大阪家庭裁判所堺支部 平成20年(家)2195号 決定 2009年3月13日
主文
相手方は,申立人の住所において申立人と同居せよ。
理由
第1申立ての趣旨
主文同旨
第2当裁判所の判断
1 一件記録によれば,次の事実が認められる。
(1) 申立人と相手方は,平成14年×月×日に婚姻届出を了して夫婦となった。申立人には前夫との間に長女D(平成○年○月○日生)がいたが,上記婚姻届出の日に,相手方とDの養子縁組届出がなされた。その後,申立人と相手方との間に長女E(平成○年○月○日生)が生まれた。
(2) 申立人は小学校の非常勤講師,相手方は小学校の教諭として稼動している。
(3) 申立人と相手方は,平成15年×月ころ,住宅ローンを組んで,申立人の住所地の土地,建物を購入した(申立人と相手方各2分の1の共有割合)。
(4) 平成15年秋ころ,Dが素行不良となり,家庭内が揉めるようになり,相手方とDとの関係がうまくいかなくなって,Dは申立人の実家で生活するようになった。そうしたことから,申立人は苛立っていたことがある。
(5) 申立人は,平成17年秋ころから子どもを欲しがるようになり,不妊治療を始めたが,相手方は,特に反対することはなかった。
(6) 平成19年×月ころから,相手方は,同じ勤務先のCと親しくなり,同年×月ころからはCと外泊をするようになり,申立人との離婚を考えるようになった。
(7) 平成19年×月下旬ころ,申立人と相手方は家族旅行に出かけたが,その旅行中,申立人は相手方の不倫を追及し,相手方はこれを認めたところ,申立人は,相手方を激しく攻撃した。そのため,相手方において,Cと話し合い,一旦は別れることになった。
なお,相手方は,旅行後に申立人を心療内科に連れて行って診察を受けさせたところ,入院を勧められたが,申立人が拒否したため,投薬による治療に終わったが,その診断を巡って申立人と口論となることもあったと述べているところ,申立人が投薬治療を受けたことは申立人も認めるところである。
(8) しかし,その後も,申立人は相手方に対し,不倫を責め立てるため,それが原因で激しい口論となることもあり,相手方は,これ以上婚姻生活を継続することは不可能だと考えるようになっていった。
そして,同年×月ころから,相手方は,再びCと交際するようになり,申立人のもとにはほとんど帰らず外泊するようになり,平成20年×月ころからは,1週間に2回ほど夜にEを寝かしつけると出ていき,朝食時に戻って朝食後に勤務先に出かけるという生活となった。
(9) そこで,申立人は,平成20年×月×日,当庁に,夫婦同居を求める調停(当庁平成20年(家イ)第○○○号事件)及び婚姻費用分担を求める調停(当庁平成20年(家イ)第○○○号事作)を申し立てたところ,同年×月×日に,後者については,相手方が,申立人に対し,①平成20年×月から当事者双方が別居解消又は離婚するまでの間,月額12万円を支払う旨,②相手方は,住宅ローンを完済するまで全て支払う旨の内容等で調停が成立したが,前者は不成立となり,本審判に移行した。
なお,申立人は,Cに対し,不倫を原因として不法行為に基づく100万円の損害賠償請求の訴を○○簡易裁判所に提起し(同庁平成20年(ハ)第○○○号事件),Cが不倫の事実を認めたため,同請求を認める判決が確定し,そのころ,同訴にかかる認容額が申立人に支払われているが,そのころ,相手方が預金口座から50万円を引き出したため,申立人が相手方に抗議したところ,相手方は平成20年×月×日ころから,申立人のもとに全く帰らなくなった。
(10) 申立人と相手方が別居に至った原因等について,申立人は,平成19年×月ころまでは,家庭は円満であり,通常の夫婦に見られるような夫婦喧嘩はあったものの,大きな喧嘩ではなく,不仲となるような心当たりがなく,相手方がCと交際を始めたことが原因で,相手方が申立人のもとに戻らなくなったもので,相手方の不倫が原因である旨述べている。
また,相手方が申立人のもとに戻って同居することになれば,情も移るであろうし,相手方は子煩悩であるから,家庭が円満に行くことは大丈夫であると述べている。
(11) これに対し,相手方は,Cと不倫の関係にあったことは認めているが,そのようになった経緯として,平成19年×月下旬ころの家族旅行中に,不倫を追及され,これを認めた相手方を激しく攻撃し,その後も,申立人と激しい口論となることがあり,申立人は,自分が納得できないことがあると,激情して取り乱すなど衝動的な行動をとり,そのため,近所の人になだめてもらってやっと静まったり,警察官を呼んだりしたことがあり,そういうことの繰り返しのため,婚姻生活を継続することは不可能だと判断した旨,平成20年×月ころには,申立人が相手方の勤務する小学校を訪ね,「相手方が不倫をして帰って来ない。」などと話したり,相手方が申立人やEに暴力を振るうなどと事実無根の話をするなどしたばかりか電話やメールで激しく攻撃してきたりしたため,同居する意思が全くなくなった旨,申立人と同居するようになったとしても,申立人と喧嘩になることは必至であり,そのような場面をEにみせること自体がよくないし,申立人がEに不倫のことを話しているため,同居をすることはよくないと思う旨等を述べている。
2 上記認定の事実によれば,平成19年×月ころまでの間は,平成15年秋ころに生じたDの問題で,夫婦間の意見の対立があり,大きな波紋を残していることがあったと推認されるが,Dが申立人の実家で生活するようになったことで,その後は申立人と相手方の家庭生活も安定していたものと認められる。
そして,大きな夫婦の対立が生じているとは思料されなかったにもかかわらず,相手方がCとの交際を始め,それが不倫に発展し,申立人と離婚を考えるに至ったものである。
このような経緯に鑑みると,相手方の不倫が夫婦の大きな対立を生じさせたものであり,夫婦関係が悪化したのは専ら相手方に原因があるといわざるをえない。
もっとも,相手方の不倫が発覚して以降の申立人の言動がかなり激しいものであったことは否定できないであろう。
しかし,それも相手方の不倫が原因となっているのであるから,申立人を強く非難することはできないことであり,申立人が現在,相手方との夫婦生活を円満な状態に戻ることを要望し,本審判を求めていることに照らせば,相手方が通常に接すれば,申立人においてこれまでのような激しい行動はないはずであり(相手方に非がないのに,今後も申立人に激しい言動があれば,それは同居を否定する事由にはなるであろう。),申立人も努力をするであろうから,現時点においては,申立人と相手方との夫婦関係の修復は可能であるというべきである。
3 以上の次第であって,相手方に対し,同居の審判を求める申立人の申立ては理由がある。
第3結論
よって,主文のとおり審判する。