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大阪高等裁判所 平成11年(ネ)2820号 判決 2000年10月11日

控訴人(第一審原告)

アース製薬株式会社

右代表者代表取締役

大塚達也

右訴訟代理人弁護士

吉原省三

小松勉

右補佐人弁理士

朝日奈宗太

被控訴人(第一審被告)

大日本除蟲菊株式会社

右代表者代表取締役

上山英介

右訴訟代理人弁護士

赤尾直人

右補佐人弁理士

萼経夫

中村壽夫

加藤勉

主文

一  本件控訴を棄却する。

二  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由

第一  控訴の趣旨

一  原判決を取り消す。

二  被控訴人は、原判決添付別紙目録記載の加熱蒸散殺虫用器具及び加熱蒸散殺虫用薬液ボトルを製造し、販売してはならない。

三  被控訴人は、前項の器具及び薬液ボトルを廃棄せよ。

四  訴訟費用は、第一、第二審とも被控訴人の負担とする。

五  仮執行宣言

第二  事案の概要

一  本件は、被控訴人製造の吸上式加熱蒸散型殺虫装置(イ号セット、商品名・キンチョウリキッド)及び薬液ボトル(イ号ボトル)が、控訴人の有する加熱蒸散殺虫方法の特許権(A特許権)の間接侵害に当たり、又は、控訴人の有する加熱蒸散型殺虫装置用キット等に関する特許権(B特許権)の直接侵害に当たるとして、控訴人が被控訴人に対し、右殺虫装置等の製造販売の差止め及び廃棄を求めた事案である。

二  基礎となる事実、控訴人の請求、争点、争点に関する当事者の主張は、次のとおり付加訂正するほか、原判決「事実及び理由」欄の第二及び第三に記載のとおりであるから、これを引用する(略称については原判決と同様とする。)

1  原判決の訂正等

(一) 三頁七行目<編注 本号二七九頁一段一七行目>の「特許権」の前に「各」を加える。

(二) 七頁九行目<同二七九頁三段八行目>及び一七頁九行目<同二八〇頁四段一二行目>の各「輝散」を「揮散」と訂正する。

(三) 一二頁五行目<同二八〇頁一段二二行目>の「フラメトリン」を「d―T―80フラメトリン(以下「フラメトリン」という。)」と、同頁七行目<同二八〇頁一段二四行目>の「ブチルジグリコール」を「ジエチレングリコールモノブチルエーテル(以下「ブチルジグリコール」という。)」と、同頁九行目<同二八〇頁一段二七行目>の「吸液芯③」を「吸液芯⑬」とそれぞれ改め、一三頁七行目<同二八〇頁二段八行目>の「d―T80」を削除する。

(四) 一九頁九行目<同二八一頁一段一八行目>の「該当しない。」の次に「イ号殺虫液において、水を不可欠の構成要素として包含しているのは、純然たる有機溶剤を使用することによって生じる火気によるアクシデントを解消するとともに、水の存在が優れた蒸散性及び人畜に対する安全性などに寄与するからに他ならない。使用時においては、水もまた、界面活性剤とともに、有効成分の吸液芯中の上昇、更には外部への蒸散に寄与しているのである。」を加える。

(五) 二〇頁五行目<同二八一頁一段三一行目>の「限定されなくてはならない。」を「限定されることとなり、イ号方法はA発明の技術的範囲に属さず、かつ、利用関係にも該当しない。」と改める。

(六) 三三頁一行目<同二八三頁一段三行目>の「及びイ号セット」を削除する。

(七) 三四頁七行目<同二八三頁一段三一行目>の「B発明」の前に「B発明においては、特許請求の範囲において『殺虫液』と記載されているだけであって、その組成は限定していない。そして、詳細な説明において、たしかに水を溶剤に加えてもよい旨の記載はないけれども、溶剤を明細書に記載されているものや出願当時知られていたものに限る理由はない。」を加え、三五頁四行目<同二八三頁二段一〇行目>の末尾に続けて、「また、水を添加したことによって格別の作用効果があるわけではなく、仮にあるとしても、B発明の構成をすべて充足している以上、利用関係が成り立つにすぎない。」を加える。

(八) 三六頁三、四行目<同二八三頁二段二六行目>の「被告セット」及び「被告ボトル」(各二箇所ずつ)をそれぞれ「イ号セット」、「イ号ボトル」と改める。

2  当審における控訴人の主張の要旨(争点1(一)、2(三)について)

(一) イ号殺虫液において、フラメトリンの溶媒はブチルジグリコールだけであり、水は溶媒ではない。

(1) 甲41の試験結果は、ブチルジグリコールの存在下においてフラメトリンが水に溶解しないばかりか、水がブチルジグリコールのフラメトリン溶解能力を低下させることを示している。

(2) 甲52は、イ号ボトル中の殺虫液の組成が蒸散によってどう変化するかについて試験したものであるが、これによれば、時間の経過とともに水の占める割合が大きくなっている。このことは、フラメトリンが水に溶解していないことを示している。

(3) ブチルジグリコールの界面活性作用は弱く、一般の界面活性剤に見られるミセルの形成は見られないから、ブチルジグリコールは界面活性剤とはいえない(甲42、47、53、54の1ないし3)。

すなわち、甲42の実験結果によれば、ブチルジグリコールの界面活性作用は、典型的な有機溶剤であるNPA(1―プロノール)とほぼ同程度であって、ブチルジグリコールが実用レベルでの界面活性能力を有していないことが分かる。

被控訴人は、乙73の試験結果を援用し、水とブチルジグリコールの溶液においてもミセルの形成が見られると主張するが、右試験結果からはそのような結論は出てこないし、そもそもCMC(臨界ミセル濃度)の測定法である色素法は、被控訴人のいう非イオン性物質であるブチルジグリコールには有効な方法ではない。

(二) 仮に水も溶媒といえるとしても、B発明は溶媒の種類を限定していないところ、イ号殺虫液はB発明の効果を奏するし、イ号方法もA発明の効果を奏する(甲45、51)から、イ号殺虫液はB発明の殺虫液に含まれ、また、イ号方法はA発明の殺虫方法に含まれる。

第三  当裁判所の判断

一  当裁判所も、控訴人の本件請求はいずれも理由がなく、棄却を免れないものと判断する。その理由は、次のとおり付加訂正するほか、原判決「事実及び理由」欄の第四記載のとおりであるから、これを引用する。

1  三七頁九行目<同二八三頁三段一七行目>から四〇頁二行目<同二八三頁四段三三行目>までを次のとおり改める。

「1 原判決別紙目録によれば、イ号殺虫液はフラメトリン約1.3重量パーセント、ブチルジグリコール約71.7重量パーセント、水約26.5重量パーセント、BHT約0.5重量パーセントから構成されていることが認められるが、このうちフラメトリンが殺虫有効成分であり、BHTが添加剤であることは、当事者間に争いがない。

ブチルジグリコールの位置付けについて、控訴人はフラメトリンの溶媒であると主張し、被控訴人は、ブチルジグリコールは界面活性剤であって溶媒は水である(少なくとも水とブチルジグリコールが混合溶媒である)と主張している。

証拠(甲24、25、27、乙48)によれば、①溶媒とは、溶剤ともいわれ、溶液を構成する一成分で、溶質を溶かす媒質をいい、液体同士が混ざって溶液を作るときは、多量に存在する方を溶媒ということ、②溶媒が二種以上の物質の混合であるときは、混合溶媒といわれること、③ブチルジグリコールは、水と任意の割合で混合し、一般に溶媒として用いられること、④ブチルジグリコールは、その分子構造に親水基である水酸基と親油基であるブチル基を併せ有し、水のほか、ピレスロイド系殺虫剤であるフラメトリンをも溶かし得ること、以上の事実が認められ、これに前記のイ号殺虫液の成分構成を併せ考えると、イ号殺虫液の基本的な構成は、控訴人が主張するとおり、ブチルジグリコールが溶媒として、溶質であるフラメトリンを溶かしているということは否定できない。

しかしながら、証拠(乙48、74ないし76、89)によれば、前記のように、分子構造に親水基である水酸基と親油基であるブチル基を併せ有するブチルジグリコールは、界面活性作用を有しており、イ号殺虫液中においても、一方で水の分子と結合するとともに、他方でフラメトリンの分子と結合することにより、本来水に溶解しないフラメトリンを可溶化させ、右の三成分の分子を均一に溶解混合する役割を果たしていると認めることができる。したがって、溶質であるフラメトリンに対する関係では、ブチルジグリコールと水とが混合溶媒の関係にあるということができるから、被控訴人の主張は、この限度で是認することができる。

右の認定に関し、控訴人は、当審において種々反論するので、検討する。

(一) まず、控訴人は、水はフラメトリンを溶解せず、かえって、ブチルジグリコールのフラメトリン溶解能力を低下させていると主張し、その具体的な証拠として甲41(控訴人作成の試験報告書)を引用する。

たしかに、甲41では、フラメトリンを溶解したブチルジグリコールに水を加えていくと、水が一定量を超えるとフラメトリンが析出し白濁する旨の実験結果が示されているが、これは、ブチルジグリコールのフラメトリンの溶解度が、水を加える(水で希釈する)ことによって減少することを示すにとどまり、このことから直ちに右控訴人の主張が裏付けられるものではないというべきである。

(二) また、控訴人は、殺虫液の各成分がどのように蒸散するかの実験(甲52)で、フラメトリンがブチルジグリコールと水に溶解しているのであれば、蒸散によるこれら三成分の減少率は同じになるはずのところ、フラメトリンとブチルジグリコールの減少率はほぼ同じであったのに、水のそれは低く、四一〇時間経過時点では、五〇パーセントも異なっていたと指摘する。

しかしながら、この実験結果も、実際の残存量で比較すると別紙のようになり、いずれの成分もほぼ同じような減少を示しており、しかも、三九〇時間経過時点では、水の減少率はフラメトリンのそれと一割程度の差しかない(「各成分の変化」の欄参照)。したがって、右実験の結果から、直ちにフラメトリンが水に溶解していないとはいえない(むしろ、フラメトリンと水の減少率はほぼ同じといってもよく、水は、ブチルジグリコールと協働してフラメトリンを希釈し、その蒸散に寄与しているということができる。)。

(三) さらに、控訴人は、甲53(大瀧仁志作成の見解書)及び甲54の1ないし3(横山晴彦作成の見解書、試験報告書及びその要約)に基づき、イ号殺虫液においてミセル形成が認められないことなどを根拠に、ブチルジグリコールの界面活性作用を否定する。

たしかに、右各書証の記載内容(特に甲54の2の試験報告書)に照らすと、ブチルジグリコールの水溶液にミセル(界面活性剤が水に溶けたとき、ある濃度(臨界ミセル濃度)以上になると、数十から百数十分子が、親水基を外に、疎水基を内に向けて会合した球状の集合体を形成すること)の形成が認められるとする乙73の試験結果には疑問が残り、直ちにこれを採用することはできないけれども、しかし、ミセルの形成が認められないからといって、ブチルジグリコールの界面活性作用を全面的に否定することはできない(右両見解においても、ブチルジグリコールと水の分子が相互作用(水素結合等)によって会合し、両者が分子レベルで均一に混合して均一溶液を形成していること自体は肯定している。)から、右各書証をもってしても、ブチルジグリコールと水とが混合溶媒に該当するとの前記認定を左右することはできない。」

2  四八頁一行目<同二八五頁一段三行目>の「機能」を「作用」と、八行目<同二八五頁一段一七行目>の「右当時」を「右B発明出願当時」と、一〇行目<同二八五頁一段二一行目>の「蒸散量が」以下を「蒸散量が減少するという問題点の存在が知られていた(乙31)。」と、それぞれ改める。

3  五二頁六、七行目<同二八五頁三段二五行目>を「らかである。また、B明細書において、有機溶剤を使用した場合のBHT等の適正添加量の記載は存するものの、水との混合溶剤を使用する場合のBHT等の適正添加量についての言及はなく、B明細書の他の箇所においても、溶剤が水を含有する場合について示唆する記載はない。」と、改める。

4  五三頁八行目<同二八五頁四段一五行目>の「(しかも、」から五四頁二行目<同二八五頁四段二五行目>の「認められる。)」までを削除する。

5  五九頁の五行目<同二八六頁三段二七行目>と六行目<同二八六頁三段二八行目>との間に次の文章を挿入し、六行目の「(四)」を「(五)」と改める。

「(四) また、控訴人は、水を添加したことによって格別の作用効果があるわけではなく、仮にあるとしても、B発明の構成をすべて充足している以上、利用関係が成り立つにすぎないと主張する。しかし、乙26の第8表、第11表によると、水と水性有機化合物の混合比のみが異なる二つの加熱蒸散用水性薬剤の実施例(24、26)について、水の混合割合のより高い方が有効成分の揮散量も多くなっていることが認められ、水自身もある程度有効成分の吸液芯中の上昇、揮散を促進する作用を有することが推認される。また、証拠(乙77、78、79の1、81の1、89)によると、イ号殺虫液は、水を添加した結果、純粋な脂肪族系有機溶剤と異なり引火点が存在せず、有機溶剤を溶媒として使用した場合に生じ得る引火の危険も解消しているから、26.5パーセントの水を溶媒として含むイ号殺虫液は、もはやB発明の殺虫液とは質的に異なっているとみるべきである。しかも、前記引用に係る原判決「事実及び理由」第四の一7(三)のとおり、イ号殺虫液がBHTの添加によるB発明の作用効果を奏しているとは認めるに足りないから、これらを総合すると、控訴人が主張するような利用関係は成り立たないというべきである。」

6  七三頁四行目<同二八八頁三段八行目>から七七頁五行目<同二八九頁一段二一行目>まで(5の項)を次のとおり改める。

「5 以上に基づいて検討する。

(一) 前記引用に係る原判決「事実及び理由」第四の二3のA明細書の記載及び出願経過、すなわち原出願では四〇〇時間経過時点で揮散量がほぼ〇となるような比較例でも、二〇〇時間経過時点で一定の揮散量を示すものは、本件A発明の実施例(実施例1ないし14)とされていること、及び、新たに追加された実施例と比較例(第3表)は二〇〇時間経過までのものであることからすれば、A発明は、吸液芯方式の加熱蒸散殺虫方法において、一定の条件の下において発熱体と吸液芯表面温度を一定の範囲で組み合わせることによって、二〇〇時間程度といった一定期間、吸液芯の目詰まりを回避して殺虫剤の蒸散性を安定持続させる効果を実現する点を要旨とする発明であるということができる。

ところで、前記引用に係る原判決「事実及び理由」第四の二4のとおりの特許異議決定、拒絶査定並びに平成九年八月二六日付手続補正に至る経緯及びその内容からすれば、右手続補正において、特許請求の範囲の記載に殺虫剤、溶媒及び吸液芯に関する構成が追加・特定されたのは、特許異議決定において、殺虫剤の揮散持続性の向上という効果は多数の要素によって左右されるから、発熱体の表面温度と吸液芯の表面温度との組合せのみによって右効果が実現されているとは認められないとされたことに対応するものと考えられる。したがって、A発明の構成において殺虫剤、溶媒及び吸液芯等の要素を特定することの技術的意義は、A発明の構成中の発熱体及び吸液芯表面の各温度を設定することで殺虫液の揮散持続性向上という効果を奏するための、必須の条件を設定する点にあると解するのが相当である。

そして、このように解することは、右手続補正直前の審判官と控訴人代理人とのやりとりにおいて、審判官が、溶媒の内容を脂肪族炭化水素(明細書Aの実施例によって効果が裏付けられている溶媒はこれだけである。)に限定するよう示唆したのに対し、控訴人代理人が公知技術等を示して、当業者であれば公知の脂肪族系の溶剤一般についても想到することは明らかである旨の意見を述べ、結局、控訴人代理人の意見に沿う形で特許査定がされたという経緯からしても首肯し得るところである。

(二) しかるところ、吸液芯方式の加熱蒸散殺虫方法における殺虫剤の揮散持続性向上という効果を奏するか否かに当たって、殺虫液の溶媒が重大な影響を与えると考えられることは、先にB発明の検討において述べたとおりであるが、この理は、乙22の特許異議決定においても述べられているとおり、発熱体及び吸液芯表面の加熱温度と殺虫剤の揮散持続性との関係を考える場合でも同様に妥当するものである。そして、そのような状況の下で、明細書Aにおいては、脂肪族炭化水素のみを溶媒とする場合についてのみ実施例によってその効果が確認されているにすぎず、水との混合溶剤を溶媒として使用する場合の適切な設定温度の範囲に関する言及はなく、A明細書の他の箇所においても、溶剤が水を含有する場合について示唆するような記載は全くない。また、前記引用に係る原判決「事実及び理由」第四の二4(三)の担当審判官と控訴人代理人との交渉経過に照らしても、A発明に関しては、せいぜい出願日前から公知の有機溶剤についてその適用が考慮されたにすぎないものと認められる。してみれば、先にB発明の明細書の記載等から26.5パーセントの水を溶媒に含む殺虫液がB発明の「殺虫液」に含まれないと解すべき旨述べたのと同様の理由により、A発明の特許請求の範囲においても、溶媒に関して「脂肪族系の溶剤を含み」とのみあるが、少なくともイ号殺虫液のように溶媒として26.5パーセントの水を含有する場合は含まれないと解するのが相当である。

この点について控訴人は、イ号殺虫液の溶媒であるブチルジグリコールが脂肪族系の溶剤である以上、水は単なる付加物であって、利用関係が成立するにすぎないと主張する。

しかし、まず、先に引用に係る原判決「事実及び理由」第四の一7で述べたように、26.5パーセントの水を溶媒として含む場合には、もはや質的に異なる溶媒となっているとみるべきであって、水は単なる付加物とはいえない。

次に、控訴人は、イ号殺虫液の場合にもA発明の効果を奏しているとして甲45及び51の実験結果を援用するが、A発明の効果は、前記(一)のとおり、二〇〇時間経過時点までの揮散量を安定持続させることにあると考えられるところ、甲45の実験結果では、二〇〇時間経過時点までのいずれの時点でも比較例の方が実施例よりも揮散量が多く、また、甲51の実験結果でも、比較例1は二〇〇時間経過時点では実施例1、2より揮散量が多いから、控訴人掲記の実験結果から直ちにイ号殺虫液がA発明と同じ効果を奏しているとはいえない(かえって乙84によると、発熱体の金属リング表面の温度を八〇度にし、これによって加熱されたイ号ボトル吸液芯の表面温度を六五度に設定したサンプルでフラメトリンの揮散量を測定したところ、右設定温度がいずれもA発明に開示されている温度の範囲内であるにもかかわらず極めて低い揮散率しか得られなかった旨の実験結果が報告されている。)。

よって、利用関係成立に関する控訴人の前記主張は採用できない。」

二  結論

以上によれば、控訴人の本件請求を棄却した原判決は相当であり、本件控訴は理由がないから、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 鳥越健治 裁判官 若林諒 裁判官 西井和徒)

別紙<省略>

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