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大阪地方裁判所 昭和63年(ワ)11402号 判決 1992年7月23日

原告 株式会社 オーケー模型

右代表者代表取締役 高松守

右訴訟代理人弁護士 梅本弘

同 片井輝夫

同 川村哲二

同 石井義人

右訴訟復代理人弁護士 池田佳史

右輔佐人弁理士 杉本勝徳

被告 株式会社 石井模型

右代表者代表取締役 石井実

主文

一  被告は、別紙被告商品目録一及び別紙被告商品目録二記載の各商品を輸入し、販売してはならない。

二  被告は、その本店及び営業所に存する前項記載の各商品を廃棄せよ。

三  被告は、原告に対し、金六八万三一二〇円及びこれに対する昭和六三年一二月一一日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

四  被告は、別紙被告説明書目録一及び別紙被告説明書目録二記載の各小冊子を輸入し、頒布してはならない。

五  原告のその余の請求をいずれも棄却する。

六  訴訟費用はこれを五分し、その一を原告の、その余を被告の各負担とする。

七  この判決は、一ないし四項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

一  主文一、二、四項同旨

二  被告は、「ラジコン技術」、「ラジコンマガジン」及び「日本模型新聞ホビーズ」の各雑誌に別紙謝罪広告目録記載の謝罪広告を掲載せよ。

三  被告は、原告に対し、金二〇〇万円及びこれに対する昭和六三年一二月一一日(訴状送達日の翌日)から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

一  原被告の営業

1  原告は、昭和三八年三月に設立された東大阪市に本社を有する資本金二〇〇〇万円の模型飛行機等の製造販売等を業とする株式会社である。

2  被告は、昭和五七年八月に設立された仙台市に本社を有する資本金六〇〇万円の模型の販売を業とする株式会社である。

二  原告商品の商品形態及び英文組立説明書

1  原告商品の製造販売

原告は、昭和五七年末頃別紙原告商品目録一記載の無線操縦用模型飛行機(商品名「EZスーパーチップマンク」、以下「原告商品一」という。)を、昭和六一年一〇月頃別紙原告商品目録二記載の無線操縦用模型飛行機(商品名「P五一―Dムスタング」、以下「原告商品二」という。)をそれぞれ開発完成し、それぞれ以降製造販売している(収納箱、組立説明書、宣伝広告文等において、製造元がスポーツ・アビエーション、発売元が原告と表示しているが、前者はEZ商品販売のための原告の営業表示であり別法人ではない。)。右両商品(両商品を総称する場合は単に「原告商品」という。)の日本国内における販売は、全国に約二〇〇店舗のEZFS店(EZフライトサービス店、顧客に模型飛行機の組立方法や飛行方法を指導する模型小売販売店)等の模型小売販売店に対する販売の方法によっている。

2  原告商品の商品形態

原告商品の組立後の完成機の各商品形態はそれぞれ別紙原告商品目録一、二記載のとおりであり、販売時には、胴体、主翼、垂直・水平尾翼等の主要構造部品とそれに付属するその他の部品一式及び組立説明書を一箱に梱包収納し販売している。

3  英文組立説明書

別紙原告説明書目録一、二記載の各小冊子(以下「原告説明書一」、「原告説明書二」といい、両者を総称する場合は単に「原告説明書」という。)は、輸出用の原告商品に添付されている英文の組立説明書であり、国内販売用の商品に添付されているものは写真、図面は同一で、説明文が日本語に、メートル表記がインチ表記になっているだけである。

三  被告商品の商品形態及び英文組立説明書

1  被告商品の販売

被告は、別紙被告商品目録一記載の無線操縦用模型飛行機(商品名は「ラジオコントロールモデルチップマンク二五」、以下「被告商品一」という。)を遅くとも昭和六三年四月頃以降、別紙被告商品目録二記載の無線操縦用模型飛行機(商品名は「P―五一D ムスタング四〇」、以下「被告商品二」という。)を遅くとも平成元年三月頃以降それぞれ現在に至るまで販売している。右両商品(両商品を総称する場合は単に「被告商品」という。)の製造は台湾において行なわれ、被告はこれらを輸入して日本国内で販売している。また、その販売方法は、店頭販売のほかに、模型の専門雑誌に宣伝広告を掲載しての通信販売の方法によっている。

2  被告商品の商品形態

被告商品の組立後の完成機の各商品形態はそれぞれ別紙被告商品目録一、二記載のとおりであり、販売時には、原告商品と同様に胴体、主翼、垂直・水平尾翼等の主要構造部品とそれに付属するその他の部品一式及び組立説明書を一箱に梱包収納して販売している。

3  英文組立説明書

別紙被告説明書目録一、二記載の各小冊子(以下「被告説明書一」、「被告説明書二」といい、両者を総称する場合は単に「被告説明書」という。)は、被告が被告商品を台湾から輸入した際に一緒に添付されていた英文の組立説明書であり、被告はこれらを右各商品に添付して日本国内で頒布した(頒布の時期、数量等の詳細な事実関係については後記)。

四  原告の請求の概要

1  不正競争防止法に基づく請求

原告商品の各商品形態は、いずれも日本国内の無線操縦用模型飛行機の業界において広く認識され、原告の商品表示としての機能を取得していること、被告商品の商品形態はいずれも原告商品の商品形態と同一か又は類似しており、被告商品は原告商品と混同を生ずること、原告はこれにより営業上の利益を害されることを理由に、不正競争防止法一条一項一号に基づき、被告商品の輸入及び販売の停止等を求めるとともに、同法一条の二第一項に基づき、財産上の損害及び営業上の信用毀損による損害合計二〇〇万円(被告製品一、二について一〇〇万円ずつ)及び遅延損害金の支払を求め、更に同法一条の二第四項に基づき、信用回復措置として謝罪広告の掲載を求める。

2  著作権法に基づく請求

原告説明書は原告の著作物であり、被告説明書は原告説明書を無断複製したものであるから、被告説明書を輸入頒布する行為は、著作権法一一三条一項一号及び二号にいう著作権侵害行為とみなされる行為に該当することを理由に、同法一一二条に基づき、その侵害の停止又は予防を求める。

五  主な争点

1  不正競争防止法に基づく請求関係

(一) 原告商品の商品形態が商品表示性及び周知性を取得したか。

(二) 被告商品の商品形態は原告商品の商品形態と同一又は類似し、両商品間に出所混同が生じるか。

(三) 被告商品の販売により原告の営業上の利益が害されるか。

(四) 以上が肯定された場合、

(1) 被告に故意過失があるか。

(2) 被告が賠償すべき原告に生じた損害の金額

(3) 謝罪広告請求の可否

2  著作権法に基づく請求関係

(一) 原告説明書が著作物にあたるか、また、その著作者は原告か。

(二) 被告説明書が原告説明書の複製にあたるか。

(三) 輸入頒布禁止請求の可否

第三争点に対する判断

(不正競争防止法に基づく請求について)

一  争点(一)(原告商品の商品形態が商品表示性及び周知性を取得したか)について

1 商品の形態と出所表示機能

商品の形態は、その商品が本来具有すべき機能を十分に発揮させることを目的として選択されるもので、直接的には出所表示を目的とするものではないけれども、不正競争防止法一条一項一号が、「他人ノ氏名、商号、商標、商品ノ容器包装其ノ他他人ノ商品タルコトヲ示ス表示」と規定し、商品主体を直接認識させる意図で表示される氏名、商号等のほか、本来商品の出所を識別させるためのものではない「商品ノ容器包装」をも例示していることに鑑みると、商品の形態も、その形態自体が商品の技術的機能に由来する必然的・不可選択的なものでない限り、これが他の商品と比べ独自の特徴を有すること等により、取引上商品の主体を識別する機能、商品の出所表示の機能を取得するに至った場合は、同号にいう「他人ノ商品タルコトヲ示ス表示」(「商品表示」という。)として保護されるものと解するのが相当である。

2 原告商品の形態と出所表示機能

そこで、原告商品の形態が不正競争防止法一条一項一号にいう商品表示にあたるか否かについて検討する。

(一) EZシリーズの開発

《証拠省略》によれば、次のとおり認められる。

(1) 従来の無線操縦用模型飛行機の製造方法では、予め木材製の骨組部材を接着剤で接着して骨組を形成し、しかるのち、この骨組に外皮を貼り付けるようにしていた。しかし、このような方法の場合、骨組の組立作業のほかに外皮の折り曲げ作業を別個に要し、しかも骨組の接着剤が固まって強度を発現するまで外皮の貼り付け作業ができず、その結果製作工程が複雑化し、かつ、製作時間も長くなるという問題があった。更に骨組部材同志を接着する際には骨組部材を位置決めしなければならず、骨組の組立作業自体にも熟練を要するという問題があり、このような作業に慣れなていない無線操縦用模型飛行機の製作者にとってはその製作は必ずしも容易なものではなかった。その上、このようにして製作した機体等の彩色塗装も困難で、恰好のよい綺麗な塗装は通常人には不可能であった。

(2) そこで、原告は、こうした問題を解決するため、昭和五七年頃、「発泡合成樹脂板の表面に模型飛行機の機体、翼等の表面の模様を予め印刷した印刷紙を貼着し、この印刷紙の表面に保護用透明フィルムをラミネート加工した組立板を用い、この組立板を切断して組立体を形成し、次にこの組立体の裏面に骨組部材を貼着し、しかるのち組立体を適宜形状に折り曲げて必要所を接着して組立体を組立てると同時に、組立体内に右骨組部材によって機体の骨組を形成する」という、比較的簡単な工程で、表面の彩色塗装が不要な上、細部に至るまで彩色され、かつそれがラミネート加工により透明膜で保護されている恰好のよい模型飛行機の製造方法(以下「原告製法」という。)を開発した(原告代表者出願〔当初の出願日昭和五六年一〇月九日〕にかかる特許番号第一四七七六〇六号無線操縦模型飛行機の製造方法の特許発明は、発泡樹脂板の裏面に補強紙を貼着する点以外は、原告製法と同一である。)。

(3) そして、原告は、同年頃から、原告製法により胴体、主翼、垂直・水平尾翼等の主要構造部材の接着組立を完了した状態で(完成機との関係では八〇~九〇%完成の状態で)、これらと模型飛行機完成に必要な付属部品一式及び組立説明書を一箱に収納したものを商品として、「EZシリーズ」と銘打ち、「九〇%完成済」「短時間で仕上がる」「塗装済みのきれいな仕上がり」「全商品がパックされている」「工作室不要でゴミやニオイが出ない」「特殊な工具や製作技術は不要」等の利点を強調して、無線操縦用模型飛行機の市場に投入した。

(4) 原告製法開発当時では、無線操縦用模型飛行機の製作と言えば、購入者が個々バラバラの部品(バルサ材や発泡スチロール材の部品)を単に寄せ集めたキットを購入して、これを一つ一つ組み立て、その組立てた構造材の外側に絹やフィルムの外皮を貼り、翼と胴体を組み立て機体を完成させ、更にそれに購入者自らが彩色塗装するという方法が一般的であり、初級者や中級者にとっては勿論、製作技術の進んだマニアにとっても、そもそも組立説明書に書かれているとおりに各部品を組み立てるのが困難であり、しかも塗料・刷毛・スプレー等を使用しての機体の彩色塗装も難しく、特に機体表面の細部の文字入れ、塗り分け、中間色を出すことなどの作業に至っては至難の技であって、キットの購入者が製作を途中で断念する例も多かった。また、こうした事態を避けるため、専門の職人が機体を組立塗装した完成品も一部で発売されていたが、それは非常に高価で一般の需要者には手の届かないものであった。

(5) こうした状態の中で、相応の価格でしかも既に大部分が組立られ、美しくカラーリングされた上それが透明フィルムで保護された彩色塗装済みの胴体、主翼、垂直・水平尾翼等の飛行機の主要構造部品を単に結合し、若干の残り部品を取付けて、エンジンを搭載すれば、初級者でも無線操縦用模型飛行機の飛行を楽しむことを可能にする原告のEZシリーズ商品の発売は、無線操縦用模型飛行機の業界の取引者及び需要者の間で衝撃的な出来事として受け止められ、好評を博した。

(6) 原告商品は、いずれもこのEZシリーズ商品であり、特にEZシリーズ三番目の原告商品一は、後記のとおり「EZスーパーチップマンク」の商品名で、ラジコンの専門雑誌等により大々的に宣伝広告され原告の代表的主力商品となった。

(二) 原告商品の設計開発の経緯

《証拠省略》によれば、次のとおり認められる。

(1) 「チップマンク」は、元々カナダとイギリスの空軍の練習機であり、これをアメリカ人のアートショールが曲技飛行用に改造して機体に派手な塗装を施した実在の飛行機「スーパーチップマンク」が原告商品一のモデルである。

(2) 原告代表者は、この実機「スーパーチップマンク」を無線操縦用模型飛行機として商品化すべく、アメリカ合衆国カリフォルニア州のアートショール宅を訪れ、格納庫に収納されている「スーパーチップマンク」の実機を検分するとともに、多数の写真を撮影した外、イギリスの飛行機雑誌会社の編集長に依頼して右改造前の実機「チップマンク」の図面を取り寄せ、これらの資料を参考にして、原告の社内で原告商品一(EZスーパーチップマンク)を設計開発した。

(3) 一般に無線操縦用模型飛行機の形態は、単なる美観だけではなく、飛行操縦性、強度、生産コスト等の点で独自の検討が必要であり、原告商品一は、実機「スーパーチップマンク」の外形的寸法比率等を参考とし、そのイメージを保有していることは勿論であるが、正確にはいわゆるフルスケールモード(完全な縮小版)とはなってはいない。

(4) また、原告商品一が発売されるまで、「スーパーチップマンク」を実機とした無線操縦用模型飛行機としては、①京商、②加藤無線飛行機、③ヒロボウの三社から商品が発売されていたけれども、①と②は従来のキット商品である点で、③は完成機ではあるが電動式で主翼や胴体等の各部の寸法が大きく異なる点で、それぞれ原告商品一とはその商品形態を著しく異にしていた。

(5) 原告商品二の実機「ムスタング」は著名なレシプロエンジン戦闘機であるが、これについても原告代表者が実在の飛行機を検分し多数の写真を撮影するとともに、実機の図面を入手して原告の社内で設計開発したもので、原告商品一と同様に飛行操縦性、強度、生産コスト等の点で独自の検討が加えられ、実機「ムスタング」の外形的寸法比率等を参考とし、そのイメージを保有しているのは勿論であるが、正確にはいわゆるフルスケールモードとはなってはいない。

(6) また、原告商品二が発売されるまで、「ムスタング」を実機とした無線操縦用模型飛行機としては、①生田無線と②京商の二社から商品が発売されていたけれども、いずれも従来のキット商品である点で原告商品二とは商品形態を著しく異にしていた。

(三) 原告商品の商品形態の商品表示性

前期(一)(二)に認定の各事実に加え、後記3(一)ないし(六)に認定の原告商品の販売、宣伝広告の状況、模型販売業社や需要者の認識及び《証拠省略》を総合して考えると、原告商品に共通する基本的形態の特徴は、次の二要素の結合(組合せ)にあり、これにより商品出所表示の機能、商品表示性を取得していると認められる。

すなわち、その一は、組立後の完成機としての外観(完成時形態)である。原告商品の完成機はその形状、模様、色彩といった細部の外観に止まらず、それらを統合した実機を髣髴とさせるその全体的風貌及び透明フィルムで保護され美しくカラーリングされた光沢のある機体表面の外観に特徴があり、それらが取引者又は需要者の目に触れやすく、取引者又は需要者の注意を引きつけるものと認めることができ、特に模型という商品の機能に照して考えると、商品形態の把握という観点からは、組立後の完成機の右のような基本的形態の特徴をより重視すべきである。これらは、前認定のとおり、実機をただフルスケールモードで縮小した結果産まれたものではなく、飛行操縦性、強度、生産コスト等の点で独自の検討が加えられた結果創案されたもので、そこにはそれまでにはない創作性と美的価値を認めることができる。

その二は、右のとおり完成機として特徴あるものの各部材を、原告製法により、胴体、主翼、垂直・水平尾翼等の主要構造部材の接着組立を完了した状態で(完成機との関係では八〇~九〇%完成の状態で)、これらと完成に必要な付属部品一式及び組立説明書を一箱に収納して販売する、EZシリーズ商品特有の販売時における商品形態(販売時形態)である。原告商品の購入者は簡単に綺麗に彩色塗装された模型飛行機を完成することができる。

以上の完成時形態と販売時形態が組み合わされている点において、原告商品は商品の出所表示、商品表示性を取得していると認めるのが相当である。

3 原告商品の商品形態の周知性

《証拠省略》を総合すれば、次の事実が認められる。

(一) 原告は、国内の無線操縦用模型飛行機の業界において、特にほぼ組立済みの準完成機の分野では圧倒的なシェアを占めている。

(二) 無線操縦用模型飛行機のマニアは、大別して模型販売店の店頭で商品を見て購入する場合と、「ラジコン技術」等の専門雑誌の通信販売の宣伝広告に掲載される完成機体の写真(大半は小さなモノクロ写真)等を見て商品を購入する場合がある。

(三) そのため、原告は、昭和五八年二月以降毎月刊行の「ラジコン技術」等の専門雑誌に、「『EZシリーズがこんなに素晴らしいなんて…』作れない人、すぐ飛ばしたい人、美しい機体をお求めの方、EZならGO!です。(ラジコン技術昭和五八年二月号・甲一〇の2)」、「すぐ飛ばしたい人はEZ、素晴らしい完成機が欲しいという方もどうぞ。(同昭和五八年三月号・甲一一の2)」、「すぐ飛ばせる完成機 EZシリーズ(同昭和五八年四月号)」、「―すぐ飛ばしたい方、組立て時間のない方―EZシリーズなら九〇%完成済です。(同昭和五八年五月号)」、「九〇%完成済! EZ《EZの完成機なら即テイクオフ》(同昭和五八年六月号)」などと銘打ってEZシリーズ商品の宣伝広告に努めるとともに、原告及び模型販売店は、原告商品一について、EZシリーズ商品であることを明示して、「スーパーチップマンク」の商品名で通信販売の宣伝広告を掲載し、昭和六一年一〇月以降は毎月同誌等に同じくEZシリーズ商品であることを明示して、「P―五一 Dムスタング」の商品名で原告商品二の通信販売の宣伝広告を継続的に掲載した。

(四) この他にも、原告は、原告商品の販売拡大のために日本各地で行われるフライトショーで頻繁に原告商品を飛行させ、日本エンジン模型工業会が主催しラジコン模型飛行機、自動車等の業者が自社製品の宣伝を行うために開催される展示会に、昭和六三年頃まで毎年原告商品一を展示し、昭和六一年以降は原告商品二を同様に展示し、これ以外にもドイツで開催される世界的なトイショーその他の展示会に原告商品を出品し、ハンノプレトナ(ラジコン模型飛行機の世界選手権で過去六回優勝しているオーストリア人のプロ)と契約して、「EZ」シリーズ商品のイメージキャラクターとした外、ショーでの飛行実演、飛行機設計についてアドバイスを受け、「EZカップ」と称する「EZ」シリーズ商品を使用しての競技会を開催し、販売促進のためにマニアに配付する「EZ」の文字が大きく記載されたTシャツやカタログを製作するなど、原告商品の知名度の向上に努め、多額の投資をしてきており、その額の累計は前記(三)の分も含め平成四年三月一日現在で一億五〇〇〇万円を超えるに至っている。

(五) 原告商品の累積販売台数は、海外への販売分を含め原告商品一、原告商品二とも現在それぞれ五〇〇〇台以上に達している。

(六) 以上の結果、「EZ」と聞けば、無線操縦用模型飛行機の業界で、模型販売業者のみならずマニアの需要者の間でも、原告発売の模型飛行機で、原告製法により胴体、主翼、垂直・水平尾翼等の主要構造部材の接着組立を完了した状態で(完成機との関係では八〇~九〇%完成の状態で)、これらと完成に必要な付属部品一式及び組立説明書を一箱に収納しており、透明フィルムで保護され美しい彩色が施してある主翼、水平・垂直尾翼、胴体を結合させる作業と若干の付加作業をするだけで完成機となる商品として、一定のイメージが定着している(被告代表者も、その尋問結果中でそのことを自認している。)。

以上原告商品の販売開始時期、販売数量、販売店の数等原告の営業規模、当初からの宣伝広告の内容と費用、原告商品の形態の商品表示としての特異性等の諸事情に照せば、前記2(三)認定の商品表示性を有する原告商品の商品形態は、原告商品一については遅くとも被告が最初に被告商品一の輸入販売を開始した昭和六三年四月頃、原告商品二については遅くとも被告が被告商品二の輸入販売を開始した平成元年三月頃の時点において、日本国内の無線操縦用模型飛行機の取引者及び需要者の間において、原告の商品表示として広く認識され、現在もその状態は継続しているものと認めるのが相当である。

二  争点(二)(被告商品の商品形態は原告商品の商品形態と同一又は類似し、両商品間に出所混同が生じるか)について

《証拠省略》によると、前記認定の原告商品の商品表示性に照らして、原告商品と被告商品を観察し対比した場合、両者はいずれも、組立後の完成機として見ても(完成時形態)、また原告製法により胴体等構造部材の接着組立が完了した状態で(完成機との関係では八〇~九〇%完成の状態で)、付属部品及び組立説明書と一緒に一箱に収納されて販売されている商品形態(販売時形態)を見ても、自らも模型販売店を経営していて日頃から無線操縦用模型飛行機を見慣れているはずの証人中透ですら一見しては区別できないと証言するほどに酷似していること、被告が被告商品を発売した頃に、それぞれ顧客から原告と被告の双方に対して、度々原告商品と被告商品との類否及び原告と被告との関係について問い合わせがあったことが認められる。

被告商品は、原告商品のデッドコピーと言ってよいほどに原告商品と同一の形態的特徴を有しており、取引の実情の下において、取引者又は需要者が、両者の外観に基づく印象、記憶、連想等から両者を全体的に類似のものとして受け取るおそれは強く、両者は、商品の出所について混同のおそれがあるものといわなければならない(原告商品二と被告商品二とでは翼等の機体表面の色調に若干相違するところがあるけれども、実機の世界でもその用途等に応じて同一機体に種々の塗装がなされることはよく知られているところであるし、弁論の全趣旨によれば、同じ原告商品でもいわゆるヴァージョンの違いがあることが窺われ、これらのことと取引の実情に照して、右色調の相違は前記認定判断を左右しない。)。

(被告の主張について)

1  模型の特殊性に関する主張について

被告は、原告商品は、単に実機をコピーしたものに過ぎず、通常の模型飛行機と何ら変らない、したがって、模型の性格上、両者の外観形状が同一となるのはむしろ当然である、被告商品は原告商品を模倣したものではなく、被告は、既に相当以前から台湾で製造され、アメリカをはじめ世界中に輸出されていた商品を輸入販売しただけである、原告自身実機を模倣しながら、被告の模倣を問責するのは筋違いである旨主張し、①米国ロイヤル社から発売されているという「スーパーチップマンク」、②台湾サンダータイガー社から発売されているという「スーパーチップマンク」、③日本の京商株式会社から発売されているという「スーパーチップマンク」の各部品を収納している外箱の写真(順次乙七中の「(二)他社販売の『スーパーチップマンク』写真三点」と題する写真三枚)を証拠として提出しており、《証拠省略》によれば、③は、遅くとも昭和五七年九月一日には発売されていたものと認められる。

しかしながら、原告商品がフルスケールモードでないのに被告商品の形状・寸法が原告商品のそれと酷似する理由について、被告代表者によっても何ら納得のいく説明がなされていないばかりでなく、右①は被告商品一そのものであり、右②も①とは外箱表面のデザインこそ相違するものの、写真表示されている完成機体の外観形状を対比しただけでも、その中に梱包収納されている模型部品は被告商品一を製造しているのと同一ないし同系列の業者によって製造されたものと容易に推認されるものであり、③については同様に外箱表面に写真表示されている完成機体の外観形状からして、原告商品一と同じ実機「スーパーチップマンク」をモデルにしているとはいえ、その形態は、胴体の細さ、胴体底部の処理等の点で、原告商品一及び被告商品一とは明らかに異なっていることが窺われるのみならず、原告商品や被告商品のような完成機ではなく部品を集めただけのキットであると認められる。また、前記認定のとおり、そもそも無線操縦用模型飛行機の形態は、単なる美観だけではなく飛行操縦性、強度、生産コスト等の観点から独自の検討が加えられたうえで決定されるもので、模型である以上原告商品一(スーパーチップマンク)が実機「スーパーチップマンク」の外形的な寸法比率等を参考としそのイメージを保有していることは勿論であるが、いわゆるフルスケールモードとはなってはいないのであるから、模型がすべてフルスケールモードであるかのような被告の右主張は前提を欠き、採用できない。

2  部品完成度の相違に関する主張について

被告は、原告商品の部品完成度は九〇パーセントであるのに対し、被告商品のそれは約八〇パーセント程度であり、被告商品の場合、組立製作者の技量等により完成品の寸法や取付角度等はすべて違うものになる旨主張し、宣伝広告文中において、原告は「九〇%完成済」と表示し(甲一〇の2等ラジコン技術誌)、他方、被告は「完成機は八〇%の機体完成品です。」と表示していることが認められる。

しかしながら、この種商品の使用目的に照せば、宣伝広告文中のそうした部品完成度の僅かな表示上の差異が取引者又は需要者の商品選択の動機づけになるものとは俄に考えられない上、販売時における原告商品二と被告商品とを対比してもどの点に一〇%の差があるか判明しない程度のものであり、結局これは表現上の差異に過ぎないものと考えられるから、右のような広告宣伝文中における部品完成度の表示の差異があっても、原告商品と被告商品とが商品の出所について混同するおそれがあるとの前認定判断を左右することはできない。

したがって、被告の右主張は、採用するに由ないものといわざるを得ない。

3  被告のブランド名・メーカー名表示に関する主張について

《証拠省略》によれば、被告の主張するように、被告商品自体あるいはその宣伝広告文中に、原告のブランド名である「オーケー模型」や「EZシリーズ」等の表示はされておらず、むしろ宣伝広告文中では被告が自らのブランド名ないしメーカー表示であるとする「JMC」や「MODELCRAFT」の表示がなされ、商品外箱には、「PDQ」「ROYAL」(被告商品一)や、「LION MODEL」(被告商品二)なる表示がなされていることが認められる。

しかしながら、不正競争防止法一条一項一号の「混同」については狭義の混同(原告の商品と間違えて被告の商品を買う―出所の混同)のみならず、より広義の混同(いわゆる親会社、子会社の関係や系列関係などの緊密な営業上の関係が存する等、経済的又は組織的に関係ある者の関与した商品であると誤認すること)も含まれるものであるから、被告の主張するところだけでは後者の混同を直ちに防止できるものとは考えられない。

更に、被告の主張に即して考えても、これら被告主張の表示が被告商品の宣伝広告文に付され、あるいは被告商品の外箱等に表記されていることが誤認混同の防止に役立つのは、現物や外箱を見て取引する場合であって、これを見ないでなされる通信販売には妥当しないし、前記周知性の認定に供した各証拠や本項冒頭に掲記の証拠(ラジコン技術誌)からも容易に窺えるように、これら専門雑誌の通信販売の宣伝広告は狭い紙面に多数の広告を小さなモノクロ写真等と共に掲載してなされるもので、被告主張の表示の文字の位置・大きさ等からして、取引時にかなり注意して見なければ、これらを認識するのは容易ではないし、その具体的な意味合いも何ら説明されていないのであるし、外箱の表示や宣伝広告文の細部の表示を一々確認しない者もいるであろうことは経験則上十分に予想されるところであり、被告商品にこれらブランド名・メーカー表示があっても、原告商品と被告商品の出所について混同のおそれがあるとの前記認定判断を左右することはできない。

したがって、被告の右主張も採用することができない。

三 争点(三)(被告商品の販売により原告の営業上の利益が害されるか)について

被告が原告商品と競合する被告商品に原告商品の前記周知商品表示をそのまま使用して原告商品と誤認混同を生ぜしめるおそれのある行為を継続する以上、他に特段の事情が主張・立証されない限り、原告にはこのことにより営業上の利益を害せられるおそれがあるというべきであり、右特段の事情について主張・立証はない。

また、被告商品を日本国内で販売することのみならず、これを販売する目的で外国から輸入することは不正競争防止法一条一項一号の拡布にあたると解するのが相当である(仮に輸入を拡布と解し得ないとしても、侵害行為たる販売の予防として、輸入の差止めを求めることができることは明らかである。)。

四 争点(四)について

1  (被告に故意過失があるか)

《証拠省略》によれば、被告が被告商品を輸入販売したこと(本件不正競争行為)について、少なくとも被告に過失があることを認めることができる。

2  (被告が賠償すべき原告に生じた損害の金額)

(一) まず、財産上の損害(売上高の減少等の営業上の損失)について考えるに、原告から直接かつ具体的算定方法は明示されていないし、被告からも自己の得た利益額等について明確な資料をあげての反論はなされていない。しかしながら、原告商品の前記周知商品表示は、不正競争防止法一条一項一号により保護されている結果、原告の独占的使用が認められたことになり、そのため一定の財産的価値を有するに至っているものと解すべきである。したがって、被告がこれを無断使用したことにより原告が財産上直接的な損害を被ったことは否定できない。ただ、その損害額については財産的価値が無体のものにかかわる関係上一見算定が困難であるように思われる。しかし、ひるがえって考えてみると、その価値は全く算定不能というのではない。それは、いまもし原告が当該独占表示の使用を他人に許諾した場合に得るであろう利益又は対価額(商標権の使用許諾料に相当する対価)によって直截的に表現されているものと考えるのが経験則に照して相当である。

当裁判所は、本件に現われた一切の事情を考慮して、原告が他人に原告商品の前記周知表示の使用を許諾して得るのであろう対価額は、当該他人即ち本件では被告が被告商品を販売して得た売上高の五パーセントの額をもって相当と考える。

次に、被告商品の売上高について検討するに、《証拠省略》によれば、被告は、①被告商品一について、昭和六三年四月に一〇〇台を、②被告商品二について、平成元年三月に二四台を、同年一〇月に五四台の合計七八台をそれぞれ台湾から輸入したことが認められる。

販売価格については、エンジンその他の付属品を除いた被告商品一の小売販売価格は一機当り一万六五〇〇円、同じく被告商品二のそれは二万五八〇〇円であると認められるので、これを基礎に計算する。販売数量は、これを直接明らかにする資料はないが、輸入後の在庫期間、平成三年一二月二五日現在で被告商品一の販売数量九二台、被告商品二の販売数量七〇台とする被告の主張も参酌して、損害計算との関係では、現時点で被告が前記各輸入数量を完売したことを前提に計算するのが相当である。

したがって、次の計算式により、本訴口頭弁論終結時(平成四年五月一二日)までの間の被告商品一の使用許諾対価額相当額は八万二五〇〇円、被告商品二の使用許諾対価額相当額は一〇万〇六二〇円で、両者の合計は一八万三一二〇円となる。

(1) 被告商品一

一万六五〇〇円×一〇〇×〇・〇五=八万二五〇〇円

(2) 被告商品二

二万五八〇〇円×七八×〇・〇五=一〇万〇六二〇円

そうすると、右一八万三一二〇円が原告の被った財産上の損害額と算定される。

(二) 次に営業上の信用毀損による損害の有無及び数額について検討する。

本件につき右財産上の損害の外に営業上の信用毀損に基づく損害賠償請求を認め得るか否かについては、被告の本件不正競争行為により侵害された営業上の利益が原告にとって単に右財産上の損害の賠償のみでは償い得ないと認めるべき特段の事情がある場合に限り、これを認め得ると解すべきであるところ、前記認定のとおり、原告商品については、日本国内で有名ブランドとしての信用が形成されており、また原告代表者によると、被告商品を購入したと思われる消費者から原告に対して、主翼のねじれ・曲がり、接着不良等についての苦情が寄せられ、原告商品に比して概して値段が三〇パーセント程度廉価であることについての問い合わせもあることが認められる。

そうすると、かかる品質の劣る商品が原告商品に類似した形態で、しかも安価に販売されるときは、原告商品のもつ信用か毀損され、ひいてはこれにより原告が無形の損害を蒙ることは明らかで、右損害は前示の財産上の損害の賠償のみでは到底償いきれないものというべきであり、本件に現れた諸般の事情を総合すると、その信用毀損による損害額は、前示の財産上の損害の外に、金五〇万円と認めるのが相当である。

以上によれば、原告の総損害額は、財産上の損害一八万三一二〇円と営業上の信用毀損による損害五〇万円の合計六八万三一二〇円となり、原告の損害賠償金請求は右の範囲でのみ理由がある。

3  (謝罪広告請求の可否)

《証拠省略》によれば、被告は模型のディスカウントストアであり、原告商品と被告商品の双方を取り扱っており、自らの商品について、「チップマンク二五完成機(JMC)リブ組カラーコーティング済完成機 初心者~ベテラン迄 美しい完成機(同じ頁には『JMC完成機シリーズはOKEZシリーズの特許申請に反するものではありません。品質の良い品、完成機をお求め易い価格でお求め下さい。』との記載がある。)」と題した被告商品一の宣伝広告(昭和六三年七月号)を掲載し、本訴提起後も、「P―五一Dムスタング四〇完成機 カラーコーティング済完成機四〇クラス 美しい完成機」と題した宣伝広告(平成元年七月号)を掲載する一方で、原告商品についても、「OK EZシリーズ 二七%~三〇%引! EZシリーズの空中分解事故に関して当社は責任を負いかねますので御了承下さい」と題した原告商品の廉売広告(平成三年九月号)を掲載する(但し、《証拠省略》を総合すると、現実に需要者から被告に対し原告商品の購入申込があった場合、被告が問屋からこれら原告商品を仕入れることができるのかは誠に疑わしく、それができない場合、原告商品の代替品として、被告商品の購入を顧客に勧めるのではないかとの疑問を禁じ得ない。)など原告に対し一貫して挑戦的な態度に終始していることが認められる。

しかし、本件に現れた一切の事情を総合考慮すると、被告商品の輸入販売の差止請求及び信用毀損等による損害賠償金請求を認容する本件において、更にその上に被告をして信用回復措置としての謝罪広告をさせる必要があるとまでは認められないから、原告の謝罪広告請求は理由がない。

(著作権法に基づく請求について)

一  争点(一)(原告説明書が著作物にあたるか、著作者は原告か)について

《証拠省略》によれば、原告の従業員は、原告が昭和五七年末頃に原告商品一を、昭和六一年一〇月頃に原告商品二をそれぞれ発売するに際して、いずれもその頃、原告の発意に基づいて、職務上、原告が製造販売する右各商品の説明書である原告説明書をそれぞれ執筆し作成したこと、原告説明書一は、別紙原告説明書目録一記載のとおり、表題に「EZ SUPER CHIPMUNK CONSTRUCTION GUIDE」(EZスーパーチップマンク組立説明書)と題するとともに完成品のスケッチを配し、A四判印刷表紙二頁と本文一三頁で、原告商品一についてのパーツ一覧表、組立方法の説明、飛行・操縦方法の説明等が写真、図及び英文で記載されていること、原告説明書二は、別紙原告説明書目録二記載のとおり、表題に「EZ P―51D MUSTANG CON-STRUCTION GUIDE」(P―五一Dムスタング組立説明書)と題するとともに完成品のスケッチを配し、A四判印刷表紙を含め全文一六頁で、原告商品二についてのパーツ一覧表、組立方法の説明、飛行・操縦方法の説明等が写真、図及び英文で記載されていること、当時組立説明書の記載が不十分なために生じたと思われる無線操縦用模型飛行機の事故か多発していたため、原告としては、詳細で分りやすい説明書を作成する企画を立て、掲載する写真の撮影方法、掲載枚数、説明文の文章の簡潔化、明確化等の点について種々工夫する、舵角の調整等飛行方法など関連事項についても適切にコメントするなどの点に配慮し、時間をかけて右説明書を作成したことが認められる。そして、原告説明書は、表現の形式ないし仕方に独自性があり、いずれもその著作者の思想を創作的に表現したものであって学術の範囲に属するものであり、著作権法二条一項一〇号にいう著作物にあたると認めることができ、原告はその著作者であり、同時に著作権者であるというべきである。

二  争点(二)(被告説明書が原告説明書の複製にあたるか)について

《証拠省略》に基づき、表裏の表紙部分を除いて、原告説明書と被告説明書の表現を対比すると、前者が主として写真を利用して説明しているのに対し、後者は専ら図面を利用して説明していることのほかに、両者の間には別紙説明書対比一覧表一、二記載の各相違点があることが認められる。

しかしながら、以上の相違点はあるものの、その余の表現は両者とも同一であり、右の相違点にしても、各表現全体の中ではいずれも極めて微細な部分にとどまり、更に被告説明書が利用している図面はその体裁からして、明らかに原告説明書に掲載されている対応の各写真の上からトレースして筆写されたと認められるものであって、両者はその構成及び頁数においても全く同一である。

ところで、著作物の複製とは、原著作物を印刷等の方法により有形的に再製することであるが、多少の修正増減があっても原著作物の同一性を変じない限り、同一物の複製にあたると解されるところ、被告説明書は、最初に創作された原告説明書に前示のような多少の修正増減を加えたに過ぎず、著作物の同一性を失っていないものと認められるから、前者は後者の複製物にあたることは明らかである。

三  争点(三)(輸入頒布禁止請求の可否)

被告説明書を、誰が、何時、何処で、どのようにして作成したものかは本件全証拠によるも詳らかではない。しかしながら、被告説明書が原告の許諾なく無断で作成されたことは明らかであり、被告説明書の輸入及び頒布行為は著作権法一一三条所定のみなし侵害行為に該当する。被告商品に組立説明書が添付されるのは通例のことであり、被告では被告商品のみならず原告商品も取り扱っていたのであるから、被告において被告説明書を国内において頒布する目的があったこと及び被告説明書が原告説明書の複製物であることを知っていたことを容易に推認することができる。

そして、前記認定説示のとおり被告が被告製品の輸入・宣伝広告・販売を現在もなお継続していることなどの事情に照すと、被告が右著作権侵害行為を既に停止したということはできず、将来再び右著作権侵害行為を行うおそれも多分にあるものと認められる。

したがって、原告の著作権法に基づく請求は理由がある。

第四結論

以上によれば、原告の本訴請求は、不正競争防止法に基づき、被告商品の輸入・販売の禁止、在庫商品の廃棄、損害金六八万三一二〇円の支払を求める限度で理由があり、著作権法に基づく請求は理由がある。

(裁判長裁判官 庵前重和 裁判官 小澤一郎 辻川靖夫)

<以下省略>

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