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大阪地方裁判所 昭和62年(行ウ)64号 判決 1989年1月26日

主文

一  被告が原告に対して昭和六一年一〇月三〇日付でした過少申告加算税の賦課決定処分を取消す。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用はこれを二分し、その一を原告、その余を被告の各負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  主文の第一項同旨

2  被告が昭和六一年一〇月一六日付で原告に対してした原告の物品税の還付請求申告に対する更正処分を取消す。

3  訴訟費用は被告の負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告の請求をいずれも棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

第二  当事者の主張

一  請求原因

1  原告及び破産会社

(一) 破産者株式会社オリエントダイヤモンドカンパニー(以下「破産会社」という。)は、昭和五九年一月二〇日、目的を書画・骨董品の輸入及び販売、ゴルフ会員権の仲介及び販売代理店等、本店所在地を大阪市西区阿波座一丁目一五番一五号、商号を新日本債券株式会社とする株式会社をとして設立され、同年八月一日、本店所在地を同市淀川区宮原一丁目一九番七号に移転し、同年一一月一日、商号を株式会社オリエントダイヤモンドカンパニーと変更した。

(二) 破産会社は、昭和六〇年八月二一日、大阪地方裁判所により破産宣告を受け、原告が破産管財人に選任された。

2  本件更正処分及び本件加算税賦課決定処分の存在

破産会社は、ダイヤモンドを販売したとして、被告に対し、昭和五九年一一月分から昭和六〇年五月分までの物品税につき、別紙の還付金額欄記載の金額を納付すべき税額とする申告(以下「本件各申告」という。)をし、右金額を納付したが、原告は、昭和六一年二月二八日、被告に対し、破産会社のしたダイヤモンドの販売はまったく形式的かつ詐欺的な極めて違法性の強いものであり、物品税法(以下「法」という。)三条一項に規定する小売(以下、単に「小売」という。)に該当しないと主張して更正の請求をした。ところが、被告は、同年五月三〇日、これに対して、請求に係るいずれの月分についても更正をしないことの通知をしたので、原告は、同年九月一七日、被告に対し、予備的に、仮に破産会社のしたダイヤモンドの販売が小売に該当するとしても、破産宣告時にもどし入れがあったとして、別紙の還付金額欄記載の金額を還付を受ける金額とする還付請求申告書(以下「本件還付請求申告書」という。)を提出した(以下「本件還付請求申告」という。)。被告は、同年一〇月一六日、右還付請求申告に係る還付を受ける金額全額を納付すべき税額とする更正処分(以下「本件更正処分」という。)をし、同月三〇日、右更正処分に基づく過少申告加算税の賦課決定処分(以下「本件加算税賦課決定処分」という。)をした。原告は、同年一二月一五日、本件更正処分に対する異議申立を、同月一六日、本件加算税賦課決定処分に対する異議申立をそれぞれしたが、その後右異議申立は、合意により審査請求とみなされ、国税不服審判所長は、昭和六二年六月二五日、右審査請求を棄却する旨の裁決をした(なお、併合審理された前記更正しないことの通知についての審査請求に対しては、昭和六〇年一月から同年五月までの分については、原告の主張どおり破産会社のしたダイヤモンド販売が法三条一項の小売にあたらないとして取消したが、昭和五九年一一月分及び同年一二月分については審査請求を棄却した。)。

3  本件更正処分の違法性

(一) 破産会社の商法の概要

破産会社は、ダイヤモンドの購入を顧客に勧め、顧客がこれに応じると、売却したダイヤモンドを破産会社が賃借して運用すると称して、右ダイヤモンドを破産会社に預けるように勧め、顧客からダイヤモンドの代金の名目で金員を預り、契約期間満了日にダイヤモンドを返還することを約束し、その証拠として顧客に証券を渡す商法を行っていた。右ダイヤモンドの賃料の支払方法には、賃借期間一年につきダイヤモンド価格の一〇パーセントを契約時に売買価格から差引いて受取る方法と、毎月一パーセント(年一二パーセント)ずつ受取る方法の二種類があり、前者をダイヤモンドプラン契約(以下「プラン契約」という。)、後者をダイヤファンド契約(以下「ファンド契約」といい、右契約とプラン契約を併せて「本件各契約」という。)という。

(二) 右(一)の破産会社のダイヤモンド販売の実体からすれば、右販売は小売にあたらないというべきであり、破産会社のダイヤモンド販売が小売に該当するとしてした本件更正処分は違法である。

4  本件加算税賦課決定処分の違法性

(一) 本件更正処分が違法である以上、これに基づいてなされた本件加算税賦課決定処分も違法である。

(二) 仮に本件更正処分が適法であるとしても、本件には、次のとおり、国税通則法(以下「通則法」という。)六五条四項の「正当な理由」がある。

(1) 破産会社のダイヤモンド販売行為は、小売には該当しないものであったので、原告は、昭和六一年二月二八日、その旨主張して更正の請求をした。ところが、被告は、同年五月三〇日、これに対し、更正をしないことの通知をしたので、原告は、異議申立によってこれを争うこととしたが、被告が右処分によって破産会社の行為が小売にあたるとの見解を示したので、これを前提として、右更正の請求についての予備的なものとして本件還付請求申告をしたにすぎない。すなわち、本件還付請求申告は、被告が破産会社のダイヤモンド販売が小売にあたるとの誤った見解を示したため、原告が、小売にあたるとすれば破産宣告時にもどし入れがあったと構成して、行ったものであり、右申告に対してなされた本件更正処分に関して過少申告加算税を賦課することは不当、過酷であり、正義衡平の原則に反する。

(2) また、本件更正処分は還付請求申告に対してなされたものであり、被告は、原告が還付を受ける金額として申告した金額をそのまま更正した税額に充当することができ、本件還付請求申告後の本件更正処分により形式的には過少申告になったとしても、結果として、国にはなんらの損害が生じていない。

5  よって、原告は、被告に対し、本件更正処分及び本件加算税賦課決定処分の取消を求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1(一)、(二)の事実は認める。

2  同2の事実は認める。

3  同3(一)の事実は認める。同3(二)の主張は争う。

4  同4の主張は争う。

三  被告の主張

1  本件更正処分の適法性

(一) 原告は、昭和六一年九月一七日、被告に対し、本件還付請求申告書に還付を受ける金額を二四三二万円と記載して申告した。

(二) 法二八条四項は、返還またはもどし入れの場合の物品税の控除または還付を受けようとする者は、当該申告書に控除または還付を受けようとする物品税額に相当する金額の計算に関する書類として政令で定める書類(以下「計算書」という。)を添付しなければならない旨規定し、法施行令四六条三項は、計算書は当該返還またはもどし入れもしくは移入の事実を証する書類(以下「返還等の事実を証する書類」という。)に基づき記載されたものではなければならない旨規定し、物品税基本通達一三八条では右書類につき次のとおり規定している。

(1) 返品者が返還またはもどし入れの事実を記載した送り状等の書類。

(2) 返還またはもどし入れもしくは移入の際の運送業者がその運送の事実を記載した送り状等の書類。

(3) 返品を受けた者がその事実を記載した書類に、返品者が署名またはなつ印したもの。

(4) 返品者が消費者であって、右(1)ないし(3)の書類が作成されない場合において、返品を受けた者がその返品の事実を記載した書類に返品者が署名またはなつ印をしないことの事情及び事務取扱者氏名を付記したもの。

(三) 被告は、本件還付請求申告書に記載された還付金額が適正なものか否かを確認するため、部下職員に調査にあたらせた。右部下職員は、昭和六一年九月二五日、原告の常置代理人弁護士元井信介に面接して調査を実施した結果、原告は返還等の事実を証する書類を有しておらず、本件還付請求申告書に添付された計算書は、返還等の事実を証する書類に基づき記載されたものではないことを確認した。

(四) 以上のとおり、本件還付請求申告は、返還等の事実を証する書類に基づき記載された計算書が添付された法二八条四項の規定による適法な申告とは認められないものであったため、被告は、昭和六一年一〇月一六日、本件還付請求申告に係る還付を受ける金額二四二二万円全額を納付すべき税額とする本件更正処分をしたものであり、本件更正処分はなんら違法なものではない。

2  本件加算税賦課決定処分の適法性

本件更正処分は、右1のとおり適法であり、また、本件加算税賦課決定処分については、通則法六五条四項に規定する正当な理由がある場合には該当しないので、右賦課決定処分は適法である。

四  被告の主張に対する認否

1(一)  被告の主張1(一)、(二)の事実は認める。

(二)  同1(三)の事実のうち、被告の部下職員が原告の常置代理人弁護士元井信介に面接して調査をしたことは認めるが、その余の事実は否認する。

(三)  同1(四)の事実のうち、被告が、昭和六一年一〇月一六日、本件還付請求申告に係る還付を受ける金額二四三二万円全額を納付すべき税額とする本件更正処分をしたことは認めるが、その主張は争う。

2  同2の主張は争う。

五  原告の主張

破産会社の販売した個々のダイヤモンドの返還について返品書等の形式的書類は存しないが、破産会社のダイヤモンド販売を法三条一項の小売に該当するとみるならば、次のとおり、それが返品されたと認めるべき書類及び返品を証する事実があり、これらによれば、破産会社が販売したダイヤモンドは返品されていること及び右書類は、物品税基本通達一三八条にいう「返品者が返還またはもどし入れの事実を記載した送り状等の書類」及び「返品を受けた者がその事実を記載した書類に、返品者が署名またはなつ印したもの」に該当することは明白である。そして、原告は、本件還付請求申告をするにあたって、次の3の事実を前提にして、同1及び2の各書類その他を分析検討して、本件還付請求申告書添付の計算書を作成したものであるから、同計算書は返還等の事実を証する書類に基づいて作成されたものということができる。

1  破産関係書類には、破産会社と被害者(顧客)との間の本件各契約の契約書が含まれているが、これらの契約書は、被害者が破産会社からダイヤモンドを形式的に買受け、そのダイヤモンドを破産会社に預けるという形で破産会社の占有に戻すことを示している。また、右各契約書には破産会社及び被害者の署名ないし記名押印がある。

2  破産関係書類には、被害者の破産債権届出書が含まれているが、右債権届出書によれば、被害者は、買受けたとするダイヤモンドの引渡を求めるのではなく、損害金の請求をしているにすぎず、これによりダイヤモンドの破産会社への返品が確定的なものであることを示している。右債権届出書には被害者の署名ないし記名押印がなされている。

3  破産会社は、販売したとするダイヤモンドを現に所持しており、右事実はダイヤモンドの返品を証する事実といえる。

第三  証拠<省略>

理由

一  請求原因1(一)、(二)、2、3(一)の事実、被告の主張1(一)、(二)の事実及び被告が昭和六一年一〇月一六日本件還付請求申告に係る還付を受ける金額二四三二万円全額を納付すべき税額とする本件更正処分をしたことは、当事者間に争いがない。

二  本件更正処分の適法性について

1  法二八条一、二項は、第一種の物品の販売業者がその小売をした第一種の物品の返還を受けた場合には、物品税額から当該物品についての小売により納付された、または納付されるべき税額に相当する金額の控除を受けたり、還付を受けることができる旨を定めているが、右規定は、当該第一種の物品について法三条一項の小売があったことを前提とするものであることは法文上明らかであるから、右物品について小売があったと認められない場合には、その適用がないことはもちろんである。そこで、まず、本件においてダイヤモンドの小売があったと認められるか否かについて検討する。

2  右一の事実、<証拠>を総合すると、破産会社は、顧客に対し、ダイヤモンドの購入を勧め、顧客がこれに応じると、販売したダイヤモンドを破産会社が賃借ないし受託して運用すると称してこれを破産会社に預けるように勧めて、後記のプラン契約ないしファンド契約(本件各契約)を締結させ、ダイヤモンドの納品書及び領収書とともにダイヤモンド預り証券(プラン契約の場合)ないしダイヤファンド証券(ファンド契約の場合)を交付すること、プラン契約では、販売代金の一〇パーセントを賃料をして顧客に支払うこととして、販売代金から右金額を控除し、ダイヤモンドの預り期間(一年)経過後、同種、同銘柄、同数量のダイヤモンドを返還するとの、また、ファンド契約では、ダイヤモンドの代金の一パーセントを月々運用益として支払い、預り期間(一年)経過後販売したダイヤモンドを返還するとの各約定であること、破産会社の外交員は、顧客に本件各契約を勧誘するにあたっては、もっぱら有利な利殖であることを強調し、一方、顧客も、ダイヤモンドを購入するとの意識はなく、確実で有利な利殖と考えて、ダイヤモンドの現物を見ることなく本件各契約に応じたこと、破産会社が仕入れたダイヤモンドの総数は一〇〇個程度であるのに対して、本件各契約の総数は三五五件にも上り、一個のダイヤモンドにつき複数件の契約が結ばれ、多いものについては一八件もの契約が結ばれていることと、仕入れたダイヤモンドは、いずれも指輪やペンダント等に加工されておらず、裸石のままであること、本件各契約を締結して現実にダイヤモンドを引渡した例はないこと、顧客が中途解約した場合でも、破産会社は、顧客に対し、現物のダイヤモンドを返還することなく金銭を支払って清算していること、本件各契約を締結した顧客は、原告に対して、取戻権の行使としてダイヤモンドの引渡を請求せず、代金相当の金員の支払請求権を破産債権として届出ていることが認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

3  ところで、第一種の物品についての物品税の課税要件である「小売」とは、当該物品の所有権を移転すべく消費者に販売することと解するべきであり、そのような販売行為があったか否かを判断するにあたっては、形式上売買契約がなされているか否かではなく、取引の実態に即して判断すべきである。

これを本件の破産会社のダイヤモンド販売についてみると、右2の事実によれば、破産会社と顧客との間には、売買契約が結ばれ、納品書の交付も行われているなど、これを形式的にみると、小売があったものと解しうるかの如くであるが、両者の間には、売買契約と同時に、常に破産会社から顧客に販売された当該ダイヤモンドについての賃貸借契約ないし預託契約など実質的に右売買契約と一体となった本件各契約が取交わされ、破産会社から顧客への現実のダイヤモンドの引渡は契約上予定されていなかったこと、破産会社は、顧客から金銭を集める方便として、ダイヤモンドの売買契約の形式を利用したにすぎず、本件各契約で定める賃借期間ないし受託期間満了後も顧客に現物のダイヤモンドを引き渡す意思はなかったし、また、その引渡は実際には不可能か極めて困難であったこと、一方、顧客も、ダイヤモンドの売買契約を本件各契約と一体となった有利な利殖のための契約と考え、特定のダイヤモンドを購入し、所有権を取得したとの意識はなかったことが認められ、右事情を総合勘案すると、破産会社のしたダイヤモンドの販売は、売買の実体を欠き小売にはあたらないというべきである。

4  そうすると、本件各申告に係るダイヤモンドの小売が認められない以上、その返還による物品税の還付等の規定の適用もなく、本件還付請求申告に係る還付の理由はないこととなるから、本件更正処分は適法というべきである。

5  なお、原告は、本件各申告に対する更生の請求に対して被告が更正をしないことの通知をしたことを異議申立をもって争う一方、これが容れられることを解除条件にして予備的に、本件還付請求申告をした旨主張し、前掲甲第六号証、弁論の全趣旨によれば、原告は、被告に対し、本件還付請求申告書を提出するとともにその旨記載した上申書を提出したことが認められるが、還付請求申告について、他の申立が容れられることを解除条件にして行いうることを規定した実定法上の根拠はないし、また、還付請求申告は、還付すべき税額を確定する効果を有する私人の行う公法行為であり、その性質上、これに右のような条件を付することを認めることは相当でないから、右主張は失当であり、本件還付請求申告は、条件付でない確定的なものとして取扱うべきである。したがって、原告の右主張は、本件更正処分の適法性に影響を及ぼすものではない。

三  本件加算税賦課決定処分の適法性

1  本件還付請求申告に対する本件更正処分が適法であることは前記二で判示したとおりである。

2  原告は、本件還付請求申告について通則法六五条四項に規定する「正当な理由」がある旨主張するので、以下右主張につき検討する。

(一)  前記一、二2の事実、<証拠>を総合すると、次の事実が認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

原告は、昭和六〇年八月二一日破産管財人に就任後、破産会社の帳簿書類、伝票類、預金通帳、破産会社が顧客との間で作成したダイヤモンドに関する契約書、顧客からの破産債権届出書等の資料を調査し、分析するとともに、破産会社とグループを形成し同様の営業を行い破産宣告を受けていた二社の破産管財人とも協力してグループ全体の営業実態を調べることによって破産会社の営業実態等を調査し、昭和六一年二月二八日本件各申告に対する更正の請求をするまでには、破産会社のしていたダイヤモンド販売の契約内容、取引実態等を具体的に把握し、右販売が法三条一項の小売の実体を欠くものであると判断するに至った。そこで、原告は、右更正の請求をしたが、被告は、同年五月三〇日、破産会社のしたダイヤモンド販売が小売にあたるとの見解を前提として、いずれの月分についても更正をしないことの通知をした。原告は、被告の右見解には承服できなかったので右処分に対して、異議申立したが、前記資料及び調査の結果からすると、破産会社のダイヤモンドの販売は形式だけのもので、もともと、ダイヤモンドの所有権も占有も顧客には移転しておらず、販売したとするダイヤモンドを破産会社が所持していたことが判明していたところから、仮に右ダイヤモンド販売が小売にあたるという被告の見解を前提とするならば、販売されたダイヤモンドの所有権は破産会社ひいては破産財団に復帰していることになって、法二八条の定める「返還」があったと構成することも可能であると考え、右異議申立が容れられないことを慮って、同年九月一七日、本件還付請求申告をした。

(二)  前記二において判示したとおり、本件還付請求申告は、本件各申告に係るダイヤモンドの小売が認められない結果、右小売があることを前提とする法二八条の規定の適用がなく、理由がないことに帰するものではあるが、右(一)の事実によれば、原告が誤った本件還付請求申告をするに至ったのは、被告が本件各申告に係る物品の小売がないのにもかかわらず、これがあるとの誤った見解をもとにして、原告がした本件各申告についての更正の請求に対して前記更正をしないことの通知の処分をしたことにその原因が存するのであって、原告は、破産会社のダイヤモンドの販売が形式だけのもので、もともと小売にはあたらないと判断していたけれども、仮に右ダイヤモンドの販売が小売にあたるという被告の見解を前提とするならば、ダイヤモンドは破産会社が所持しているし、当初からその所有権も占有も顧客には移転していないのであるから、小売されたダイヤモンドが顧客から破産会社に返還されたものと法律構成をして、法二八条により物品税の還付を受けることが可能ではないかとの判断に基づいて、本件還付請求申告に及んだものである。また、右申告当時は、被告の更正をしないことの通知に対して、異議申立中ではあったが、これによって原告の主張が認められる保証はないのであるから、右ダイヤモンドの販売が小売にあたらないとの原告の主張が通らないことを慮って、これが小売であることを前提とした本件還付請求申告をしたことは、右ダイヤモンドの販売をあくまで小売であると仮定する以上、ダイヤモンドの現実の占有状況からみて原告の右法律構成も十分可能であると考えられるところから、当時の状況下では無理からぬ行為であったということができる。そして右申告は、被告が原告の更正の請求に対して、破産会社のしたダイヤモンド販売の小売該当性を否定して、少なくとも右請求の期間内になられた分につき減額更正をしていれば、なされることもなかったものと思われる。以上の事実に鑑みると、原告の本件還付申告に対し、適正な申告秩序を維持するための行政制裁である過少申告加算税を賦課することは相当でなく、本件更正処分で納付すべき税額とされた全額について通則法六五条四項の「正当な理由」があるというべきである。

3  もっとも、原告の本件還付請求申告が被告の主張するように添付を要する計算書が返還等の事実を証する書類に基づいて作成されておらず、適法な還付請求申告となり得ないとするならば、正当な理由があるとはいえないとみられる余地がないではないが、仮に被告が原告の更正の請求に対して更正をしないことの通知をした際に前提とした見解、すなわち、破産会社のしたダイヤモンド販売が小売にあたるとの見解を前提とするならば、前記2の事実のとおり、原告が本件還付請求申告をするに際して、破産会社の帳簿書類、伝票類、銀行通帳、破産会社が顧客との間で作成したダイヤモンドに関する契約書等の資料及び顧客の破産債権届出書を調査・分析して把握した破産会社の取引実態からして、ダイヤモンドの所有権が破産会社ないし破産財団に復帰したと解するのもやむをえないことであったと考えられ、そのように解釈する際の資料とした書類に、直接、返品があったことを示すものはないにしても、原告の右判断は、破産管財人である原告が収集しうる最大限に近い前記書類を他の調査の結果と総合して得られた帰結であるということができ、右事実に裏付けのない濫還付請求申告を防ぐため返還等の事実を証する書類に基づく計算書の添付を要求した法の趣旨を合せて考えると、本件還付請求申告に添付された計算書は、そうした裏付けのないものではなく、返還等を証する書類に基づいて作成されたということができるし、また、添付書類である計算書の作成資料の不十分を理由に、右の正当な理由の存在を否定することもできないというべきである。

4  したがって、本件加算税賦課決定処分は違法である。

四  よって、原告の請求のうち、本件加算税賦課決定処分の取消を求める部分は理由があるからこれを認容し、その余の請求は理由がないからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき、行訴法七条、民訴法八九条、九二条本文を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 山本矩夫 裁判官 佐々木洋一 裁判官 朝日貴浩)

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