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大阪家庭裁判所 昭和41年(少ハ)2号 決定 1966年3月30日

本人 D・K(昭一九・一二・二九生)

主文

本件申請を却下する。

理由

本件申請理由の要旨は、D・K(以下本人という)は昭和三九年七月六日当裁判所において窃盗保護事件につき中等少年院送致の決定を受け、同月九日浪速少年院に収容されたが、同院において度重なる逃走事故をおこしたため同年一二月二六日河内少年院に移入され、同月二八日満二〇才に達し、同四〇年七月五日をもつて送致後一年の期間満了するので同年六月三〇日当裁判所において本人を同四一年四月五日(決定書中同四一年三月五日とあるは同四一年四月五日の誤りにつき同年二月二八日その旨更正決定する)迄を限度として同少年院に収容を継続する旨の決定を受け同少年院に収容中のものであるが、右決定後前後三回にわたり逃走企図謀議工具作製、不正受授および喧嘩未遂の規律違反をなしその都度謹慎訓戒等の処分を受けたのにかかわらず更に最近実科教室内倉庫に保管中の塗料用シンナーを他の院生と共謀の上窃取し喚吸するという規律違反をおかし謹慎二〇日および二級上に降下の処分を併科された、これらの経過に徴し本人の犯罪的傾向はまだ矯正されておらず退院措置は不適当であると認めるので少年院法第一一条第二項により同後五ヵ月間本人の収容を継続する旨の決定の申請におよぶというにある。

一件記録によると、本人については同四〇年六月三〇日すでに当裁判所において収容継続決定がなされ、本件収容継続決定の申請は再度の申請にかかるものであるからまずその当否について判断する。

これが許されるか否かについては少年院法第一一条第二項第四項第五条の規定をめぐり議論の分れるところであるが、同条第二項第四項の趣旨とするところは収容保護の制度は少年保護の目的達成の面を有することは勿論であるが、該少年を少年院に収容しその自由を拘束するとともに加えてその家族らとの離別した生活を強制する面をも有するのでその人権を尊重する趣旨から満二〇歳未満の者送致時一九歳の者については送致後一年以内の者をその期間内で保護矯正し、在院者が満二〇歳に達したとき或は送致後一年を経過したときは退院させなければならないのを原則とするが(同条第一項)、ただ退院時に達した者の中には未だ犯罪的傾向の矯正されず少年院から退院させるに不適当な場合にかんがみ少年院々長の申請にもとずき満二三歳までの範囲内でしかも期間を定めて収容を継続する旨の決定をなし得ることとし少年の人権の保障とその保護目的達成との間に調和限界を定めることとしたものである、同項は例外規定で保護処分の可変的不定期的性格も該期間内では不変定期化しその期間が経過するときは退院させなければならない(同条第八項)、従つて同条第二項に所謂「前項の場合において」とは同条第一項により退院させる者を意味し、更に収容継続による在院者を含ましめて解釈することは妥当でない、又同条第五項において「満二三歳に達するものについて精神に著しい故障があり且つ公共の福祉のため退院させるのが不適当なもの」につき再度の収容継続を医療少年院に収容する場合に限り認めているが、その趣旨とするところは犯罪的傾向が矯正されず将来犯罪行為にでるおそれがあるといとにとどまらず更により高次の要請があり収容を継続することが被収容者の人権を全うしひいては公共の福祉をまもる所以となる場合に更に再度の収容継続を認めるものである。従つてその範囲は顕著な精神的障害をともなうもので退院させるとき公共に対し重大な危険を及ぼすことの明白な場合およびこれに準ずる場合に限られるべきである。

以上単に犯罪的傾向にあるにとどまる場合に同条第二項第四項第五項を根拠に再度の収容継続を認めることは例外規定をもつてすべての場合にこれを一般化するものでその合理的解釈を逸脱するもので根拠にとぼしい。

本件申請は前記のとおり犯罪的傾向が矯正されていないことを理由とする再度の収容継続を求めるものであるから不適法というべきでこれを却下することとし、よつて主文のとおり決定する。

(裁判官 近藤寿夫)

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