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大阪高等裁判所 平成11年(ネ)2564号 判決

主文

一  原判決中、控訴人らと被控訴人有限会社ミズホ建築設計に関する部分を次のとおり変更する。

1  被控訴人有限会社ミズホ建築設計は、各控訴人に対し、いずれも二四五万円及びこれに対する平成八年二月二日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

2  控訴人らの被控訴人有限会社ミズホ建築設計に対するその余の請求を棄却する。

二  控訴人らの被控訴人協和不動産販売株式会社に対する本件控訴を棄却する。

三  控訴人らと被控訴人有限会社ミズホ建築設計との間に生じた訴訟費用は、第一、二審通じてこれを一〇分し、その九を控訴人らの負担とし、その余を同被控訴人の負担とし、控訴人らと被控訴人協和不動産販売株式会社との間に生じた控訴費用は控訴人らの負担とする。

四  この判決の一項1は仮に執行することができる。

事実及び理由

第一  当事者の求める裁判

一  控訴人ら

1  原判決中、控訴人らと被控訴人らに関する部分を次のとおり変更する。

2  被控訴人らは、連帯して、各控訴人に対し、いずれも五〇〇万円及びこれに対する平成八年二月二日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。(控訴人らは、当審において請求を減縮した。)

3  訴訟費用は第一、二審とも被控訴人らの負担とする。

4  仮執行の宣言。

二  被控訴人ら

本件控訴を棄却する。

第二  事案の概要

事案の概要は、原判決の事案の概要欄の記載のうち控訴人らと被控訴人らに関する部分のとおりであるから、これを引用する。

ただし、原判決書八頁七行目の「一部請求」の次に「。当審において五〇〇万円に減縮された。」を加え、同一〇頁八行目の「以下「四五番一一の土地」という。」を削り、同一八頁七行目の「悪質」の次に「な」を加える。

第三  当裁判所の判断

一  当裁判所は、控訴人らの被控訴人ミズホに対する請求(減縮後のもの)は本判決主文一項1に記載の限度で理由があり、その余は理由がなく、被控訴人協和不動産に対する請求は理由がないと判断する。その理由は、次のとおり改めるほかは、原判決の争点に対する判断欄の記載のうち控訴人らと被控訴人らに関する部分と同じであるから、これを引用する(ただし、原判決書四六頁五行目の「微する」を「徴する」に改める。)。

原判決書五一頁九行目から同五四頁四行目までを次のとおり改める。

「4 被控訴人ミズホの責任について

(一)  前記認定によると、本件の事実関係は、次のとおりである。

原審相被告栄光企画は土木建築請負等を目的とする会社である。被控訴人ミズホは、建築物の設計、監理等を目的とする会社であり、代表取締役の山崎は一級建築士である。栄光企画は、本件建物一などを自ら建築して建売住宅として販売しようと計画し、被控訴人ミズホに対し、建築確認申請の代理と確認申請図面の作成を依頼した。右建物の設計及び工事監理は一級建築士がする必要があった。

山崎は、右図面を作成し、建築確認申請を代行して確認を得た。右確認申請書には工事監理者名を記入する欄があったが、山崎は、同欄に、一級建築士の肩書を付した山崎の氏名を自ら記載して提出した。また、右申請書には「建築基準法第五条の二の規定による工事監理者の選定(変更)について(届)」と題する書面が添付されたが、右書面には、栄光企画は山崎を工事監理者として定めたと記載されていて、そこに栄光企画が記名押印し、山崎は工事監理をすることを承認するという記載がされていて、そこに山崎が記名押印していた。しかし、山崎は、実際には、栄光企画から、工事監理までを依頼されていなかった。

大阪市では建築確認申請の時に工事監理者を定めておくよう指導されていて、確認申請書に工事監理者名を記載し、また前記届出書を添付する必要があった。そのようにしないと、事実上、建築確認申請は受理されず、確認を得ることができなかった。そこで、山崎は、栄光企画に対し、工事監理者をどうするか尋ねたが、とりあえず山崎ということにして確認を受けるよう依頼されたため、前記のような方法で届け出た。山崎としては、実際に建築工事に着手するまでに工事監理を依頼されれば山崎がすることになるであろうし、そうでなければ、栄光企画がその社員中有資格者を工事監理者とする方法などで工事をするのであろうと考えていた。なお、建築確認の関係では、当初の届出と異なる者に工事監理をさせる場合には、建築主が単独で変更の届出をすれば足りるものであった。そこで、山崎は、建築確認がされた後は、本件建物一について何もしないまま放置していた。

ところが、栄光企画は、重要な点(土台の強度不足及び柱の強度不足)で著しい手抜工事をし、欠陥があり危険な建物である本件建物一を建築した。その結果、栄光企画から右建物を買った控訴人らは売買の目的を達成することができなかったので、売買契約を解除し、栄光企画に対し、支払済みの代金の返還と損害賠償を求めた。原審でこれが認容され、右認容部分は確定しているが、栄光企画は実質上支払能力が欠如している。

(二)  右事実によると、山崎は、建築主事に対し、山崎が本件建物一の建築工事について工事監理をする旨表明したのであるが、実際にはその当時までに工事監理契約は締結されていなかったし、その後にも右契約は締結されなかったのであるから、山崎には本件建物一の建築工事について工事監理を行うべき義務があったということはできない。しかし、前記表明は、山崎が真実工事監理をすべき立場にある事実を表明したものと認めるほかないのであり、そのような趣旨の山崎の表明がされなかったら建築確認はされなかったものということができる。そして、本件建物一は、一級建築士の工事監理がなければ建築工事をしてはならなかったものであるところ、工事監理者が決まっていないまま建築確認がされると、栄光企画において必要な工事監理を受けないで建築工事をするおそれがないとは言い切れないし、特に、栄光企画は、未だ工事監理に当たることが決まっていない山崎に工事監理者である旨偽りの表明をするよう依頼するというような手段を弄して建築確認を得るような建築業者であるから、右のような具体的なおそれがないとはいえない。そうだとすると、山崎は、自らが工事監理者となることを表明して建築確認申請の代行をし、建築確認を得させた一級建築士として、栄光企画が工事監理者なしで、あるいは実質上工事監理者がないような状態で工事をし危険な建物を建築するようなことのないように配慮すべきであったというべきであり、その配慮を欠く場合には、建築士法一八条一項の規定する誠実に業務を行う義務に違反したというべきである。そして、本件建物一は建売用建物であり、違法建築がされた場合これによる損害は本件建物一を買った者が被ることになるおそれがあるのであるから、右の配慮義務は、右の購入者に対しても負担するというべきである。ところが、山崎は、このような配慮をすることなく、建築確認代行業務を履行した後、工事監理関係について放置したのであるから、右義務に違反したものというべきである。そうすると、山崎を代表取締役とする被控訴人ミズホは、山崎が右義務を怠った結果控訴人らが被った損害について、右義務違反と相当因果関係のある限度でこれを賠償する義務がある。

そこで、右損害の範囲について検討すると、控訴人らの損害は栄光企画の著しい手抜工事により発生したものであるが、前記認定ほどの違法工事が行われることはあまり例のない事態であり、必ずしも容易に予見できたとまでは言い難いことと、工事監理者の変更は栄光企画限りでできるところであり、山崎が栄光企画において正当に変更の手続をして工事をしているのであろうと考えたとしてもある程度やむを得ない面がないとはいえないこと、及び山崎の義務違反の性質に照らすと、山崎の前記注意義務違反は、控訴人らが被った損害を二四五五万五四六〇円として、その一割程度について相当因果関係があると認めるのが相当である。右の一割は、それぞれ二四五万円になる(千円以下切り捨て)。したがって、被控訴人ミズホは、控訴人らに対し、いずれも右二四五万円及びこれに対する平成八年二月二日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金を支払う義務があるから、控訴人らの被控訴人ミズホに対する請求は、右の支払を求める限度で理由があり、その余は理由がない。」

二  以上の次第で、原判決中、控訴人らの被控訴人ミズホに対する請求を全部棄却した部分は相当でないから、これを右判示のとおり変更することとし、控訴人らの被控訴人協和不動産に対する請求を棄却した部分は相当であり、右部分に対する本件控訴は理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担について民訴法六七条、六一条、六四条、六五条、仮執行の宣言について同法二五九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官加藤英継 裁判官伊東正彦 裁判官安達嗣雄)

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