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大阪家庭裁判所 昭和56年(家)2849号 審判 1981年9月21日

国籍 韓国 住所 大阪市旭区

申立人 金信明

主文

本件申立を却下する。

理由

一  申立人は同人の名を「信明」から「東宇」に変更することを許可する旨の審判を求め、申立の実情としてつぎのとおり述べた。

申立人は昭和四〇年に大韓民国から渡日した韓国人(在留資格出入国管理令四条一項一六号)であるが、手続上の問題から現在外国人登録原票上の国籍は「朝鮮」と記載されている者である。渡日後申立人はかねてから同人の親族のほとんどの者が名の一部に用いている「宇」という文字を使つて自ら「東宇」と名乗り、その後は現在まで少なくとも一〇年間使用の許されない運転免許証、健康保険証等以外の場面では「東宇」という名を使用している。そこで永年使用している「東宇」に改名したく、韓国の戸籍上の表示の変更までは無理かもしれないが、外国人登録原票上の名の表示の変更をしたく本申立をなした。なお、外国人登録原票の氏名欄には「金信明」の表示のほかに「(金東宇)」なる通称の表示が記載済である。

二  韓国人である申立人の氏名は本国である韓国の戸籍に記載されているところ、その表示の変更については韓国に裁判権があり、我国の家庭裁判所が裁判権を有するものではないと解される。従つて、本申立が申立人の韓国戸籍上の名の表示の変更を求めるものであれば、却下を免れない。

三  ところで、申立人は直接的には外国人登録原票上の名の記載の変更を求めるため本申立に及んだ如くであるので付言するに、家事審判の対象である事項は家事審判法九条に記載されている事項に限られるものであるから、外国人登録原票上の名の変更の許可は家事審判の対象とはならない。

外国人登録法九条には、外国人登録原票の居住地以外の記載事項の変更登録に関する規定がおかれ、同法上の外国人の氏名の変更があつた場合には資料を提出してその旨の申請をなすべきことを定めている。いかなる場合にその変更の登録がなされるかは明らかではないが、事柄の性質上それは登録担当者である市町村の長の広い裁量に委ねられているものと解される。一面では日本に居住する同法上の外国人にとつて外国人登録原票が日本人における戸籍と同様の機能をも果していることは否定できないが、同原票上の名の変更の許可を戸籍法一〇七条二項を類推適用して特別家事審判事項と解することは現行法の解釈上は相当でない。

四よつて、本件申立を却下することとし、主文のとおり審判する。

(家事審判官 杉森研二)

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