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大阪家庭裁判所 平成3年(家)1784号 1991年5月23日

主文

本件申立を却下する。

理由

本件記録によると、申立人の本件申立の要旨は、申立人は国籍韓国朴武永(1966年6月10日生)と、平成2年夏頃から共に生活しはじめ、同3年4月8日婚姻届出をしたものであるところ、朴武永は従来から「上田」の通称を名のつているので、4月25日出産した子供の将来のためにも、申立人の氏「森」を、夫の通称の氏「上田」に変更することの許可を求める(現に社会保険等は「上田」で申請している)、というのである。

しかしながら、このような申立は、夫の本来の氏ではなく、通称として使用しているに過ぎない氏に、申立人の氏を変更しようというものであって、謂うなれば、本来の夫の氏でもなく妻の氏でもない第三者の氏を創設しようとするにも等しいものであるから、そのような通称を持つ夫と婚姻したからという理由のみでは、戸籍法107条1項に所謂氏を変更しようとするにつき、「やむを得ない事由」があるものと解することは到底できない。また、子の存在を考慮しても、子が将来或る程度の年齢に達して、父の通称たる氏と子の氏が異なることが子の情操に著しい悪影響を与えるおそれが現実に生じたような場合は格別、最近子が生まれたというのみでは、未だ「やむを得ない事由」があるとは云えないし、まして社会保険等を「上田」で申請したことをもってその事由となしえないことは多言を要しない。そして本件全記記録によっても、他に「やむを得ない事由」があると窺うに足るものはない。

そうすると、申立人の本件申立は理由がないものと云わなければならないから、これを却下することとし、主文のとおり審判する。

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