大阪家庭裁判所堺支部 平成16年(少)182号 2004年3月11日
主文
少年を中等少年院に送致する。
理由
(非行事実)
検察官作成の平成16年2月13日付け送致書(甲)記載の犯罪事実
(法令の適用)
被害者Cに対する強盗致傷につき、刑法60条、240条前段
被害者Dに対する強盗強姦につき、刑法60条、241条前段
(処遇の理由)
1 本件は、当初は深夜に少年と共犯者ら並びに被害者C及びDがF宅に集まって、宴会をし、飲酒しながら遊んでいたが、途中Gらが外出して自動車を盗んで来たことから、これを捨てに出かけた際にGらが被害者ら側男子とトラブルを起こしてF宅に戻って来たことで(なお、C及びDは少年のメール友達とその友人であり、当初は少年からの呼び出しを受けてF宅に赴き皆と一緒に遊んでいたが、途中で抜け、迎えに来た男子友人3名と合流していた。)、Gや少年を含む共犯者らがその仕返しに行くことになり、男子友人3名と共にいる被害者らを見つけると、共謀のうえ、因縁をつけて、G及びHがC及びDに暴行、脅迫を加えて金品を強取し、その際それぞれに傷害を負わせ、さらに共謀の上、現場でEがDを姦淫し、引き続きDをF宅まで連行し、F宅で少年がDを姦淫し、姦淫によりDが傷害を負い、F宅での姦淫に乗じてGがDのブレスレットを取り上げて強取したという事案である。
少年は、中学生時は勉学に励み学業成績も優秀で生徒会長を務めるなどしながら希望の高校に進学したが、高校進学後周囲の学力の高さに戸惑い、高校内での友人関係も築けず、中学生時の友人らとの夜遊びなどによる交遊に流れ、次第に勉学その他高校生活に対する意欲が減じて怠学傾向となり、不良性の進んだ友人も仲間に加わって影響力を及ぼすようになると、その友人の主導で、他の友人らとともに本件非行に及んだものである。
2 付添人は、少年にとって、現在の高校に在籍することが不可欠であり、そのために少年を在宅処遇にすることが不可欠であることを強く主張し、少年や少年の保護者らも同様の希望を表明している。
けれども、少年は、自己顕示欲が強い反面、社会性や共感性が年齢相応に育っておらず、ひとりよがりな判断や言動を示しやすく、このような傾向が顕れて、少年が高校進学後、次第に学業やその他の学校生活に対する意欲を減じて怠学傾向となり、反面夜遊びや外泊を増やして生活を乱し、そのような中で、仲間の不良行動に安易に迎合し、被害者らに対する共感も薄くて、本件の重大な非行に加わることになったことは否定し難い。付添人は少年の自己肯定感の基盤が高校在籍にあるというが、その基盤が危いものであったが故に本件非行にまで及んだのである。少年にとってやや機会的なものではあったが、集団での強盗に始まり強姦にまで及ぶなど本件非行の態様は悪く、少年自身輪姦的形態での姦淫にも及んでおり、非行の結果や影響も重大で、被害者ら側の被害感情が強いことも容易に想像できる(これらについても、単に非行自体非難されるべき度合いが大きいことを示すに止まらず、少年の要保護性がさほどに低いものではないことを直接、間接に推定させるものとしても捉えうる。なお、非行には相応の社会的反動が伴うものであると悟らせることが少年にとって無益であるともいえない。)。以上の事情や状況があるにもかかわらず、今直ぐに少年の生活環境を元の状態に巻き戻すことで事足れりとし、その観点のみから少年の処遇を選択するのでは、少年の健全な育成のためにも、相当とはいえまい。
むしろ、少年なりに本件非行を反省する構えを示し、少年の両親も被害回復に努めようとするなど少年を援助する姿勢を示していることを踏まえつつも、少年が、さらに内省を深め、本件のような非行のもたらす結果や影響の重大性を自覚し、これと向き合いながら、自己にとって真に頼れる基盤は何であるべきなのかを考え、責任感を高めることで、再非行の危険を除き、そのうえで社会復帰を果たすことができるよう、少年を矯正施設に収容して教育を受けさせるのが相当と考える。
なお、少年は、道路交通法違反(原付車の無免許運転)につき保護的措置が講じられたことを理由に不処分となったほか少年事件の係属歴がないこと、著しい性格の偏り等はなく、保護環境にも大きな問題がないこと、その他少年の性格、行状、環境等に照らすと、上記処遇は一般短期処遇過程での集中的な教育をもってするのが相当である。
よって、少年法24条1項3号、少年審判規則37条1項を適用して少年を中等少年院に送致することとし、主文のとおり決定する。