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大阪家庭裁判所 昭和35年(家イ)1927号 命令 1960年12月09日

申立人 秋山イネ(仮名)

相手方 吉元多助(仮名) 外一名

利害関係人 株式会社○○銀行

主文

相手方等は利害関係人に対する相手方吉元多助名儀の定期預金一五〇、〇〇〇円を受領してはならない。

利害関係人は相手方等に対し上記定期預金を支払つてはならない。

(家事審判官 谷村経頼 調停委員 嵐芳一 調停委員 結城益子)

注意

相手方は正当な理由がなくこの命令に従わないときは金五、〇〇〇円以下の過料に処せられる。

仮の処分を発した経緯

申立人と相手方吉元和枝は伯母姪の関係であり相手方吉元多助は和枝の夫である。相手方吉元多助は元憲兵兵長で恩給三〇〇〇円を給されているが、脳梅毒に罹り心身異状者である。申立人は夫秋山次郎六五才(元市電関係者で退職後退職賜金を妻に分与し現在他の女と同棲し妻子とは別居している)事実上の離別をしている。申立人は次男秋山義夫その妻千津子と同居していたが嫁姑の関係で争いが起り昭和三四年六月○○日より同三五年四月○○日迄約一〇ヵ月間相手方吉元多助方に寄寓していた。其の間冷待遇を受け同家より退去し現在は再び次男夫婦と同居している。申立人は相手方に寄寓する際養老院に入れば三〇万円の寄託金を出さねばならぬと言われていた。自分の居室を設けるため建築費として金一五万円を相手方吉元和枝に出金しバラツク建の小室を設け食費として昭和三四年八、九月の両月は金三〇〇〇円宛を支払つた。建築費は金一二万円かかつた由(相手方和枝の言)で残三万円は和枝に渡し放しで返還されていない。昭和三四年八月曩に定期預金をしていた○○銀行難波支店に相手方和枝と共に赴き満期になつていた定期預金を継続預金する際一口で三〇万円以上を預ける時は高額貯金として課税の対象となるから分割して預けることとし一五万円は申立人名義残一五万円は相手方の申出で(強請とも言う)相手方吉元多助の名義として六ヵ月満期の定期預金とした(昭和三五年八月末日満期)。本年四月○○日申立人は前述の通り相手方家族の冷遇に堪え兼ね同家から退去したが老令であり不仲となつていた次男夫婦と同居しているので金が頼りであるから前述相手方多助名義となつている定期預金証書の返還と居室建築費の返還を請求するため本件を申立てたのである。居室建築費は現在のところ申立人は返還請求を断念している。種々話合せしも申立人は夫多助の病気と子女の教養のため返還は約束するも該定期預金は借金の引当及病夫の死亡の際の葬式費のため今しばらく其儘として温存し将来子供成長し就職せばたとえすこしずつでも返還すると強弁している。定期預金の預け先○○銀行難波支店へは係員岩崎○○と連絡し調停の進行する間相手方から引出の請求があつても今しばらく引出をストップするよう依頼せし処名義印鑑が相手方となつているから事情の如何に拘らず引出の請求あらばいつ迄も引出を断るわけにも行かずと申述している。委員は相手方和枝に対し該定期預金を申立人に返還せば若干の金員を相手方に与えるよう種々話をしているが相手方は該預金は自家の生命線であると言つて頑として応諾していない。

昭和三五年一一月二九日午後七時委員会を開催し主任裁判官谷村判事委員共に説得せしめ聞入れず不調に終つた次第である。

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