大阪家庭裁判所 平成27年(家ロ)50122号 決定 2016年2月01日
債権者
A
同手続代理人弁護士
八木倫夫
債務者
B
同手続代理人弁護士
大河内義之
手島将志
飛田育彦
森下知紀
主文
1 債務者は,大阪家庭裁判所平成26年(家)第○号婚姻費用分担申立事件,同年(家)第○号ないし第○号子の監護に関する処分(監護者指定,子の引渡,面会交流)申立事件の執行力ある審判書正本に基づき,同審判書主文第2項及びこれにより引用されている別紙面会交流の要領のとおり,債権者を当事者間の長男C(平成20年○月○日生)と毎月2回面会交流させなければならない。
2 債務者が,本決定の告知を受けた日以降,前項の義務を履行しないときは,債務者は,債権者に対し,不履行1回につき4万円を支払え。
理由
第1 申立て
1 主文1項と同旨。
2 債務者が1項の義務を履行しないときは,債務者は,債権者に対し,平成27年○月○日から履行済みまで,不履行1回につき8万円を支払え。
第2 認定事実
本件記録及び関連事件(大阪家庭裁判所平成26年(家)第○号ないし第○号)記録によると,次の事実を認めることができる。
1 大阪家庭裁判所は,平成27年○月○日,債権者と債務者に対し,両名の間の長男C(平成20年○月○日生。以下「未成年者」という。)と債権者の面会交流に関し,別紙面会交流の要領を遵守して,これに記載された義務を履行することなどを命じる審判(以下「前件審判」という。)
をした。
前件審判については,債権者及び債務者により大阪高等裁判所に即時抗告がされたが,同裁判所は,平成27年○月○日,面会交流については抗告を棄却し,前件審判が同日に確定した。
なお,前件審判手続に先立つ調停手続において,平成26年○月○日に債権者と未成年者との試行的面会交流が大阪家庭裁判所で実施されたが,未成年者は楽しそうに問題なく債権者と面会交流を行っていた。本件審判手続において,家庭裁判所調査官は,平成27年○月○日に未成年者と面接したうえで,父子関係に問題はなく,当事者双方が定期的で円滑な面会交流を実施することの意義を理解し,早期に面会交流を実施することが望ましい旨記載した調査報告書を提出している。
2 前件審判が確定したことにより,平成27年○月○日及び○日に債権者と未成年者との面会交流が実施されることになり,未成年者と同居している債務者において,いずれの日も,未成年者を前件審判で定められた引渡場所であるDに行くために,未成年者を連れて自宅を出ようとしたが,債権者と会うことを教えられた未成年者が自宅を出るのを嫌がったために,未成年者をDに連れて行くことができなかった(その時の債務者と未成年者との会話録音テープは乙2号証の1,2である。)。
3 債権者は,これらの日の面会交流が実現しなかったことから,平成27年○月○日,本件申立てをした。
第3 判断
1 前件審判は,面会交流の日時,各回の面会交流時間の長さ,子の引渡しの方法等を具体的に定めており,債務者がすべき給付の特定に欠けるところはないから,債務者に対し間接強制決定をすることが可能である。
2 債務者は,前件審判により,毎月第○及び第○の○曜日の○時の面会交流開始時に,Dで未成年者を債権者に引き渡す義務を負っているところ,債務者は,面会交流が予定されていた平成27年○月○日及び○日に未成年者をDに連れて行かず,前記義務を履行しなかった。
この点について,債務者は,面会交流の実現のために誠実に対応しているが,現実に未成年者をDまで連れていくことさえ困難な状況にある旨主張する。確かに,債務者は,同月○日及び○日に未成年者を連れて行こうとしたが,未成年者が嫌がったことは,前記認定のとおりである。
しかし,約2年前にはなるが,平成26年○月○日に実施された債権者と未成年者との試行的面会交流において,未成年者は楽しそうに問題なく債権者と面会交流ができており,約1年前の平成27年○月○日に家庭裁判所調査官が未成年者と面接したうえで,早期に面会交流を実施することが望ましいとする調査報告書を提出していることからすると,未成年者を監護する親としては,現在7歳である未成年者に対し適切な指導,助言をすることによって,未成年者の福祉を害することなく義務を履行することが可能であると考えることができる。しかるに,同年○月以降,債権者と未成年者との面会交流が実現できていないことに照らすと,今後債務者の義務が履行されないおそれがあるということができる(なお,現在の未成年者の状況等から前件審判で定められた面会交流の方法が適切でない場合には,債務者において申立てを予定している面会交流の調停事件等の手続において,より適切な方法を検討すべきである。)。
3 債務の不履行に際して債務者が支払うべき額について検討するに,上記のとおり債務者は義務の履行に向けて一定の努力を行っていること,債務者は,前件審判において,年収72万円程度と認定されていること,債権者は債務者に対し婚姻費用分担金として月額15万円を支払う義務があることなどの事情を総合すると,債務の不履行に際して債務者が支払うべき金額は,不履行1回につき4万円と定めるのが相当である(なお,債権者は平成27年○月○日からの間接強制金の支払を求めるが,間接強制は,債務を履行しない債務者に対し,一定の期間内に履行しなければ一定の金額を債権者に支払うべきことを命じて債務者に心理的強制を加え,間接的に債務の履行を強制する方法である(民事執行法172条1項)から,既に経過した期間について間接強制金の支払を命じることはできない。)。
4 よって,主文のとおり決定する。
(裁判官 大島眞一)
別紙別紙 面会交流の要領
1 相手方は以下の内容で未成年者と毎月2回面会交流を行うことができる。
(1)第○及び第○の○曜日に行う。
(2)時間帯は○時から○時までとする。
(3)代替日は翌週の○曜日限りとして(2)と同じ時間帯に行う。
2 申立人は面会交流の開始時に□□□の申立人方付近に所在するDで未成年者を相手方に引き渡す。相手方は面会交流の終了時に同所で未成年者を申立人に引き渡す。
3 申立人と相手方はやむを得ない事情により面会交流を実施できない場合は事前に代替日を連絡し合う。
4 申立人と相手方は未成年者の福祉を考慮して面会交流の円滑な実施につき相互に協力する。