大阪地方裁判所堺支部 平成24年(ワ)640号 判決 2014年3月25日
原告
X
同訴訟代理人弁護士
徳井義幸
同
中村里香
被告
Y社
同代表者代表取締役
A
同訴訟代理人弁護士
福島正
同
原英彰
同
久保田興治
主文
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
1 原告が被告との間において雇用契約上の地位を有することを確認する。
2 被告は、原告に対し、平成24年5月から本判決確定の日まで、毎月25日限り、25万円及びこれに対する各月26日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要
原告は、被告に雇用期間1年の嘱託社員として雇用されていたところ、被告から雇用契約の更新を拒絶されたため、その雇止めには解雇権濫用法理が準用され、かつ、その雇止めは、被告が、原告の所属する労働組合及び執行委員長である原告を嫌悪し、同組合の弱体化を図るという不当な目的でしたものであり、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当でないから、解雇権を濫用した無効なものであると主張して、被告に対し、雇用契約上の地位を有することの確認を求めるとともに、雇止め後の平成25年5月から判決確定の日まで、支給日である毎月25日限り、賃金25万円及びこれに対する各月26日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求めた。
1 前提事実(以下の事実は、当事者間に争いがないか、括弧内記載の証拠又は弁論の全趣旨により容易に認定することができる。)
(1) 当事者等
ア 被告は、東京都に本店を置き、直営及びフランチャイズシステムにより日本全国に1万7000店を超えるコンビニエンスストアを展開する株式会社である。
なお、被告の直営店は、東日本直営グループ、西日本直営グループ及び首都圏直営グループの3つの管轄に分けられている。(弁論の全趣旨)
イ 原告は、後記(2)のとおり、被告に嘱託社員として採用され、被告の直営店店長として勤務してきた者である。
原告は、平成22年11月、a労働組合(以下、単に「a労組」という。)に加入して、b分会を結成し、組合活動を始めたが、平成23年9月、a労組を脱退し、c労働組合(以下、単に「c労組」という。)に加入し、それ以降、執行委員長として組合活動をしてきた。(書証<省略>)
(2) 雇用契約の締結及び契約更新等
ア 原告は、平成15年4月16日、被告との間で、以下のとおり、嘱託社員としての雇用契約を締結した(以下「本件雇用契約」という。)。(書証<省略>)
(ア) 契約期間 平成15年4月16日から平成16年4月15日まで
(イ) 賃金等 基本給月額30万円
毎月15日締め、当月25日支払
2か月の研修期間終了後、店長手当として月額6万円支給
通勤手当、賞与等の支給
(ウ) 勤務体系 週休2日 シフト制
(エ) 職務内容 直営店舗の運営業務全般
イ 本件雇用契約については、平成16年4月13日に、期間の定めを同月16日から同年7月15日までの3か月間として初回更新がされた。また、2回目の更新は、同年7月16日から平成17年4月15日までの9か月とされ、3回目の更新は、同年4月16日から平成18年4月15日までの1年とされた。その後も、被告が平成24年4月15日をもって本件雇用契約を終了させる旨の通知を行うまで、1年ごとに6回の更新が繰り返された。本件雇用契約の更新は合計9回更新され、原告は、9年間にわたり被告で勤務を継続し、本件雇止めの時点では、d店の店長を務めていた。(書証<省略>)
(3) 嘱託社員就業規則等
ア 被告の嘱託社員就業規則44条1号には、社員の職務遂行上の義務として、「法令遵守ならびに会社の方針を尊重し、会社の諸規則・通達および上司の指示・命令に従い、常に上下同僚と互いに助け合い、円滑かつ能率的な職務の遂行を図ること。」が規定されている。(書証<省略>)
イ 被告の賞罰規程15条には、懲戒事由として、「法令ならびに就業規則の服務規律、及び安全衛生に関する遵守事項に理由なく違反したとき」(同条1号)、「勤務時間中に私事を行い、または会社の施設、物品を利用若しくは他人をしてこれをなさしめたとき」(同条10号)、「自己の職責を怠り、誠実に勤務しないとき」(同条11号)等が規定されている。(書証<省略>)
(4) 雇止め等
ア 被告は、平成24年3月9日、原告に対し、同年4月15日をもって雇用契約を終了し、以後更新しない旨の予告通知をした(以下「本件雇止め」という。)。同通知書には、「更新しない理由」として、「契約期間満了のため。なお、服務規律に抵触する行為を繰り返すなど、勤務態度が不良であり、雇用契約を更新すべき事情を認められない。」と記載されている。(書証<省略>)
イ 被告が原告に交付した同年3月9日付け「雇止めの理由の証明書」には、本件雇止めの理由として、「契約期間満了のため。なお、貴殿については、かねてより重ねて警告済みのとおり、当社就業規則所定の服務規律に抵触する行為を繰り返し、反省・改善も認められず、業務指示の拒否・無視、上司に対する暴言・反抗的態度その他職場秩序を乱し、従業員としての忠実義務に反する等の言動が見られ、勤務態度が不良であり、雇用契約を更新すべき事情を認められないものである。」と記載されている。(書証<省略>)
ウ 被告が、原告に対し、本件雇止め以前に、嘱託社員就業規則(賞罰規程)上の懲戒処分をしたことはない。
2 争点
(1) 本件雇止めに解雇権濫用法理が類推適用されるか(争点1)
(2) 上記(1)が認められる場合、本件雇止めの有効性(争点2)
3 争点についての当事者の主張の要旨
(1) 争点1(本件雇止めに解雇権濫用法理が類推適用されるか)について
(原告の主張)
原告と被告との間では、本件雇用契約の更新が前提とされており、現に、合計9回更新されているから、本件雇用契約は、実質的に期間の定めのない契約と同視すべきである。また、原告は、入社当時から独立してフランチャイズ店の店長になることを希望しておらず、直営店の店長として継続して勤務する意思を持っていたから、原告の雇用継続についての期待は保護に値するものである。したがって、本件雇止めについては、解雇権濫用法理が適用されるべきである。
(被告の主張)
本件雇用契約は、更新が前提とされておらず、実質的にも有期雇用契約である。また、嘱託社員である原告は、独立してフランチャイズ店の経営者になることが想定されていたから、原告には、雇用継続について保護すべき期待は存在しない。したがって、本件雇止めについては、解雇権濫用法理は適用されるべきでない。
(2) 争点2(本件雇止めの有効性)について
(原告の主張)
ア 被告は、雇止めの正当事由を様々主張している。しかし、被告が問題としている上司に対するメール等については、表現に行きすぎた面があったにしても、業務改善の意思の表れであり、本件雇止めを正当化するものではない。また、原告が被告から貸与された業務用携帯電話端末を利用して電話をかけたり、メールの送受信をしたことは事実である。しかし、原告が受信したメールには、会社からの一斉送信による業務連絡も多く含まれているし、その余の電話やメールの送受信は、他の直営店舗の店長との間で業務に関する相談の必要があったことによるものである。
イ 原告は、a労組やc労組において、積極的に組合活動をしてきた。とりわけ、c労組においては、原告が執行委員長を務め、被告に対し労働組合公然化通告を行って団体交渉を申し入れ、継続的に交渉を重ねており、労働組合が要求した事項のうち、未払残業代等の支給など、一定の要求については実現されてきた。
このような本件雇止めに至るまでの原告の組合活動の経緯に加え、原告が組合の執行委員長であることや、上記メール送受信や電話につき被告が十分な調査をせずに本件雇用契約の更新を拒絶したことなどからすれば、被告が、労働組合ないし原告を嫌悪し、労働組合の弱体化を図るという不当労働行為目的(労働組合法7条1号)の下に、本件雇止めを行ったことは明らかである。
ウ したがって、本件雇止めは、客観的に合理的理由がなく、社会通念上相当とはいえないから、解雇権の濫用に当たり無効である。
(被告の主張)
ア 本件雇止めには正当な理由がある。原告には、被告の西日本直営グループのマネージャーであり直接の上司に当たるB(以下「B」という。)、直営グループのマネージャーを管轄する部長であるC(以下「C」という。)や、原告が店長を務めていたd店の運営トレーナーを担当していたDらに対し、暴言を吐き、反抗的態度をとり、そのような内容のメールを送信するなどの問題行動があった。また、原告は、少なくとも平成23年11月から平成24年1月までの間、多数回にわたり、原告が所属していた労働組合の組合員であるE(以下「E」という。)やF(以下「F」という。)に対し、業務外のメール送受信や電話をした。
原告の上記行為はいずれも嘱託社員就業規則44条1号、賞罰規程15条1号、同条10号及び同条11号に違反する非違行為であり、原告は、被告からの度重なる警告や指導にも従わなかった。
イ 被告には、労働組合ないし原告を嫌悪する理由は全くなく、不当労働行為目的もない。
ウ したがって、本件雇止めは、客観的に合理的理由があり、社会通念上相当といえるから、解雇権の濫用に当たらず有効である。
第3当裁判所の判断
1 争点1(本件雇止めに解雇権濫用法理が類推適用されるか)について
(1) 認定事実
前記第2の1の前提事実に加え、証拠(証拠<省略>。ただし、後記認定に反する部分を除く。)及び弁論の全趣旨によれば、以下の各事実が認められる。
ア 原告入社時の被告の求人票には、求人条件に係る特記事項として、「1年契約(但し更新再契約制です)」と記載されている。なお、雇用後に従業員がフランチャイズ店の店長として独立することを前提とした特段の記載はない。(書証<省略>)
イ 平成15年11月頃、被告は、嘱託店長FC(フランチャイズ)独立支援制度(以下「独立支援制度」という。)を施行した。(証拠<省略>)
ウ 被告作成の独立支援制度に関する資料には、被告の嘱託店長に対して契約更新の際に実施された独立希望の有無についてのアンケート結果によれば、8割以上の者が「独立希望」と回答したとの記載がある。(書証<省略>)
エ 原告自身は、入社前のアンケートにおいて、フランチャイズ店の店長として独立する意思の有無を尋ねられた際、直営店の店長として勤務するつもりであり独立する意思はない旨回答した。(証拠<省略>)
オ 平成15年から平成19年までの間に、独立支援制度を活用し、フランチャイズ店の店長として実際に独立した嘱託店長の数は非常に少なく、全体の数パーセント(2、3パーセント)に留まっており、原告もそのように認識していた。(証拠<省略>)
カ 被告のe店店長であるFは、原告と同様に、被告との間で嘱託社員としての雇用契約を締結し、その後合計18回にわたり契約の更新手続を行い、約18年間勤務を継続している。Fが契約の更新をする際には、営業担当のスーパーバイザーが持参した契約書類に署名押印するのみであり、同書類の作成前に被告担当者と面談したことはなかった。また、契約の更新手続は、雇用契約の期間満了後に行われたこともあった。(証拠<省略>)
キ 被告のf店店長であるEは、原告と同様に、被告との間で嘱託社員としての雇用契約を締結し、その後合計6回にわたり契約の更新手続を行い、約7年間勤務を継続している。Eが契約の更新をする際には、Fの場合と同様、面談等で勤務継続の意向を確認されることは基本的になく、契約書類に署名押印する程度であった。(証拠<省略>)
(2) 検討
ア 本件雇用契約は、契約期間を3か月間、9か月間と明確に定めて更新され、3回目以降の更新は、一貫して契約期間を1年間と明確に定めて更新されている(前記第2の1(2)イ)。また、上記(1)カキのようなF及びEの契約の更新手続の態様からすれば、嘱託社員としての雇用契約については、一般に、毎年、契約期間が明記された契約書が嘱託社員に送付され、当該嘱託社員がこれに署名押印して返送する手続が繰り返されており、原告の場合も同様であると推認される。これらの事情に照らすと、本件雇用契約が期間の定めのない労働契約に転化したものであるとか、更新を重ねることによりあたかも期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態で存在していたということはできない。
イ しかしながら、原告において、本件雇用契約が継続すると期待することに合理性が認められる場合には、期間満了によって本件雇用契約が当然に終了するものではなく、雇止めには相応の理由を要すると解するのが相当である。
これを本件について見ると、本件雇用契約は、合計9回更新されて、原告は、9年間にわたり被告で勤務を継続している(前記第2の1(2)イ)。また、上記アのとおり、嘱託社員としての雇用契約については、一般に、毎年、契約期間が明記された契約書が嘱託社員に送付され、当該嘱託社員がこれに署名押印して返送する手続が繰り返されており、原告の場合も同様であると推認されるから、契約の更新手続は形骸化していると見ることも可能である。
他方、確かに、被告においては、フランチャイズ店の店長として独立する希望を持つ嘱託店長が8割以上存在するとされているが(上記(1)ウ)、原告自身は、入社時からフランチャイズ店の店長として独立する意思を有していなかった(上記(1)エ)。また、実際に独立する店長の数も極めて少数に留まる状況にあり、原告もそのように認識していた。(上記(1)オ)
これらの事情を考慮すると、本件雇用契約につき、原告が雇用関係の継続を期待することの合理性は相当程度あったものと認められる。
ウ 以上によれば、本件雇止めについては、解雇権濫用法理が類推適用されると解するのが相当である。ただ、雇用契約が期間の定めのない契約に転化したり、期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態で存在している場合と比較して、本件雇用契約における雇用継続の期待を保護する必要性は相対的に低いといえるから、本件雇止めの理由としては、それ程強いものが要求されるのではなく、一応の相当性が認められれば足りると解するのが相当である。
2 争点2(本件雇止めの有効性)について
(1) 認定事実
前記第2の1の前提事実及び上記1(1)で認定した事実に加え、争いのない事実、証拠(証拠<省略>。ただし、後記認定に反する部分を除く。)及び弁論の全趣旨によれば、以下の各事実が認められる。
ア 被告による業務用携帯電話端末の貸与等
(ア) 被告は、平成21年4月頃、直営店店長に対し、業務用として、携帯電話端末(以下「業務用携帯電話」という。)の貸与を開始した。原告は、同月16日、被告との間で「携帯電話貸与に関する確認書」記載の事項を確認した上、被告から業務用携帯電話(以下「本件携帯電話」という。)の貸与を受けた。同確認書には、確認事項として、業務のみに限定して使用すること(4項)、限度以上の通信費を使わないように心がけること(7項)などが明記されている。(証拠<省略>)
(イ) 各直営店舗には、固定電話も設置されていた。そのため、業務用携帯電話は、基本的に、本社との間のメールやアンケートのやりとり、外出や出張中の店舗への連絡に使用することなどを想定して貸与されていた。(証拠<省略>)
(ウ) 業務用携帯電話は、店長間での連絡のために使用することは特段禁じられておらず、実際には、必要に応じて使用されることもあった。(証拠<省略>)
イ 他の直営店店長らの業務用携帯電話の使用状況等
(ア) 原告が勤務していたd店の前任店長であったGは、被告から貸与を受けた業務用携帯電話を日常的に店長間の連絡に用いていたところ、貸与開始後の間もない頃、月額1万円以上の通信費が発生した際に、トレーナーから口頭で注意を受けたことがあった。(証拠<省略>)
(イ) 被告が、平成24年11月分につき、直営店事業部管轄の全直営店舗162店舗の店長に貸与している業務用携帯電話のメール送信回数を集計し、店長に出張があったかどうかを問わずに平均を算出した結果によれば、平均メール送信回数は66.4回であった。また、同月分につき、店長に出張がなかった直営店舗に限定して平均を算出した場合、平均メール送信回数は40.8回であった。(書証<省略>)
(ウ) 被告は、平成24年11月分につき、直営店舗における業務用携帯電話を使用したメール送信先ごとの履歴を調査した。その結果によれば、g店は、メール送信総数410回のうち364回が(書証<省略>)、h店は、メール送信総数485回のうち475回が(書証<省略>)、i店は、メール送信総数379回のうち374回が(書証<省略>)、j店は、メール送信総数383回のうち334回が(書証<省略>)、それぞれ同店所属の社員又は運営トレーナー等に対するものであった。
(エ) 被告が、平成25年1月分につき、直営店事業部管轄の全直営店舗156店舗の店長に貸与している業務用携帯電話のメール送信回数を集計し、平均を算出した結果によれば、平均メール送信回数は64.6回であった。また、送信回数が100回を超える嘱託店長も相当数あるものの、その多くは新入社員研修店舗であるか、移動販売車のある店舗であった。(証拠<省略>)
ウ 本件携帯電話を用いた原告のメール送受信状況等
(ア) 原告は、平成23年11月から平成24年1月までの間に、Eが当時店長を務めていたk店の業務用携帯電話に対し、勤務時間中であるか否かを問わず、合計572回のメールを送信した。その内訳は、平成23年11月が189回、同年12月が216回、平成24年1月が167回であった。
(イ) 原告は、平成23年11月から平成24年1月までの間に、Fが店長を務めるe店の業務用携帯電話に対し、勤務時間中であるか否かを問わず、合計333回のメールを送信した。その具体的な内訳は、平成23年11月が115回、同年12月が119回、平成24年1月が99回であった。
(上記(ア)(イ)につき、証拠<省略>)
(ウ) 原告は、E及びFとの間で、平成23年11月から平成24年1月までの間に、以下のような内容のメール送受信をした(書証<省略>、争いがない事実)。なお、摘示は一部に留めた。
(平成23年11月4日 Eへのメール)(書証<省略>)
「・・・次回以降は攻め達磨でポイントを先ほどまとめました!私はHさんと場所が近いので、次回の対策を万全に死体と思います!」
(平成24年1月6日 Eへのメール)(書証<省略>)
「・・・談合前の下地作りします。」
(同年1月21日 Eへのメール)(書証<省略>)
「・・・会社の中枢であるべき人事部、部長、その右腕が追随を許さぬ高レベルであることを確認出来て素晴らしい団交の一言です~」
(同年2月4日 Eへのメール)(書証<省略>)
「・・・直営店平均とありますが、全地区出して貰わんとまた後から改竄シマッセ!」
(平成23年11月6日 Eからのメール)(書証<省略>)
「次回の団交で募集費の件が話題となれば、人事のIさんに説明してもらいましょう。」
(平成24年1月6日 Fからのメール)(書証<省略>)
「・・・人事のクソ連中に次回の団交で叩きつけてあげまち=酒飲まへんかったら、ますます厳しく攻めまっせ=」
(エ) 原告は、平成23年9月3日から同年12月18日までの間に、B、C及びDらに対し、別紙<省略>のとおり、17回にわたりメールを送信した。(争いがない事実)
(オ) 原告は、本件携帯電話のメール送受信履歴を適宜削除していた。(人証<省略>)
(カ) 原告が店長を務めていたd店及びEが店長を務めるf店はいずれも西日本直営グループに属し、Fが店長を務めるe店は東日本直営グループに属していた。両グループの地域性等から、取り扱う商品等が異なるため、営業担当者も異なっていた。(証拠<省略>)
エ 本件携帯電話を用いた原告の通話回数等
(ア) 原告は、本件携帯電話を用いて、Eが当時店長を務めていたk店の固定電話ないし業務用携帯電話との間で、平成23年11月に27回、同年12月に29回、平成24年1月に15回の通話をし、Fが店長を務めるe店の固定電話ないし業務用携帯電話との間で、平成23年11月に16回、同年12月に17回、平成24年1月に11回の通話をした。なお、これらの通話のうち、原告の勤務時間中にされたものも、相当の回数であった。
(イ) 本件携帯電話の通話料金は、平成23年11月が3万6848円、同年12月が1万8518円、平成24年1月が1万4632円であった。
(以上につき、証拠<省略>)
オ 原告のBらに対する言動等
原告は、平成23年9月頃から平成24年2月頃にかけて、西日本直営グループのマネージャーであり直接の上司に当たるB、直営グループのマネージャーを管轄する部長であるC及び原告が店長を務めていたd店の運営トレーナーを担当していたDとの間で、以下のようなやりとりをした。(書証<省略>)
(ア) 平成23年9月1日
午後9時頃、原告は、Bに電話をかけ、○○店長(被告による経営力審査基準に合格した嘱託店長で、○○店長奨励金及び○○店長独立奨励金が付与される。書証<省略>)の人数や原告自身が○○店長になれなかった理由を問い合わせ、原告自身の言い分を約30分にわたって述べた後、「どうなっているんだ。おかしいと思わないのか。本部の体制をおまえが改善していけ。マネージャーは担当と違うんやから仕事内容を変えていけや。」などと大声でまくしたてた。(人証<省略>)
(イ) 同年9月7日
午後5時40分頃、Cは、原告が被告関係者に対して、「連絡よこせ!」、「説明しろ!」などといったメールを送信したことについて、原告に電話をかけた。その際、原告は、Cに対し、「いい加減にしろ。この内容の仕事から逃げている。連絡してこいと言っているのに、なぜ連絡してこない。Jマネージャーに任せればいいと思っているのか。何でも部下任せにしやがって。あんたは業務に対して決断しない、いい加減決断しろ。はっきりさせろ。」などとまくし立て、電話を切った。
(争いのない事実)
(ウ) 同年9月14日
原告は、a労組と被告との間の団体交渉において、○○店長の経営力審査基準に関し、給与の額を被告に送信しなかったことについて、「わざと給与額の送信をしなかった。Y社本部を試したんだ。」と述べた。(人証<省略>)
(エ) 同年12月1日
午後9時頃、原告は、Bに電話をかけ、「今回は私は○○店長じゃないのか。今日連絡分で全員か。なんでなれないんや」、「何が原因なんや。これは給与未払いになるんとちゃうか。そう思うやろ。給与未払いやから、きっちり回収する準備してるで。あんたも、マネージャーの仕事せな巻き添えくらうで。(中略)関東の方では、人件費で不正出まくってるんや。知ってるんか。Kも終わりやで。あんな、むちゃくちゃな管理してたら。ワシの所には、いろんな情報が集まってくるから知りたくなくても知ってしまうんや。あんたも気をつけや。本部に不誠実な対応するな、もっと情報を公開せい、と伝えといて。あんたは、管理者なんからそれを率先してせなアカンのとちゃうか。」などと大声でわめきちらした。(証拠<省略>)
(オ) 同年12月3日
午後9時30分頃、原告からのメールを受信したBが、原告に電話をかけたところ、原告は、Bに対し、約30分にわたって、「どうなってんのや。いつになったら、連絡とれるんや。いいかげんにせいよ。こっちは、睡眠時間削って待ってるのに。(中略)現場の意見や要望は、会社にはっきり言わんかい。それ、せえへんかったら、あんたも飛ばされるで。ワシらは、徹底的にやるからな。休みに無駄な時間ばっかり使わせよって。」などと大声でわめいた。(証拠<省略>)
(カ) 同年12月17日
午前1時頃、原告は、Bに対し、電話をかけて、「明日の新聞に給与未払いの件で掲載されるぞ。どうすんねん。どうすんねん。おまえら管理者がちゃんと仕事をせえへんからこんな事になるんやぞ。わかってんのか。おまえは、マネジャーになって何を改善したんや。言うてみ。ワシが店舗を改善したのは知ってるやろ。お前は何を改善したんや。はよ言え。なんにもしてへんのやたら会社辞めてまえ。ワシが紹介したるから。ごちゃごちゃ言わんと何をしたんか言えや。何をごちゃごちゃ言うてんねん。おまえも、団体交渉出ろや。今は全部の内容を話したくても話されへんから団体交渉の席で全部説明したるから社長もLさんも言うてたやろ。改善スピードを上げていかなアカンって。上の連中が出来ひんねんから、あんたも真剣に取り組まんと。全然、仕事してへんって噂ばっかり聞くで。真剣に仕事せなアカンで。」と大声でまくしたてた。(争いのない事実)
(キ) 同年12月18日
午後3時頃、原告は、Dに対し、「ムダな点検(SQC点検)は意味無し」と発言した。(争いのない事実)
(ク) 平成24年2月11日
午後9時頃、原告は、Dに電話をかけ、「お前しっかりせんか。」などと大声で言い放った。Dが「誰に言ってるんですか。」と反論したところ、原告が一方的に電話を切った。(争いのない事実)
カ 業務用携帯電話の使用状況に関する被告の調査及び原告に対する指導等
(ア) 本件携帯電話の使用状況に対する調査の端緒及び時期は明らかではないものの、被告は、直営店舗の店長に対して貸与していた業務用携帯電話に関し、平成23年11月分から平成24年1月分までの使用状況を調査した。(人証<省略>)
(イ) Cは、平成24年2月21日、Eに対し、業務用携帯電話の使用状況に関する事情聴取をした。(人証<省略>)
(ウ) 被告は、Fに対しては、業務用携帯電話の使用状況に関する事情聴取をしなかった。(人証<省略>)
(エ) 被告は、原告の本件携帯電話のメール送受信回数が多いことや、その相手が組合員であるEやFであることなども考慮して、本件携帯電話の使用について、被告の業務に関連性がないと判断した。(人証<省略>)
(オ) Cは、Bらと共に、平成23年12月24日、d店を訪問し、原告に対し、原告のBに対するメールの内容及び電話に関し、服務規律違反に当たるという同月22日付け警告文書を手渡すと共に、その内容を説明しようとしたが、原告は、その説明を拒絶した上、反省の態度を示すことはなかった。その後、原告からBに対しメールは送信されていない。(証拠<省略>)
(カ) Cは、平成24年2月22日、d店を訪問し、原告に対し、原告が被告の業務時間中にEやFに対して頻繁にメールを送信したり通話をするなどしている事実があり、これらが嘱託社員就業規則や賞罰規程に反する行為であること、上記(オ)の警告以降も、改善に至っていないことを指摘する内容の同月21日付け警告文書を手渡したが、原告は反省した態度を示すことはなかった。(証拠<省略>)
キ 原告のa労組での組合活動及び被告の対応等
(ア) 原告は、平成22年11月、a労組に加入し、b分会を結成して労働組合活動を始めた。
(イ) 被告においては、深夜午前2時から午前7時まで勤務する者が1人のみの体制であったため、休憩を取得することができない状況であった。そこで、原告が、a労組の先頭に立ち、被告に対し、過去2年間の深夜勤務回数を基にして未払賃金の支払を要求した。
被告は、平成23年2月分の給与支給に際し、深夜割増賃金として、原告に対し5万0045円、Eに対し3万9694円、被告従業員であるMに対し3万8590円をそれぞれ支払った。(書証<省略>)
(ウ) 被告の直営店舗の店長は、深夜や休日にも店舗の深夜防犯作業の実施確認を行っていたが、同業務の割増賃金が未払であったため、原告は、a労組の組合要求として、深夜割増賃金の支払を要求した。
被告は、平成23年8月分の給与支給に際し、深夜や休日の割増賃金として、原告に対し2万6689円、Eに対し8万3438円をそれぞれ支払った。(書証<省略>)
ク 原告のc労組での組合活動及び被告の対応等
(ア) 原告は、平成23年9月にa労組を脱退し、同月、c労組に加入し、執行委員長として活動するようになった。なお、第7回団体交渉(平成24年10月25日)からは、Eが執行委員長を務めている。
(イ) 原告は、平成23年10月12日、被告に対し、労働組合の公然化を通告するとともに団体交渉の申入れをし、要求書を提出した。(書証<省略>)
c労組と被告との間では、平成23年11月3日を第1回として平成25年3月末までに10回の団体交渉が行われ、その後も交渉は継続されている。(書証<省略>)
(ウ) 被告は、独立支援制度を設ける際に、その支援の原資とするとの理由で、従業員の基本給を減額した。これに対し、c労組は、元の金額に戻すことを要求していた。
(エ) 被告は、平成19年に店長の役職手当を6万円から1万円に減額し、その減額分を原資として、従前未払であった店長への残業代の支給をするようになった。しかし、Fの残業代が未払であったため、c労組の要求により、被告は、平成24年2月、Fに対し、過去2年間分の残業代合計115万円を支払った。
(オ) 被告は、各直営店舗の経費として、平成21年10月及び12月に募集費を計上する経理処理をした。そこで、c労組は、その具体的な使途について明らかにするよう被告に求めていた。
(カ) 被告には、○○店長奨励制度(書証<省略>)があり、同制度により経営が審査基準に合格したもの(Aランク)については毎月10万円の手当が支給されることになっていた。c労組は、組合員である原告、E及びFにつき、実際には審査基準をクリアーしてAランクとされるべきであるのに、被告が、原告らが組合員であることを理由として、不当な審査をしているのではないかと追及していた。
(キ) 平成24年3月27日の第5回団体交渉において、本件雇止めに関する協議が行われた。その際、被告が本件雇止めの意思表示を撤回することを拒否したため、原告は、同年4月24日に本件訴えを提起した。(書証<省略>)
(以上、全体の経緯につき、証拠<省略>)
(2) 検討(本件雇止めの有効性について)
ア 原告に賞罰規程や嘱託社員就業規則に触れる非違行為が認められるか否かについて
(ア) 原告とE及びFとの間のメール送受信等について
a 原告がE及びFとの間でメール送受信をした事実については、前記(1)ウ(ア)ないし(ウ))のとおりである。そして、送受信されたメールの具体的内容(上記(1)ウ(ウ))を見ると、これらのメールは、全体の一部ではあるものの、その内容自体に照らし、その大半が、労働組合活動のための情報交換や、団体交渉後の感想や意見を交わした際のメールであり、嘱託店長の業務と関係しないものであることがうかがわれる。
また、原告がE及びFとの間で電話をした事実については、前記(1)エのとおりである。そして、電話の当事者が同一であることに加え、その通話回数、電話料金等(上記(1)エ(イ))も考慮すると、メール送受信の場合と同様に、上記電話についても、その大半が、労働組合の用務に関するものであると推認することができる。
したがって、これらのメール及び電話は、全体として、業務に関連するものとは認められない。
b これに対し、原告は、個々のメール送受信や電話につき、業務関連性を具体的に指摘し、その大半が業務に関連するものであると主張し、その旨の供述をする(証拠<省略>)。しかし、前述のとおり、メールの内容自体から嘱託店長の業務と関係しないことがうかがわれることに加え、原告が、当初はメール送受信や電話をかけた事実自体を否認しており、被告から具体的な証拠(書証<省略>)が提出されるに至って、初めて事実を認めたとの経緯等(人証<省略>)にも照らせば、原告の上記供述を直ちに採用することはできない。
c また、原告は、商品の発注に関する相談等のために連絡を取り合う必要性があったなどと主張し、その旨の供述をする(人証<省略>)。
しかし、原告が店長を務めていたd店及びEが店長を務めるf店は、いずれも西日本グループに属する一方で、Fが店長を務めるe店は東日本グループに属しており、両グループの地域性等のため、取り扱う商品も異なること(前記(1)ウ(カ))からすれば、グループの枠を越えて連絡を取り合う業務遂行上の必要性が高いとは認められない。
また、原告のメール送受信状況は、前記(1)ウ(ア)ないし(ウ)のとおりであるところ、店長間での連絡が特段禁じられていなかったことや(前記(1)ア(ウ))、被告からの一斉送信による業務連絡のメール等が含まれている可能性などを考慮しても、原告のメール送受信回数は、他の直営店舗における業務用携帯電話によるメール送受信回数の平均を大きく上回っており(前記(1)イ(イ)、(エ))、一般的な店長業務に必要とされる範囲を超えていると評価せざるを得ない。なお、1か月当たりのメール送信回数が多数回に及ぶ他の直営店舗も存在するが(前記(1)イ(ウ))、これは、当該月に出張があったり、新入社員研修店舗や、移動販売車のある店舗であったりするなど、他店舗と比較してメール送信の頻度が高くなる相応の事情が存在するためであるが、原告には、このような事情が存在したとは認められない。
そして、本件携帯電話に残された通信履歴(書証<省略>)が、全体の一部にすぎないこと、原告がメールを適宜削除していたことなどを考慮すれば(前記(1)ウ(オ))、原告とEやFらとのメールは、その多くが労働組合の用務に関するものであると推認することができる。
(イ) Bらに対する言動等(メール送信を含む)について
a 前記(1)ウ(エ)のとおり、原告が、B、C及びDらに対し、別紙<省略>のとおりのメールを送信した事実については争いがない。
また、原告のB、C及びDらに対する言動については、前記(1)オのとおりである。この点、BやCの証言は、同人らが記憶にあることとないことを明確に区別して証言していること、原告も、発言の細部はともかく、そのような趣旨の発言をしたこと自体は概ね認める供述をしていること(人証<省略>)に照らし、信用できるというべきである。
b 原告のB、C及びDらに対するメール及び言動は、その内容を見ると、被告に対する業務改善を主目的とする提言や要望等を含んでいることから、業務関連性が全くないとはいえない。しかし、その態様や表現ぶりを見ると、従業員の上司に対するメールや言動としては、不穏当で配慮に欠けており、社会通念上相当なものであるとはいえない。
(ウ) 非違行為該当性について
以上によれば、本件携帯電話を用いたメール送受信や電話の大半には業務関連性がなく、勤務時間中に送受信されたメールや電話が相当数に上ること(上記(1)ウ(ア)(イ)、エ(ア))も勘案すると、原告は、本件携帯電話の貸与を受けるに際し、遵守事項を確認したにもかかわらず(前記(1)ア(ア))、勤務時間中に私事を行うなどしたと認められる。また、B、C及びDらに対する言動も、業務指示の拒否や無視、上司に対する暴言や反抗的態度等、従業員としての忠実義務に反するものであると認められる。
よって、前記(1)ウないしオの原告の行為は、「勤務時間中に私事を行い、または会社の施設、物品を利用若しくは他人をしてこれをなさしめたとき」(賞罰規程15条10号)、「自己の職責を怠り、誠実に勤務しないとき」(同条11号)、「法令ならびに就業規則の服務規律、及び安全衛生に関する遵守事項に理由なく違反したとき」(同条1号)に当たり、また、「法令遵守ならびに会社の方針を尊重し、会社の諸規則・通達および上司の指示・命令に従い、常に上司同僚と互いに助け合い、円滑かつ効率的な職務の遂行を図ること」(嘱託社員就業規則44条1号)に抵触する行為に当たる。
そして、このような非違行為の内容及び程度に加え、原告が被告から二度にわたり警告を受けていることなど(上記(1)カ(オ)(カ))を踏まえると、後記イにおいて検討する不当労働行為目的等の特段の事情がない限り、原告の上記非違行為は、本件雇止めの相当な理由となり得ると解するのが相当である。
イ 不当労働行為目的をうかがわせる事情の有無について
(ア) 原告は、a労組に所属していた当時から、労働条件等の改善に向けて意欲的に取り組んできており、平成23年9月にa労組を脱退したのち、c労組に加入して執行委員長となってからも、団体交渉を通じて、被告から未払残業代の支払を獲得したり、賃金や役職手当の減額、募集費の問題等について被告を追及するなど、積極的かつ精力的に労働組合活動を行ってきたことが認められる。これに対し、被告は、団体交渉の申入れに応じて、継続的に交渉を行い、未払賃金の支払等の要求を受け入れるなどしてきており、原告の活発な活動を背景として、相応の対応を取ることを余儀なくされてきたと認められる(上記(1)キク)。
(イ) しかし、一般に、労働組合活動が積極的に行われてきたからといって、直ちに使用者が嫌悪の情を抱くということはできないし、現に、本件における被告の対応は、労働組合の要求に一定程度応答するものであり、むしろ真摯なものと評価することもできるところである。
また、上記ア(ウ)のとおり、原告に非違行為に当たる事情が認められることからすれば、原告による労働組合活動の時期及び内容や、原告に対する二度の警告が団体交渉の継続中にされたことなど(前記(1)カ(オ)(カ))を踏まえても、これらの事情をことさら重視して、被告の労働組合ないし原告に対する嫌悪の存在を推認することはできないというべきである。
この点、原告は、被告が、本件携帯電話のメール送受信回数が多いことや、その相手が組合員であるEやFであったことから、十分な調査をせず、被告の業務に無関係であると判断したことは、不当労働行為目的を推認させる事情であると主張する。
確かに、被告による本件携帯電話の使用状況に関する調査の端緒等は必ずしも明らかではなく、通信の他方当事者であるFに対する事情聴取がされていないことなど(前記(1)カ(ウ))、調査として不十分な面がないとはいえない。しかしながら、業務用携帯電話の使用状況等に関する調査が、原告のみを狙って行われたなどの事情を認める的確な証拠はない(前記(1)イ(イ)ないし(エ)、カ(ア))。また、原告とE及びFとの間のメール送受信や電話につき、一部ではあるにせよ、検討の上で、組合の用務に関するものであるとして業務関連性を否定した被告の判断自体には、相応の合理性があり、これをもって不当労働行為目的を推認させる事情とまでは認められない。
(ウ) また、業務用携帯電話の使用につき、Gに対する被告の注意は口頭のみであったことや(前記(1)イ(ア))、通信の他方当事者であるEやFに対しては何ら処分がされていないことなどを勘案しても、原告の非違行為の内容及び程度に照らし、被告において、原告の契約更新を拒絶したことが、他者と比較して重すぎるとまではいえない。
(エ) その他、被告の労働組合や原告に対する嫌悪の存在をうかがわせるような事情は認められないから、本件雇止めの主たる動機は、雇止めの理由の証明書(書証<省略>)記載のとおり、原告の非違行為にあると認めるのが相当である。したがって、本件雇止めが被告の不当労働行為目的の下で行われたとの原告の主張には理由がない。
(3) まとめ
以上によれば、本件雇止めは、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であるから、解雇権の濫用に当たらず、有効と認められる。
3 結論
よって、原告の請求は理由がないから、いずれも棄却することとして、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 髙橋善久 裁判官 古賀英武 裁判官 久屋愛理)
別紙<省略>