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大阪家庭裁判所 昭和33年(家イ)1398号 命令 1958年11月01日

申立人 井坂一郎(仮名)

相手方 松井キク(仮名)

参加人 吉永ハツ(仮名)

主文

申立人は本件調停手続の終了するまで申立人と相手方との間において作成した和解証書五項掲記の下記物件につき売買譲渡、担保権の設定その他一切の処分及び現状の変更をしてはならない。

物件の表示

一、永田健郎、永田ふみ子、永田時子三名が大阪市港区繁栄町一丁目一四番地外一ケ所の土地につき共有する大阪市よりの借地権

二、上記土地の木造板葺平家建居宅兼倉庫一棟建坪三十坪九合一勺

申立人がこの命令に従わないときは、家事審判法二十八条により五〇〇〇円以下の過料に処せられることがある。

(家事審判官 原田直郎 調停委員 横田長次郎 調停委員 両角きく)

仮処分申立の理由

一、申立人井坂一郎は永田健郎外二名の後見人であり、仮の処分申立人勢田ミサは被後見人三名の実母であります。

二、然る処申立人井坂一郎は相手方松井キクに対し、被後見人三名の共有に係る申立の趣旨記載の借地権及び家屋所有権を無償で贈与すべき旨の不法なる契約を昭和三十二年十一月下旬か同年十二月上旬頃為した事が判明し、驚いた次第であります。

三、右の借地権及び家屋は右の被後見人三名の重要な財産であるので之を無償で贈与する事は回復すべからざる損害と為るので、該契約を取消させる為参加申立人吉永ハツが参加の申立を致した訳でありますが、斯る不法な処分行為をする者を後見人として置く事は出来ないのみならず、申立人井坂一郎は既に六十五才の老令でもあるので、仮の処分申立人勢田ミサは実母として後見人に選任して頂く様本年十月十七日御庁に対し右申立人井坂一郎の後見人たる事を解任する旨の申立を致したのであります。

四、其の結果御庁に於て右の申立人井坂一郎と相手方松井キク間の親族間紛争調整事件を右の後見人解任申立事件の審判終結に到る迄中止する旨の御決定がありましたが、万一右の審判終結に到る迄の間に申立人井坂一郎と相手方松井キク間に於て別紙和解証書に基く借地権及び同地上建物の贈与の履行が為されては回復すべからざる損害と為る、と同時に将来の後見事務遂行上重大なる支障を生ずる虞れがありますので大至急右の処分を禁止する旨の御決定を仰ぐ為本申立に及んだ次第であります。

(別紙和解証書省略)

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