大阪地方裁判所 昭和62年(ワ)72号 判決
一 請求原因1ないし4の事実は、当事者間に争いがない。
右事実によれば、被告は原告の有する本件各商標権を侵害したものであるから、これによつて原告が被つた損害を賠償する義務がある。
二 そこで、損害について判断する。
1 被告の利益相当の損害
弁論の全趣旨により真正に成立したものと認める甲第五号証及び弁論の全趣旨によれば、原告は日本国内において、原告製品の修理のために特定の修理業者に本件各標章を附した生地を販売していることが認められるから、被告の前記本件各商標権侵害行為により営業上の損害を被つたものというべきである。そして、成立に争いのない甲第六、第七号証(甲第六号証中後記認定に反する部分を除く。)によれば、被告はビニール原反の印刷加工を業としているところ、通常の場合一メートル当り二五ないし三〇円の印刷加工代金で仕事をしているが、本件の偽ルイ・ヴイトン生地については一メートル当たり八〇円の印刷加工代金を得ていたことが認められるから、被告は本件各商標権侵害行為により少なくとも一メートル当たり五〇円の利益を得たものと推認するのが相当である。被告が印刷加工した偽ルイ・ヴイトン生地は前記のとおり六〇、三〇〇メートルであるから、被告が得た利益は合計三〇一万五〇〇〇円になる。前掲甲第六号証中には、被告が得た実質利益は印刷加工代金の三割位であるとの供述記載部分があるが、その具体的根拠は明らかではなく、にわかに措信し難いし、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。
したがつて、商標法三八条一項により、右三〇一万五〇〇〇円が原告の被つた財産的損害の額と推定される。
2 信用毀損による無形損害
前掲甲第六、第七号証及び弁論の全趣旨によれば、請求原因5(二)の事実を認めることができ、右事実によれば、原告は被告の本件各商標権侵害行為により無形損害をも被つたものというべきであり、これを金銭に評価すれば一〇〇万円が相当である。
3 弁護士費用
弁論の全趣旨によれば、原告は本件訴訟の提起、追行を原告代理人らに委任し、相当額の報酬の支払を約したことが認められるところ、本件事案の内容、認容額等を勘案すれば、被告に賠償を求め得る弁護士費用として原告主張の四〇万円は相当である。
三 以上によれば、被告に対し、商標権侵害による不法行為に基づく損害合計金四四一万五〇〇〇円及びこれに対する不法行為の後で本件訴状送達の日の翌日であることが記録上明らかな昭和六二年一月一四日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める原告の請求は理由がある。
〔編註その一〕 本件における当事者の主張は左のとおりである。
第一 当事者の求めた裁判
一 請求の趣旨
主文同旨
二 請求の趣旨に対する答弁
原告の請求を棄却する。
第二 当事者の主張
一 請求原因
1 原告は、かばん類、袋物等の製造、販売を業とするフランス法人である。
2 原告は、別紙目録(一)、(二)記載の各標章(以下「本件各標章」という。)につき、それぞれ左の(一)、(二)記載の商標権(以下「本件各商標権」という。)を有している。
(一) 登録番号 第一四四八八一四号
出願日 昭和五二年五月二〇日
公告日 昭和五五年五月一三日
商品の区分 第一六類
指定商品 織物、その他本類に属する商品
登録日 昭和五五年一二月二五日
連合商標登録番号 第一四四八八一五号
(二) 登録番号 第一四四八八一五号
連合商標登録番号 第一四四八八一四号
その余は(一)に同じ。
3 本件各標章は、原告が製造、販売する商品の表示として、遅くとも昭和五二年当初には日本において広く認識されるものとなつていた。
4 被告の商標権侵害行為及び不正競争行為
被告は、昭和五七年一〇月から同五八年九月までの間に、本件各標章と同一の標章を使用したビニール生地(以下「偽ルイ・ヴイトン生地」という。)六〇、三〇〇メートルを印刷加工し、少なくとも加工代金四八二万四〇〇〇円を得て、訴外金永沢及び同金永忠に引渡し、もつて原告の本件各商標権を侵害するとともに、故意に原告の商品と混同を生じさせ、原告の営業上の利益を害した。
5 原告の損害
(一) 被告の利益相当の損害 三〇一万五〇〇〇円
原告は、日本国内においては特定の修理業者に対し原告製品の修理のためにのみ生地を販売して利益を得ているから、被告の前項記載の行為により損害を被つた。被告は、前項記載の行為により、少なくとも三〇一万五〇〇〇円を下らない利益をあげたから、商標法三八条一項又はその類推適用により、右利益の額が原告の被つた財産的損害の額と推定される。
(二) 信用毀損による無形損害
原告は、一八五四年に世界で最初の旅行かばん店としてパリに設立されて以来、極めて堅牢なフアツシヨン性に富む高級なかばん類、袋物類を販売し、名声を博してきた。原告が日本において販売する商品は、自らがフランスにおいて製造しその日本における子会社が輸入したもののみであり、これを子会社の直営店と特約店のみで販売して、品質の保持管理に努め、デザイン変更や安売りをしないことによつて、高級品のイメージを確保し、本件各標章の信用維持に努めてきた。しかるに、被告が前記のとおり偽ルイ・ヴイトン生地を印刷加工したことにより、これを材料として原告商品の酷似的模倣商品が製造され、安売りされ、原告はその信用を毀損された。原告は、被告の右信用毀損行為によつて、前記(一)の財産的損害以外に多大の無形損害を被つた。右無形損害の額は一〇〇万円を下らない。
(三) 弁護士費用 四〇万円
原告は、本件紛争解決のため代理人弁護士に対し訴訟委任を行い、その報酬として四〇万円の支払を約した。
(四) 合計 四四一万五〇〇〇円
6 よつて、原告は被告に対し、商標権侵害又は不正競争行為による損害賠償として金四四一万五〇〇〇円及びこれに対する不法行為後で訴状送達の日の翌日である昭和六二年一月一四日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。
二 請求原因に対する認否
請求原因1ないし4の事実は認めるが、同5の事実は否認する。