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大阪家庭裁判所 平成12年(少)1219号 決定 2000年4月28日

少年 YことY・K子(昭和60.3.11生)

主文

少年を医療少年院に送致する。

理由

(ぐ犯事由及びぐ犯性並びに非行事実)

少年は、

第1  家出等を繰り返したことから平成9年4月に児童自立支援施設○○学園に入所したが、平成10年11月ころ無断外出し、以後全く就学せず家出をして性風俗店を転々としたり、テレホンクラブで知り合った男性と肉体関係を持ち、その代償として金銭を受け取る、いわゆる援助交際を行い、テレホンクラブで知り合った男性と交際し、同人宅で寝泊まりしており、保護者の正当な監督に服さず家庭に寄り付かず不道徳な人と交際し、いかがわしい場所に出入りし、自己の徳性を害する行為をしているもので、その性格、環境に照らし、このまま放置すれば将来売春防止法違反等の罪を犯すおそれがある

第2  法定の除外事由がないのに、平成12年3月7日ころ、大阪府大阪狭山市○○×丁目××番地×○□ハイツ×棟×××号室において、フェニルメチルアミノプロパンの塩類を含有する覚せい剤結晶若千量を水に溶かして自己の身体に注射し、もって、覚せい剤を使用した

ものである。

なお、一般に、犯罪がぐ犯性から予測される犯罪の直接的現実化と認められるときは、ぐ犯の補充性により犯罪事実のみを認定するのが相当であるが、少年のぐ犯性は、その生活態度、行動傾向、性格、環境等から、犯罪事実として現実化している覚せい剤取締法違反の点にとどまらず、売春防止法違反等の犯罪についても認められるのであるから、覚せい剤取締法違反保護事件がぐ犯性のすべてを現実化させたものとして、犯罪に対する評価をもってぐ犯についての評価も包括できる場合ではないことに鑑みると、ぐ犯事実も独立に審判の対象として、全事件を併合して審理し、上記のとおり認定した。

(法令の適用)

非行事実第1につき少年法3条1項3号本文、同号イ、ロ、ハ、ニ。同第2につき、覚せい剤取締法41条の3第1項1号、19条

(処遇の理由)

1  本件は援助交際を中心としたぐ犯及び覚せい剤の注射による自己使用の事案である。少年は本件に至るまでの10か月間に覚せい剤を300回位使用した旨自認している。少年は覚せい剤の薬理効果を求め使用を続けるうちに、離脱期の不快感に耐えられなくなり、3時間から5時間おきごとに使用を繰り返すなどしていたもので、少年の薬物依存は深刻である。

2  少年は、小学校6年生の時に児童相談所の一時保護を経て、平成9年4月児童自立支援施設○○学園に入所し、平成10年4月ころから無断外出を繰り返し、同年6月学園の仲間と無断外出した際には、仲間の影響を受け援助交際をしたり、風俗店に勤務したりしながら、シンナーを毎日のように吸引する生活を送り、1か月後に仲間とはぐれたことから帰園したが、同年11月5回目の無断外出をした。少年は以後本件に至るまで夜は13か所の性風俗店で転々稼働し、昼間は連日のように数人と援助交際をし、シンナーを吸引する生活を送り、援助交際の客から覚せい剤を勧められ、平成11年5月に覚せい剤を注射してもらったことからその作用にとりつかれ、覚せい剤代金欲しさに援助交際や風俗店勤務を続ける生活を送り本件に至ったもので、愛情欲求不満や不充足感から、受け入れてくれる相手に無批判に依存し、規範意識や自制心に乏しく、援助交際をしたり、目先の快刺激にひかれて刹那的に覚せい剤を使用しているという少年の問題点は根深い。

3  少年の両親は、少年の幼少期に不和となり、別居し、少年は母親のもとで養育されたが、母親は、少年が1歳の時に家を出て、父親も少年を父方祖父母に預けて家を離れ、以後父方祖父母が養育した。しかし少年が小学校5年生の時に父方祖母も家を出て、さらに父方祖父も少年が○○学園入所中の平成10年11月に他界した。これまで音信不通だった母親は、今回少年鑑別所にいる少年あてに手紙を送ったり、面会をしているが、母自身も病気がちであり、現状での少年に対する監護は期待できず、父親も少年に対する愛情はあるものの、少年の現状を知るに至り、現段階で少年を引き取り家庭で監護することは難しいと感じている。

4  以上の諸点からすれば、在宅処遇は困難であり、少年に対しこれまでの行動に対する反省を十分に深めさせ、薬物教育を施し、信頼できる人間関係を体験させること等を通じてその未熟な社会性等にも強力な働きかけをなすべく、収容保護の措置を講じる必要があると認められるから、少年法24条1項3号、少年審判規則37条1項を適用して少年を医療少年院に送致することとし、主文のとおり決定する。

(裁判官 三上乃理子)

〔参考1〕ぐ犯通告書に記載された審判に付すべき理由

審判に付すべき理由

少年は家出等を繰り返し、平成9年4月に児童自立支援施設である○○学園に収容されたものであるが、平成10年10月ころ無断外出し、以後中学就学年齢であるにもかかわらず、全く就学することなく、家出をし、性風俗店を転々とし、その後テレホンクラブで知り合った男性と交際し、肉体関係をもつとともにその代償として金銭を受け取る、いわゆる援助交際を数人と行い、その後はテレホンクラブで知り合った特定の男性と交際し、同人宅で寝泊まりする生活をし、性風俗店で知り合った者を介して、覚せい剤関係者との親交を深め、覚せい剤使用は半ば常習化しているものである。

これらのことから少年の行状は少年法第3条第1項第3号のイ、ロ、ハ、ニに該当し、その性格、環境に照らして、このまま放置すれば将来、売春、覚せい剤等の罪を犯すおそれが高いものである。

〔参考2〕環境調整命令書

平成12年4月28日

大阪保護観察所長殿

大阪家庭裁判所 裁判官 三上乃理子

少年の環境調整に関する措置について

少年 YことY・K子

年齢 15歳(昭和60年3月11日生)

学籍 中学校3年生

国籍 大韓民国

住居 不定

当裁判所は、平成12年4月28日、上記少年について、医療少年院に送致する旨の決定をしましたが、少年の両親は幼少時に不和となり、母親は少年が1歳半の時に家出をし、父親も父方祖父に養育をまかせ、以後父方祖父が養育していました。少年は、小学校6年生の時に○○学園に入所しましたが、入所中父方祖父も他界しました。今回母親が少年鑑別所に入所中の少年に対し手紙を書いたり、面会をしたりしていますが、審判には出席せず、父親だけが出席しましたが、父親も少年の現状を知り、またこれまで養育の実績がないことから監護に自信が持てない状況にあります。従って現状のままでは退院後の少年の帰住先も定まらず、退院後の社会内処遇にも困難が生じることが予想され、少年の環境調整の必要があると考えますので、少年法24条2項、少年審判規則39条により、下記の措置を執られますよう要請いたします。

少年の帰住先を確定するため、親族等の監護意欲、能力を確認し、少年の意向等とともに総合考慮したうえで、少年の帰住先を確定し、または新たな帰住先を確定すること。

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