大阪家庭裁判所 昭和54年(少)5300号 決定 1979年7月04日
少年 G・T(昭三九・一〇・一〇生)
主文
少年を医療少年院に送致する。
理由
(非行事実)
少年は、
1 A、Bと共謀のうえ、昭和五四年一月二七日午後七時三〇分ころ、大阪市○○区○○×丁目×番×号○○小学校西側通用門先において、興奮、幼覚又は麻酔の作用を有する劇物で政令で定められたトルエンを含有するゴムのりをポリ袋に入れてみだりにこれを吸入した。
2 Cと共謀のうえ、同年二月二八日午前三時ころ、大阪市○○区○○×丁目××番×号先路上において、K所有の自動二輪車一台(○○む××-××、時価約二〇万円相当)を窃取した
3 C、D、E、A、Fと共謀のうえ、同年五月一〇日午前一時ころ、大阪市○○区○○×丁目××番×号○商店方ガレージにおいて、L管理にかかる小型貨物自動車一台(○○××ゆ××××、時価約七〇万円相当)を窃取した
4 G、H、Iと共謀のうえ、同月三〇日午後一一時ころ、大阪市○○区○○○×丁目××番×号M方裏車庫内において、同人所有にかかる自動二輪車一台(○○む××××、時価約一五万円相当)を窃取した
5 Iと共謀のうえ、同日午前一時三〇分ころ、大阪市○○区○○×丁目×番××号N方前路上において、同人所有にかかる自動二輪車一台(○○め×××、時価約三〇万円相当)を窃取した
6 H、G、Iと共謀のうえ、同月三一日午前一時ころ、大阪市○○区○○○×丁目×番○○○○住宅××号館先路上において、O所有にかかる自動二輪車一台(○○む××××、時価約二一万円相当)を窃取した
7 H、Iと共謀のうえ、同年六月八日午前一時ころ、大阪市○○区○○×丁目×番○○団地内公安室横において、P所有にかかる自動二輪車一台(○○ま××××、時価約一〇万円相当)を窃取した
8 公安委員会の運転免許を受けないで、同年四月六日午後四時五分ころ、兵庫県芦屋市○○町×-××先交差点付近道路において、自動二輪車(○○む××××)を運転した
9 公安委員会の運転免許を受けないで、同月一六日午後四時三〇分ころ、大阪市○○区○○×丁目×番××号先付近道路において、自動二輪車(○○む××××)を運転した
10 自動車の運転免許を得る目的で反覆継続してその運転に従事しているものであるが、同日同時刻ころ同場所において、前記自動二輪車(○○む××××)を運転して時速約四〇キロメートルで南から北へ向け進行中、同所は交通信号機が設置されている場所であり、該場所を直進しようとしたものであるが、このような場合自動車運転者としては信号表示に従うは勿論、速度を適宜調整し交差点の左右道路に対する安全を確認して事故の発生を未然に防止すべき業務上の注意義務があるのにこれを怠り、自車進路上で前方交差点の信号待ちのために停止していると明らかに認められる他車を約三・六メートル前方に認めながらこの後方にとどまることもせず、かえつて黄線で路面標示されているはみ出し禁止標示を無視し、反対側車道(道路の右側部分)に進路変更のうえ右側通行で同一速度のまま交差点に接近し、初めて対面信号の赤色(止れ)表示を認めたが、高速運転をしていたため停止することができず、そのまま信号を無視して交差点に進入した過失により、折から西から南へ向け右折進行して来たQ(当時二一歳)運転の普通乗用自動車(○○××も××××)を前方約六・二メートル前方に接近して初めて発見したが速度を出していたのと至近距離であつたため避譲措置が全く施せず、そのまま走行して自車左前部を上記Q運転の普通乗用自動車の左前部に衝突させ、この衝撃により自車を横転させ、よつて自車同乗者R(当時一七歳)に対し加療約三月を要する左下腿開放骨折の傷害及び前記普通乗用車に同乗していたS(当時二三歳)に対し加療約二過間を要する左示指、左手背挫創、左大腿及び左膝挫傷の傷害をそれぞれ負わせたものである。
なお、昭和五四年三月一日大阪府○○警察署長から通告された虞犯事件(昭和五四年少第一九四五号)及び同日大阪市中央児童相談所長から送致された虞犯事件(昭和五四年少第一九四七号)については、少年の虞犯性が現実化して上記認定の犯罪行為に至つた以上、右犯罪行為について少年を保護処分に付する際の情状として考慮されるべきものと解する。
(適用法条)
一の事実につき、刑法六〇条、毒物及び劇物取締法二四条の四、三条の三
二ないし七の各事実につき、いずれも刑法六〇条、二三五条
八、九の各事実につき、いずれも道路交通法一一八条一項一号、六四条
一〇の事実につき、刑法二一一条前段
(処分の理由)
少年に対する昭和五四年七月二日付意見書、試験観察経過報告書、同年六月二八日付大阪少年鑑別所鑑別結果通知書並びに審判の結果を併せ考えると、少年の健全な育成を期するためにはその性格、これまでの行状、環境等に鑑み医療少年院に収容して指導訓練を施すのを相当とするので、少年法第二四条第一項第三号により主文のとおり決定する。
(裁判官 谷敏行)
処遇勧告書<省略>
〔参考一〕 ○○警察署長作成の通告書記載の審判に付すべき理由(昭和五四年少第一九四五号)
児童は昭和五三年四月ごろから家出、無断外泊を繰返し、保護者も度重なる児童の非行に監護する自信を失い、児童福祉司らと相談の結果、昭和五三年十月三一日に府立修徳学院に入院することとなつたが素行おさまらず、前後五回にわたつて同院から無断外出し、その度毎に非行を重ねていたところであるが、昭和五四年一月十八日にまたもや同院から無断外出し、以後家庭に寄りつかず、怠学しながら犯罪性のある者と交際し別添の捜査復命書記載の非行を反覆し、母親からも再度保護善導方の依頼を受けていたところであるが児童の所在すら確認できかねていた状況である。
児童は小心、見栄張りの性格で窃盗など四回の非行歴を有し、このまま放置すれば将来さらに窃盗、恐喝、毒物劇物取締法違反等の非行を犯す虞れが十分に認められる。
(捜査復命書記載の非行事実)
被疑者G・T犯罪事実一覧表
番号
罪名
被疑者
犯行年月日時
犯行場所
被害者
行為及び方法
被害物件
処分
備考
品名
数量
価格
年月日時
価格
処分先
1
窃盗
G・T
昭和53年11月1日、午後1時ごろ
大阪市○○区○○×丁目×番×号○○×号棟
西側階段前路上
大阪市○○区○○×丁目×番×の××号
高校生 T 16歳
被疑者は上記日時場所においてT所有にかかる自動2輪車1○○か×××号時価13万円を窃盗したものである。
自動2輪車
カワサキ号1○○か×××号 車体番号KH×××
B~×××××
1台
130、000円
自己使用中を検挙
被害届、供述調書、任意提出書、領置調書、還付請書
2
毒物、劇物取締法違反
G・T、A、B
昭和54年1月27日 午後7時30分ごろ
大阪市○○区○○×丁目×番×号
○○小学校西側通用門先
上記日時場所において興奮幻覚又は麻酔の作用を有する劇物で政令に定められた有機溶剤トルエンを含有するゴムのりをみだりに吸入したものである。
任意提出書、領置調書、復命書、発見報告書
3
毒物、劇物取締法違反
G・T、J、U、V、W、C、X(触法)
昭和54年2月17日 午後1時ごろ
大阪市○○区○○×丁目×番×の×××号
Y 47歳方
上記日時場所において、興奮幻覚、又は麻酔の作用を有する劇物で政令に定められた有機溶剤トルエンを含有する「サンデーペイントビュローゼうすめ液」をみだりに吸入したものである。
任意提出書、領置調書、復命書、発見報告書
〔参考二〕 大阪市中央児童相談所長作成の送致書記載の審判に付すべき事由(昭和五四年少第一九四七号)
本児は、昭和五三年一〇月三一日修徳学院に措置したものであるが、経過は不良で、頻繁に無断外出をくり返し、その時には車上ねらい、万引、公衆電話荒し等触法事案を重ねている。そして昭和五四年一月一八日無断外出して帰宅したまま本児は帰院を拒否し、保護者も本児の修徳学院に対する不満を聞いて本児を帰院させることを拒否した。当所としては、帰院するよう指導してきたが、本児は、その間に保護者の制止も聞かず飛び出しては、無断外泊をくり返し、年長の非行グループと交わり、シンナー吸引等を続け、非行への親和性を増してきている。本児は、頭髪にそりこみを入れ眉をそつたりして外面的なことに関心強く、衝動的な行為にも出やすい。
保護者の正当な監護に服さず、このまま放置すれば、将来罪をおかす恐れがあるため少年法第三条第一項第三号により、審判に付することが適当と思料される。
なお、修徳学院の措置については、保護者が本児は開放寮での処遇は無理と主張し、帰院させることを拒否したため、昭和五四年二月二二日解除とした。
〔参考三〕 鑑別結果通知書(抄)<省略>