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大阪家庭裁判所堺支部 昭和59年(家ロ保)2号 審判 1984年5月28日

申立人 尾形ハルエ 外三名

相手方 尾形道治

主文

相手方は申立人尾形ハルエに対し金二、七五一、二〇〇円、同尾形秀司、同堀内幸、同高田康子に対し各金五五七、五〇〇円を仮に支払え。

理由

一  一件記録(昭和五八年(家ロ)保第五号、昭和五八年(家)第六五四号を含む)および調査官の調査結果によれば、次の事実が認められる。

(1)  被相続人尾形敏宏は昭和五八年一月二五日死亡し、その相続人は配偶者である申立人尾形ハルエ、いずれもその子供である申立人尾形秀司、同堀内幸、同高田康子、相手方、尾形正夫ら六名であり、その相続分は申立人尾形ハルエが二分の一、その他の子供ら六名が各一二分の一宛である。被相続人名義の不動産(別紙遺産目録(( 土地))(( 立木))(( 建物))と、被相続人名義の不動産上の立木の売却代金を尾形敏宏相続人代表尾形道治名義で預金したもの、○○銀行総合口座中、定期一〇〇〇万円、普通預金六、四一八、九〇五円があり、いずれも相手方が管理している。

(2)  申立人らは当庁に対し昭和五八年一〇月一九日被相続人の遺産分割の審判を申立てたが、遺産の範囲について相手方が争つており、相手方が申立人らを相手方として同月二五日大阪地方裁判所堺支部に対し、被相続人名義の前示不動産は被相続人の生前に相手方他一名に贈与されたものか、相手方が独自に購入育生したものであると主張して所有権確認の訴訟(昭和五八年(ワ)第八四〇号)を提起して現在係属中である。

(3)  被相続人の遺産の課税価格は一九八、三九三、〇〇〇円であり、税務署から申立人尾形ハルエは二一、八五八、二〇〇円、他の申立人三名はいずれも四、三七一、六〇〇円宛の税金の支払いを命じられているが、昭和五九年二月六日申立人らに対し別紙のとおりの延納許可があり(申立人堀内、同高田については同尾形秀司と同内容)、その第一回の納付期限は昭和五九年七月二五日であり、若し期限に遅れれば延滞税がつくことになつている。

(4)  申立人らは相手方に対し、前示預金を法定相続分に応じて分割するよう申し入れたが拒否され続けて現在に至つている。申立人尾形ハルエは高齢で収入なく、同堀内幸、同高田康子も主婦であつて本人には収入が少ない。

二  以上認定の事実に基いて更に本件にあらわれた一切の事情を考慮して判断するのに、前示預金一六、四一八、九〇五円の遺産性について争いがない訳ではないが、相手方が前示訴訟で争つているのは不動産と立木だけである他、相手方の贈与の主張もさ程の資料がなく、その遺産である蓋然性は高い。仮に寄与分が認められるとしても総額の二分の一を超えることはまずあり得ないから、前示預金の二分の一は遺産と仮に判断して仮処分の必要性を考えてみるのに、別紙のとおり申立人らそれぞれについて延納が認められているのであるから、一年余も先の第二回分からの延納金についてはともかく、その納付期限の迫つた第一回分については申立人らの収入その他の事情も考慮すると前示預金から仮に支払を命じる必要性があるものというべきである。そこで申立人らは前示預金額を相続分に応じて分割した金額の仮払いを求めているけれども、第1回分納金額とその利子分を仮払いする範囲で本件を認容することとし、家事審判法一五条の三、家事審判規則一〇六条一項、五二条の二により主文のとおり審判する。

(家事審判官 上野智)

別紙 遺産目録<省略>

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