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大阪高等裁判所 平成10年(ネ)2056号 判決 1998年10月22日

控訴人(被告) ローヤル薬品工業株式会社

右代表者代表取締役 Y1

控訴人(被告) Y2

控訴人(被告) Y3

控訴人(被告) Y1

控訴人(被告) Y4

控訴人(被告) Y5

控訴人(被告) Y6

右七名訴訟代理人弁護士 阿部幸孝

被控訴人(原告) 株式会社阪和銀行

右代表者代表清算人 A

右訴訟代理人弁護士 藤井幹雄

主文

一  本件控訴をいずれも棄却する。

二  控訴費用は控訴人らの負担とする。

事実及び理由

第一控訴の趣旨

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人の請求を棄却する。

3  訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

第二当事者の主張

当事者双方の主張は、次に付加するほか、原判決事実及び理由の「一、二」における摘示(ただし、被控訴人の控訴人らに対する請求に関係する部分に限る。)のとおりである(ただし、原判決一〇頁九行目の「被告」を「控訴人会社(被告会社)」と訂正する。)から、これを引用する。

(原判決の付加)

原判決一一頁八行目の次に改行のうえ、次のとおり加える。

「控訴人らの右主張に対し、被控訴人は、次のとおり反論した。

本件の各根抵当権に係る被担保債権は、手形貸付及び証書貸付による昭和五一年一月三一日付、昭和五五年八月三〇日付及び昭和五六年六月三〇日付各金銭消費貸借契約であり、平成七年一〇月三一日の時点では、貸出し残高元金二億七六九一万一四二五円、未収利息二億七八〇三万二一九三円であったが、同年一二月六日に被控訴人は控訴人会社代表取締役兼控訴人Y1及び控訴人Y3に対して被控訴人の控訴人会社に対する貸付金債権の確認を求めたところ、右両名は右貸付金債権の存在を承認したから、控訴人ら主張の消滅時効は中断した。」

(当審における控訴人らの主張)

1  本件の各根抵当権は、Bの死亡(昭和六〇年一〇月一六日死亡)により、取引が停止され、すでに確定している。

2  仮に、本件の各根抵当権に係る被担保債権が存在したとしても、右債権は時効により消滅した。

第三当裁判所の判断

一  当裁判所も、被控訴人の控訴人らに対する請求は理由があるから認容すべきものと認定判断する。その理由は、次に加除、訂正するほか、原判決「三、四」に説示のとおりであるから、これを引用する(ただし、被控訴人の控訴人らに対する請求に関係する部分に限る。)。

二  (原判決の付加、訂正)

原判決一三頁六行目から同頁末行までを、次のとおり改める。

「なお、控訴人らは、本件の各根抵当権の被担保債権の原因となる取引はBが死亡した昭和六〇年一〇月一六日時点ですでに終了している旨、すなわち、Bの死亡により右取引が停止され、本件の各根抵当権はすでに確定している旨主張する。

そこで、控訴人らの右主張について判断するに、民法三九八条ノ九第二項は、元本の確定前に債務者に相続が開始したときは根抵当権は相続開始のときに存在する債務のほか、根抵当権者と根抵当権設定者との合意によって相続人が相続開始後に負担するものと定めた債務を担保するものとされ、死亡した債務者の相続人のうちから右債務者の地位を承継するものを選定して、根抵当権を流動性のあるものとして存続させることができるものとしているが、一方、同条第四項により、根抵当権を流動性のあるものとして存続させる合意は、相続の開始後六か月以内に登記をしなければならず、右登記をしない場合には元本は相続開始の時に確定するとされている。このように、根抵当権の被担保債権の債務者に相続が開始された場合において、根抵当権を存続させる合意の登記がなされないときには根抵当権は確定するのであるが、債務者ではない根抵当権設定者に相続が開始された場合には右規定の適用がなく、根抵当権の元本は確定しないと解すべきである。

ところで、前記当事者間に争いのない事実及び証拠(甲第一号証ないし第三八号証)並びに弁論の全趣旨によれば、Bは原判決別紙物件目録二二及び二三<省略>の各不動産の所有者であり、右各不動産における根抵当権設定者であるが、右各根抵当権の被担保債権の債務者ではなく、また、その余の不動産(原判決別紙物件目録一及び二一<省略>の各不動産)については根抵当権設定者でもないことが認められるから、Bの死亡により本件の根抵当権の元本は確定しておらず、したがって、控訴人らの右主張は理由がない(もっとも、甲第四〇号証の一、二及び弁論の全趣旨によれば、Bの死亡した時点以後に新たに発生した被担保債権はないことが認められるから、右各根抵当権の元本確定の時点がBの死亡した時点であっても、その後の時点(被控訴人の本訴請求に係る時点を含む。)であっても、被担保債権(元本)の額に差異が生じることはない。)。」

三  (控訴人らの主張に対する判断)

控訴人らは、本件の各根抵当権の被担保債権が存在するとしても、右債権は時効により消滅している旨主張する。この点についての判断は、原判決の説示(原判決一四頁一行目から同頁九行目まで。ただし、同頁三、四行目の「担保されることがなくなるいうものであるところ」を「担保されることがなくなるというものであるところ」と訂正する。)のとおりであるが、さらに付言するに、根抵当権は、一定の継続的な取引から生じる債権を担保するものであり、被担保債権が存在しなくなった場合においても根抵当権が消滅するものではない。そこで、取引の終了などの理由により根抵当権を存続させる必要がなくなった場合には、根抵当権が確定するものと規定されているのであり(民法三九八条ノ二〇)、右確定によって、その後に発生する元本は担保されなくなるのであって、これにより根抵当権の被担保債権が特定することになり、不特定債権を担保するという根抵当権の基本的な性格が失われることになる。そして、右確定時に被担保債権が存在しなければ根抵当権が消滅することになるし、根抵当権の元本の確定とは関係なく被担保債権の消滅事由(消滅時効による債権の消滅を含む。)があれば、これを理由として根抵当権の消滅を主張することも可能であるが、根抵当権の元本の確定自体は根抵当権の被担保債権を特定するためになされるものであって、被担保債権の存在、不存在とは関係なく決せられるものであるから、被担保債権の消滅事由は元本確定の登記手続請求に対する抗弁となりえないのであって、控訴人らの消滅時効により被担保債権が消滅したとの主張は、本訴請求に対する抗弁としては主張自体失当というべきである。

四  その他、控訴人ら及び被控訴人の各主張に徴して本件全証拠を精査しても、右設定を左右するほどのものはない。

第四結語

よって、原判決は相当であり、控訴人らの本件控訴はいずれも理由がないから棄却することとし、控訴費用の負担につき民訴法六七条一項、六一条、六五条に従い、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 岨野悌介 裁判官 古川行男 鳥羽耕一)

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