大阪高等裁判所 平成11年(ネ)1855号・平11年(ネ)1856号 判決
主文
一 第一審原告丹羽壽男の控訴に基づき、原判決中、第一審原告丹羽壽男に関する部分を次のとおり変更する。
1 第一審被告は、第一審原告丹羽壽男に対し、金二六七〇万円及びこれに対する平成七年五月一二日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。
2 第一審原告丹羽壽男のその余の請求を棄却する。
3 原審において、第一審原告丹羽壽男と第一審被告との間に生じた訴訟費用は、同第一審原告に生じた費用の五分の四を第一審被告の、第一審被告に生じた費用の五分の一を同第一審原告の各負担とし、その余は各自の負担とする。
二1 第一審被告の控訴に基づき、原判決中、訴訟承継前第一審原告亡碓井三良との関係における第一審被告敗訴部分を取り消す。
2 第一審原告碓井良孝の請求を棄却する。
3 原審において訴訟承継前第一審原告亡碓井三良と第一審被告との間に生じた訴訟費用は、第一審原告碓井良孝の負担とする。
三1 第一審原告丹羽壽男を除く第一審原告らの本件控訴(平成一一年(ネ)第一八五六号事件)は、いずれも棄却する。
2 第一審被告の本件控訴(平成一一年(ネ)第一八五五号事件)は、第一審原告碓井良孝に対するものを除き、いずれも棄却する。
四 訴訟承継があったことに基づき、原判決中、訴訟承継前第一審原告亡河合謙二郎及び同松本昭二に関する部分を次のとおり変更する。
1 第一審被告は、第一審原告河合和子に対し金一三〇〇万円、同松本壽雄に対し金六六〇万円及び右各金員に対する平成七年五月一二日から各支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
2 原審における訴訟費用中、訴訟承継前第一審原告亡河合謙二郎と第一審被告との間に生じたものは、これを二分し、それぞれを各自の負担とし、訴訟承継前第一審原告亡松本昭二と第一審被告との間に生じたものは、右第一審原告に生じた費用の一〇分の七を第一審被告の、第一審被告に生じた費用の一〇分の三を右第一審原告の各負担とし、その余は各自の負担とする。
五1 平成一一年(ネ)第一八五五号事件の控訴費用は、第一審原告碓井良孝と第一審被告との間に生じた部分は、同第一審原告の負担とし、同第一審原告を除く第一審原告らと第一審被告との間に生じた部分は、第一審被告の負担とする。
2 平成一一年(ネ)第一八五六号事件の控訴費用は、第一審原告丹羽壽男と第一審被告との間に生じた部分は、これを五分し、その四を第一審被告の、その余は同第一審原告の各負担とし、同第一審原告を除く第一審原告らと第一審被告との間に生じた部分は、第一審原告丹羽壽男を除く第一審原告らの負担とする。
六 この判決は主文一1に限り、原判決は訴訟承継前第一審原告亡碓井三良及び第一審原告丹羽壽男を除く第一審原告ら勝訴の部分に限り、それぞれ仮に執行することができる。
事実及び理由
第一 当事者の求めた裁判
一 第一審原告らの控訴の趣旨
1 原判決中、第一審原告ら敗訴部分を取り消す。
2 第一審被告は、第一審原告新戸建男に対し金一三六〇万円、同碓井良孝に対し金三六〇万円、同江部穏に対し金四二〇万円、同鎌田正己に対し金二四〇万円、同河合和子に対し金一二〇〇万円、同清水多賀子に対し金四〇〇万円、同丹羽壽男に対し金九六〇万円、同松本壽雄に対し金二四〇万円、同南三代子に対し金一四〇万円、同中正治郎に対し金三〇〇〇万円及び右各金員に対する平成七年五月一二日から各支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。
3 訴訟費用は第一、二審とも第一審被告の負担とする。
4 仮執行宣言
二 第一審被告の控訴の趣旨
1 原判決中、第一審被告敗訴部分を取り消す。
2 第一審原告らの請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用は第一、二審とも第一審原告らの負担とする。
第二 事案の概要及び当事者の主張
本件事案の概要及び当事者の主張は、以下のとおり改めるほか、原判決の「事実及び理由」の「第二 事案の概要」及び「第三 争点についての当事者の主張」(原判決三頁四行目から五五頁九行目まで)中、第一審原告ら及び第一審被告関係部分のとおりであるから、これを引用する。
1 原判決四頁一一行目の「及び」を「、」と改め、「同高瀬力」の次に「、同碓井三良、同河合謙二郎及び同松本昭二」、末行の「右契約上の地位を、」の次に「第一審原告碓井良孝が亡碓井三良(同第一審原告の父)の右契約上の地位を、第一審原告河合和子が亡河合謙二郎(同第一審原告の夫)の右契約上の地位を、第一審原告松本壽雄が亡松本昭二(同第一原告の父)の右契約上の地位を、」をそれぞれ加える。
2 原判決五頁四行目の「また、」から六行目までを「また、本件契約の締結について「第一審原告ら」というときは、第一審原告碓井の関係では亡碓井三良を、同河合の関係では亡河合謙二郎を、同松本の関係では亡松本昭二をそれぞれ指すものとする。)」と改める。
3 原判決一一頁八行目、九行目から一〇行目、末行の各「関わらず」をいずれも「拘らず」と、三六頁一行目の「はかれなかった。」を「図れなかった。」と、二行目の「あたる」を「当たる」と、三九頁九行目の「とうてい」を「到底」とそれぞれ改める。
第三 当裁判所の判断
一 当裁判所は、第一審原判決ら(碓井及び中を除く。)の請求は、第一審被告に対し、第一審原告新戸において一六四〇万円、同江部において一三八〇万円、同鎌田において二六〇万円、同河合において一三〇〇万円、同清水において一一〇〇万円、同丹羽において二六七〇万円、同松本において六六〇万円及び同南において三六〇万円並びに右各金員に対する平成七年五月一二日から支払ずみまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから、その限度でこれを認容すべきであるが、右第一審原告らのその余の請求並びに第一審原告碓井及び同中の請求はいずれも理由がないから、これを棄却すべきものと判断する。
その理由は、以下のとおり改めるほか、原判決の「事実及び理由」の「第四当裁判所の判断」(原判決五五頁一一行目から八六頁末行まで)中、第一審原判決ら及び第一審被告関係部分のとおりであるから、これを引用する。
1 原判決六一頁九行目の次に行を改めて以下のとおり加える。
「 第一審被告は、本件規約の火災の定義について、火元火災のみならず延焼火災も一体として「火災」に含まれると解するのであれば、本件免責条項の解釈に関しても、これらを一体として解釈し、「地震によって生じた」との文言は、火元火災と延焼火災の双方にかかると解すべきであると主張し、本件免責条項の「地震によって生じた」の部分が、本件規約の火災の定義中、「発生し」の部分(火元火災)のみにかかり、「拡大する」の部分(延焼火災)にかからないと解することには矛盾があり、明らかに不合理な解釈であると主張する。
しかし、前記説示のとおり、本件規約の火災の定義において、延焼火災を火元火災と一体として「火災」に含まれると解する趣旨は、「火災」の概念を、火元火災を出発点とし、延焼火災に至る一連の燃焼現象として捉えるところにある(そのこと自体には格別の不合理はないというべきである。)から、「地震によって生じた」との文言がかかる対象も、一連の燃焼現象自体であるということができる。これによれば、地震との因果関係についても、出発点となる火元火災との関係に重点を置き、燃焼現象から延焼火災だけを分離して、「地震によって生じた」との文言にかからしめることはできないと解することも、あながち無理な解釈でないと考えられる。その意味において、本件規約の火災の定義について、延焼火災も含まれると解することと、本件免責条項の「地震によって生じた」の部分が、本件規約の火災の定義中、「拡大する」の部分(延焼火災)にはかからないと解することとは、必ずしも矛盾するものではなく、これをもって明らかに不合理な解釈ということはできない。
要は、本件規約の火災の定義や本件免責条項の文言だけからは、延焼火災のうち、(原因の如何を問わず)発生した火災が、地震によって延焼した火災(第三類型)をも免責の適用対象とするかどうかについて、一義的に紛れもない形で解釈できるものではないということに尽きる。よって、第一審被告の主張は採用できない。」
2 原判決六六頁一行目の「(弁論の全趣旨)。」の次に「加えて、全国労働者共済生活協同組合連合会(全労災)は、風水害等給付金付火災共済事業において、かつて本件免責条項と同様の地震免責条項を設けていたが、右文言では、「発生原因のいかんを問わず地震により延焼または拡大した損害」について、免責の対象となるかどうか不明確であるとして、平成三年七月二九日、厚生大臣に対し、右事業規約の変更許可を申請し、地震等により拡大した場合の損害(前記の第三類型の火災)についても免責の対象とすることを規定上明確にした経緯があった(甲四六の1ないし3、四七の1、2、)。」を加え、四行目の「現行保険約款の」を「現行保険約款や前記全労災の風水害等給付金付火災共済事業における」と改める。
3 原判決七四頁五行目の「認められない」に引き続き「(乙四二・七二頁二ないし八行目はにわかに採用できず、他にガスの漏洩を認めるに足りる証拠はない。)」を加え、一〇行目から一一行目の「送電が行われていた旨主張するが、」を「送電が行われていた旨主張する。しかし、前記認定のとおり、甲南変電所(配電用変電所)の配電先は、自動区分開閉装置により細分化され、事故後の復旧に際しては、健全な区間のみ再送電されることになっていたのであるから、配電用変電所が復旧したからといって、当然には配電先の各家庭に送電されるものではないと解されるところ、」と改める。
4 原判決七七頁八行目の「したがって、」の次に「その余の点(延焼が地震によるものか否か)について判断するまでもなく、」を加える。
5 原判決八〇頁四行目から八行目までを次のとおり改める。
「(3) 第一審原告碓井の契約建物(原判決添付別表3)は、原判決添付別紙「碓井建物の構造」のとおりの間取りであったが、右契約建物は、築三〇年を超える(ただし、昭和四〇年ころに二階と物干場を増築し、昭和五〇年ころには一階の西端に玄関・応接間を、東端に風呂・土間及びその上に物干場をそれぞれ増築)木造瓦葺平家建建物であり、本件地震により、西端の一階応接間が倒壊し、二階物干場もその真下にあった東端の一階台所及び土間に落下するなど甚大な損傷を被ったこと、建物内部をみても、一階の応接間にあったショーケース、ステレオ、テレビ、エアコンなどの家財や落下した物干場の下の洗濯機や自転車は瓦礫の下になっていたこと(甲B二ないし四、六)、さらに、建物前の路上には本件地震により倒壊した建物部分の残滓がかなり広い範囲にわたって散乱していること(検乙五、乙三五)等の事実に照らすならば、建物としての価値がない状態に損壊したと認めるのが相当である。
第一審原告碓井は、倒壊したのは、昭和五〇年ころに増築した部分だけであり、増築前の部分はほぼ現存していたから、右増築部分を再築すれば、原状回復は容易であると主張し、本件火災発生当時の建物の評価額は六〇パーセントを超えると主張し、甲B六にはこれに沿うかのような記載部分がある。
しかし、前記認定のとおり、右契約建物の築年数、材質・構造(耐震構造であったかどうか)のほか、建物自体の損傷の甚大性に鑑みれば、本件建物においては、屋根、天井、壁、床などの躯体部分にさらに重大な損傷が生じていた可能性も否定できないから、前記の記載部分はにわかに採用できず、他に前記の認定を左右するに足りる証拠はない。
よって、右契約建物は、建物としての価値を見出すには困難といわざるを得ないから、第一審原告碓井の主張は、本件地震当時の契約建物の延床面積と地震により損壊を免れたとする部分の割合等について検討を加えるまでもなく、採用できない。」
6 原判決八二頁一行目の次に行を改めて以下のとおり加える。
「第一審原告中は、同人の契約建物の屋根には何ら異常はなく、柱や基礎などの構造部分に損傷がなかったことは明らかであると主張し、甲O三にはこれに沿うかのような記載部分がある。
しかし、右契約建物は、築二〇年を超える(ただし、平成五年一二月に一部取毀しの上増築)木造亜鉛メッキ鋼板葺の二階建建物であって、本件地震により、玄関の引戸のガラスが割れ、階段の三段目までの踏み板が外れ、一階寝室の壁(ブロック)が破損するなどの損傷を受けていること、建物内では、一階食堂の飾り棚が約五〇センチメートル移動し、一階寝室のチェスター(洋ダンス)が倒れ、その上の金庫が落下するほどの揺れであったこと(甲O三)、さらに同人の契約建物前の路上には、本件地震により倒壊した建物の残滓がかなり広い範囲にわたって散乱していること(検乙五、乙三五)等の事実に照らすならば、前記の記載部分はにわかに採用できず、他に前記の認定を左右するに足りる証拠はない。
よって、第一審原告中の主張は採用できない。」
7 原判決八三頁六行目から一〇行目までを以下のとおり改める。
「(一) 第一審原告丹羽(原判決添付別表15)の各契約物件については、契約建物につき共済金額の九〇パーセントの価額、契約家財につき共済金額の七〇パーセントの価額(それらの額は、原判決添付別紙共済金額及び認定額一覧表〔以下「一覧表」という。〕の右第一審原告の「認定額」欄記載のとおり。ただし、一覧表の第一審原告丹羽の「認定額」欄中、建物について「1440」とあるを「1620」、家財について「900」とあるを「1050」、計「2340」とあるを「2670」とそれぞれ改める。)。
第一審原告丹羽の契約建物は、築僅か二年四か月の鉄骨陸屋根三階建の耐震・耐火構造の建物であり、本件地震当日の午前中になされた建築主の点検によれば、建物内部、躯体、外壁等の地震による被害はなかったとの報告がなされていることに照らすならば(甲L二ないし四)、本件火災発生当時の評価額は共済金額の九〇パーセントの価額と認めるのが相当である(建築主の点検とはいっても地震当日になされた一応のものであることが窺われることに鑑み、共済金額から一〇パーセント減額した。)。契約家財については、本件地震により、二階の水屋二棹から食器類の八、九割が落下して損壊し、二階和室の整理箪笥から小箱類が落下し、二階居間のテーブル、テレビ、冷蔵庫二台が移動し、一階和室の洋服箪笥の位置がずれるほどの揺れであったことに照らすならば(甲L三)、本件火災発生当時の評価額は共済金額の七〇パーセントの価額と認めるのが相当である。
(二) 第一審原告江部(原判決添付別表4)、同清水(同別表12)、同松本(同別表16)及び同南(同別表17)の各契約物件については、契約建物につき各共済金額の八〇パーセントの価額、契約家財につき各共済金額の六〇パーセントの価額(それらの額は、原判決添付一覧表の右第一審原告らの各「認定額」欄記載のとおり)。
右第一審原告らは、各建物の右残存評価額について、外観上何らの損傷も見当たらない契約建物の本件火災発生当時の評価額を共済金額の八〇パーセントに減額した合理的な理由は考え難いとか、家財の本件火災発生当時の評価額(共済金額の六〇パーセント)が建物の評価額(共済金額の八〇パーセント)よりも大きく減額されている理由が不明であるなどと主張する。
よって、検討するに、第一審原告江部の契約建物は、築約二二年の木造瓦葺二階建の建物であり(昭和五二年八月に一部増築)、本件地震により、一階では店舗の陳列ケースや台所の本棚と冷蔵庫が倒れ、テレビが箪笥の上から落下し、水屋からは食器類が外へ飛び出して損壊し、二階では本棚やサイドボートが倒れるほどの揺れであったこと(甲C二、三)、同清水の契約建物は、築約二二年の木造瓦葺二階建の建物であり、本件地震により、一階では食器類が落下して損壊し、二階では鏡台、整理箪笥、テレビが倒れ、仏壇が横にずれるほどの揺れがあったこと(甲J二、三)、同松本の契約建物は、築約四八年の木造平家建建物を昭和三九年九月二階建に増築し、昭和四九年一一月、さらに二階部分を増築した木造瓦葺二階建の建物であったこと(甲M二、三)、同南の契約建物は、築造約四八年の木造瓦葺平家建の四戸一棟の建物であり(昭和六〇年スレート葺に改装)、本件地震により、廊下と部屋を隔てるガラスが割れ、三段積みの和箪笥の一番上の段やテレビが落下するほどの揺れがあったこと(甲N二、三)、以上の事実が認められる。
右事実に弁論の全趣旨を総合勘案するならば、右第一審原告らの契約建物については、いずれも外観上明らかに損傷したと認められる部分が確認できなかったにすぎず、本件地震の規模の甚大さに加えて、契約建物の築年数、材質・構造(耐震構造であったかどうか)のほか、建物内部における揺れの程度に照らすならば、たとえ、建物の基幹部分が保持されていたとしても、建物の基礎や内装等外部からは確認できない部分に損傷(不具合)が生じていると推認することには格別の不合理はないというべきである(外観上の損傷が見当たらなかったからといって、本件地震の前後を通じ、罹災建物の経済的評価に全く影響がないと解するには無理がある。)。したがって、外観上損傷を確認できない契約建物について、本件火災発生当時の評価額を相当程度(二〇パーセント)減じることも、経験則上十分に可能であるということができる。また、前記認定のとおり、右第一審原告らの契約家財等の動産類については、判明しているだけでも、その多くが倒れたり・落下したりしており、これにより少なからぬ損傷を被ったことが容易に窺われるし、損傷の程度や損傷による経済的評価の減殺の程度については、動産類(家財)の方が不動産(建物)と比較してより大きな影響を受け易いものと推認することにも格別の不合理はない。したがって、契約建物よりも契約家財の地震による損傷(減価)割合を相当程度多めに評価し、本件火災発生当時の評価額を、共済金額の六〇パーセントと認定したとしても、これをもって経験則に違反するとまではいえないというべきである。
よって、右第一審原告らの主張はいずれも採用できない。」
8 原判決八三頁一一行目の「(二)」を「(三)」と改め、末行の次に行を改めて以下のとおり加える。
「 第一審原告新戸は、本件地震による同人の契約建物(二棟)ないし家財の損傷は、いずれも僅かなものにすぎないにも拘らず、本件火災発生当時の評価額を建物について共済金額の六〇パーセント、家財について共済金額の四〇パーセントしか認めないのは、何ら合理的な根拠がなく、不当であると主張する。
よって、検討するに、同第一審原告の原判決添付別表1の契約建物(以下「契約建物1」という。)は、築約四九年の木造瓦葺平家建建物を昭和四三年、四四年に改修し、昭和五二年には食堂・和室・風呂場を増築した建物であり、本件地震により、屋根瓦の一部がはがれたり、屋根にワイヤーで取り付けてあったBSテレビアンテナが倒れたほか、和室の右壁に長さ約一メートルのクラックが二本発生したり、欄間のガラスが破損するほどの損傷を受けたこと(甲A二の1、2、三。検乙五、乙三五によれば、同第一審原告が主張する倒れたBSテレビアンテナとは別に、屋根の南西側の瓦が一部はがれていることが認められる。)、建物内部では、洋間のスチール製二段重ねの戸棚の上段が倒れて、書籍約二〇〇冊が散乱したり、室内の植木鉢や小物類が倒れたり床に落下したりするほどの揺れであったこと(甲A三)、同第一審原告の原判決添付別表2の契約建物(以下「契約建物2」という。)は、築二〇年を超える木造瓦葺平家建建物を昭和五一年に東端の部屋を増築した建物であり、物置として利用されていたが、本件地震により、屋根瓦の一部がはがれるほどの損傷を受けたこと(甲A二の3、検乙五、乙三五)、以上の事実が認められる。
右事実に弁論の全趣旨を総合勘案するならば、契約建物1については、屋根瓦のめくれ、壁のクラック、欄間のガラスの損壊など外観上も少なからぬ損傷が認められるし、契約建物2についても少なくとも屋根瓦のめくれが認められるから、各契約建物の築年数、構造(耐震構造であったかどうか)のほか、建物内部における揺れの程度に照らすならば、たとえ、各建物の基幹部分が保持されていたとしても、各建物の基礎や内装等外部からは確認できない部分に損傷(不具合)が生じていると推認し、本件火災発生当時の建物の評価を、共済金額の六〇パーセント、家財の評価を共済金額の四〇パーセント相当額とした認定には格別の不合理はないというべきである。
よって、第一審原告新戸の主張は採用できない。」
9 原判決八四頁一行目から三行目までを削除する(原判決添付別紙一覧表の第一審原告碓井の「認定額」欄中、建物について「100」、家財について「40」、計「140」とあるをいずれも「0」と改める。)。
10 原判決八四頁六行目の次に行を改めて以下のとおり加える。
「 第一審原告鎌田は、同人の契約建物には、本件地震による損傷はほとんどなかったから、本件火災発生当時の各契約物件の評価額について、「外観上明らかに損傷したと認められる部分は確認されず、建物の基幹部分は保持されていた」とされる他の第一審原告らよりも少ない認定をしたことには全く根拠がないと主張し、甲E三、四にはこれに沿うかのような記載部分がある。
しかし、同第一審原告の契約建物は、築約二一年の木造瓦葺の二階建建物であり(昭和六〇年五月に浴室・台所など水まわりを改装)、本件地震により、建物北側一階廊下付近の壁に長さ約一メートルのクラックが二本発生するほどの損傷を受け、建物内部では、一階の和室の仏壇と二階の整理箪笥が倒れ、二階机横の本棚が倒れて本が散乱するほどの揺れであったこと(甲E二ないし四)、本件地震後まもなく(平成七年一月三一日)、大阪市消防局所属の消防士が作成して、同第一審原告に対する「現場聞き込み調査書」(甲一、五四頁)には、地震が発生した当時の周囲の状況として、「半壊」及び「家具倒壊」の各欄にチェックがなされていることに照らすならば、前記の記載部分はにわかに採用できない。
他方、第一審被告は、第一審原告鎌田の契約建物ないし家財は、倒壊・滅失しているとか、無価値になったものであると主張する。しかし、検乙五、乙三五をみても、右契約建物ないし家財が倒壊・滅失して無価値となったとでは認め難いし、前記「現場聞き込み調査書」(甲一、五四頁)の各欄のチェックだけでは、契約建物ないし家具が倒壊・滅失し、無価値となったと認めるには十分でないというべきである。
以上によれば、第一審原告鎌田の契約建物の本件火災発生当時の評価に当たり、「外観上明らかに損傷したと認められる部分は確認されず、建物の基幹部分は保持されていた」とされる他の第一審原告らとは差を設け、前記のとおり、契約建物については共済金額の六〇パーセント、契約家財については共済金額の四〇パーセント相当額とした認定には格別の不合理はないというべきである。よって、第一審原告鎌田及び第一審被告の各主張は、いずれも採用できない。」
11 原判決八四頁九行目の次に行を改めて以下のとおり加える。
「 第一審原告河合は、本件地震により契約建物の屋根瓦の一部がめくれたり落下したとしても、建物本体の損傷とは全く別であり、瓦を元に戻しただけで、その他何らの損傷も残らなかった木造建物が多数存在していたとして、同人の契約建物についても損傷はなかったから、本件火災発生当時の各契約物件の評価額について、共済金額の六〇パーセント(家財について四〇パーセント)と認定したことには全く根拠がないと主張し、甲F三にはこれに沿うかのような記載部分がある。
しかし、右契約建物は、一階部分は築約二五年、二階増築部分は築約二一年の木造瓦亜鉛メッキ鋼板交葺の建物であって、本件地震により、屋根瓦の約四分の一がはがれ、あるいは落下するほどの損傷を受けたこと、建物内部では、一階の食器棚と二階のテレビ・エレクトーン・和箪笥・整理箪笥・洋服箪笥が倒れたり倒れかかったりするほどの揺れであったこと(甲F二、3)に照らすならば、前記の記載部分はにわかに採用できない。
以上によれば、たとえ、同第一審原告の契約建物の屋根瓦以外には外観上損傷が確認されなかったとしても、建物の基礎や内装等外部からは確認できない部分に相当程度の損傷が生じていることが推認できるから、本件火災発生当時の建物の評価を、共済金額の六〇パーセント、家財の評価を共済金額の四〇パーセント相当額とした認定には格別の不合理はないというべきである。
よって、第一審原告河合の主張は採用できない。」
12 原判決八四頁一〇行目から末行までを次のとおり改める。
「(六) 第一審原告碓井(原判決添付別表3)及び同中(同別表18)の各契約物件についての損害はない(そもそも、右各契約物件は、いずれも本件火災発生前の本件地震により滅失し、本件契約は終了している。)。」
二 結論
以上によれば、第一審原告ら(碓井及び中は除く。)の請求は、第一審被告に対し、第一審原告新戸において一六四〇万円、同江部において一三八〇万円、同鎌田において二六〇万円、同河合において一三〇〇万円、同清水において一一〇〇万円、同丹羽において二六七〇万円、同松本において六六〇万円及び同南において三六〇万円並びに右各金員に対する平成七年五月一二日から各支払済みまで年五分の割合による金員の支払を求める限度で理由があるから、その限度でこれを認容すべきであるが、右第一審原告らのその余の請求及び第一審原告碓井及び同中の請求はいずれも理由がないから、これを棄却すべきである。
よって、原判決中、右と異なる部分は相当でないから、第一審原告丹羽の控訴に基づき原判決を右のとおり変更し、第一審被告の控訴に基づき、原判決中、第一審原告碓井との関係で第一審被告敗訴部分を取り消して、第一審原告碓井の請求を棄却し、第一審原告らの本件控訴(丹羽のものを除く。)及び第一審被告の本件控訴(第一審原告碓井に対するものを除く。)は理由がないから、いずれもこれを棄却することとするが、原審における原告河合謙二郎の承継人である河合和子及び同松本昭二の承継人である松本壽雄は、いずれも相続により原審における右原告らの権利義務を承継したので、その限度で原判決を変更し、訴訟費用の負担につき民訴法六七条一項、二項、六一条、六五条一項、六四条を、仮執行の宣言につき同法二五九条一項をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 根本眞 裁判官 鎌田義勝 裁判官 松田亨)