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大阪家庭裁判所 平成13年(家)51620号 2001年5月15日

主文

申述人らの本件申述をいずれも却下する。

理由

1  本件記録によると、次の事実が認められる。

(1)  被相続人甲山Aは、平成9年12月16日死亡し、申述人らにつき相続が開始した。

(2)  申述人らは、当時、相続が開始したことを知らなかったが、平成12年8月18日、a株式会社から内容証明郵便を受領し、その書面には〔相続債務のお知らせとお尋ね〕との標題があり、本文の内容として、被相続人甲山Aが多額の債務を残して死亡したこと、申述人らが相続するか否かの回答を求める旨記載されていたのに、何らの手続きをしないまま、これを放置した。

(3)  申述人らは、その後、当該債権者から訴状の送達を受け、初めて事の重大性に気付き、平成13年3月6日ころ、申述人らの代理人弁護士に相談に行き、相続放棄手続の必要性を示唆され、同月27日、本件申述(申立て)をするに至った。

2  上記認定の事実によると、申述人らは、遅くとも平成12年8月18日には相続財産の全部又は一部の存在を知り得たというべきであるから、このときをもって「相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時」と解するのが相当であり、これより3箇月を経過した後である平成13年3月27日になされた本件申述(申立て)は不適法であるというほかない。

申述人らは、民法915条の「自己のために相続の開始があったことを知った時」の解釈について、「法律の不知又は事実の誤認等のために相続の開始があったことを知らない間は、相続人はまだ自己のために相続の開始があったことを知らないものと言わなければならない」旨主張し、福岡高決昭23年11月29日(家月1号7頁)を引用しているが、同高裁決定の事案は本件とは事実を異にするものであり、申述人らが被相続人甲山Aの相続人になるとは知らなかった(甲山Aと同一戸籍に記載がないため、兄弟としての相続人の関係にはないものと思っていた。)というようなことは、法律の不知又は事実の誤認等として許容されるべきものでなく、主張自体失当であり、到底採用することができない。

以上のとおり、本件申述は民法915条所定の期間を徒過したものであり、不適法であるから却下を免れない。

よって、主文のとおり審判する。

(家事審判官 孕石孟則)

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