大阪家庭裁判所 平成22年(少ハ)400070号 決定 2011年2月08日
少年
A (平成2.○.○生)
主文
本人を平成23年7月11日まで中等少年院に継続して収容する。
理由
(申請の趣旨)
1 本人は,平成22年3月12日,大阪家庭裁判所で,窃盗,建造物侵入保護事件について,中等少年院送致の決定を受け,同月17日,○○の家に収容され,少年院法11条1項ただし書による収容継続がなされたものであるが,平成23年3月11日をもって収容期間が満了となる。
2 本人は,平成22年12月1日付けで1級上(出院準備教育過程)に進級し,このまま順調に経過すれば,平成23年2月15日ころに仮退院となるが,これでは仮退院後の保護観察期間が約1か月間しか確保できない。
3 本人が,仮退院後に居住する住居は,入院前と同じ叔母の住居であり,引受人の実父との居住が困難であることを勘案すると,少年の監護を十分に行うため,一定期間の専門的な指導を継続する必要があると考えられることから,収容期間を延長させ,保護観察期間を確保すべきである。
4 よって,平成23年3月12日から同年7月11日までの4か月間の収容継続の決定を求める。
(当裁判所の判断)
1 本件記録及び審判の結果によれば,本人は,中学2年時の平成16年9月に実父母が離婚し,その直前の同年夏ころより急速に不良交遊に埋没して非行化し,恐喝,傷害,窃盗等保護事件により平成18年1月保護観察決定を受けたが,同年9月には高校1年で退学し,その後短期間で転職を繰り返す一方,同年10月からは自分の都合を優先させて保護司の下に行かなくなり,大人の干渉のない生活をしようと考え,平成20年2月,父方叔母名義で借りている市営住宅に転居して1人暮らしの生活を始め,それ以降平成21年6月まで保護観察所と全く連絡をとらず,保護観察の指導を受けない状態を続けていた。本人は,この間の平成20年6月からブティックのアルバイト店員をして就労していたが,携帯電話料金,服飾代,遊興費等に無計画に支出し,勤務先経営者から給料の前借りをして一時しのぎをしたものの,その支払いに窮し,平成21年2月ころから,勤務先の店内レジスター内から現金窃盗を繰り返し,その一環として,同年5月に店内レジスター内から現金2万円の窃盗に及び,平成22年3月12日,大阪家庭裁判所で,上記の現金2万円の窃盗保護事件により中等少年院送致の決定を受けた。
2 ○○の家における本人の処遇経過は,本人は,当初は中等少年院送致という処分に対し不満を持っていたが,教官や実父母の熱心な働きかけもあって,徐々に本人自身の本音を見せることができるようになり,少年院での生活を前向きに捉え,良好な活動,取組をすることができた。特に,対人関係の問題について,自分自身の考え方や実父母や友人等周りとの関係性についても考え直すことができ,他者に配慮しながら関わることの大切さや,大人として責任を持つことの難しさを理解することができるようになったが,これらの点について今も模索中であり,社会においても厳しく自己規制していくことができるか不安も残している。本人は,平成22年12月1日付けで1級上(出院準備教育過程)に進級しており,このまま順調に推移すれば,仮退院は,平成23年2月半ばころと見込まれる。
3 本人の仮退院後の帰住予定先は,少年院入院前の父方叔母名義で借りている市営住宅に戻る予定であるが,身元引受人である実父とは別居状態であり,実父母は,これまで以上に強力に監護に当たると述べているとはいえ,十分に目が行き届かない面も出てくると考えられる。また,本人の仮退院後の就労先も決まっていないし,本人は,特に金銭面における自己規制の困難さという不安も持っている。
本人の仮退院後の就労生活を軌道に乗せ,金銭管理を含め,生活の安定を図るためには,専門家による指導や援助は不可欠である。
4 以上のような諸事情を総合考慮すると,本人の犯罪的傾向は未だ矯正されたものということはできず,また,仮退院後も相当期間保護観察を必要とする事情が存在すると認められる。そして,本人の保護観察期間としては,院内の処遇終了後約5か月間は必要と考えられる。そうすると,本件申請どおり,収容継続の期間は,平成23年3月12日から同年7月11日までとすることが相当である。
5 よって,少年院法11条4項,少年審判規則55条により,主文のとおり決定する。
(裁判官 白神文弘)