大阪家庭裁判所 昭和44年(家)4181号 審判
〔主文〕被相続人野村勝(本籍高知県香美郡○○町○○番地△△△△、明治三六年一月五日生、昭和四三年八月四日死亡)の遺産分割として、
一 別紙一遺産目録中(1)及び(2)の遺産の換価代金を各金二四七万三〇八一円五〇銭あて申立人及び相手方らにそれぞれ分割する。
二 同目録中(3)の遺産を申立人及び相手方らの各持分六分の一あての共有とする。
三 同目録中(4)の遺産をその株数において各六分の一あて申立人及び相手方らにそれぞれ分割する。
四 同目録中(5)及び(6)の遺産をその券面額において各六分の一あて申立人及び相手方らにそれぞれ分割する。
五 同目録中(7)の遺産を申立人及び相手方らの各持分の一あての共有とする。
審判(調停)費用はこのうち鑑定人三宅通夫に支給した費用金二万五〇〇〇円を六分し、その一を申立人の、その五を相手方五名の各平等負担とし、その余の費用を各自の負担とする。
〔理由〕申立人は、その父野村勝が昭和四三年八月四日死亡したので、父の遺産について相続が開始し、申立人と相手方らとは共同相続人となつたが、この遺産分割について協議が整わないからとの理由で、昭和四三年九月二七日当庁に調停の申立をなした。この調停申立は当庁昭和四三年(家イ)第二七〇四号事件として係属し、調停手続が進められたが、当事者間に合意の成立する見込がないので昭和四四年五月三〇日調停不成立となり、審判事件に移された。よつて、当裁判所は、相当の証拠調をなしたうえ、次のとおり認定判断する。
一 相続人及び相続分
被相続人野村勝は、昭和四三年八月四日、大阪市○○区内において死亡したので、同人の遺産に対する相続が開始した。その相続人は、申立人及び相手方らの都合六名(いずれも嫡出子)であつて、他に相続人はいない。従つて、各相続人の各法定相続分は、それぞれ六分の一であることが明らかである。なお、本件については格別遺言はなされていない。
二 遺産の範囲
本件相続開始当時における被相続人の遺産は、別紙一遺産目録記載のとおりである。なお、申立人審問の結果中には以上の遺産のほかに、
(イ) ○○工業株式会社株式(ただし、平田正男名義、相手方野村俊明名義及び高沢金治名義の各一〇〇株並びに被相続人名義の六〇〇株を除いた分)二一〇〇株
(ロ) 生命保険(保険金額五〇万円、(あ)第一二七九九一号○○生命保険相互会社、被保険者野村勝、保険金受取人被保険者の相続人)
(ハ) 簡易保険(三口、いずれも被保険者は野村勝、受取人は保険金額一五万円のもの相手方野村沙代子、保険金額一〇万円及び八万円のもの同野村俊明)
(ニ) 被相続人の○○工業株式会社に対する功労金請求権または退職金請求権
(ホ) 被相続人の葬儀における香典
金二万円
(ヘ) 現金 若干
がある旨述べているが、相手方野村沙代子、同野村扶美子の各審問の結果に徴しても、上記(イ)の株式二一〇〇株がその名義にかかわらず実質的に被相続人の所有に属するとは認めがたいし、また上記(ニ)の会社に対する請求権も存在するものとは認められない。つぎに、上記(ロ)、(ハ)の各保険金についてもその性質上それぞれ保険契約の効力発生と同時に受取人たる相続人固有の財産となり、被相続人の遺産より離脱しているものと解すべく、これを別異に解すべきような特別の事情も認められない。また、(ホ)の香典についてはその金額にかんがみ葬儀費用と清算されたものと推認され、上記(ヘ)の現金については被相続人の電話料金等の債務支払のため費消されたことが認められ、いずれも消滅したものと認める。
三 遺産の分割
(1) 別紙一遺産目録中(1)及び(2)の不動産について
当該不動産は、その種類、価格、分割の難易に徴し本件遺産中重要な割合を占めるものであるが、本件相続開始後、相続人で当該不動産を占有するものもなく、むしろ、これを売却換価してその代金を分配すること可とする旨の意見を有している。当裁判所は、当該不動産の分割について当事者の意向、分割の難易等諸般の事情を考慮し、遺産管理者を選任してその管理に当らせるとともに、これを適正な価格で換価したうえ分配するのが最も適切な分割方法であると判断した。
そこで、弁護士松井昌次を遺産管理者及び換価人に選任し、鑑定人三宅通夫をして適正価格等について評価をなさしめたうえ、当該不動産の換価を上記換価人になさしめたところ、その換価代金金一六三〇万円を得た。ついで、この換価に伴う収支を清算すると、別紙二記載のとおり、換価代金の残額は金一五六三万八四八九円となり、これから、上記遺産管理者及び換価人に対する報酬金八〇万円(この報酬額については、当裁判所は、参与員加納実、同山川源次郎の意見を聴き、管理者として金三〇万円、換価人として金五〇万円として定めた。)を控除すると、本件遺産分割の対象となる遺産は、結局金一四八三万八四八九円となり、これを各相続分に応じて分割する。相続人一人当りの分配額は金二四七万三〇八一円五〇銭となる。
(2) 遺産目録中の不動産について
本件物件については、その所在場所及び利用状況に鑑み、また相続人の意向に徴し、いまこれを現物にしろ、換価のうえでにしろ各相続人に分割する必要も認められないので、むしろ、各相続分を持分として相続人六名の共有とするのを相当と認める。
(3) 遺産目録中の各株式について
本件(イ)の株式については、被相続人が生前に○○工業株式会社の代表取締役の地位にあり、相手方扶美子ら及び申立人の夫平田正男も同会社の役員、株主としてこれに関与していたところ、被相続人の死亡に伴い、その後の同会社役員の構成、保有株式の帰属を廻つて紛争が生じていたので、最も関心の深いところであるが、特定の相続人にこれを取得させるのは相当でないと考える。それで、本件(イ)の株式は、(ロ)の株式とともに、いずれもその株数において各相続分に応じて分割するのを相当と認める。
(4) 遺産目録中(5)、(6)の債権について
本件各債権については、いずれもその券面額において各相続分に応じて分割するのを相当と認める。
(5) 遺産目録中(7)の電話加入権について
本件権利については、相続人の意向に徴し、各相続分を持分として相続人六名の共有とするのを相当と認める。
四 審判費用の負担
審判(調停を含む。)費用は、このうち鑑定人三宅通夫に支給した費用金二万五〇〇〇円を六分し、その一を申立人の、その五を相手方五名の各平等負担とし(なお、同費用の全額を相手方扶美子において立替払をしているので、当事者間において清算を必要とする。)、その余の費用は各自の負担とするのが相当である。
よつて、主文のとおり審判する。
(福島敏男)
<別紙略>