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大阪家庭裁判所 昭和33年(家イ)1796号 審判 1959年4月27日

申立人 桂京子(仮名)

相手方 桂浩司(仮名)

主文

申立人と相手方を離婚する。

双方間の長男照史(昭和三〇年三月八日生)の親権者並びに監護者をいずれも母たる申立人と定める。

相手方保管中の申立人が婚姻の際持参した別紙目録記載の物件を、相手方は申立人に引渡せ。

相手方において前項物件を申立人に引渡すことができないときは、相手方は申立人に対し金一二万円を支払え。

双方は本件に関し今後名義の如何を問わず金銭その他財産上の請求をしてはならない。

調停費用は各自負担とする。

理由

本件申立実情の要旨は「申立人と相手方は昭和二九年五月二九日挙式結婚し、同年一〇月一四日婚姻届出を終えた夫婦で、昭和三〇年三月八日長男照史も出生したが、結婚当初より相手方は他に女性関係があり、ために一週間に最低二回位の外泊があり、その収入も家計を顧みることなく大部分を蕩尽してしまう始末で、昭和三〇年一月二〇日大阪家庭裁判所に申立人は相手方に対し離婚調停の申立をし、その際は前後一〇数回にわたる調停の後円満に再び同居することとして申立人は事件を取下げたのであるが、相手方はその後も相変らず素行改まらず、申立人は現在長男照史と共に実家に身を寄せているが最早双方の婚姻生活における将来に対する希望も絶えとうてい相手方と夫婦関係を継続してゆく意思もなくなつたので、ここに相手方に対する離婚、長男照史に対する親権者及び監護者の指定並びに申立人が結婚の際持参した別紙目録記載物件の引渡を求めるため本申立に及んだ。」というにある。

本件については前後九回にわたつて調停期日を開き、結局申立人の強固な離婚意思に対し相手方も大体離婚は承諾したものの、長男照史の親権者、監護者の点において彼此協議中、申立人が結婚に際し持参した別紙目録記載の荷物を相手方が申立人に返還すべき点に調停が及んだところ、相手方は強硬にこれが返還に反対し、該物件は相手方の義父多田義一方に相手方の借財の担保に引取られている或は義父の友人某方に相手方の借財の担保に引取られているから返還できない等と理由にならない理由を掲げ言を二、三にする始末で、遂には本件調停期日に出頭しなくなつてしまつたため、離婚の合意はおろか、長男の親権者等の点、上記荷物引渡の点についての最終的結論が見出せないまま事実上調停不成立と同様の結果に立ちいたつたのである。

なお、本件においては、離婚条件として申立人より相手方に対する慰藉料若しくは財産分与等の要求はなく、申立人は長男照史の親権者、監護者となつても相手方にその扶養料は特に要求しない旨をも申添えている。

以上の次第並びに双方間の前件当庁昭和三一年(家イ)第六三号離婚調停事件の経過を綜合斟酌し、当裁判所は調停不成立のまま本件を終了せず家事審判法第二四条に則り調停にかわる裁判においてその結論を明らかにするのが正義に合致し双方の衡平のため相当と認める。すなわち、

一、当裁判所は双方間に円満誠実な婚姻生活を継続するの意思すでになく、婚姻の実質も最早失われている本件双方の婚姻はここに終了せしめるのが相当と認める。

二、離婚に伴う双方間の長男照史の親権者、監護者の点については、照史は未だ幼年、本件離婚にいたるまでの経過に鑑み父たる相手方の親権に服しその監護養育を受けるよりも、現在も監護養育を受けている母の膝下で成長せしめるのが子の利益のため必要と認めるので、照史の親権者並びに監護者はいずれも母たる申立人と定める。

三、申立人が婚姻に際し持参した荷物(内容物はすでに申立人において引取済み)は、相手方が如何なる理由をつけてもこれを自由に処分するを得ない申立人の所有権の支配に服する物件である。従つて、双方がいま婚姻を解消せんとするの際、相手方はこれを返還すべき義務があることが明らかである。

四、若し仮りに、相手方において前記物件を申立人に返還することができないときは相手方は申立人に対し引渡不能を理由にその損害を填補すべき義務を負うべく、その損害額は当裁判所はこれを一二万円と評価する。

以上の次第で双方とも本審判がなされるにいたつた経過に思いをいたし、速かに本審判に服して双方間の一切の関係の清算につとめ再出発することを切望して、主文のとおり審判する。

(家事裁判官 原田直郎)

(別紙目録省略)

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