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大阪簡易裁判所 平成16年(ハ)2169号 判決 2004年10月07日

大阪市中央区城見一丁目2番27号

原告

三洋電機クレジット株式会社

同代表者代表取締役

●●●

同訴訟代理人

●●●

●●●

被告

●●●

同訴訟代理人弁護士

波多野進

主文

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第1請求

被告は,原告に対し,金91万7700円及びこれに対する平成16年2月4日から支払済みまで年14.6パーセントの割合による金員を支払え。

第2事案の概要

1  請求原因の要旨

別紙請求の原因記載のとおり

2  争点

(被告の主張)

(1) 請求の原因1の契約(以下「本件リース契約」という。)の締結に際し,原告の使者ないし代理人である有限会社西日本通信(以下「西日本通信」という。)従業員●●●(以下「●●●」という。)は,訪問販売に訪れた被告宅において,被告に対し,光ファイバーを引くには電話機を交換する必要があると虚偽の事実を説明したため,被告はこれを信じ,不必要なデジタル電話施工契約(以下「電話施工契約」という。)と本件リース契約を締結した。

(2) 被告は,原告に対し,平成16年1月23日付け通知書(同月26日到達)をもって、本件リース契約について,消費者契約法4条による取消し,民法96条による取消し及び特定商取引法9条による撤回の各意思表示をした。

(3) 上記(1)により,本件リース契約は契約の要素に錯誤があり無効である。

(4) 原告の請求は権利濫用,信義則違反である。

第3当裁判所の判断

1  証拠及び弁論の全趣旨によれば請求原因事実のほか次の各事実が認められる。

(1)  本件リース契約及び電話施工契約は,●●●が被告宅に光ファイバー敷設の訪問販売に訪れたことがきっかけとなったものであり,被告は,当初から光ファイバーを引きたいと●●●に告げていた(甲3,乙8,証人●●●,被告本人)。

(2)  被告宅の従前の電話回線はインターフォンが故障していたところ,●●●からはデジタル回線にまとめると基本料金が安くなることなどが提案され,電話施工契約が締結されるに至ったが,インターフォンの修理は,電話施工契約とは別途にサービスとして行われた。(証人●●●,被告本人)。

(3)  電話施工契約の対象となった電話機等の設備は,事業所を対象とした本格的なデジタル回線システムであり(乙3),甲1号証によれば,本件リース契約は,被告が個人事業者として契約する形式が採られているが,被告は,既に平成15年3月8日,それまで営業していた塾を廃業していた(乙2)。被告が甲1号証の個人事業者欄への記載をしたのは●●●の勧めに従ったものである(被告本人)。なお,本件リース契約が個人契約であることについては,原告もこれを争わない。

(4)  リース契約申し込みの勧誘から契約書,リース物件借受証の作成・授受,契約内容の説明などはすべて西日本通信ないし●●●が行っており,原告が被告と直接交渉を行ったことはない。

(5)  被告は,原告に対し,被告の主張(2)記載の日時に同記載の趣旨の書面を送付した(乙1の1,2)。

2  上記1(3)によれば,被告は個人として契約の申込み及び承諾をしたものであるから,本件リース契約は,事業者である原告と消費者である被告との間の消費者契約であると認められ,同1(4)の事実によれば,西日本通信は原告と業務提携関係にあり原告からその交渉の一切を任されていたものといえる。

3  上記1(1)ないし(3)の事実によれば,本件リース契約締結当時,被告の主要な関心は光ファイバーの敷設にあったのであり,それとは無関係にインターフォンの修理を契機に上記のような本格的なデジタル回線システムを設置することは,事業廃止後で必要性が全くなかったことやその価格が著しく高額であることに照らして不自然であり,電話施工契約は,光ファイバー敷設との何らかの関連のもとに締結されたものと考えざるを得ないから,●●●が被告に対し,光ファイバーを敷設するためにはデジタル電話に替える必要があり,電話機を交換しなければならない旨を告げたために被告はこれを信じ本件リース契約及び電話施工契約を締結したという被告本人及び証人●●●の供述には合理性があり信用できる。そうすると,●●●の上記不実告知の事実をもって,被告は,消費者契約法4条1項1号により本件リース契約の申し込みの意思表示を取り消すことができ,平成16年1月26日上記1(5)の通知書の到達により本件リース契約は取り消された。

4  以上によれば,その余の被告の主張事実について判断するまでもなく,原告の請求には理由がない。

(裁判官 原司)

<以下省略>

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