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大阪地方裁判所 昭和63年(モ)54761号 判決

一 申請の理由1(債権者が本件実用新案権を有すること)については当事者間に争いがない。

二 同2(本件考案の構成と作用効果)のうち、(一)構成については、成立に争いのない疏甲第二号証(本件考案の公告公報1以下「本件公報」という。)によれば、本件考案の構成要件は、債権者の主張のとおり分説するのが相当であると認められる。本件考案の作用効果が同(二)記載のとおりであることについては争いがない。

三 同3(債務者らの営業)と同4(イ号セパレータの構成と作用効果)については、当事者間に争いがない。

四 同5(本件考案との対比)について検討する。

(一) イ号セパレーターの構成aないしeを、本件考案の構成要件aないしeと対比してみると、前者のa、b、d、eが、それぞれ後者のa、b、d、eを充足することは、明らかである。そして、イ号セパレーターの構成c(イ)、(ロ)のうち、(ロ)の中間バー2の長手方向に全長にわたつて一五ミリメートル間隔のピツチで多数のピン接合孔2aを形成したことが、本件考案の構成要件c(ロ)を充足することも、明らかである。

(二) そこで、以下、イ号セパレーターの構成c(イ)の「長さ三〇〇〇ミリメートル」の中間バー2が本件考案の構成要件c(イ)にいう「一定の長尺物」に該当し、右構成要件を充足する否かを検討する。

(1) しかるところ、前掲疏甲第二号証(本件公報)によつて、本件考案のクレームや「考案の詳細な説明」の項をみても、右の構成要件c(イ)にいう「一定の長尺物」の意義が明確に定義付けされているとは認められない。

(2) しかしながら、右甲第二号証によれば、「本考案は、中間バーにつき、殊にその製造段階において一品種多量生産を可能にしてコストダウンを図るとともにその取扱い、管理も容易にでき、かつ、セパレータ長さの調整が容易に、しかもその調整範囲を微小な間隔でできるジヨイント式コンクリート型枠用セパレータを提供せんとするものである。」こと(本件公報2欄二六行~3欄四行)、「中間バーは、製造段階において、種々の場合において必要となる種々長さのうち最大長さに相当する一定長さの長尺物とし、その長手方向に全長に亘つて、前記ジヨイント台に形成したピン接合孔のピツチで多数のピン接合孔を形成して、一品種多量生産しておき、かつ、この一定長の長尺中間バーを一括して作業現場に搬入し、現場で必要な任意長さに切断したのち二つのジヨイント台に接続してセパレータを構成するものである。」こと(同3欄一六行~二五行)、そして、「これによれば、ジヨイント台は勿論、中間バーも一品種多量生産で賄なうことができるため、大巾なコストダウンが図れるとともに、中間バーのすべてが一定長であるため取扱い、管理が非常に容易であり、しかも、適用箇所に見合つた長さに任意に切断するため、多種類の中から最適のものを一つだけ選択するといつた煩わしさも解消でき(る。)」、「更に、ジヨイント台と中間バーの双方に互いにピツチの相異なるピン接合孔を設けてあつて、これら両孔の位置選択により、セパレータ長さの微調整が行なえる。言わば、中間バー切断による粗調整と互いにピツチの異なる孔位置選択による微調整との二段調整を、適用箇所毎に実施するものであるから、調整範囲を大きく拡大し得、所望の非常に正確なセパレータ長さ調整が可能となる。」(同3欄二六~四一行)という前示作用効果を奏するものであることが一応認められる。これを中間バーについて要約すると、その長さを「種々の場合において必要となる種々長さのうち最大長さに相当する一定の長尺物」(本件公報3欄一六~一八行)としておき、これを適宜切断すれば必要な長さの中間バーを得ることができ、かつ、中間バーの長手方向に「全長にわたつて」ピン接合孔を設けているため、どの位置で切断しても両端にピン接合孔が設けられていることになり、ジヨイント台に接続することができるというわけである。

(3) 右のような本件考案の目的、構成、作用効果に照らすと、本件考案の構成要件c(イ)にいう「一定の長尺物」とは、右の目的を達成し作用効果を奏することのできる長さのものをいい、「種々の場合において必要となる種々長さのうち最大長さに相当する」長さを備えているものを意味していると解される。

そして、右の「最大長さに相当する」長さといつてもその具体的な長さは、需要者が必要とする長さの変動やまつすぐな中間バーを製造する技術の進歩の度合に応じて変わり得るものと考えられる。このことは、弁論の全趣旨により成立を認める疏甲第八号証によると、従来、五〇〇ミリメートル以上の中間バーは焼き入れ焼き戻しの工程で歪が生じやすかつたのが、技術の改良により歪のない長尺の中間バーを製造することが可能となつたことが、本件考案を実用性のあるものにしたと一応認められることからも十分に裏付けられる。

また、その長さは、種々の場合において必要となる種々の長さの全てを賄えなければならないものではなく、通常の需要の多くの部分を賄うことができれば足りる(特殊な大規模工事に必要な特別に長大な長さまで賄えなくても差し支えない。)。なぜなら、そのようなものであれば、従来に比べて大幅に品種を減らすことができ、前示本件考案の目的を達成し、作用効果を奏するものであるということができるからである。

(4) しかるところ、弁論の全趣旨により成立を認める疏乙第三七号証によれば、橋梁工事等の大規模工事では三〇〇〇ミリメートル以上の中間バーが必要となることが認められるが、コンクリート型枠を必要とする工事がそのような大規模なものばかりでないことは公知の事実であり、成立に争いのない疏甲第三、第四号証(債権者及び債務者トーセパのカタログ)にも長さ三〇〇〇ミリメートル程度までの中間バーしか記載されていないことと弁論の全趣旨に照らすと、コンクリート型枠用セパレータの中間バーの長さとしては三〇〇〇ミリメートル程度であれば通常の需要の多くの部分を賄うことができるものと一応認められる。

(5) 以上のとおりとすると、イ号セパレーターに使用される長さ三〇〇〇ミリメートルの中間バー2は、本件考案の構成要件c(イ)にいう「一定の長尺物」に該当し右構成要件を充足するといえる。

五 以下、債務者らの主張について検討する。

1 まず、債務者らは、本件考案の構成要件が債権者主張のとおりであるとしても、それは、本件考案の出願前全部公知であつたと主張する。

しかるところ、豊進製作所が、本件考案の出願前、債務者ら主張の中間バー及びジヨイント台を製造、販売したことについては争いがないが、それが本件考案の構成要件を全て充足するものであつたことについては、これを認めるに足る証拠がない。成立に争いのない疏乙第一号証と弁論の全趣旨によれば、それは、むしろ、本件考案とは逆に、必要に応じ短い中間バーをいくつか接続して必要な長さを得るものであると認められる。また、弁論の全趣旨より、成立を認めるべき疏乙第三六ないし第三八号証によれば、長尺の中間バーを工事現場で必要寸法に切断することは本件考案の出願前から行われてることが明らかであるが、それは丸棒の中間バーに関するもので、本件公報に本件考案の従来技術として記載されているものと解される。本件考案の全部公知の資料とはならない(なお、疏乙第三六、三七号証は、丸棒タイプではなく、長さ二〇〇〇ミリメートルや三〇〇〇ミリメートルでその長手方向全長にわたつてピン接合孔が設けられている中間バーが公知であつた旨陳述したものであると読む余地があるとしても、その具体的構成は明らかでなく、ジヨイント台とピン接合孔のピツチを相違させることによる微調整―前記作用効果(2)参照―ができたのかどうかは不明である。)。

2 次に、債務者らは、少くとも本件考案の構成要件c(イ)の「一定の長尺物で」との構成を除くその余の構成要件はすべて公知であつたと主張するところ、そのこと自体は債権者も認めるところであり、争いがない。

債務者らは、「一定の長尺物で」というのは作用効果であつて構成要件にはならない旨主張するが、これは、前示のとおり、構成要件とみるべきものであつて、作用効果ではない。一定の長尺物であるという構成により、これを必要寸法に切断すれば必要な長さの中間バーが得られるという作用効果が生じるものである。

また、債務者らは、「一定の長尺物」の意義は特定できないというが、そうでないことは前示のとおりである。ただ、その具体的な長さを一概に数値的に確定できないことは否定できないが、それも本件考案の性質からすれば、やむを得ないというべきである。

さらに、債務者らは、一定の長尺物の意義を特定できたとしても、このような事項を考案構成上の欠くことのできない事項とする考案が認められると、従来から存する「特定の長さの物」に不当な制限を加え、あるいは既得権を侵すことになる旨主張する。しかし、長さ三〇〇〇ミリメートルの中間バーであればすべて制限を受けるというのではなく、本件考案の構成要件を全て充足するものだけが制限を受けるにすぎないから、債務者ら主張のような不当な結果は生じない。

そのほか、債務者らは、一定の長尺物という要件だけを取り出して、物品の形状、構造又は組合せのいずれにも該当しないと主張するが、一定の長尺物は中間バーの形状を表すものであつて、本件クレームは、他の構成要件とあいまつて、右中間バーとジヨイント台とを組み合わせたジヨイント式コンクリート型枠用セパレータの構造を明らかにしているといえるから、この点についての主張も理由がない。

3 その他、本件にあらわれた全ての疏明資料によつても本件考案が、出願前、全部公知であつたことを疏明することはできない。

4 したがつて、全部公知を理由とする実施例限定解釈の主張は失当である。

六 そこで、申請の理由6(イ号物件の構成と用途)についてみるに、同(一)の事実(イ号物件の構成と用途)それ自体については争いがなく、右事実とこれまでに判示してきたところに照らすと、イ号物件は、本件考案の構成要件c(イ)を充足し、本件考案に係る物品の「製造」にのみ使用するものであるということができる。

七 以上のとおりとすると、同7(債務者らの行為の違法性)を肯認できるというべきである。

八 以上の事実によれば、債権者は、債務者らに対し、本件実用新案に基づきイ号物件の製造、販売の差止めを求める権利を有するものと一応認められる。したがつて、債権者は、本件仮処分決定を求めるための被保全権利を有する。

債務者らの権利濫用の抗弁はその前提たる全部公知の事実が認められないのであるから失当である。

九 債権者と債務者らの間に実用新案権等の侵害を理由とする仮処分事件や本案訴訟事件が過去に当裁判所にたびたび係属していることは当裁判所に顕著な事実であり、右事実及び弁論の全趣旨によれば、申請の理由8(本件仮処分の必要性)が一応認められる。

一〇 よつて、本件仮処分申請を認容した本件仮処分決定は正当であるから、これを認可することとする。

〔編注〕本件仮処分申請の理由は左のとおりである。

1 債権者の権利

債権者は次の実用新案権(以下「本件実用新案権」といい、これに係る考案を「本件考案」という。)を有している。

考案の名称 ジヨイント式コンクリート型枠用セパレータ

出願日   昭和五二年一二月二日(実願昭五二―一六二六四二号)

公告日   昭和六〇年四月三日(実公昭六〇―九三三四号)

登録日   昭和六〇年一〇月九日

登録番号  第一六一二九一三号

実用新案登録請求の範囲(以下「クレーム」ともいう。)

左記のとおり

一端に隣接コンクリート型枠3、3の接当端面間に挿入して離脱可能に係止固定される係止部1aを有し、かつ、他端に長尺バー接続部1cを有する二つのジヨイント台1、1と、これら二つのジヨイント台1、1の接続部1c、1cにピン4、4を介してその長手方向両端部を接合可能な中間バー2とからなるジヨイント式コンクリート型枠用セパレータであつて、前記両ジヨイント台1、1、の各接続部1c、1cの夫々にその長手方向に沿つて適宜ピツチで複数のピン接合孔1d、1d……を設けるとともに、前記中間バー2は、一定の長尺物で、かつその長手方向に全長に亘つて、前記両ジヨイント台1、1に形成したピン接合孔1d、1d……のピツチと異なるピツチで多数のピン接合孔2a……を形成し、前記ジヨイント台1、1のピン接合孔1d、1dと必要寸法に切断した中間バー2のピン接合孔2aとの選定した孔1d、2aにピン4、4を挿入すべく構成した、中間バー2と二つのジヨイント台1、1とからなるジヨイント式コンクリート型枠用セパレータ。

2 本件考案の構成と作用効果

(一) 本件考案の構成要件は次のとおり分説される。

a 一端に隣接コンクリート型枠3、3の接当端面間に挿入して離脱可能に係止固定される係止部1aを有し、かつ、他端に長尺バー接続部1cを有する二つのジヨイント台1、1とこれら二つのジヨイント台1、1の接続部1c、1cにピン4、4を介してその長手方向両端部を接合可能な中間バー2とからなるジヨイント式コンクリート型枠用セパレータであつて、

b 前記両ジヨイント台1、1、の各接続部1c、1cの夫々にその長手方向に沿つて適宜ピツチで複数のピン接合孔1d、1d……を設けるとともに、

c 前記中間バー2は、(イ)一定の長尺物で、(ロ)かつその長手方向に全長にわたつて、前記両ジヨイント台1、1に形成したピン接合孔1d、1d……のピツチと異なるピツチで多数のピン接合孔2a……を形成し、

d 前記ジヨイント台1、1のピン接合孔1d、1dと必要寸法に切断した中間バー2のピン接合孔2aとの選定した孔1d、2aにピン4、4を挿入すべく構成した、

e 中間バー2と二つのジヨイント台1、1とからなるジヨイント式コンクリート型枠用セパレータ。

(二) 本件考案の作用効果は次のとおりである。

(1) ジヨイント台はもちろん、中間バーも一品種多量生産で賄うことができるため、大幅なコストダウンが図れるとともに、中間バーのすべてが一定長であるため取扱い、管理が非常に容易であり、しかも適用箇所に見合つた長さに任意に切断するため、多品種の中から最適のものだけ選択するといつた煩わしさも解消できる。

(2) ジヨイント台と中間バーの双方に互いにピツチの相異なるピン接合孔を設けてあつて、これら両孔の位置選択により、セパレータ長さの微調整が行える。いわば、中間バー切断による粗調整と互いにピツチの異なる孔位置選択による微調整との二段調整を、適用箇所毎に実施するものであるから、調整範囲を大きく拡大し得、所望の非常に正確なセパレータ長さ調整が可能となる。

3 債務者らの営業

債務者松田工業株式会社(以下「債務者松田工業」という。)は、別紙目録中に記載のジヨイント式コンクリート型枠用セパレータ(以下「イ号セパレータ」という。)に使用される同目録記載の中間バーNT―三〇〇〇(以下「イ号物件」という。)を業として製造してこれを債務者株式会社トーセパ(以下「債務者トーセパ」という。)に販売し、債務者トーセパは業としてイ号物件を販売している。

4 イ号セパレータの構成と作用効果

(一) イ号セパレータの構成を分説すると次のとおりである。

a 一端に隣接コンクリート型枠3、3の接当端面間に挿入して離脱可能に係止固定される係止部1aを有し、かつ、他端に長尺バー接続部1cを有する二つのジヨイント台1、1とこれら二つのジヨイント台1、1の接続部1c、1cにピン4、4を介してその長手方向両端部を接合可能な中間バー2とからなるジヨイント式コンクリート型枠用セパレータであつて、

b 前記両ジヨイント台1、1、の各接続部1c、1cの夫々にその長手方向に沿つて、一二ミリメートル間隔のピツチで複数のピン接合孔1d、1d……を設けるとともに、

c 前記中間バー2は、(イ)長さが三〇〇〇ミリメートルで、(ロ)かつその長手方向に全長にわたつて、前記両ジヨイント台1、1に形成したピン接合孔1d、1d……のピツチと異なる一五ミリメートル間隔のピツチで多数のピン接合孔2a……を形成し、

d 前記ジヨイント台1、1のピン接合孔1d、1dと必要寸法に切断した中間バー2のピン接合孔2aとの選定した孔1d、2aにピン4、4を挿入すべく構成した、

e 中間バー2と二つのジヨイント台1、1とからなるジヨイント式コンクリート型枠用セパレータ。

(二) イ号セパレータは、本件考案のそれと同様の作用効果を奏しうるものである。

5 本件考案との対比

(一) イ号セパレータの構成aないしeは、本件考案の構成要件aないしeを充足し、イ号セパレータは、右の構成により本件考案と同様な作用効果を奏するものである。

(二) ちなみに、イ号セパレータの「長さ三〇〇〇ミリメートルの中間バー2」が本件考案の構成要件c(イ)にいう「一定の長尺物」に該当することを説明しておくと、次のとおりである。

(1) 本件考案の出願前においては、中間バーの長さは最大が五〇〇ミリメートルであつて、これより長尺のものは存在せず、五〇〇ミリメートルないしそれ以下の長さの中間バーをピンで接合して長さの調節を行つていた。しかし、これでは、各種の長さの中間バーをあらかじめ製造して工事現場に搬入し、その都度、適当な長さのものを選択して使用したり、同じ長さのものを二つ三つ接合して使用する場合には、それらのピンの接続箇所をいちいち選定しなければならない繁雑さがあつた。したがつて、中間バーについて一品種多量生産によるコストダウンが期待できず、また、その取扱い、管理及び前記の選択、選定が極めて煩わしく、かつセパレータの長さの調整範囲に限界があつた。

(2) そこで、本件考案では、中間バーの製造段階において、これを種々の場合において必要となる種々の長さのうち最大の長さに相当する一定長の長尺物とし、かつその長手方向に全長に亘つてジヨイント台に形成したピン接合孔のピツチと異なるピツチで、多数のピン接合孔を形成して一品種多量生産しておき、この一定長の長尺中間バーを一括して作業現場に搬入し、現場で必要な任意の長さに切断したのち、二つのジヨイント台に接続してセパレータを構成することにした。そして、右のような構成をとることによつて前記作用効果を奏するものとした。

(3) 右に述べたところから明らかなように、本件考案は、適用箇所によりそれぞれ異なる長さの中間バーが必要なところを一品種の長さの中間バーを任意の長さに切断することで賄うことにし、これにより製造段階では一品種多量生産を可能とするものであるから、構成要件c(イ)にいう「一定の長尺物」とは、中間バーとして、実用上、通常要求される最大の長さに相当する長さを備えていることを意味する。かといつて、五〇〇〇ミリメートルとか一〇〇〇〇ミリメートルというような余りに長大なものは、その鋼材の重量に耐えられず強度的に問題があるほか、管理、運搬、作業等に不便であるし、コストも低廉ではないため、かえつて、コストダウンを図れるという前記作用効果を奏しないことになる。最大の長さに相当する一定長といつても、自ずからその長さには限度と幅があることになる。

(4) しかるところ、三〇〇〇ミリメートル前後の長さのものは、右のような要請に応え、しかも、実用的な長さに属するものといえる。現に、債権者自身も本件考案を実施しているが、長さ三〇〇〇ミリメートルの中間バーを用いている。長さ三〇〇〇ミリメートルの中間バーは構成要件c(イ)にいう「一定の長尺物」の要件を満たすものである。

6 イ号物件の構成と用途

(一) イ号物件は、イ号セパレータを構成するための中間バーであり、長さが三〇〇〇ミリメートルで、かつ、その長手方向に全長にわたつて、一五ミリメートル間隔で多数のピン接合孔が形成されており、イ号セパレータの「製造」(実用新案法二九条)にのみ使用するものである。

(二) イ号物件は、本件考案の構成要件cを充足し、本件考案に係る物品の「製造」にのみ使用するものである。

7 債務者らの行為の違法性

したがつて、債務者らが、イ号物件を業として製造、販売する行為は、本件実用新案権の間接侵害行為となる。

8 保全の必要性

債務者松田工業はイ号物件を製造してこれを債務者トーセパに販売し、債務者トーセパはイ号物件を債権者のカタログと酷似したカタログを使用して西日本地区、特に九州地区で大量に販売しているが、これまでも債務者らは債権者の実用新案権や意匠権を侵害し、債権者に多大の損害を与えてきた経緯があり、本案訴訟の決着を待つていては、債務者らが侵害行為を継続して債権者に回復し難い損害を与えることは必至であるから、保全の必要性がある。

9 結論

よつて、債権者の本件実用新案権に基づきイ号物件の製造、販売の差止め及びイ号物件の占有移転禁止の仮処分申請を認容した本件仮処分決定は正当であるから、その認可を求める。

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