大判例

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大阪高等裁判所 平成元年(う)152号 判決

被告人は,本件当日の午前5時30分ころ,JR高田駅付近のローソン店付近路上で停車中の軽四輪自動車内において,共犯者松田から,「南の所へカチ込みに行くねんけど,一緒に行ってくれへんか。車の運転して欲しいんや。」,「倉本(被告人ら所属の侠明会の上部組織である倉本組を指す。)の力を見せるために脅かすだけや。」などと誘いを受けたこと,そこで被告人において「道具はあるのか。」と問いただしたところ,松田は右腰の辺りから本件けん銃(実包1発が装填されていた。)を取り出して被告人に見せながら,「道具はチャカーつや。俺がはじくから兄貴(被告人を指す。)は車を運転してくれ。」と答えたこと,これを聞いた被告人は「よし判った。一緒に行ってやる。」と申し向けるなど,本件犯行に関する松田の意図目的を了承するとともに,被告人自身も自動車の運転という役割を受け持って右犯行に加担する趣旨の決意を明らかにしたこと,その後間もなく,松田は,本件犯行現場に赴く途中で,被告人運転の普通乗用自動車に乗り移り,午前6時30分ころ,おりから原判示第1の場所を通りかかった被害者らの自動車を認めるや,前示被告人運転の車両から飛び降りて右被害者らに近づき,本件けん銃を向けてこれを同人らに示したうえ,同人らの車めがけて実包1発を発射したこと,右犯行後,車内で待機していた被告人において,松田を車に乗せその場から逃走したこと,以上のような事実を認めることができる。

これらの事実経過に徴すると,被告人と松田との間において,南らを脅迫すること,右脅迫の手段として松田が携帯していた実包の装填してある本件けん銃を使用することの共謀を遂げた事実が明らかである。そして,本件事実関係のもとで,けん銃等を所持することは,南らを脅迫するという犯行を実行に移すに当たって必要不可欠の前提行為であったといわなければならず,本件けん銃等の所持なくして南らを脅迫するという犯行の実行はあり得なかったのであるから,前示共謀関係が形成されたことによって,被告人は単に松田がけん銃等を所持している事実を受動的・消極的に認識したというにとどまらず,更に進んで能動的・積極的に,南らを脅迫するという犯罪を実行するため松田の所持するけん銃を利用しようとしたもの,すなわち,被告人においても,南らを脅迫するという共通の目的のもとに,松田の所持していたけん銃等を自己の支配し得べき状態においたものと評価するのが相当である。したがって,本件けん銃等不法所持の罪について,被告人に対しても共同正犯の罪責を問い得ることは明らかといわなければならない。

これに対し,原判決は,「松田において本件けん銃等を使用発砲して南らを威嚇すること,被告人において自動車を運転し松田を同乗させて発砲現場に赴き,松田が発砲した後現場から同人とともに逃走することを,それぞれ分担する旨の共謀をした事実,及び,その際被告人において松田が本件けん銃等を所持していることを認識していた事実が認められる。」としながら,「かかる共謀及び認識をもって直ちに被告人について本件けん銃等所持の共謀があったと解することはできない」との判断を示したうえ,「本件の全証拠によっても被告人において本件けん銃等を握持し,あるいは松田との共同所持を共謀したことを認めることはできない」旨判示している。そこで考察するに,原判決が,たとえ一時的にせよ,被告人において本件けん銃等を現実に握持したという事実が認められない限り,けん銃等所持の共謀を肯定できないとの見解に立っているとすれば,その失当であることはいうまでもなく,更に,原判決が,持凶器脅迫の共謀とけん銃等所持の共謀とを各別に分断する見解をとっているとすれば,本件においてけん銃等を所持することが,南らを脅迫するという犯行を実行するについて必要不可欠の前提行為であった事実,言いかえれば,持凶器脅迫の共謀とけん銃等所持の共謀とが互いに表裏一体のものとして重なり合う関係にあった事実を看過しているというほかなく,いずれにせよ,本件けん銃等の所持に関する共謀の事実を認めなかった原判決の認定判断には到底左袒しがたい。

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