
ホ号ないしト号意匠の構成は次のとおりである。
a 前項aに同じ。
b 蓋体2は、幅方向(平面図A―A線方向)に関して、額縁3の幅寸法Daに対する透明窓4の幅寸法Dbの比を、ホ号の場合で約一対六・八七、ヘ号の場合で約一対五・八、ト号の場合で約一対五に構成している。
また、長手方向(A―A線に直交する方向)に関して、額縁3の幅寸法Laに対する透明窓4の幅寸法Lbの比を、ホ号の場合で約一対一〇、ヘ号の場合で約一対八・七三、ト号の場合で約一対七・四七に構成している。
c 前項cに同じ。
d 容器体1は、矩形の底壁7から周壁8を起立して形成した上部開口の箱形であり、上部開口縁に周壁8を外周側に折曲したフランジ8aを形成しており、幅方向(正面図視方向)に関して、周壁8の高さ寸法Haに対する底壁7の幅寸法Dcの比を、ホ号の場合で約一対二・四三、ヘ号の場合で約一対二・一八、ト号の場合で約一対一・八六に構成している。
また、長手方向(側面図視方向)に関して、周壁8の高さ寸法Haに対する底壁7の幅寸法Lcの比を、ホ号の場合で約一対三・四五、ヘ号の場合で約一対三・〇八、ト号の場合で約一対二・六七に構成している。
すなわち、容器体1は深型である。
e 前項eに同じ。
f 前項fに同じ。
4 公知意匠と要部
(一) 次に述べるとおり、本件登録意匠の構成AないしEのうち、A及びDの点は本件登録意匠の出願前から公知の構成であり、特にAの点は極めてありふれた周知のものであり、これらの点に要部を認めることができない反面、B、C、Eの点において新規で創作的な美観があると考えられるから、これらの点に要部を見いだすことができる。
(二) 本件登録意匠の構成Aに関する公知意匠は次のとおりである。
(1) 本件登録意匠の構成Aの全てを具備しているもの
乙第一号証(登録第六〇六二一六号意匠公報)
乙第三号証(実開昭五七―一八三二五七号公報)
乙第四号証(実公昭五八―一二七五七号公報)
(2) 本件登録意匠の構成Aのうち、全体形状を矩形とした点を除く全ての構成を具備しているもの
乙第五号証(実公昭五八―三三〇八二号公報)
(3) 本件登録意匠の構成Aのうち、蓋体の周囲に膨出する額縁状の縁を形成し、中央に窪み部を形成した点を除く全ての構成を具備しているもの
乙第六号証(実公昭五八―三三〇八三号公報)
(4) 本件登録意匠の構成Aのうち、蓋体と容器体を長手二辺において横長状の引つ掛け具により係止させた点を除く全ての構成を具備しているもの
乙第七号証(実公昭三七―二六一四九号公報)
乙第八号証(実公昭三八―三〇七九号公報)
乙第九号証(実公昭三四―七七六号公報)
乙第一〇号証(実公昭三五―八二七五号公報)
(5) 本件登録意匠の構成Aのうち、額縁状の縁を不透明とする一方、中央窪み部を透明とした点を除く全ての構成を具備しているもの
乙第一一号証(実開昭五八―二七一五三号公報)
乙第一二号証(実開昭五六―九四七五三号公報)
乙第一三号証(実開昭五六―一三五四六七号公報)
乙第一四号証(実開昭五六―一四七二五九号公報)
乙第一五号証(実開昭五七―六四四四五号公報)
乙第一六号証(実開昭五八―九五七号公報)
乙第一七号証(実開昭五八―一九九四七号公報)
(6) 本件登録意匠の構成Aのうち、蓋体の上部周囲に幅広の不透明な額縁を設け、該額縁に囲まれた中央窪み部に透明窓を設けた点を具備しているもの
乙第一八号証(実公昭二八―八三八六号公報)
乙第一九号証(実公昭二八―八六八七号公報)
乙第二〇号証(実公昭三〇―九七九一号公報)
乙第二一号証(実公昭三七―六九八二号公報)
乙第二二号証(実公昭三七―二九四六四号公報)
乙第二三号証(実公昭五二―一〇六五八号公報)
乙第二四号証(実開昭五六―五三〇一九号公報)
乙第二五号証(実開昭五六―一〇〇三二三号公報)
乙第二六号証(実開昭五六―一〇三四一一号公報)
乙第二七号証(実公昭五七―二〇五二五号公報)
乙第二八号証(米国特許二〇二九六〇三号明細書図面)
乙第二九号証(米国特許一九九一四二七号明細書図面)
(7) 本件登録意匠の構成Aのうち、額縁の中の段落部が透明である点以外の全ての構成を具備しているもの
乙第三〇号証(実開昭五六―一四七二六〇号公報)
乙第三一号証(登録第五四九八四六号の類似一号意匠公報)
(三) 本件登録意匠の構成Dに関する公知意匠は次のとおりである。
乙第一ないし第四号証、第一一ないし第一七号証
5 本件登録意匠とイ号ないしニ号意匠の対比
(一) イ号ないしニ号意匠は、その構成aの点において本件登録意匠の構成Aと共通するが、この共通点をもつて、
イ号ないしニ号意匠が本件登録意匠に類似すると判断することはできない。
けだし、右の共通点は、従来公知の意匠に極めてありふれた構成にすぎず、これが本件登録意匠の要部と認めることはできないからである。
(二) 本件登録意匠の構成Bとイ号ないしニ号意匠の構成bを対比すると、本件登録意匠(及び類似意匠)が透明窓4の面積に比較して額縁3の幅を幅広のものに構成しているのに対して、イ号ないしニ号意匠は、全て、透明窓4の面積に比較して額縁3の幅を幅狭の細いものに構成している。
したがつて、本件登録意匠(及び類似意匠)がガツシリとした安定感のある美観を基調とするのに対して、イ号ないしニ号意匠は、スリムで繊細な美観を基調とする点において相違する。
(三) 本件登録意匠の構成Cとイ号ないしニ号意匠の構成cを対比すると、本件登録意匠が蓋体の長手二辺における口縁部3aの外側面に、中央に位置する長い係止リブ6aと、この長い係止リブ6aの両端の延長線上に間隔をおいて位置する短い係止リブ6b、6bとを突設しているのに対して、イ号ないしニ号意匠は、蓋体2の口縁部3aに右のような係止リブ群を有せず、この点で相違する。
一方、本件登録意匠が後述する構成Eのように引つ掛け具5を容器体1に設けているのに対して、イ号ないしニ号意匠は、蓋体2の長手二辺における口縁部3aの外側面に引つ掛け具5を枢支しており、この点で相違する。
したがつて、本件登録意匠が蓋体2の両側縁に断続する係止リブ6a及び6b、6bを張り出し状に突出し、これにより蓋体2の両側縁に荒い凹凸のあるやや醜い醜美を呈するのに対して、イ号ないしニ号意匠は、このような醜美とは異なり、スマートな美観を呈する点において相違する。
(四) 本件登録意匠の構成Dとイ号ないしニ号意匠の構成dを対比すると、本件登録意匠(及び類似意匠)が底壁7の幅寸法Dc及びLcに対して周壁8を背の高いもの、換言すれば、容器体1を深型のものに構成しているのに対して、イ号ないしニ号意匠は、底壁7の幅寸法Dc及びLcに対して周壁8を背の低いもの、換言すれば、容器体1を浅型のものに構成しており、この点で相違する。
したがつて、本件登録意匠(及び類似意匠)が、(二)で説明したガツシリとした安定感のある美観を深型の容器体によりさらに強調しているのに対して、イ号ないしニ号意匠は、(二)で説明したスリムで繊細な美観を浅型の容器体によりさらに強調しており、相互に美観を顕著に相違している。
(五) 本件登録意匠の構成Eとイ号ないしニ号意匠の構成eを対比すると、(引つ掛け具の取付位置に基づく形態)
本件登録意匠(及び類似意匠)が引つ掛け具5を容器体1に設けているのに対して、イ号ないしニ号意匠は、引つ掛け具5を容器体1には設けておらず(蓋体2に設けている。)、この点で相違する。
したがつて、本件登録意匠が引つ掛け具5により(特に後述するようにその複雑かつグロテスクな形状により)
容器体1の外観にいかつい重厚な美観を与えるのに対して、イ号ないしニ号意匠は、容器体1を平凡でシンプルな美観を呈するものとしており、この点で相互に美観が相違している。
(引つ掛け具の形状)
また、本件登録意匠(及び類似意匠)の容器体に設けられた引つ掛け具5と、イ号ないしニ号意匠の蓋体に設けられた引つ掛け具5とを対比してみても、本件登録意匠(及び類似意匠)の引つ掛け具5がそれを構成する板片9の形状を、基部9aから一対の耳部9b、9bを突出せしめた背の低いT形状となし、さらに、一対の切欠9c、9cや、細長いスリツト9dを形成した複雑形状とし、グロテスクな美観を呈するのに対して、イ号ないしニ号意匠の引つ掛け具5は、それを構成する板片9を極めて単純でシンプルな形状に形成し、スマートな美観を基調とするものであり、しかも、板片9に軸受片10のアール部10aに合致するアール部9eを形成するとともに、両端にも半円状のアール部9e、9eを形成することにより、該板片9を軸受片10とともに蓋体2に融合した一体感を呈し、あたかも板片9が蓋体2の翼片あるいは耳片をなすような外観を呈することによりスマートな美観を強調するものであつて、本件登録意匠(及び類似意匠)の美観とは相違している。
(引つ掛け具を解放したときの形態)
本件登録意匠(及び類似意匠)は蓋体2を取り除いて容器体1の上部を開口せしめた状態において、板片9は容器体1側にあり、該容器体1の両側にて下向きに垂れ下がり状態となる。このとき、板片9は、上下方向に反転自在であるから、該板片9を容器体1の開口縁よりも上方に突出するように起立回動すれば、この板片9が容器体1の把手の機能を具備しうる。
これに対して、イ号ないしニ号意匠は、蓋体2を容器体1の上部から取り除いた状態において、板片9は蓋体2側にあり、前述したように蓋体2と一体の翼片あるいは耳片をなし、該蓋体2の両側にて下向きに垂れ下がり状態となる。
したがつて、蓋体2を取り除いた状態における容器体1の形態から受ける美観について、本件登録意匠(及び類似意匠)が引つ掛け具5の存在により容器体1から重々しい美観を看取せしめられるのに対して、イ号ないしニ号意匠は、平凡でシンプルな容器体1から軽快でスマートな美観を看取せしめられ、このように美観が相違する。
一方、容器体1から取り外された蓋体2の形態から受ける美観についても、本件登録意匠(及び類似意匠)が蓋体2の両側縁に断続して張り出し状に突出された係止リブ6a及び6b、6bにより蓋体2の両側縁に荒い凹凸のあるやや醜い醜美を呈するのに対して、イ号ないしニ号意匠は、引つ掛け具5が蓋体2と一体感のある翼片あるいは耳片をなしており、スマートな美観を呈する点において相違する。
(引つ掛け具5の係脱時の形態)
本件登録意匠(及び類似意匠)において、容器体1の上部開口を蓋体2により施蓋し、引つ掛け具5により蓋体2を係止するに際しては、板片9を上向きに起立するように回動する。そうすると、板片9の一対の耳部9b、9bが蓋体2の短い係止リブ6b、6bの上に乗り、細長いスリツト9dが蓋体2の長い係止リブ6aの上に乗る。この状態で、板片9の頂部が蓋体2の頂部よりも上方に突出する。
これに対して、イ号ないしニ号意匠において、容器体1の上部開口を蓋体2により施蓋し、引つ掛け具5により蓋体2を係止するに際しては、板片9を外側にやや開き気味に回動した状態から下向きに垂下するように回動する。そうすると、板片9の係止リブ9hが容器体1のフランジ8aの下側に入り込む。この状態で、板片9及び軸受片10の頂部は蓋体2の頂部よりも下方に位置している。
したがつて、使用者は容器を眼下に見おろして作業をするのが通常であるから、本件登録意匠(及び類似意匠)では、引つ掛け具5を起立回動して板片9を蓋体2に係止せしめるに際し、前記耳部9b、9bと短い係止リブ6b、6bとの係止状態、また、前記スリツト9dと長い係止リブ6aとの係止状態を観察しながら作業をすることができる。また、作業終了後も、右の係止状態を容易に視認することができるため、右の複雑な係止機構の形態が看者の脳裏に焼き付き、前述したような、いかついグロテスクな醜美が印象として残るものである。これに対して、イ号ないしニ号意匠にあつては、引つ掛け具5により板片9を容器体1に係止せしめるに際し、係止リブ9hとフランジ8aとの係止部分は看者によりほとんど視認しえず、使用者は専ら触覚によつて係止作業を行うものであり、しかも、前述したように引つ掛け具5が蓋体2に融合したシンプルな形状とされているので、意匠的には優れた美観を呈する。
また、使い勝手についても、使用者は容器体1を食卓に載置したままの状態で、蓋体2を把持してこれを容器体1に施蓋せしめるのが通常であるところ、本件登録意匠(及び類似意匠)の場合、把持した蓋体2を容器体1上に嵌合した後、その把持した手指を蓋体2から容器体1の引つ掛け具5に移しかえなければならない煩雑さがあるのに対して、イ号ないしニ号意匠の場合、蓋体2の引つ掛け具5を把持することにより該蓋体2を容器体1上に嵌合した後、その把持した手指を移しかえることなく、引つ掛け具5を把持したまま係止作業を行うことができる便利さがあり、この便利さにより前述したスマートでシンプルな美観を一層強調する。
(六) 本件登録意匠(及び類似意匠)が無色・無模様であるのに対して、イ号ないしニ号意匠は、構成fにおいて、着色を有するものであるから、この点でも相違する。
イ号ないしニ号意匠は、<1>容器体1と蓋体2をともに白色に着色した単一色のものと、<2>容器体1を白色、蓋体2を朱色に着色した色分け二色のものとがあるが、なかんずく、<2>にあつては蓋体2と容器体1とによる色分け模様に基づいてあか抜けしたスマートな美観を一層強調し、本件登録意匠(及び類似意匠)に見られない美観を呈している。
(七) 本件登録意匠(及び類似意匠)が容器体1内を無装備の空状に形成しているのに対して、イ号ないしニ号意匠は、構成gにおいて、容器体1の中に衝立状の仕切具11を装備している点で相違する。
しかして、右の仕切具11は、単にイ号ないしニ号意匠の内部構造を構成するに過ぎないものではなく、容器体1から蓋体2を開放したとき容器体1の内部を二分するよう視認され、また、容器体1を蓋体2により施蓋した状態でも該蓋体2の透明窓4を介して外部より視認できるものであり、看者をして使い勝手のよい美観を看取せしめることができ、本件登録意匠(及び類似意匠)にみられない美観を呈している。
(八) 要するに、イ号ないしニ号意匠は、本件登録意匠の要部とされた構成BないしEを備えておらず、これと全く異なる構成bないしeを具備し、さらに、本件登録意匠には存在しない構成f及びgを具備したものである。
その結果、イ号ないしニ号意匠は、本件登録意匠とは美観を顕著に異にし、本件登録意匠と非類似である。
6 本件登録意匠とホ号ないしト号意匠の対比
(一) ホ号ないしト号意匠は、その構成aの点において本件登録意匠の構成Aと共通するが、この共通点をもつて、ホ号ないしト号意匠が本件登録意匠に類似すると判断することはできない。
この点は前項(一)で述べたところと同様である。
(二) ホ号ないしト号意匠は、その構成b、c、eにおいて本件登録意匠の構成B、C、Eと著しく相違する。
この点は前項(二)、(三)、(五)で述べたところと同様である。
(三) ホ号ないしト号意匠は、その構成dにおいて、容器を深型のものとしており、本件登録意匠の構成Dと共通する。
しかしながら、容器を深型とした点は従来ありふれた公知の構成であり、何ら本件登録意匠の要部と認めることはできないから、この共通点をもつて、ホ号ないしト号意匠が本件登録意匠と類似であるということはできない。
(四) ホ号ないしト号意匠は、本件登録意匠にみられない独自の構成fを有する。
この点は前項(六)で述べたところと同様である。
(五) 要するに、ホ号ないしト号意匠は、本件登録意匠の要部とされた構成B、C、Eを備えておらず、これと全く異なる構成b、c、eを具備し、さらに、本件登録意匠には存在しない構成fを具備したものである。
その結果、ホ号ないしト号意匠は、本件登録意匠とは美観を顕著に異にし、本件登録意匠と非類似である。
四 被告の主張に対する認否
全て争う。
〔編註その二〕 本件に関するイ号図面は左のとおりである。
第一物件目録
イ号図面
<省略>
(以下省略)
〔編註その三〕 本判決添付の説明図は左のとおりである。
説明図(一)
本件登録意匠図面
<省略>
<省略>
説明図(二)
本件類似意匠図面
<省略>
<省略>
〔編註その四〕 本判決添付の登録意匠の内容は左のとおりである。
意匠公報(一)
670870 意願 昭58―48008 出願 昭58(1983)11月5日
登録 昭60(1985)10月9日
意匠に係る物品 食品用蓋物
説明 本物品の蓋体の中央窪み部は透明である。背面図は正面図と、左側面図は右側面図と同一にあらわれる。
<省略>
<省略>
意匠公報(二)
670870の類似1 意願 昭58―48009 出願 昭58(1983)11月5日
登録 昭60(1985)10月9日 略
意匠に係る物品 食品用蓋物
説明 本物品の蓋体の中央窪み部は透明である。背面図は正面図と、左側面図は右側面図と同一にあらわれる。
(以下省略)