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大阪家庭裁判所 昭和33年(家イ)1404号 審判 1958年11月08日

申立人 高林カズエ(仮名)

相手方 高林吉郎(仮名)

主文

申立人と相手方とを離婚する。

理由

申立人は主文同旨の調停を申立て、その原因の要旨は申立人は昭和三十一年六月頃より妻のある相手方の妾となつたが、相手方は昭和三十三年一月○日勝手に妻ヒロの署名を偽造して協議離婚届出をなし、同日申立人との婚姻届出をしたものであるが、事件外ヒロより協議離婚無効確認の調停申立をなし、同事件において相手方とヒロ間の協議離婚の無効を確認する旨の審判がなされ、昭和三十三年七月二日該審判が確定し、ヒロの戸籍は相手方戸籍に回復せられたから、相手方は重婚をしていることになるので、相手方とヒロの離婚が困難なれば相手方と申立人の離婚をしたいと言うのである。

相手方は重婚の事実を認め、別件で妻ヒロに対し重婚を事由に離婚調停の申立をした。

事件外高林ヒロは申立人及び相手方を相手方とし両名間の婚姻取消の調停の申立をした。

当裁判所調停委員会は上記三件につき併行して調停を行つたが、重婚であるからどちらか一方の婚姻を解消すべき旨の調停委員会の勧告にも拘らず、相手方は態度を明確にせず、遂には調停期日に出頭しないようになり、調停成立の見込がなくなつたので、調停委員会は上記相手方とヒロ間の離婚事件と、ヒロと本件申立人及び相手方間の婚姻取消事件は、いづれも調停を不成立とし、当裁判所は上記事件の調停の経過及び協議離婚無効確認事件の記録により、上記申立人の申立てた原因の要旨記載の事実を真実と認め、調停委員の意見を聴き、当事者双方のため衡平に考慮し、一切の事情を見て、公序良俗に反する両婚の内法律上も取消し得べき后婚である本件当事者間の婚姻を解消せしめるを相当と認め、家事審判法第二十四条によつて主文のとおり審判をする。

(家事審判官 谷村経頼)

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