大阪高等裁判所 平成11年(ツ)48号 判決 2001年2月07日
上告人(選定当事者)
福田雅美
右選定者
福田貴美子
被上告人
トラベル世界株式会社
右代表者代表取締役
今公三
右訴訟代理人弁護士
三浦雅生
主文
原判決を破棄する。
本件を大阪地方裁判所に差し戻す。
理由
一 原判決は、上告人及び選定者と被上告人との間で平成九年一一月二一日に締結された主催旅行契約の範囲には大阪・東京間の旅行は含まれないと判断し、上告人の請求を全て棄却すべきものとした。
二 しかしながら、右判断は是認することができず、大阪・東京間の旅行部分も主催旅行の範囲に含まれると解するべきである。
原判決の認定するところでは、上告人と選定者とは主催旅行契約に際し被上告人作成のパンフレットでその内容を確認したが、その「グアテマラとホンジュラスの旅一一日間(以下、本件旅行という。)」の内容を説明したページには、「東京発着であるが、大阪発着も同料金」、「最終日の日程、(16:10)東京(18:20)大阪(19:35)、午後成田空港に到着、航空機を乗り継いで伊丹空港に到着(各地空港へ乗継ぎ)」と記載されていたというのであるから、特別の記載がない限り、この主催旅行は、東京発着であると同時に、大阪発着でもあること、つまり大阪発着で申し込んだ旅行者については、大阪出発から大阪帰着までが主催旅行の範囲であり、その大阪・東京間の旅程は右のとおりであることを示していると認めるべきである。
原判決は、右パンフレットの日程欄の見方を記載したページには、「発着地と国内線のご案内」として、「国内線は別予約が必要となり、混雑期間等の事由により予約がお取りできない場合には、他の交通機関をご利用いただくことになります。その場合の交通費、宿泊費、その他の諸費用はお客様のご負担となりますので、予めご了承下さい。なお、基本的に利用便は航空会社により指定されます。」との記載があることを、大阪・東京間は主催旅行の範囲でないことの理由としている。しかし、ここに記載の「国内線」とは発着地までの国内線(例えば、仙台・東京間や高知・大阪間)も考えられるうえ、パンフレットの本件旅行のページには「大阪発着」とも記載されたうえ、大阪・東京間の旅程が具体的に記載されている。このことからすると、旅行申込みをする人が、この旅行の大阪・東京間の国内線は主催旅行の範囲ではないと考えることを期待することは無理である。
また、原判決は、「移動時間」として、日程表の時間の表示は、「移動発着時間の目安として表示してあります。」との記載があることをも、成田・伊丹間の旅行が主催旅行の範囲内でないことの理由としている。しかし、原判決が本件旅行のパンフレットと認定する甲二号証の2の右の記載は、日程表の例を斜線で指し示しているが、それは外国旅行中の現地において地上をバスで移動するときの出発時間であって、国内における飛行機による移動で、しかも旅程の最後の部分についての注意書きでもあると解するには疑問がある。
一般人を対象とする主催旅行契約の内容は、特に明確な合意がない限りそのパンフレットの記載、特に旅行申込者が強く関心をもって読む当該旅行に関する部分の記載を中心に決定すべきである。旅行業者としては、法律家でもない一般人にも理解できるように、主催旅行につき責任を持つ範囲をパンフレットにわかりやすく、明確に記載すべきであり、パンフレットの記載に不明確な部分があるときには、それを作成した旅行業者側に有利に解釈すべきものではない。
三 以上判断のとおり、本件主催旅行の範囲には、成田発一八時二〇分、伊丹着一九時三五分(JL一五三便)による大阪・東京間の旅行部分も含まれると解するべきである。原判決は契約の解釈を誤ったものであるから、これを取り消して、その他の争点につき審判させるために、事件を原裁判所に差し戻すこととする。
(裁判長裁判官・井関正裕、裁判官・矢田廣髙、裁判官・牧賢二)