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大阪高等裁判所 平成11年(行コ)54号 判決 2000年4月04日

主文

一  本件控訴を棄却する。

二  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び争点

第一申立

一 原判決を取り消す。

二 被控訴人は控訴人に対し、金五八四万四七五〇円、及びこれに対する平成四年四月一七日から支払済みまで年七・三パーセントの割合による金員を支払え。

三 被控訴人は控訴人に対し、金三二七万三六〇〇円、及びこれに対する平成六年四月一九日から支払済みまで年七・三パーセントの割合による金員を支払え。

四 仮執行宣言

第二事案の概要

一 本件は、昭和六三年度、平成三年度及び平成五年度の三回にわたって、原判決添付別紙物件目録記載の各土地(以下、各土地をまとめて「本件各土地」といい、個別の土地を指すときは「本件土地一」、「本件土地二」などという。)を公共事業施行者に対して順次売却した控訴人が、平成三年度及び平成五年度に売却した土地の譲渡所得について、租税特別措置法(以下「法」という。)三三条の四第三項二号の規定により同条一項の定める特別控除(以下「本件特別控除」という。)の適用を受けることができなかったことに関して、明白かつ重大な錯誤による所得税の過払いが生じたことを理由に、国税通則法の規定に基づき、過誤納金と同法所定の還付加算金の支払を求めた事件の控訴事件である。

二 前提となる事実

原判決の第二(事案の概要)の二のとおりであるから、これを引用する。

ただし、原判決一三頁七行目の「原告本人」の前に「乙一九の1ないし5、」を加え、原判決一七頁四行目及び一九頁八行目の「予定納税」を「確定申告に基づく納税」と改める。

三 主要な争点

原判決の第三(主要な争点)のとおりであるから、これを引用する。

四 当事者の主張

原判決の第四(当事者の主張)のとおりであるから、これを引用する。ただし、原判決二八頁一行目及び三三頁二行目の「請求」を「主張」と、それぞれ改める。

理由

一  当裁判所も、控訴人の請求は理由がなく、これを棄却すべきものであると判断するが、その理由は、二に付加するほかは、原判決の理由(第五争点に対する判断)のとおりであるから、これを引用する。

ただし、原判決三八頁一〇行目の「当たらないと解すべきである。」を「当たらないと解することには合理性がある。」と、四〇頁二行目の「公共事業であること」を「公共事業について行われたこと」と、それぞれ改める。

二  当審における控訴人の主張に鑑み検討してみても、控訴人主張の本件特別控除を受けられなかったことが違法ないし違憲であるとは認められないとした原判決の認定、判断は覆らない。

1  一の公共事業の解釈について

控訴人は、本件のように、複数の土地を同一年度内において買収することが不可能である場合には、法三三条の4第三項二号の「一の公共事業」には当たらないと解釈するのが合理的である旨主張する。

しかし、前記前提となる事実によれば、本件各土地の買収が同一年度内になされなかった最大の原因は、借地人ないし借家人との間の補償交渉の遅延によるものであると認められるところ、このような場合には「一の公共事業」には当たらないとすべき法文上の根拠は見当たらない。右のような原因は、個々の公共事業について偶々発生したり、しなかったりする性格のものであり、このような事情を基準として公共事業の個数を判定することに合理性があるとも解されない。

また、控訴人は、事業施行期間の終期は当該都市計画事業の重要な要素であるから、期間の延長がなされた場合には法通達三三条の4―4(3)の場合と同視すべきである旨の主張もしているが、期間の終期が公共事業の要素の一つであることから、期間の延長により事業の同一性が失われると解することはできず、この主張も理由がない。

2  違憲性について

本件において、本件各土地の買収が結果的に同一年度内になされず、その結果、控訴人が本件第二及び第三買収にかかる譲渡所得につき本件特別控除を受けられなかったことにつき、控訴人側に責任はなく、控訴人が不公平であるとの不満をもつことは十分理解できる。しかし、原判決が説示するように、本件特別控除の適用範囲に関する法の規定は、政策目的との関連で著しく不合理であることが明らかであると解することはできないのであり、立法政策の当否の問題に過ぎないと解するのが相当である。

また、控訴人は、本件のような場合に本件特別控除を適用しない旨の法の規定を適用することは、憲法一四条一項に違反する旨の主張もしている。しかし、法の本件特別控除の除外規定が違憲であるとは解されず、かつ、本件各土地が結果的に同一年度内に買収されなかったのは、控訴人側の責任によるものではないが、被控訴人の責任によるものともいえないことを考慮すると、同規定を本件に適用することが違憲であると解することもできない。

控訴人は、同規定の違憲性ないし適用違憲につき縷々主張しているが、これらは以上の判断を左右するものではない。

三  よって、原判決は正当であるから、本件控訴を棄却することとする。

(裁判長裁判官 井関正裕 裁判官 前坂光雄 裁判官 矢田廣高)

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