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大阪地方裁判所 昭和63年(ワ)3634号 判決 1994年3月24日

大阪市東成区神路四丁目一二番一六号

原告

株式会社ニシワキ

右代表者代表取締役

西脇清

右訴訟代理人弁護士

山西健司

蔵重信博

大阪市東成区深江北三丁目七番二二号

被告

大阪パイプ加工株式会社

右代表者代表取締役

佐々木範二

右訴訟代理人弁護士

中嶋邦明

松田成治

右輔佐人弁理士

鎌田文二

東尾正博

鳥居和久

主文

一  原告の請求を棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第一  請求の趣旨

被告は、原告に対し、金三〇〇〇万円及びこれに対する昭和六三年四月二八日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二  事案の概要

一  原告の実用新案権(争いがない)

原告は、機械工具等の販売を業とする会社であり、次の実用新案権(以下、その考案を「本件考案」という。)を有している。

登録番号 第一三〇一八四六号

考案の名称 フレキシブル撹拌機

出願日 昭和四九年一一月一九日(実願昭四九-一四〇二〇一)

出願公告日 昭和五四年一月一七日(実公昭五四-八二四)

登録日 昭和五四年八月三〇日

請求公告日 平成三年一〇月三一日

実用新案登録請求の範囲 別添登録実用新案審判請求公告公報(以下「審判公報」という。)参照

「薬液貯溜槽は撹拌されるべき薬液を貯溜可能であり、しかもその薬液貯溜槽近傍には、上記薬液内に臨む吸引口を介して所定の吐出口へと薬液をポンプ作用により強制的に移送する動力噴霧機等のポンプ構造体が設けられ、且つ該ポンプ構造体から取り出した回転動力により上記貯溜槽内の薬液を撹拌するフレキシブル撹拌機において、上記ポンプ構造体の動力取出部へ着脱自在に且つ一体回転可能に連結され、その取付周辺部が連結用支持体によって被覆状態に支持される伝動受体を、屈撓可能なフレキシブル軸の一端部へ取付け、そのフレキシブル軸の他端部には、これと一体回転し且つその取付周辺部が別な連結用支持体によって被覆状態に支持される撹拌用スクリューと、その撹拌用スクリューを上記薬液との接触可能に被覆し且つ貯溜槽内の底壁に定着させるスクリューカバーとを取付け、上記両連結用支持体の相互間にフレキシブル軸の外周面と空隙を保つように介挿固定され、且つそのフレキシブル軸に応じて屈撓のみ可能なサポートホースにより、フレキシブル軸の外周面を被覆したことを特徴とするフレキシブル撹拌機。」

なお、本件考案の実用新案登録時の出願願書添付明細書及び図面(以下「原明細書」及び「原図面」という。)は、別添実用新案公報(以下「公告公報」という。)記載のとおりであったが、原告が平成元年二月二七日特許庁に請求した実用新案登録訂正審判請求事件(平成元年第三四二六号)の審決により、審判公報記載の訂正明細書及び図面のとおり訂正された。

二  本件考案の構成要件及び作用効果(争いがない)

1  構成要件

(一) 薬液貯溜槽は撹拌されるべき薬液を貯溜可能であり、しかもその薬液貯溜槽近傍には、上記薬液内に臨む吸引口を介して所定の吐出口へと薬液をポンプ作用により強制的に移送する動力噴霧機等のポンプ構造体が設けられ、且つ該ポンプ構造体から取り出した回転動力により上記貯溜槽内の薬液を撹拌するフレキシブル撹拌機であること。

(二) ポンプ構造体の動力取出部へ着脱自在に且っ一体回転可能に連結され、その取付周辺部が連結用支持体によって被覆状態に支持される伝動受体を、屈撓可能なフレキシブル軸の一端部へ取付けてあること。

(三) そのフレキシブル軸の他端部には、これと一体回転し且つその取付周辺部が別な連結用支持体によって被覆状態に支持される撹拌用スクリューと、その撹拌用スクリューを上記薬液との接触可能に被覆し且つ貯溜槽内の底壁に定着させるスクリューカバーとを取付けてあること。

(四) 上記両連結用支持体の相互間にフレキシブル軸の外周面と空隙を保つように介挿固定され、且つそのフレキシブル軸に応じて屈撓のみ可能なサポートホースにより、フレキシブル軸の外周面を被覆したこと。

2  作用効果

極めて簡略な構造のもとに、撹拌域を貯溜槽内の全体として、薬液の撹拌効率が向上する。したがって、薬液噴霧として同撹拌機を利用すれば、混合比が常に所定の状態で噴霧され、ここに噴霧対象物をいたずらに損することなく均等な防除効果が発揮される。

三  被告は、遅くとも昭和六〇年四月から、別紙イ号物件目録記載のフレキシブル撹拌機(以下「イ号物件」という。)を業として製造、販売している。

四  イ号物件は、後記争点1の構成を除き、本件考案のその余の構成要件をすべて具備している(弁論の全趣旨)。

五  請求

原告は、イ号物件が本件考案の技術的範囲に属することを理由に、被告に対し、不法行為による損害賠償金九〇〇〇万円(被告が昭和六〇年四月一日から昭和六三年四月一日までの間に販売したイ号物件四万五〇〇〇台×一台当たりの利益二〇〇〇円)の内金三〇〇〇万円及びこれに対する不法行為後(訴状送達日の翌日)である昭和六三年四月二八日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求めた。

六  争点

1  イ号物件は本件考案の構成要件(三)の「貯溜槽内の底壁に定着させるスクリューカバー」を具備するか。

2  被告が損害賠償責任を負担する場合、原告に生じた損害金額

第三  争点に関する当事者の主張

一  争点1(底壁に定着させるスクリューカバーを具備するか)

【原告の主張】

1 本件考案の実用新案登録請求の範囲には、「撹拌用スクリューを上記薬液との接触可能に被覆し、且つ貯溜槽内の底壁に定着させるスクリューカバーとを取付け」と記載されており、スクリューの回転方向や、水流方向について一切限定されていない。被告は、願書添付の図面のみから、本件考案が、スクリューカバーの下部から上部へ向かって水流を起こすことによって、スクリューカバーを底壁に定着させることを構成要件としているが如き主張をするが、これは、本件考案を意図的に減縮解釈するもので不当である。願書添付図面は、実施の一例を示したに過ぎず、その構成要件は実用新案登録請求の範囲に記載された如く、「貯溜槽内の底壁に定着される」ことである。

2 そして、イ号物件は、検証結果からも明白な如く、撹拌中、被告主張のように「浮遊状態」にはなく、貯溜槽の底壁に定着しており、明らかに本件考案と同じ作用効果を持つものである。イ号物件は、検証時において、僅かに貯溜槽の底壁を移動し、壁に当たって停止するという動きは見せたものの、右動きは、スクリューに連結されたパイプの太さや羽根の角度、回転速度、パイプのねじれ等が原因となって生じるものであり、「スクリューカバーが貯溜槽の底壁に定着する」という概念の範疇に属することには、何ら変わりはない。

イ号物件は、スクリューの後ろから前に水流を起こさせるものであったとしても、水流はイ号物件のスクリューカバーに装着された底板にぶつかり、カバーを下方向へ押す力を生じさせ、結果的には貯溜槽の底壁に定着させる作用を持っている。

【被告の主張】

本件考案は、「スクリューカバーが底壁に定着すること」を必須の構成要件としており、この構成要件を備えていないイ号物件は、本件考案の技術的範囲に属しない。

1 「スクリューカバーが底壁に定着すること」が本件考案の必須の構成要件であることは、次の諸点からみて明白である。

(一) 実用新案登録請求の範囲に、「貯溜槽内の底壁に定着させるスクリューカバー」と明記されている(審判公報5頁左欄下から4行~3行)。

(二) 本件考案の構成要件のうち、スクリューカバーの底壁への定着以外の構成は、全て、本件考案の出願前から存在した公知技術である。すなわち、

(1) 本件考案の「伝動受体」は、実公昭三〇-八二七九号公報(乙一)に掲載の噴霧機の消毒用薬剤貯槽における投込式撹拌器の考案(以下「先行技術(一)」という。)にいう「接手5」に該当し、本件考案の「屈撓可能なフレキシブル軸」は、先行技術(一)にいう「蔓巻発条4」及び「蛇管7」に該当するし、また、特公昭四六-二八二七六号公報(乙二)に掲載の密封撹拌槽用撹拌装置の発明(以下「先行技術(二)」という。)にいう「屈撓性軸6」に該当する。

(2) 本件考案の「撹拌用スクリュー」は、先行技術(一)にいう「プロペラ1」に、本件考案の「スクリューカバー」は、先行技術(一)にいう「金網体8」に各該当する。

(3) 本件考案の「サポートホース」は、先行技術(一)にいう「ビニール管6」及び先行技術(二)にいう「屈撓性管4」に各該当する。

(三) 考案の詳細な説明には、「スクリューカバーを底壁に定着させること」が、本件考案の目的を達成し、その作用効果を奏するために必要不可欠なものとして記載されている。すなわち、

(1) 本件考案の目的は、「撹拌用スクリューを貯溜槽の底壁に定着可能とすることにより、薬液の対流状態が貯溜槽内の全域に及ぶように企図されたフレキシブル撹拌機を提供するにある。」(審判公報5頁右欄下から2行~6頁左欄上から2行)と明記されている。

(2) 本件考案の作用は、第一に、「撹拌用スクリュー21が貯溜槽2内の底壁に定着されるため・・比重大なる薬液3は積極的に拡散されて、撹拌機能が貯溜槽2内の全域に亘って行なわれる。」(審判公報6頁右欄上から12行~18行)ことであり、もう一つの作用は、「この設定状態(被告注記-スクリューカバーを底壁に定着させた状態)において撹拌用スクリュー21は定位置に安定良く吸着されるので、フレキシブル撹拌機17の全体が貯溜槽2に対して衝当することなく、更に振れ動くこともなく、伝動トルクを全て撹拌力に変換し得るのである。」(審判公報6頁右欄上から19行~23行)ことであると明記されている。

(3) 原告は、本件考案が「スクリューカバーを底壁に定着させる」ことを必須構成要件とすることを明らかにするため訂正審判の請求を行い、その結果、明細書は、次のとおり、その趣旨に従って訂正されている。

<1> 原明細書の考案の詳細な説明中の「貯溜槽内において自由にあるいは貯溜槽内において定着状態で」という記載(公告公報2欄1行~2行)が、「そのスクリューカバーが貯溜槽内の底壁へ定着された状態で」という記載(審判公報5頁右欄下から10行~9行)に訂正され、同様に原明細書の考案の詳細な説明中の「撹拌用スクリューを貯溜槽底壁等の内周壁に定着可能とすることにより」という記載(公告公報2欄9行~11行)が、「撹拌用スクリューを貯溜槽の底壁に定着可能とすることにより」という記載(審判公報5頁右欄下から2行~1行)に訂正されている。

<2> 原明細書の考案の詳細な説明中、スクリューカバーが底壁に定着していない状態についての記載(公告公報3欄26行~35行)及び願書添付図面中の同状態を示す図面(第3図Ⅰ)が、全て削除されている。

<3> 原明細書の考案の詳細な説明中の「第3図Ⅱ・・同図示により明白な如く薬剤等液体3は撹拌用スクリュー21で貯溜槽2内上位を介して強制対流させられ」という記載(公告公報3欄36行~40行)が、「同図(第3図)から明白な如く、撹拌用スクリュー21が貯溜槽2内の底壁に定着されるため、薬液3は撹拌用スクリュー21で貯溜槽2内を強制対流させられ」という記載(審判公報6頁右欄上から12行~15行)に訂正され、本件考案の作用が「スクリューカバーを底壁に定着させること」によって生じるものであることが明記されるに至っている。

(四) 「スクリューカバーが底壁に定着すること」の意味

本件考案の必須構成要件である「スクリューカバーが底壁に定着すること」の意味は、「スクリューカバーが底壁に吸着し、貯溜槽に衝当したり、振れ動いたりしないこと」である。

(1) 本件考案の奏する作用効果は、スクリューカバーが底壁に定着されるため、比重が重い薬液が積極的に拡散され、撹拌機能が貯溜槽内の全域に亘って行われること、及び底壁においてスクリューカバーが定位置に安定良く吸着されるので、撹拌機が貯溜槽に衝当することもなく、振れ動くこともないことである旨明記されている(審判公報6頁右欄上から11行~23行)。右作用を奏するためには、スクリューカバーが底壁に吸着し、貯溜槽に衝当したり、振れ動いたりしないことが必要である。右の状態が充足されることにより、貯溜槽底部の比重の重い薬液を積極的に拡散することが可能になるからである。

(2) 「定着」とは、一定の場所から動かないことを意味し、また、訂正明細書の考案の詳細な説明中の作用効果に関する説明として、底壁において「撹拌用スクリュー21は定位置に安定良く吸着されるので、フレキシブル撹拌機17の全体が貯溜槽2に対して衝当することなく、更に振れ動くこともなく」と記載されている(審判公報6頁右欄上から19行~22行)ことからみれば、「スクリューカバーが底壁に定着する」とは、スクリューカバーが底壁において一定の場所から動かないことを意味し、これは、まさに「スクリューカバーが底壁に吸着すること」を意味するものにほかならない。

2 イ号物件においては、プロペラカバーは貯溜槽の底壁に定着しない。

(一) 検証結果によれば、イ号物件は、プロペラカバーが底壁から浮き上がり、決して底壁に吸着しない。また、イ号物件は、プロペラを回転させた場合には、プロペラカバーが急速に移動して振れ動き、貯溜槽に衝当する。

(二) 右の結果は、イ号物件の構造から必然的に発生するものである。

(1) イ号物件では、プロペラ3の羽根が、回転方向の前縁が後縁よりも上方、すなわちカップリング4側に位置するようにねじれているため、プロペラ3を回転させると上方から下方、すなわちプロペラカバー10の篭体11側から底板12側に向かって水流が生じる。そして、底板12には扇形の四つの貫通孔が形成されているため、右の水流がこの貫通孔を通って貯溜槽の底壁に当たり、それによってプロペラカバーが底壁から浮き上がり、振れ動いて貯溜槽に衝当するという結果を生じるものである。プロペラカバー10の底部は、水平な金属版(底板12)となっており、仮に、この状態でプロペラカバーを貯溜槽の底壁に定着させると、プロペラカバーの底板と貯溜槽の底壁とが密着してしまい、プロペラによる水流が弱くなり、十分な撹拌効果が得られない。

(2) これに対し、本件考案は、スクリューカバーの下部(貯溜槽の底壁側)から上部へ向かって水流を起こすことによって、スクリューカバーが貯溜槽の底壁に吸着されるようにして、スクリューカバーを貯溜槽の底壁へ定着させている(訂正後の願書添付図面第3図、審判公報6頁右欄上から19行~20行)。

第四  争点に対する当裁判所の判断

一  争点1(底壁に定着させるスクリューカバーを具備するか)

1  「貯溜槽の底壁に定着させるスクリューカバー」の意味

(一) 訂正明細書及び図面の記載

訂正明細書の実用新案登録請求の範囲には、「その撹拌用スクリューを上記薬液との接触可能に被覆し且つ貯溜槽内の底壁に定着させるスクリューカバー」と記載され、また、考案の詳細な説明中には、本件考案の目的の一つとして、「撹拌用スクリューを貯溜槽の底壁に定着可能とすることにより、薬液の対流状態が貯溜槽内の全域に及ぶように企図されたフレキシブル撹拌機を提供するにある。」と記載されている(審判公報5頁右欄下から2行~6頁左欄上から2行)。そして、一般に「定着」とは、「しっかりとつくこと、固着して容易に離れなくなること」を意味するから(広辞苑第四版一七五〇ページ)、右実用新案登録請求の範囲にいう「底壁に定着させるスクリューカバー」とは、スクリューカバーの底板が薬液貯溜槽の底壁にしっかりと着き、その場所から容易に移動しなくなるものを意味するものと解される。

また、実施例を示す図面のうち、使用状態の概念模式図である第1図、撹拌用スクリューによる薬液の撹拌作用を示す説明図である第3図は、いずれもスクリューカバー29の底板が貯溜槽2の底壁に接したまま動かない状態で、槽内の薬液が底部から上方に向けて対流している状態を示しており、右実施例の説明として、考案の詳細な説明中には、「第3図はこの考案の作用説明図であるが、同図から明白な如く、撹拌用スクリュー21が貯溜槽2内の底壁に定着されるため、薬液3は撹拌用スクリュー21で貯溜槽2内を強制対流させられ、同対流状態は殊に貯溜槽2の底部近傍をその強制作用源とするので、上記比重大なる薬液3は積極的に拡散されて、撹拌機能が貯溜槽2内の全域に亘って行なわれる。」(審判公報6頁右欄上から11行~18行)、「又、この設定状態において撹拌用スクリュー21は定位置に安定良く吸着されるので、フレキシブル撹拌機17の全体が貯溜槽2に対して衝当することなく、更に振れ動くこともなく、伝動トルクを全て撹拌力に変換し得るのである。」(審判公報6頁右欄上から19行~23行)と記載されている。

(二) 先行の公知技術

本件実用新案登録出願当時、本件考案に近似する次の技術が公然知られていた。

(1) 噴霧機の消毒用薬剤貯槽における投込式撹拌器-先行技術(一)(実公昭三〇-八二七九号公報、乙一)

この先行技術(一)は、互いに接触されたビニール管及び蛇管内に接手に接続した蔓巻発条及び取着軸を挿通し、該取着軸の端部にプロペラを固着し、プロペラの周囲を金網体で包囲し該金網体の底面に架設した保強板に軸承を突設して取着軸の端部を承け、上面に固定した承具にビニール管を嵌着固定する構造の噴霧機の消毒薬剤貯槽における投込式撹拌器である。

先行技術(一)と本件考案とを対比すると、先行技術(一)にいう<1>ビニール管及び蛇管、<2>蔓巻発条、<3>プロペラ、<4>金網体、<5>金網体の底面に架設した保強板が、本件考案にいう<1>サポートホース、<2>屈撓可能なフレキシブル軸、<3>スクリュー、<4>スクリューカバー、<5>底板に順次該当するものと認められ、本件考案は、基本的構成において先行技術(一)と殆ど同一であることが明らかである。

<2> 密封撹拌槽用撹拌装置-先行技術(二)(特公昭四六-二八二七六号公報、乙二)

この先行技術(二)は、駆動装置、撹拌器及び駆動装置と撹拌器との間の軸を有し、撹拌器が槽中に振動運動可能に掛止されている、密封撹拌槽用撹拌装置において撹拌器が屈撓性管により槽の蓋に設置されており、中空撹拌器の内部回転可能の偏心体が設置され、該偏心体が屈撓性軸により管を貫通してモータと結合されている構造の密封撹拌槽用撹拌装置である。

先行技術(二)は、密封槽の蓋から一体に延伸する屈撓性管を通じて、槽外に設けられたモーターの運動が中空撹拌器内の偏心体に伝わり、右偏心体が中空体内で円軌道で回転することによって、その反力で中空体及び全撹拌器が円振動し、貯溜槽内の薬液が十分撹拌されるというものである。

(三) 実用新案登録出願から登録査定までの経緯

本件実用新案の登録出願当時の明細書(乙四)の実用新案登録請求の範囲には、現在の「貯溜槽内の底壁に定着させるスクリューカバー」という記載はなく、右に該当する部分は、当初「上記貯留槽内周壁にスクリューカバーのみが当接するように設定されている。」と記載され、考案の詳細な説明には、「適宜フレキシブル軸等の設定長に応じて、撹拌用スクリューを貯溜槽底壁等の内周壁に定着可能とする」という記載があり、実施例を示す図面として、貯溜槽内の薬液中に浮遊したスクリューカバーが、スクリューの回転により生じる薬液の反作用に伴い、薬液中で左右に振れ動いている状態を示す第3図Ⅰとスクリューカバーの底板が貯溜槽の底壁に定着した使用状態を示す第3図Ⅱの両方が掲載されていた。

ところが、本件考案は、昭和五二年六月七日、前記特公昭四六-二八二七六号公報に記載の発明(先行技術(二))に基づき当業者がきわめて容易に考察することができたという理由で特許庁審査官により拒絶理由通知がなされたため(乙六)、原告は、同年九月五日付意見書(乙七)を提出し、「本願考案では、槽内に挿入されたフレキシブル軸の撹拌用スクリュが、その液体流動許容を兼ねたスクリュカバーの槽壁に対する当接を介して、槽の底壁に定着使用されるものであり、そのため槽ヘフレキシブル軸等を固定する格別な機能を要せず、しかもそのスクリュは直接液体に接しつつ回転駆動されることにより撹拌作用するため、引例のものとはその構造のほか作用も全く異質であり」と主張するとともに(3頁9行~17行)、同日付手続補正書により、明細書を原明細書記載のとおり補正し、実用新案登録請求の範囲に「貯溜槽内の底壁に定着させるスクリューカバー」という記載を付け加えた。右補正の結果、特許庁審査官は、昭和五三年八月二八日、本件考案について出願公告の決定(乙八)をなし、昭和五四年五月四日登録査定をした(乙九)。

(四) 訂正審判請求書の記載及び訂正の内容

(1) 原告は、本件訴訟提起後、特許庁長官に平成元年二月二三日付で訂正審判請求書(甲八の1)を提出し、その中で、訂正の目的について、「本件考案における目的・構成・効果の対応関係(因果関係)が未だ漠然としており、その全体的な整合性や具体性に欠けると共に、・・・その表現の意味を正確に理解し難い点が多々存在する。」(4頁5行~12行)、「図面の第3図Ⅰに記載された所謂宙吊り使用状態の実施例では、そのフレキシブル軸が自由に振れ動くため、常に一定の確かな効果を得られるとは限らず、そのような使用法は実際上も殆んど採られていないので、これに基く撹拌作用の説明が含まれていることにより、更に一層本件考案の特徴が不明確となっている。」(4頁13行~19行)と主張した。

(2) さらに、原告は、請求公告時(平成三年一〇月三一日)までに、審判公報記載のとおり原明細書及び原図面を訂正したが、そのうち、「貯溜槽の底壁に定着させるスクリューカバー」に関係する訂正部分は、次のとおりである(甲二、乙一〇)。

<1> 原明細書考案の詳細な説明中に、「貯溜槽内において自由にあるいは貯溜槽内において定着状態で」(公告公報2欄1~2行)とあるのを、明瞭でない記載の釈明を目的として、「そのスクリューカバーが貯溜槽内の底壁へ定着された状態で、」と訂正した(審判公報5頁右欄下から10行~9行)。

<2> 原明細書考案の詳細な説明中に、「貯溜槽底壁等の内周壁に定着可能とすることにより」(公告公報2欄10行~11行)とあるのを、明瞭でない記載の釈明を目的として、「貯溜槽の底壁に定着可能とすることにより」と訂正した(審判公報5頁右欄下から1行)。

<3> 原明細書考案の詳細な説明中に、「第3図Ⅰは撹拌用スクリュー21が回動状態であって同スクリュー21が貯留槽2の底壁に到達しない構成を採る場合を示し、・・・撹拌作用する。」(公告公報3欄26行~35行)とあるのを、明瞭でない記載の釈明を目的として、全部削除した。

<4> 明瞭でない記載の釈明を目的として、原図面の第3図Ⅰ(公告公報3頁下段)を削除し、「第3図Ⅱ」を「第3図」と訂正した(審判公報7頁下段)。

<5> 右図面の訂正に関連して、原明細書の考案の詳細な説明中に、「又第3図Ⅱは撹拌用スクリュー21が貯留槽2底壁域に定着可能とされた場合の作用説明図であり、」(公告公報3欄36行~38行)とあるのを、明瞭ではない記載の釈明を目的として、「第3図はこの考案の作用説明図であるが、」と訂正した(審判公報6頁右欄上から11行)。

以上訂正審判請求書の記載及び訂正の内容によれば、原告は、原明細書からスクリューカバーが薬液中で自由に振れ動くものを除外するだけではなく、「底壁等の内周壁」を「底壁」に限定することにより、本件考案の対象から、貯溜槽の底壁上を移動し、スクリューカバーが内周壁に当たって停止した状態で使用されるものを積極的に除外していたと考える他はない。

(五) 以上のとおりであって、結局、本件考案は、物品自体の構成に新規な点がなく、スクリューカバーが底壁に固定されて動かない使用状態で薬液を対流攪拌するという一点においてのみ、先行の公知技術と異なる点を辛うじて指摘できる程度のものであるといわざるを得ないこと、登録査定に至る経緯においても、実用新案登録請求の範囲に「貯溜槽の底壁に定着させるスクリューカバー」という要件を加えることにより、初めて出願公告を得られたという事情があること、原告は、訂正審判において、貯溜槽内で自由に振れ動くもの、底壁以外の内周壁に当たって停止するものを明細書から意識的に除外し、本件考案の対象について、底壁に固着した状態で使用されるものに明確に限定したことに照らすと、本件実用新案登録請求の範囲にいう「底壁に定着させるスクリューカバー」とは、スクリューカバーの底板の貯溜槽底壁側全体が貯溜槽の底壁の一箇所にしっかりと着き、スクリューの回転に起因するフレキシブル軸等の振動によっても全く移動しないものに限られ、スクリューカバーが横移動したり、スクリューカバー底板の一部でも底壁から遊離したりするものは、本件考案の構成要件である「底壁に定着させるスクリューカバー」に含まれないといわざるを得ない。

2  イ号物件は、本件考案の構成要件(三)の「底壁に定着させるスクリューカバー」を具備するか。

(一) 当裁判所が平成五年一一月一一日実施した検証の結果によれば、イ号物件は、通常一般的に実用に供されている薬液貯溜槽の底面に最初篭体11下面の底板を定着させた状態にした後、動力装置を始動させ、通常使用する状態の回転速度でプロペラ(スクリュー)を回転させたところ、まず、先端プロペラカバー(スクリュー)の底板の左端側(動力装置から見ての左右をいう。以下同じ。)が少し水中に浮き、プロペラ(スクリュー)部が撹拌を継続した状態のままで、プロペラ(スクリュー)部を被覆したプロペラカバーが右側より左側に向けて急速に移動し、同底板が貯溜槽の左側内周壁に当たり、それが斜めに傾斜した後は移動をしなくなり、以後、その状態(底板の右端部は槽底面に接し、他方の左端部は槽内周壁に接し、その中間部は槽の底面にも内周壁にも接していない状態)のまま撹拌を継続していたことが認められる。

なお、原告が原告主張を支持する証拠として提出した、原告の自社テスト結果に関する報告書(甲九)でも、ドラム缶の中で、通常の使用回転(約八〇〇rpm)でイ号物件を回転させた場合、プロペラカバーは除々に横移動し、ドラム缶の側壁に当たって移動停止し攪拌を継続したとある。

(二) 以上によれば、イ号物件は、本件考案の構成要件(三)の「底壁に定着させるスクリューカバー」の要件を具備しないことは明らかである。

二  結論

以上のとおり、イ号物件は本件考案の技術的範囲に属しないから、その余の点について判断するまでもなく、原告の請求は理由がない。

(裁判長裁判官 庵前重和 裁判官 小澤一郎 裁判官 阿多麻子)

イ号物件目録

一、構造の説明

〔一〕 ゴムホース6内に、ビニール被覆を施した屈曲自在な金属チューブ5を挿通し、この金属チューブ5内に屈曲自在なワイヤ1をその両端が金属チューブ5の両端からそれぞれ突出するように挿通し、このワイヤ1の両端の一方に、プロペラシャフト2を介してプロペラ3を固定し、他方に回転動力体に対して着脱自在のカップリング4を設けた攪拌機である。

〔二〕 プロペラ3の各羽根は、回転方向の前縁が後縁よりも上方、即ちカップリング4側に位置するようにねじれている。

〔三〕 前記金属チューブ5両端の外周面には、ゴムホース6の内周面との間に金属製の補強パイプ7、8が被せられている。

〔四〕 前記ゴムホース6の先端部(プロペラ3側)の外周面と、プロペラシャフト2の外周面とにはプロペラシャフトケース9が被せられ、ゴムホース6はプロペラシャフトケース9に対して回転不能に固定され、プロペラシャフト2はプロペラシャフトケース9の内側に回転自在に支持されている。

〔五〕 前記プロペラシャフトケース9には、プロペラ3を覆うプロペラカバー10が固定されている。

〔六〕 前記プロペラカバー10は、下面が開放された籠体11と、籠体11の下面に取付けられる下面が平坦な底板12とによって構成され、底板12には四つの貫通孔が形成されている。

〔七〕 前記ゴムホース6の後端部(カップリング4側)の外周面には、金属製のジョイントパイプ13が、その一部がゴムホース6の後方側に突き出るように固定されている。

〔八〕 前記ゴムホース6の後方側に突き出たジョイントパイプには、ベアリングケース14が着脱自在に被せられ、ベアリングケース14に設けたロックピン15を、ジョイントパイプ13に設けたロック孔16に嵌め込むことによってベアリングケース14とジョイントパイプ13とが回転不能に固定されるようになっている。

〔九〕 前記ベアリングケース14の内側には、ベアリング17を介して前記カップリング4が回転自在に支持されている。

〔十〕 前記ワイヤ1の後端部は、角柱形に形成されており、前記カップリング4の先端側に設けた角孔に挿し込まれている。

(十一) 前記ジョイントパイプ13の外周面とゴムホース6の後方寄り部分の外周面には、ゴム製の曲り防止管13か被せられている。

(十二) 前記ゴムホース6の途中には、両端に鍔部20を有する固定用ゴムリング19がゴムホース6に対して長さ方向に移動自在に嵌められている。

二、作用の説明

攪拌槽内に、プロペラ3側を投入し、カップリング4に回転動力体を結合して、回転動力体を回転させると、回転動力体の回転はカップリング4を介してワイヤ1に伝達され、これによってワイヤ1が金属チューブ5内において回転し、プロペラシャフト2を介してプロペラ3が回転する。プロペラ3が回転すると、上方から下方、即ちプロペラカバー10の籠体11側から底板12側に向かって水流が生じる。

三、図面の説明

第1図は攪拌機の中途部分を省略した一部切欠き正面図、第2図はⅡ-Ⅱ線の断面図、第3図はプロペラカバー10の底板12を下方から見た斜視図、第4図(a)は上方から見て右回転用のプロペラのねじれ方向を示す図、第4図(b)は上方から見て左回転用のプロペラのね

第1図

<省略>

第2図

<省略>

第3図

<省略>

第4図

<省略>

じれ方向を示す図である。

四、図面の符号の説明

1……ワイヤ、 2……プロペラシャフト、

3……プロペラ、 4……カップリング、

5……金属チューブ、 6……ゴムホース、

7、8……補強パイプ、 9……プロペラシャフトケース、

10……プロペラカバー、 11……籠体、

12……底板、 13……ジョイントパイプ、

14……ベアリングケース、 15……ロックピン、

16……ロック孔、 17……ベアリング、

18……曲り防止管、 19……固定ゴムリング、

20……貫通孔。

(審判公報) <19>日本国特許庁(JP) <11>登録実用新案審判請求公告

<12>登録実用新案審判請求公告(I) 297

<51>Int.Cl.5B 01 F 7/00 識別記号 庁内整理番号 7224-4G

登録実用新案第1301846号(実公昭54-824号)

に関する訂正の審判請求事件

<24><45>公告 平3.10.31 審判請求 平1.2.27 審判番号 平1-3426

<70>請求人 株式会社ニシワキ 大阪市東成区神路4丁目12番16号

<54>フレキシブル攪拌機

審判請求の要旨

本件審判請求の要旨は、実用新案登録第1301846号の明細書及び図面(以下、「原明細書」及び「原図面」という。)を本件審判請求書に添付された訂正明細書及び訂正図面のとおり、すなわち、

1 実用新案登録請求の範囲において「貯溜槽」とあるのを、実用新案登録請求の範囲の減縮を目的として、「薬液貯溜槽」と訂正し、それに伴い、

原明細書第2頁第4行(公告公報第1欄第32行)の貯留槽」、

同第2頁第14行(同第2欄第5行)の「貯留槽」、

同第3頁第4行(同第2欄第15行)の「液剤タンクたる「貯留槽」

同第8頁第11行(同第5欄第1行)の「貯留槽」、

をそれぞれ「薬液貯溜槽」と訂正し、

2 実用新案登録請求の範囲において「薬液等の液体」及び「液体」とあるのを、実用新案登録請求の範囲の減縮を目的として、それぞれ「薬液」と訂正し、それに伴い、

原明細書第2頁第4行(公告公報第1欄32行)の「薬液等液体」、

同第2頁第8行(同第1欄第36行)の「液体」、

同第2頁第11行(同第2欄第2行)の「液体」、

同第3頁第5行(同第2欄第16行)の「薬剤たる液体」、

同第3頁第8行(同第2欄第19行)の「液体」、

同第4頁第18~19行(公告公報第3欄第14行)の「薬剤」、

同第5頁第8行(同第3欄第24行)の「薬剤等液体」、

同第8頁第11~12行(同第5欄第1~2行)の「薬剤(液)等液体」

をそれぞれ「薬液」と訂正し、

3 実用新案登録請求の範囲において「ポンプ移送する」とあるのを、明瞭でない記載の釈明を目的として、「ポンプ作用により強制的に移送する」と訂正し、

4 実用新案登録請求の範囲において「ポンプ構造体が設けられたものにおいて、」とあるのを実用新案登録請求の範囲の減縮を目的として、「ポンプ構造体が設けられ、かつ該ポンプ構造体から取り出した回転動力により上記貯溜槽の薬液を攪拌するものにおいて」と訂正し、

5 実用新案登録請求の範囲において「着脱自在に連結される」とあるのを、実用新案登録請求の範囲の減縮を目的として、「着脱自在に且つ一体回転可能に連結され、その取付周辺分が連結用支持体によつて被覆状態に支持される」と訂正し、

6 実用新案登録請求の範囲において「伝導受体を」とあるのを、誤記の訂正を目的として、「伝動受体を、」と訂正し、それに伴い、

原明細書第4頁第8行(公告公報第3欄第2行)の「伝導受体」、

同頁第19~20行(同欄第15行)の「伝導受体」

をそれぞれ「伝動受体」と訂正し、

7 実用新案登録請求の範囲において「フレキシブル軸の一端部」とあるのを、実用新案登録請求の範囲の減縮を目的として、「屈撓可能なフレキシブル軸の一端部」と訂正し、

8 実用新案登録請求の範囲において「同じくフレキシブル軸の他端部には」とあるのを、明瞭でない記載の釈明を目的として、「そのフレキシブル軸の他端部には、」と訂正し、

9 実用新案登録請求の範囲において「一体回転する攪拌用スクリユーと、同スクリユーを」とあるのを、実用新案登録請求の範囲の減縮を目的として、「一体回転し且つその取付周辺部が別な連結用支持体によつて被覆伏態に支持される攪拌用スクリユーと、その攪拌スクリユーを」と訂正し、

10 実用新案登録請求の範囲において「同フレキシブル軸の外周面を屈撓のみ可能なサポートホースによりと被覆すると共に、」とあるのを、実用新案登録請求の範囲の減縮を目的として、「上記両連結用支持体の相互間にフレキシブル軸の外周面と空隙を保つように介挿固定され、且つそのフレキシブル軸に応じて屈撓のみ可能なサポートホースによりフレキシブル軸の外周面を被覆し」と訂正し、

11 明瞭でない記載の釈明を目的として、実用新案登録請求の範囲における「スクリユーカバーとを取付け」の次に「、」を挿入し、その後に、前項10の訂正後の「上記連結…を被覆し」を移動させ、

12 原明細書第2頁第5~6行(公告公報第1欄第33~34行)に「ポンプ構造体に対し、同構造体の動力取出軸」とあるのを、明瞭でない記載の釈明を目的として、「ポンプ構造体の動力取出部」と訂正し、

13 原明細書第2頁第7行(公告公報第1頁第35行)に「フリー端」とあるのを、明瞭でない記載の釈明を目的として、「先端部」と訂正し、

14 原明細書第2頁第10~11行(公告公報第2欄第1~2行)に「貯留槽内において自由にあるいは貯留槽において定着状態で」とあるのを、明瞭でない記載の釈明を目的として、「そのスクリユーカバーが貯溜槽内の底壁へ定着された状態で、」と訂正し、

15 原明細書第2頁第14行(公告公報第2欄第5行)に「で攪拌域」とあるのを、明瞭でない記載の釈明を目的として、「での攪拌域」と訂正し、

16 原明細書第2頁第18行(公告公報第2欄第9行)に「設定長」とあるのを、誤記の訂正を目的として、「設定長さ」と訂正し、

17 原明細書第2頁第19行(公告公報第2欄第10行)に「貯留槽底壁等の内周壁」とあるのを、明瞭でない記載の釈明を目的として、「貯溜槽の底壁」と訂正し、

18 原明細書第2頁第20行(公告公報第2欄第11行)に「対流状態が液体全域」とあるのを、明瞭でない記載の釈明を目的として、「薬液の対流状態が貯溜槽内の全域」と訂正し、

19 原明細書第3頁第3行(公告公報第2欄第14行)の「第1図」の後に、明瞭でない記載の釈明を目的として、「はポンプ構造体とフレキシブル攪拌機の連結使用状態を表わしており、」を挿入し、

20 原明細書箪3頁第3行(公告公報第2欄第14行)に「動力噴霧機たる」とあるのを、明瞭でない記載の釈明を目的として、「動力噴霧機として具体化された」と訂正し、

21 原明細書第3頁第5行(公告公報第2欄第16行)に「各指示する。」とあるのを、誤記の訂正を目的として、「各々指示する。」と訂正し、

22 原明細書第3頁第7行(公告公報第2欄第18行)に「強制往復動される吸排源4を介して」とあるのを、明瞭でない記載の釈明を目的として、「強制的に往復運動される吸排源4を介して、」と訂正し、

23 原明細書第3頁第11~12行(公告公報第2欄第22~23行)に「同ポンプ構造体1における11は、クランク機構を示し、又12は運動ギヤたる動力取出部、」とあるのを、明瞭でない記載の釈明を目的として、「11はポンプ構造体1のクランク機構、12はその回転動力取出部、」と訂正し、

24 原明細書第3頁第13~14行(公告公報第2欄第24~25行)に「ここにおいて回転運動を往復動に」とあるのを、明瞭でない記載の釈明を目的として、「ここにおいて、回転運動を往復運動に」と訂正し、

25 原明細書第3頁第17行(公告公報第2欄第28行)に「各指示し」とあるのを、誤記の訂正を目的として、「各々示し、」と訂正し、

26 原明細書第4頁第1行(公告公報第2欄第32行)に「第2図示の」とあろのを、明瞭でない記載の釈明を目的として、「第2図に抽出拡大するような構造を備えた」と訂正し、

27 原明細書第4頁第2行(公告公報第2欄第33行)に「取付けられている。」とあるのを、明瞭でない記載の釈明を目的として、「取付けられる。」と訂正し、

28 原明細書第4頁第3行(公告公報第2欄第34行)に「回動側Aとサポート側B」とあるのを、明瞭でない記載の釈明を目的として、「それ自体回転する回転軸系統Aとこれを被覆状態に支持する軸受系統B」と訂正し、

29 原明細書第4頁第4行(公告公報第2欄第35行)に「回動側Aはフレキシブル軸18と」とあるのを、明瞭でない記載の釈明を目的として、「回動軸系統Aはフレキシブル軸18と、」と訂正し、

30 原明細書第4頁第5行(公告公報第2欄第36行)に「長手両端」とあるのを、明瞭でない記載の釈明を目的として、「両端部」と訂正し、

31 原明細書第4頁第6行(公告公報第2欄第37行)に「フリー端側の連結軸19端部」とあるのを、明瞭でない記載の釈明を目的として、「先端側連結軸19の端部」と訂正し、

32 原明細書第4頁第7行(公告公報第3欄第1~2行)に「さらに基端側の連結軸20端部」とあるのを、明瞭でない記載の釈明を目的として、「、さらに基端側連結軸20の端部」と訂正し、

33 原明細書第4頁第9行(公告公報第3欄第3行)に「サポート側」とあるのを、明瞭でない記載の釈明を目的として、「軸受系統」と訂正し、

34 原明細書第4頁第9~10行(公告公報第3欄第4行)に「外周域に配されて」とあるのを、明瞭でない記載の釈明を目的として、「外周面に配置されて」と訂正し、

35 原明細書第4頁第11行(公告公報第3欄第6行)に「支持体25、26間において」とあるのを、明瞭でない記載の訳明を目的として、「支持体25、26の相互間において」と訂正し、

36 原明細書第4頁第12~13行(公告公報第3欄第7~8行)に「に所望外域空間を残して覆設された」とあるのを、明瞭でない記載の釈明を目的として、「へ、その外周面と空隙を保つ被覆状態として介挿固定された」と訂正し、

37 原明細書第4頁第14行(公告公報第3欄第9行)に「フリー端側の」とあるのを、明瞭でない記載の釈明を目的として、「先端側」と訂正し、

38 原明細書第4頁第14行(公告公報第3欄第9行)に「外側」とあるのを、明瞭でない記載の釈明を目的として、「外周面」と訂正し、

39 原明畑書第4頁第15行(公告公報第3欄第10行)に「装備」とあるのを、明瞭でない記載の釈明を目的として、「固定」と訂正し、

40 原明細書第4頁第16行(公告公報第3欄第11行)に「外域」とあるのを、明瞭でない記載の釈明を目的として、「の周囲」と訂正し、

41 原明細書第4頁第16行(公告公報第3欄第11行)に「存して」とあるのを、明瞭でない記載の釈明を目的として、「保つて、且つそのスクリユー21が薬液と接触し得るように」と訂正し、

42 原明細書第4頁第17~18行(公告公報第3欄第13行)に「又第2図示より」とあるのを、明瞭でない記載の釈明を目的として、「又、第2図より」と訂正し、

43 原明細書第4頁第18行(公告公報第3欄第13~14行)に「回動側とサポート側」とあるのを、明瞭でない記載の釈明を目的として、「回転軸系統Aとその軸受系統B」と訂正し、

44 原明細書第4頁第20行~第5頁第1行(公告公報第3欄第15から16行)に「への固着手段たる止着具であり、」とあるのを、明瞭でない記載の釈明を目的として、「へ固定するための止着具である。」と訂正し、

45 原明細書第5頁第1~7行(公告公報第3欄第16~23行)に「同取出部12…設定されている。」とあるのを、明瞭でない記載の釈明を自的として、削除し、

46 原明細書第5頁第10行~19行(公告公報第3欄第26~35行)に「第3図(Ⅰ)は…攪拌作用する。」とあるのを、明瞭でない記載の釈明を目的として、削除し、

47 原明細書第5頁第20行~第6頁第2行(公告公報第3欄第36~38行)に「又第3図(Ⅱ)は攪拌用スクリユー21が貯留槽2底壁域に定着可能とされた場合の作用説明図であり、」とあるのを、明瞭でない記載の釈明を目的として、「第3図はこの考案の作用説明図であるが、」と訂正し、

48 原明細書第6頁第2~3行(公告公報第3欄第38~39行)に「同図示により明白な如く薬剤等液体3は攪拌用スクリユー21で貯留槽2内上位を介して」とあるのを、明瞭でない記載の釈明を目的として、「同図から明白な如く、攪拌用スクリユー21が貯溜槽2内に底壁に定着されるため、薬液3は攪拌用スクリュー21て貯溜槽2内を」と訂正し、

49 原明細書第6頁第3行(同第3欄第40行)に「貯留槽」とあるのを、誤記の訂正を目的として、「貯溜槽」と訂正し、

50 原明細書第6頁第5~6行(公告公報第3欄第42行)に「混合液」とあるのを、明瞭でない記載の釈明を目的として、「薬液3」と訂正し、

51 原明細書第6頁第6行(公告公報第3欄第42行)に「分散」とあるのを、明瞭でない記載の釈明を目的として、「拡散」と訂正し、

52 原明細書第6頁第6~7行(公告公報第3欄第42~43行)に「より完璧に」とあるのを、明瞭でない記載の釈明を目的として、「貯溜槽2内の全域に亘つて」と訂正し、

53 原明細書第6頁第8行(公告公報第3欄第44行~第4欄第1行)に「吸着状態とされている」とあるのを、明瞭でない記載の釈明を目的として、「安定良く吸着される」と訂正し、

54 原明細書第6頁第9行(公告公報第4欄第1行)に「攪拌機17全体は貯留槽2に対し任意に」とあるのを、明瞭でない記載の釈明を目的として、「フレキシブル攪拌機17の全体が貯溜槽2に対して」と訂正し、

55 原明細書第6頁第10~11行(公告公報第4欄第2~3行)に「又上記揺動動作をすることもなく伝導トルクを全て攪拌力に変換し得るものである。」とあるのを、明瞭でない記載の釈明を目的として、「更に振れ動くこともなく、伝動トルクを全て攪拌力に変換し得るのである。」と訂正し、

56 原明細書第6頁第12~19行(公告公報第4欄第5~12行)に「以上の如く構成…具備するものであり、ここに」とあるのを、実用新案登録請求の範囲の減縮に伴う訂正を目的として、「以上の如くこの考案の実用新案登録請求の範囲に記載された構成によれば、」と訂正し、

57 原明細書第6頁第19~20行(公告公報第4欄第13行)に「を基として、」とあるのを、明瞭でない記載の釈明を目的として、「のもとに、」と訂正し、

58 原明細書第6頁第20行~第7頁第3行(公告公報第4欄第13~16行)に「自から攪拌域を任意に選択しつつ広範囲に亘つて薬剤等液体3を攪拌でき、殊に上記攪拌用スクリユー21を貯留槽2底部に定着可能にすれば、」とあるのを、明瞭でない記載の釈明を目的として、削除し、

59 原明細書第7頁第3~4行(公告公報第4欄第16~18行)に「攪拌域を同槽2内の全体として攪拌効率が向上することは上記により明らかである。」とあるのを、明瞭でない記載の釈明を目的として、「攪拌域を貯溜槽2内の全体として、薬液3の攪拌効率が向上する。」と訂正し、

60 原明細書第7頁第6行(公告公報第4欄19行)に「所定なる」とあるのを、明瞭でない記載の釈明を目的として、「所定の」と訂正し、

61 原明細書第7頁第7行(公告公報第4欄第20行)に「不要に」とあるのを、明瞭でない記載の釈明を目的として、「いたづらに」と訂正し、

62 原明細書第7頁第7行(公告公報第4欄第20行)に「均等に」とあるのを、誤記の訂正を目的として、「均等な」と訂正し、

63 原明細書第7頁第8行~第8頁第4行(公告公報第4欄第21~38行)に「又、同薬剤を…併設することも自由である。」とあるのを、明瞭でない記載の釈明を目的として、削除し、

64 原明細書第8頁第6~7行(公告公報第4欄第40~41行)に「第1図はこの考案の一具体例を装置全体で示す概略説明図、」とあるのを、明瞭でない記蔵の釈明を目的として、「第1図は本考案のフレキシブル攪拌機をポンプ構造体に連結させた使用状態の概念模式図、」と訂正し、

65 原明細書第8頁第7~8行(公告公報第4欄第41~42行)に「第2図はフレキシブル攪拌機全体を示す縦断面図」とあるのを、明瞭でない記載の釈明を目的として、「第2図はそのフレキシブル攪拌機を抽出して示す一部切り欠き状態の拡大断面図、と訂正し、

66 原明細書第8頁第8~10行(公告公報第4欄第42~45行)に「第3図(Ⅰ)はこの考案の一実施例を示す作用説明図、第3図(Ⅱ)は他の実施例を示す作用説明図である。」とあるのを、明瞭でない記載の釈明を目的として、「第3図はその攪拌用スクリユーによる薬液の攪拌作用を示す説明図である。」と訂正し、

67 原明細書第8頁第14行(公告公報第5欄第4~5行)にある「攪拌用スクリユー」の後に、明瞭でない記載の釈明を目的として、「22…伝動受体」及び「25、26・連結用支持体」を加入し、

68 原図面の第3図において、明瞭でない記載の釈明を目的として、「第3図(Ⅰ)」を削除し、「第3図(Ⅱ)」を「第3図」と訂正することを求めるものである。

訂正明細書

<54>フレキシブル攪拌機

<57>実用新案登録請求の範囲

薬液貯溜槽は攪拌されるべき薬液を貯溜可能であり、しかもその薬液貯溜槽近傍には、上記薬液内に臨む吸引口を介して所定の吐出口へと薬液をポンプ作用により強制的に移送する動力噴霧機等のポンプ構造体が設けられ、且つ該ポンプ構造体から取り出した回転動力により上記貯溜槽内の薬液を攪拌するフレキシブル攪拌機において、

上記ポンプ構造体の動力取出部へ着脱自在に且つ一体回転可能に連結され、その取付周辺部が連結用支持体によつて被履状態に支持される伝動受体を、屈撓可能なフレキシブル軸の一端部へ取付け、

そのフレキシブル軸の他端部には、これと一体回転し且つその取付周辺部が別な連結用支持体によつて被履状態に支侍される攪拌用スクリユーと、その攪拌用スクリユーを上記薬液との接触可能に被覆し且つ貯溜槽内の底璧に定着させるスクリユーカバーとを取付け、

上記両連結用支持体の相互間にフレキシブル軸の外周面と空隙を保つように介挿固定され、且つそのフレキシブル軸に応じて屈撓のみ可能なサポートホースにより、フレキシブル軸の外周面を被覆したことを特徴とするフレキシブル攪拌機。

考案の詳細な説明

この考案はフレキシブル攪拌機に関し、より具体的には薬液貯溜槽内の薬液を、所定の吐出口へと強制的に移送可能なポンプ構造体の動力取出部に共動可能にフレキシブル軸が取付け可能とされ、このフレキシブル軸の先端部には攪拌用スクリユーが、薬液を攪拌可能に取付けられると共に、同スクリユーを包囲すろスクリユーカバーを設けて、そのスクリユーカバーが貯溜槽内の底璧へ定着された状態で、薬液の攪拌が可能とされたものであり、ここに目的とするところはフレキシブル軸の反撥支持作用を介して、攪拌用スクリユーは藥液貯溜槽内ての攪拌域を広範囲とし、さらにこの攪拌動作はフレキシブル軸及び同軸を包囲するサポートホースの可撓性を介して、極めて簡略かつ安価な構造て司能とされる一方、適宜フレキシブル軸等の設定長さに応じて、攪拌用スクリユーを貯溜槽の底壁に定着可能とすることにより、薬液の対流状態が貯溜槽内の全域に及ぶように企図されたフレキシブル攪拌機を提供するにある。

以下、図示する好適な具体例に従つてこの考案を説明すれば、第1図はポンプ構造体とフレキシブル攪拌機の連結使用状態を表わしており、1は動力噴霧機として具体化されたポンプ構造体、2は薬液貯溜槽、3は同槽2内の薬液を各々指示する。

上記ポンプ構造体1はプランジヤあるいはピストン型式でもつて強制的に往復運動される吸排源4を介して、貯溜槽2内の薬液3を吸引口5→吸込管6→吸込弁7→吐出弁8→吐出ホース9→吐出口10(ノズル)へと強制吐出させる構成を採る。

11はポンプ構造体1のクランク機構、12はその回転動力取出部、13はベルトプーリを示す。ここにおいて、回転運動を往復運動に変換する手段は周知の如くクランクの他、割り駒、カム、グイヤフラム、斜板形式等の採用が可能である。又14は調圧弁、さらに15は開閉コツク、16は空気室を各々示し、ここで調圧弁14は周知の如く吐出圧力をコントロールし、余水リターン機能をもつ。

以上の如く具体化されたものに基き、上記動力取出部12には第2図に抽出拡大するような構造を備えたフレキシブル攪拌機17が着脱可能に取付けられる。

同攪拌機17は、それ自体回転する回転軸系統Aとこれを被覆状態に支持する軸受系統Bとに大別され、回転軸系統Aはフレキシブル軸18と、フレキシブル軸18の両端部に取付けられた連結軸19、20及び先端側連結紬19の端部に装着された攪拌用スクリユー21、さらに基端側連結軸20の端部に装着された伝動受体22とから主として具体化され、又軸受系統Bは上記各連結軸19、20の外周面に配置されて軸受部23、24を介してサポート機能を遂行する連結用支持体25、26と、同支持体25、26の相互間においてフレキシブル軸18へ、その外周面と空隙を保つ被覆状態として介挿固定された(油圧用)高圧ホースたるサポートホース27及び先端側連結用支持25の外周面に取付片28を介して固定され、しかも上記攪拌用スクリユー21の周囲に所望空間を保つて、且つそのスクリユー21が薬液と接触し得るように覆設されたスクリユーカバー29とから具体化されている。又、第2図より明白な如く30は回転軸系統Aとその軸受系統Bとの間に薬液が浸入することを防ぐシール材、さらに31は伝動受体22を動力取出部12へ固定するための止着具である。

従つて、上記薬液3の攪拌作用は次の如く行なわれる。

即ち、第3図はこの考案の作用説明図であるが、同図から明白な如く、攪拌用スクリユー21が貯溜槽2内の底璧に定着されるため、薬液3は攪拌用スクリユー21で貯溜槽2内を強制対流させられ、同対流状態は殊に貯溜槽2の底部近傍をその強制作用源とするので、上記比重大なる薬液3は積極的に拡散されて、攪拌機能が貯溜槽2内の全域に亘つて行なわれる。

又、この設定状態において攪拌用スクリユー21は定位置に安定良く吸着されるので、フレキシブル攪拌機17の全体が貯溜槽2に対して衝当することなく、更に振れ動くこともなく、伝動トルクを全て攪拌力に変換し得るのである。

以上の如くこの考案の実用新案登録請求の範囲に記載された構成によれば、極めて簡略な構造のもとに、攪拌域を貯溜槽2内の全体として、薬液3の攪拌効率が向上する。従つて、藥液噴霧として同攪拌機17を利用すれば、混合比が常に所定の状態で噴霧され、ここに噴霧対象物をいたづらに損することなく均等な防除効果が発揮される。

図面の簡単な説明

第1図は本考案のフレキシブル撹拌機をポンプ構造体に連結させた使用状態の概念模式図、第2図はそのフレキシブル撹拌機を抽出して示す一部切り欠き状態の拡大断面図、第3図はその撹拌用スクリユーによる薬液の撹拌作用を示す説明図である。

1…ポンプ構造体、2…薬液貯溜槽、3…藥液、5…吸引口、10…吐出口、12…動力取出部、17…フレキシブル攪拌機、18…フレキシブル軸、21…攪拌用スクリユー、22…伝動受体、25、26…連結用支持体、27…サポートホース、29…スクリユーカバー。

第1図

<省略>

第3図

<省略>

第2図

<省略>

(公告公報) <12>日本国特許庁 <11>実用新案出願公告

実用新案公報 昭54-824

<51>Int.Cl.2B 01 F 7/00 B 05 B 9/04 識別記号 <52>日本分類 72 B 22 61 F 113.2 庁内整理番号 7412-4G 5378-4F <44>公告 昭和54年(1979)1月17日

<54>フレキシブル攪拌機

<21>実願 昭49-140201

<22>出願 昭49(1974)11月19日

実用新案法第9条において準用する特許法第30条第1項適用 農経しんぽう昭和49年(1974年)9月9日号第5、6面に発表

公開 昭51-65377

<43>昭51(1976)5月22日

<72>考案者 西脇清

大阪市東成区神路4の12の16

<71>出願人 株式会社ニシワキ

同所

<74>代理人 弁理士 安田敏雄

<57>実用新案登録請求の範囲

貯溜槽は攪拌されるべき薬液等の液体を貯溜可能であり、しかもその貯溜槽近傍には、上記液体内に臨む吸引口を介して所定の吐出口へと液体をポンプ移送する動力噴霧機等のポンプ構造体が設けられたものにおいて、上記ポンプ構造体の動力取出部へ着脱自在に連結される伝導受体をフレキシブル軸の一端部へ取付け、同フレキシブル軸の外周而を屈撓のみ可能なサポートホースにより被覆すると共に、同しくフレキシブル軸の他端部にはこれと一体回転する攪拌用スクリユーと、同スクリユーを上記液体との接触可能に被覆し且つ貯溜槽内の底壁に定着させるスクリユーカパーとを取付けたことを特徴とするフレキシブル攪拌機。

考案の詳細な脱明

この考案はフレキシブル攪拌機に関し、より具体的には貯溜槽内の薬液等液体を所定吐出口へと強制的に移送可能なポンプ構造体に対し、同構造体の動力取出軸に共動可能にフレキシブル軸が取付け可能とされ、このフレキシブル軸のフリー端には攪拌用スクリユーガ、液体を攪拌可能に取付けられると共に、同スクリユーを包囲するスクリユーカバーを設けて、貯溜槽内において自由にあるいは貯溜槽内において定着状態で液体の攪拌が可能とされたものであり、ここに目的とするところはフレキシブル軸の反撥支持作用を介して攪拌用スクリユーは、貯溜槽内で攪拌板を広範囲とし、さらにこの攪拌動作はフレキシブル軸及び同軸を包囲するサポートホースの可撓性を介して、極めて簡略かつ安価な構造で可能とされる一方、適宜フレキシブル軸等の設定長に応じて、攪拌用スクリユーを貯留槽底壁等の内周壁に定着可能とすることにより、対流状態が液体全域に及ぶように企図されたフレキシブル攪拌機を提供するにある。

以下、図示する好適な具体的に従つてこの考案を説明すれば、第1図1は動力噴霧機たるポンプ構造体で、2は液剤タンクたる貯留槽、3は同槽2内の薬剤たる液体を各指示する。

上記ポンプ構造体1はプランジヤあるいはピストン型式でもつて強制往復動される吸排源4を介して貯留槽2内の液体3を吸入口5→吸込管6→吸込弁7→吐出弁8→吐出ホース9→吐出口10(ノズル)へと強制吐出させる構成を採る。

同ポンプ構造体1における11は、クランク機構を示し、又12は連動ギヤたる動力取出部、13はベルトプーリを示す。ここにおいて回転運動を往復動に変換する手段は周知の如くクランクの他、割り駒、カム、ダイヤフラム、斜板形式等の採用が可能である。又14は調圧弁、さらに15は開閉コツク、16は空気室を各指示し、ここで調圧弁14は周知の如く吐出圧力をコントロールし、余水リターン機能をもつ。

以上の如く具体化されたものに基き、上記動力取出部12には第2図示のフレキシブル攪拌機17が着脱可能に取付けられている。

同攪拌機17は、回動軸Aとサポート側Bとに大別され、回動側Aはフレキシブル軸18とフレキシブル軸18の長手両端に取付けられた連結軸19、20及びフリー端側の連結軸19端部に装着された攪拌用スクリユー21さらに基端側の連結軸20端部に装着された伝導受体22とから主として具体化され、又サポート側Bは上記各連結軸19、20の外周域に配されて軸受部23、24を介してサポート機能を遂行する連結用支持体25、26と、同支持体25、26間においてフレキシブル軸18に所望外域空間を残して覆設された(油圧用)高圧ホースたるサポートホース27及びフリー端側の連結用支持体25の外側に取付片28を介して装備され、しかも上記攪拌用スクリユー21外域に所望空間を存して覆設されたスクリユーカバー29とから具体化されている。又第2図示より明白な如く30は回動側とサポート側との間に薬剤が侵入するのを防ぐシール材、さらに31は伝導受体22の動力取出部12への固着手段たる止着具であり、同取出部12への着脱手段は回動軸Aの他サポート側Bをクランクケース等に回動側Aが伝導可能にセツトすることによつても可能である。

上記攪拌用スクリユー21は第1図示における貯留槽2の底壁側等、内周壁側を進出方向とし、従つてその回転方向及びベーンのツイスト方向は上記に対応して設定されている。

従つて上記薬剤等液体の攪拌作用は、次の如く行なわれる。

即ち、第3図Ⅰは攪拌用スクリユー21が回動状態であつて同スクリユー21が貯留槽2の底壁に到達しない構成を採る場合を示し、ここにおいてフレキシブル軸18及びサポートホース27が可撓性をもち、しかもスプリング性を有するので、攪拌用スクリユー21は概ね所定の攪拌域内で自在な攪拌作用を発揮し、なおかつ攪拌用スクリユー21がその進出方向を貯留槽2内周壁側とするので、常時薬剤等液体3内に位置して殊に比重大なる液体3の構成分を上位へと攪拌作用する。

又第3図Ⅱは攪拌用スクリユー21が貯留槽2底壁域に定着可能とされた場合の作用説明図であり、同図示により明白な如く薬剤等液体3は攪拌用スクリユー21で貯留槽2内上位を介して強制対流させられ、同対流状態は殊に貯留槽2の底部近傍をその強制作用源とするので、上記比重大なる混合液は積極的に分散されて、攪拌機能がより完壁に行なわれる。又この設定状態において攪拌用スクリユー21は定位置に吸着状態とされているので、攪拌機17全体は貯留槽2に対し任意に衝当することなく、又上記揺動動作をすることなく伝導トルクを全て攪拌力に変換し得るものである。

以上の如く構成されたこの考案によれば、フレキシブル軸18を介して攪拌用スクリユー21を取付け、同スクリユー21を包囲する如くスクリユーカバー29を設けると共に、上記フレキシブル軸18には同軸18の回動を支持するサポートホース27が覆設されているものであり、従つて上記の如く攪拌機17全体はフレキシブルでかつ反撥性を具備するものであり、ここに極めて簡略な構造を基として、自から攪拌域を任意に選択しつつ広範囲に亙つて薬剤等液体3を攪拌でき、殊に上記攪拌用スクリユー21を貯留槽2底部に定着可能に構成すれば、攪拌域を同槽2内の全体として攪拌効率が向上することは上記により明らかである。従つて薬剤噴霧として同攪拌機17を利用すれば、混合比が常に所定なる状態で噴霧され、ここに噴霧対象物を不要に損することなく均等に防除効果が発揮される。又、同薬剤を液体3とする場合、殊に濃度の髙い薬剤を動力噴霧機等移送ルートである各部材に損傷を与えるおそれが少なく、ここに同移送ルートの寿命をもアップし、同時に防除作業者に悪影響を与えるおそれがない。

なお、上記攪拌用スクリユー21は単一個に限定されず、又スクリユーカバー29の形態は要するに攪拌用スクリユー21が貯留槽2内周壁に衝当しない構成を採れば良い。さらに上記フレキシブル軸18は中空あるいは長手分割状でもよく、又同軸18の長手長の可変手段は、上記に基けば容易である。又、上記サポートホース27は第2図の如くフレキシブル軸18の全外域を覆う形態に限定されず、要するに薬剤を攪拌対象とする場合薬剤がフレキシブル軸18に接触不可能な構成を採ればよい。又攪拌用スクリユー21はフレキシブル軸18の長手間に併設することも自由である。

図面の簡単な説明

第1図はこの考案の一具体例を装置全体で示す概略説明図、第2図はフレキシブル攪拌機全体を示す縦断面図、第3図Ⅰはこの考案の一実施例を示す作用説明図、第3図Ⅱは他の実施例を示す作用説明図である。

1……ポンプ構造体、2……貯留槽、3……薬剤(液)等液体、5……吸込口、10……吐出口、12……動力取出部、17……フレキシブル攪拌機、18……フレキシブル軸、21……攪拌用スクリユー、27……サボートホース、29……スクリユーカバー。

<56>引用文献

特公昭46-28276

第1図

<省略>

第2図

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第3図

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登録実用新案審判請求公告

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実用新案公報

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