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大阪高等裁判所 平成12年(ネ)2558号 判決 2002年10月30日

控訴人

京都信用金庫

同代表者代表理事

甲野一郎

同代理人支配人

乙山二郎

同訴訟代理人弁護士

戸倉晴美

中川朋子

澤田孝

谷口忠武

下谷靖子

豊田幸宏

井田雅貴

谷口直大

被控訴人

丙川三郎

被控訴人

丁原四郎

上記両名訴訟代理人弁護士

小野哲

岡野新

山田てい一

主文

1  本件控訴を棄却する。

2  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由

第1当事者の求める裁判

1  控訴人

(1)  原判決を取り消す。

(2)  被控訴人らの請求をいずれも棄却する。

(3)  訴訟費用は第1,2審とも被控訴人らの負担とする。

2  被控訴人ら

主文1項と同旨

第2事案の概要

本件は,被控訴人らが控訴人に対し,それぞれ移籍出向期間の満了に伴い控訴人の従業員に復帰したとして,その雇用契約上の権利を有することの確認を求めている事案である。

1  争いのない事実等(証拠摘示のない事実は争いのない事実である。)

(1)  控訴人は,預金又は定期積金の受入れ・会員に対する資金の貸付け等を業とする法人である。

(2)  被控訴人らは,いずれも控訴人従業員であったところ,昭和63年7月1日付けで控訴人から株式会社キョート・ファイナンス(以下「キョート・ファイナンス」という。)に移籍出向を命じられ,その後何回かの出向延長に同意して平成10年に至り,同年6月30日で移籍出向期間が満了することになっていた。

被控訴人らは,移籍出向をする前からキョート・ファイナンスに在籍出向をしていたが,被控訴人丙川三郎(以下,「被控訴人丙川」という。)は,昭和62年3月9日からキョート・ファイナンスの取締役(支配人),平成3年4月から現在までその代表取締役専務,被控訴人丁原四郎(以下,「被控訴人丁原」という。)は,平成3年6月から平成8年10月までキョート・ファイナンスの取締役経理部長として,いずれもその経営に参画してきた(<証拠略>,被控訴人丁原本人)。

(3)  被控訴人らは,前記移籍出向を命じられた際及び延長更新の際,いずれも控訴人から,「確認証」と題する書面(以下「本件確認証」という。)によって,

<1> 移籍出向中の給与は,控訴人における継続勤務と同等額の支給を保証する。

<2> 移籍出向を解き,控訴人に復帰したときは,控訴人における継続勤務と同等以上の職位に任ずる。

<3> 移籍出向期間は3年間とし,移籍出向がなお継続を要する場合,職員にその事情を説明の上,京都信用金庫職員会議を交えた3者協議を行い,その承諾を得て移籍出向期間を延長することがある(<証拠略>によれば,1回目は4年,その後は3年毎の延長がされていたものと認められる。)。

旨の身分の保全を受ける確認を得ていた。

ただし,その際,本件確認証によって,移籍出向職員の身分の保全について,職務規程違反による解雇の場合はこの限りではないとする旨も確認されていた(以下「本件確認証ただし書」という。)。

(4)  控訴人の就業規則69条4項で「(職員に)背任行為の事実が認められたとき」,また,同条12項で「権限の濫用または越権行為により被告に損害を与えたとき」を諭旨退職又は懲戒解雇事由と定めている。

(5)  被控訴人らは,平成10年6月30日の移籍出向期間の満了に伴い,あらかじめ控訴人に復職の申し出をしたが,控訴人はその申し出を拒否した。

2  争点

(1)  本件確認証の効力

(2)  本件確認証により,被控訴人らが移籍出向期間の経過に伴い控訴人に復帰するとして

ア 被控訴人らが復帰するための要件の有無及び被控訴人らはその要件を具備していたか。

イ 本件確認証には解除条件が付され,その条件は成就したか。

ウ 本件確認証ただし書の趣旨及び被控訴人らに適用される就業規則。

エ 被控訴人らの復職の要求は信義則に違反するか。

(3)  被控訴人らの背信・背任行為の存否。

3  当事者の主張

(1)  争点(1)について

ア 被控訴人ら

被控訴人らは,前記のとおり,控訴人からキョート・ファイナンスに移籍出向していたが,本件確認証によって,控訴人への復職等の身分保全を受ける権利を有しており,平成10年6月30日の出向期間満了に際して,その権利行使をして,復帰する旨控訴人に申し出たが,控訴人は,前記移籍出向継続のための京都信用金庫職員会議を交えた3者協議を行うことも,被控訴人らに対し移籍延長の必要性について説明することもしなかったから,被控訴人らは,同年7月1日以降,控訴人職員の身分を有している。

イ 控訴人

本件確認証では,移籍出向期間経過後,当然に被控訴人らが控訴人の職員に復帰するとは定められていない。被控訴人らは昭和63年6月30日に控訴人を退職し,退職金も支払われているのであるから,控訴人に復職するには当然一定の手続が必要であり,本件確認証においても,当然に控訴人へ身分復帰することとはされていないのである。本件確認証で,「移籍出向を解き」との文言となっていることからも,再雇用の約束及び再雇用の際の雇用条件を定めたものに過ぎない。

(2)ア  争点(2)アについて

(ア) 控訴人

仮に移籍出向期間経過後復帰すると定められているとしても,被控訴人らに,控訴人へ復帰しなければならない事情が生じ,かつ,控訴人に,被控訴人らの再雇用拒否について正当な理由がないことが必要である。

被控訴人らは,キョート・ファイナンスの役員あるいは中心となる地位にあって,高額の給与を得ている。他方,被控訴人らはキョート・ファイナンスの実質破綻の状況を招来した経営陣の一員であり,キョート・ファイナンスを離れることのできない立場にあるばかりか,離れられない状況にある。したがって,被控訴人らは控訴人に復帰しなければならない状況にはない。

また,後記争点(3)の被控訴人らの背信・背任行為は,他の金融機関はもちろん,控訴人の顧客や職員にも知られているところであり,被控訴人らを再雇用すれば,控訴人自身の他からの信頼が揺らぐことは必至であるから,控訴人には被控訴人らの復帰を拒否する正当な理由がある。

(イ) 被控訴人ら

控訴人のこの主張は,控訴審の最終段階で提出されたものであり,時機に後れたものであるから異議がある。

付言すれば,本件確認証には,控訴人主張のような復帰しなければならない事情などとの要件は定められておらず,また,被控訴人らに控訴人主張の背信・背任行為などはない。

イ  争点(2)(イ)について

(ア) 控訴人

本件確認証による約定には,キョート・ファイナンス及び被控訴人らと控訴人との関係が悪化し,被控訴人らが控訴人に復職しても,控訴人職員として働くことができないような事情が生じたときは,本件確認証は無効とするとの解除条件が付されていた。

そして,後記争点(3)の被控訴人らの背信・背任行為により,上記解除条件は成就した。

(イ) 被控訴人ら

労働者の身分保全を図るための文書に,文言上明記されておらず,かつ,控訴人と被控訴人らとの関係悪化の原因関係を問わずに控訴人が自由に復帰を拒否できるとする控訴人の解除条件の主張は,明らかに失当である。

ウ  争点(2)(ウ)について

(ア) 控訴人

本件確認証が,被控訴人らの請求により被控訴人らが当然控訴人へ復職することを定めたというのであれば,出向中も被控訴人らの身分は継続して控訴人にあったということであり,いわゆる在籍出向ということになるが,その場合,出向労働者は,出向元と出向先との双方の就業規則の適用を受けるところ,出向先の懲戒処分には自ずと限界があり,懲戒解雇のごとく労働関係の根幹に及ぶものは,出向元においてのみ行い得るというのが,一般的な考えである。本件においても,出向元である控訴人の就業規則は当然に被控訴人らに適用され,懲戒解雇は,控訴人においてしかできないのであるから,本件確認証ただし書は,むしろ,被控訴人らに,控訴人の職務規程違反による解雇事由があるときには確認証の効力がないことを定めたものと解すべきである。

被控訴人らの後記(3)の背信・背任行為は,控訴人の就業規則で懲戒解雇事由を定めた前記69条4項又は同条12項に該当する。したがって,本件確認証ただし書に該当することになる。

控訴人のように,移籍出向であるから控訴人の就業規則の適用がないというのは,移籍出向および在籍出向を使い分けて,自らに有利な点だけを主張するものであり,雇用契約の本質からして許されない。

(イ) 被控訴人ら

被控訴人らは,キョート・ファイナンスに籍を置く移籍出向社員となったが,本件確認証により,控訴人に当然復職できる権利を有している。控訴人の就業規則は,移籍出向中の被控訴人らに適用の余地がない。そして,本件確認証ただし書は,被控訴人らが移籍出向先であるキョート・ファイナンスにおいて刑事事件や同社の職務規程に違反して,同社から解雇された場合は,控訴人として被控訴人らの復帰を拒否できるとの趣旨であることは明らかである。

エ  争点(2)エについて

(ア) 控訴人

控訴人と被控訴人らとの間の信頼関係が破壊されたと認められる事情の存在する場合には,復職の請求は信義則上許されないが,その場合とは,被控訴人らの行為が控訴人に損害を与えた場合にだけ限定されるべきではなく,また,故意行為でなくとも過失その他被控訴人らに有責性のある行為であれば足りる。

本件では,被控訴人らの背信・背任行為によって控訴人と被控訴人らとの間の信頼関係が破壊されたと認められる事情が存する。被控訴人らの背信・背任行為は,後記(3)(ア)のAないしMの一連のキョート・ファイナンスの行為を被控訴人らが代表取締役又は取締役あるいは重要な地位にある従業員として率先して実行してきたことである。被控訴人らはこれら一連の行為によって控訴人との敵対関係を作出し,これを維持,拡大してきたものであって,その敵対関係を今も継続している。なお,これらの項目の行為は一つずつ分断し独立して,背任行為か,すなわち信頼関係の破壊事由にあたるか否かが判断されるべきではない。

(イ) 被控訴人ら

被控訴人ら自らが悪意をもって控訴人に財産上の損害を加えるなどして著しく被控訴人らと控訴人間の信頼関係を破壊した場合は,信義則上,控訴人として被控訴人らの復帰を拒否しうることがあり得ることは一般論として否定できない。

しかし,この場合は,あくまで<1>「被控訴人らが自ら」,<2>「悪意をもって」,<3>「控訴人に財産上の損害を生じさせ」,その結果<4>「被控訴人らと控訴人間の間に著しい信頼関係の破壊発生」という事由が全て必要である。

(3)  争点(3)について

(ア) 控訴人

被控訴人らの以下の背信・背任行為は,前記のとおり,被控訴人らの復帰を拒否する正当な理由となり,解除条件を成就させ,控訴人の就業規則上の懲戒解雇事由に該当し,さらに,そのような行為を行いながら控訴人への復帰を求めることは信義則に違反するというべきである。

A キョート・ファイナンスは,平成元年から平成3年にかけて,別紙「大口貸出先別残高推移表」<略>のとおり,K(以下,「K」という。)関連企業や,暴力団系を含むK通信機関連企業,T関連企業,O関連企業,A関連企業に,多額の貸付をし,これらの不良債権を発生させた。

B 昭和63年7月1日に「適正化」(昭和50年7月に発出された,大蔵省(当時。以下同じ。)による,信用金庫が関連会社において貸金業を含む業務,その他の業務をしてはならないとの指導に基づく関連会社の整理のこと。以下同じ。)が完了した後,控訴人はキョート・ファイナンスの経営に関与することは全くなかったが,大蔵省(近畿財務局)や日銀からは控訴人にキョート・ファイナンスの状況報告を求められていたのに,キョート・ファイナンスは不良債権の発生につき,控訴人に真実を報告せず,あるいは,説明を尽くしていなかった。

C 控訴人は,大蔵省の依頼でキョート・ファイナンスの再建計画の作成に協力し,金融機関に対して再建計画への協力要請をしたが,その再建計画では,平成7年3月(3年内)を目途に,キョート・ファイナンスの貸付金の回収(担保物件売却等)の見通しをたて,主要金融機関を交えて協議することとされていたのに,キョート・ファイナンスは,大口貸出先からの回収に着手しないなど,再建計画の実行に非協力的であった。

D 平成7年3月までの再建計画が頓挫した後,キョート・ファイナンスは,K関連企業である株式会社K綜合開発研究所(以下「K綜合」という。)への貸付金の重大な担保である株式会社A組(以下,「A組」という。)の株式のうち715万株を,譲渡代金の支払のためにKの会社である株式会社D企画(以下,「D企画」という。)振出の手形を受け取るだけで交付し,また,同株式270万株を,同様に代金の支払のために株式会社H(以下,「H社」という。)振出の手形を受け取るだけで交付した上,Kの意向を受けたT弁護士(以下「T弁護士」という。)の提案に従い,T弁護士がA組株式を担保として保管している旨の内容虚偽の文書を作成するなど債権者を欺くなどし,結局,手形金請求訴訟で敗訴してA組株式譲渡の対価が回収不能となった。

E キョート・ファイナンスと控訴人との間の取引約定書12条2項の「財産(担保物件)について,重大な変化を生じたとき,又は,生ずるおそれのあるときは,控訴人から請求がなくとも報告しなければならない」との定めに反し,キョート・ファイナンスにとって最も重要な財産であるA組株式の処分について控訴人に説明,報告をしなかった。

F 平成8年5月,キョート・ファイナンスは,控訴人に,D企画への融資を申し入れた。

G 平成9年6月,キョート・ファイナンスは,転籍社員の給料支払いを求める訴えを提起し,控訴人の業務を意図的に妨害した。

H 控訴人は,平成3年5月,キョート・ファイナンスから担保として株式会社C(以下「C社」という。)の株式を取得していたが,平成10年3月,C社に新株を発行させ故意に担保物を毀滅した上,前記取引約定書12条2項に反し,控訴人に対して,この新株発行を説明・報告をしなかった。

I 平成10年5月に控訴人が提起したC社株式についての担保物毀滅の損害賠償請求訴訟の中で,控訴人が同株式に設定した担保権は虚偽表示で無効であると主張し,控訴人の業務を意図的に妨害した。

J 平成10年8月,被控訴人らは本訴を提起し,この中で偽造文書(<証拠略>)を提出して控訴人の信用を毀損する内容の虚偽主張をした。

K 平成11年5月,キョート・ファイナンスが実質支配するC社に,控訴人の理事らに対して代表訴訟を提起させ,その請求原因の一つとしてキョート・ファイナンスの控訴人に対する義務違反(借入金を返済しない債務不履行)という不当な主張をさせた。

L 平成11年12月,控訴人の競売申立に対し,キョート・ファイナンスは,平成12年1月,根抵当権実行禁止の仮処分を申し立て,控訴人が設定した担保権は虚偽表示で無効であると虚偽の主張をし,虚偽文書を提出して,控訴人の業務を意図的に妨害した。

M 被控訴人らは,出向させた企業と出向先企業との利害が対立した場合,出向者は出向させた企業に不利益な行動をとってはならず,出向先企業の指示が出向させた企業の利益に反する場合は,出向させた企業の指示を求めなければならないにも拘わ(ママ)らず,指示を求めないまま不利益な行為をした。

(イ) 被控訴人ら

被控訴人らには控訴人に対する背信・背任行為は認められないので,いずれも争う。

控訴人が原審及び当審で主張する被控訴人らの控訴人に対する背信・背任行為は,一旦,<1>不良債権回収を(故意に)懈怠したこと,<2>A組株式を手形により譲渡したこと,<3>株式会社Cの株式を増資したこと,<4>仮処分申請手続で虚偽主張をし偽造文書を作成したことと整理され,審理を尽くされたのにかかわらず,更に9項目の事由を追加したもので,これらは時機に後れたものとして失当であるばかりか,内容的にも到底認められるものではないし,結局は上記4項目に集約されるものであろう。

第3当裁判所の判断

1  争点(1)について

先に第2,1(3)で認定した本件確認証の文言に,証拠(<証拠・人証略>)並びに弁論の全趣旨によれば,A(以下「A」という。)は,控訴人の人事部長等を歴任し,平成4年7月1日付け及び平成7年7月1日付けの本件確認証にも人事部長として署名している者であるところ,本件確認証は,昭和50年に発出された大蔵省の指導により信用金庫の関連会社の整理が進むなかで,それまで在籍出向であった者も移籍出向とされるようになっていったが,これに対する労働組合的存在であった京都信用金庫職員会議の要求に応じ,移籍出向ではあるもののあたかも在籍出向のごとき身分を約束するものとして本件確認証が作成されるに至ったものであること,そして,被控訴人らと同様に昭和63年にキョート・ファイナンスに移籍出向をしたうちの4名の者は控訴人に復帰したが,それは本件確認証と同様の確認証による約定に基づくものであることが認められ,これらの事情を総合すれば本件確認証の趣旨は,被控訴人らによる控訴人への復帰について申し出があるにもかかわらず,期間の延長について3者間で協議がされ,控訴人による理由の説明がされなければ,本件確認書ただし書等の適用除外事由が存しない限りは,移籍出向期間の満了により移籍出向という効果がなくなり,被控訴人らは移籍出向前の状態である控訴人の職員に復帰するという趣旨の約定であると解するのが相当である。そして,このような確認書が作成されるに至った経緯に,キョート・ファイナンスが経営困難になった場合の出向社員の人件費についての支援に関する覚書(<証拠略>)でも移籍出向とされていることに照らすと,確認書が作成されたことをもって移籍出向が在籍出向に変化するものではないと解するのが相当である。

ところで,証拠(<証拠略>)並びに弁論の全趣旨によれば,昭和63年7月1日付けの確認証では,移籍出向期間は最長3ヶ年間とされ,移籍出向がなお継続を要する場合,被控訴人らにその事情を説明し,被控訴人ら,控訴人に,京都信用金庫職員会議を交えた3者で協議を行い,その承諾を得て移籍出向期間を更に最長3ヶ年間延長することがあるとされていたが,3年後の平成3年7月には,被控訴人ら,控訴人,京都信用金庫職員会議の3者間で協議がされることもなく,被控訴人らはキョート・ファイナンスに出向を続けていたこと,しかし,平成4年7月には,新たに確認証が交わされ,移籍出向期間は3ヶ年間とされて,現に3年後の平成7年7月には,確認証が更新されていることが認められる。しかし,昭和63年7月1日付けの確認証が平成3年7月に更新されなかったことは,当時は出向継続の必要性について関係者に異論がなかったことと事務処理上の不手際が重なったためとも考えられ,これをもって上記判断を左右するものではないというべきである。

また,控訴人は,本件確認証の第2項2では,前記第2,1(3)<2>で認定のとおり,「移籍出向を解き金庫に復帰したときは」との文言が用いられていることをもって,本件確認書が再雇用の約束及び再雇用の際の雇用条件を定めたものにすぎない旨主張するが,本件確認証の同項5では,同1(3)<3>で認定のとおり,出向期間を延長する場合には,3者協議や控訴人による出向の延長の説明が要件とされていることに,上記認定した事実とを併せ考慮すると,控訴人の主張は採用できない。

2  争点(2)ア,イについて

アについては,当審において当事者双方の主張を整理する最終段階に至って提出されたものであるが,それが本件確認証の文言の解釈にかかるもので,特段の証拠調べを必要としないものであり,そのために訴訟が遅延することはないことからすれば,時機に後れた主張の提出として却下すべき場合に当たるとまではいえない。しかしながら,被控訴人らが控訴人へ復帰しなければならない事情を被控訴人らの控訴人への復帰の要件とする約定が存していたことを認めるに足りる証拠はない。

また,イについても,本件確認証による約定に控訴人主張の解除条件が付されていたことを認めるに足りる証拠はない。

したがって,争点(2)ア,イについての控訴人の主張はいずれも採用できない。

3  争点(2)ウについて

本件確認証により,出向期間満了時の控訴人への復帰の権利を被控訴人らに認めたことをもって,被控訴人らの出向の性質が移籍出向ではなく,在籍出向であると解することができないことは前示のとおりである。そして,移籍出向である以上,控訴人の就業規則は,被控訴人らには適用されず,そのことが雇用契約の本質に反するということはできない。そうすると,本件確認証のただし書にいう職務規程違反による解雇というのは,出向先であるキョート・ファイナンスによる懲戒解雇を指すことになり,被控訴人らがこの要件に該当しないことは明らかである。

4  争点(2)エについて

本件確認証には明記されてはいないものの,雇用契約の性質上,被控訴人らが,その出向中に被控訴人らと控訴人間の信頼関係を破壊したことにより,控訴人において,被控訴人らが復帰したのちの雇用契約を維持することが困難となった場合には,信義則上,控訴人として被控訴人らの復帰を拒否しうるというべきである。そして,信義則上控訴人が被控訴人らの復帰を拒否しうるのは,被控訴人らが,その悪意又は重大な過失により,被控訴人らと控訴人との間の信頼関係を破壊し,雇用契約を維持することが困難な状況を作出した場合であると解するのが相当である。被控訴人らが主張するように,その原因行為を被控訴人らの故意行為に限ることは相当ではなく,また,控訴人の財産上の損害の発生が必要的(ママ)であるということはできない。

5  争点(3)について

(1)  控訴人主張のA,B,Cの各点について,併せて判断する。

ア A,Bについては,当審になって主張されたものであり,原審で主張できなかったとはいえないものではあるが,Cと密接に関連する事項であり,この主張が追加されたことによって審理が遅延したとはいえないので,時機に後れた主張として却下すべき場合であるということはできない。以下,Cと併せて判断する。

イ K関連企業への貸出金が結果的に回収不能となったことは争いがないところ,キョート・ファイナンスがそれらが貸付の時点で不良債権となることが見込まれながら貸し付けられたことを認めるに足りる証拠はない。その他の控訴人指摘の大口貸出先についても同様であり,それらが貸付の時点で不良債権となることが見込まれていたことを認めるに足りる証拠はない。

ウ<1> 証拠(<証拠略>)並びに弁論の全趣旨によれば,控訴人は,キョート・ファイナンスについて,適正化を終えた昭和63年以降も,大蔵省(近畿財務局)からは,適正化済みであってもキョート・ファイナンスのように貸金業を含む会社については,検査時にその状況報告を求められていたことから,控訴人はキョート・ファイナンスに対して適宜報告を求めてきたこと,被控訴人らは,控訴人に対して,平成2年3月末,同年9月末の大口取引先の報告をした(<証拠略>)が,その中には,K関係のK綜合,Oフェリー株式会社(以下「Oフェリー」という。)については記載されなかったこと,控訴人は,平成3年8月にキョート・ファイナンスから,経営状態の悪化を理由に経営支援を求められる一方,大蔵省からもキョート・ファイナンスの再建に対する協力方を求められたことから,同年9月からは,昭和61年6月から控訴人の審査部長であったB(以下「B」という。)と専務理事であったC(以下,「C」という。)とが1週間に一度の割合で調査に当たったが,キョート・ファイナンスの経営状態はその後も悪化することから,控訴人では,Bをキョート・ファイナンスに派遣してその実態を把握し,再建計画を立案することとし,Bは,平成4年2月6日からキョート・ファイナンスに赴いて,貸出の実態の詳細を調査するとともに,不良債権の回収を指導するなどしたこと,BとCがキョート・ファイナンスの調査を開始した以降,キョート・ファイナンスは,同社の大口取引先との取引に関して,平成3年9月30日付け,同年12月31日付け,平成4年6月30日付けの各大口取引先推移表(<証拠略>)をもって報告したが,それらには,K綜合,Oフェリーについて記載されていたこと,Bは,ラインシート抽出先一覧表(<証拠略>)を作成するなど調査を重ね,同年6月30日付けで再建計画書(<証拠略>)を作成して控訴人に提出し,控訴人も同年6月11日付けでキョート・ファイナンスの再建計画書(<証拠略>)を作成したこと,が認められる。

<2> ところで,証人Bは,平成元年12月31日付け大口取引先推移表(<証拠略>)は平成3年になるまで見たことはなく,平成2年3月31日付け,同年9月30日付け(<証拠略>)の各大口取引先推移表も見たことがなく,キョート・ファイナンスからK関連の貸出についての報告を受けたのは平成3年9月になってからである旨供述する。確かに,前記のとおり,平成2年3月末,同年9月末の大口取引先の報告には,上記平成元年12月から平成2年9月30日までの大口取引推移表には記載のある,K綜合,Oフェリーについての記載がなく,当時の他の債権者と比較して飛び抜けて多額の融資先であるK綜合や同社と一部共同担保を提供しているOフェリー(<証拠略>)の記載が漏れるということは極めて不可解ではある。しかし,被控訴人丙川は,キョート・ファイナンスは,控訴人の依頼を受けて,昭和61年ころから3か月ごとに上記のような大口取引先推移表や1億円以上の貸出については,控訴人に融資予定報告書を提出する(<証拠略>)などして業務の実態を,控訴人の業務部の関連会社担当役員に対して報告をしてきた旨陳述しているところ(証人Bも,キョート・ファイナンスからの報告は業務部の関連会社担当にされ,それが審査部長であった同人にも回覧されていたと供述する。),上記Bが平成3年9月までには見たことがなかったとする報告書面を被控訴人が後日作成したことを認めるに足りる証拠はなく,むしろ,控訴人においては,キョート・ファイナンスの経営状態が問題視されるまでは,それら報告書面を必ずしも証人Bが供述するような観点から注意深く点検等をしていたのかについて疑問も存するのであり,被控訴人丙川の上記陳述を直ちに排斥することは困難である。

したがって,被控訴人らがキョート・ファイナンスの貸出の実態を正確に報告していなかったとの控訴人の主張は採用しがたい。

エ 証拠,(証人A,同B)によれば,CやBはキョート・ファイナンスへの融資金融機関等との折衝をも重ね,前記のとおり作成されたキョート・ファイナンスの再建計画書(3年以内に回収することを目標にしている。)に基づいて,キョート・ファイナンスが貸付金の回収や資産の売却を行ってきたが,キョート・ファイナンスは,平成5年7月30日付けで,平成5年10月1日から平成12年3月31日までを期間とする再建計画(Ⅱ)(<証拠略>)が作成され,そこでは平成7年3月31日までに借入金・貸出額規模を昭和63年3月当時の規模まで縮小し,そのために不動産担保ローンの回収に全力を挙げるなどとされたことが認められる。

そして,その成果は,原判決別紙「大口貸出先(10億円以上)回収明細表」(<証拠略>)のとおりであり,これと「(株)キョート・ファイナンスの大口貸出先の回収計画と実績対比」(<証拠略>)によれば,平成7年3月までの大口貸出先からの回収については,961億円強の計画に対し,8億円弱しか実績が上がらなかったことになる。この点につき,証人Bは,キョート・ファイナンスに法的手続をとるように進言したが聞き入れられず,平成7年7月には控訴人に戻ったと供述する。

しかし,金融機関からの借入金の返済という観点からみると,1643億円余の元金に対して,平成7年3月までの返済率は5パーセント未満であるものの,返済額にすれば65億円強であったといえるし(<証拠略>),金融機関からは利率を下げてもらい,Cが融資銀行の京都銀行の了解を得てくれたとはいえ,その間に,株式会社Hギャラリーから返済を受けた100億円全額を利息の返済にあてており(<証拠略>),また,担保権の実行についても,バブル崩壊による担保価値が著しく下落した状況からすると,競売によるより回収率の高まる任意売却等の可能性を探ってきたとしても(<証拠略>),それをもってキョート・ファイナンスが不良債権回収のための相応の努力を怠ってきたとまでは認めることはできない。そうすると,キョート・ファイナンスが大口貸出先からの債権回収に必ずしも十分な成果を挙げられなかったとしても,再建計画の実行に非協力的であったとまではいい難いものがある。

(2)  控訴人主張のD,E,Fの各点について,併せて判断する。

ア E,Fについては,当審になって主張されたものであり,原審で主張できなかったとはいえないものではあるが,Dと密接に関連する事項であり,時機に後れた主張で却下すべき場合であるとまではいえない。以下,Dとの関連で判断する。

イ キョート・ファイナンスによるA組株式の譲渡の経過については原判決の認定判示するとおりであるから,次のとおり付加訂正するほかは原判決10頁5行目から13頁4行目までを引用する。

<1> 原判決10頁5行目の「四五」の次に「67,86」を加え,「乙八」を「乙9,44~56,63,64,75,88」と改める。

<2> 同11頁8行目の「一一月」を「12月」と,10行目の「とって保全措置」を「とるなどの措置」とそれぞれ改め,同頁11行目の末尾に続けて次のとおり加える。

「 その具体的経過は次のとおりである。

キョート・ファイナンスは,平成7年4月26日,その経営権をD企画に移行する旨の協定を締結するとともに,A組株式215万株を30億1000万円で,D企画に売却する旨を約し,D企画振出の,支払期日平成7年9月28日の約束手形を受領し,A組株式を交付し,また,同年7月12日に,A組株式150万株を21億円で,D企画に売却する旨を約し,D企画振出の支払期日平成7年9月28日の約束手形と,担保としてI産業の株式14万2650株を受領し,A組株式を交付し,また,同年8月21日,D企画に対して,A組株式150万株を21億円で売却する旨を約し,D企画振出の,支払期日平成7年9月28日の約束手形と,担保としてG社の株式3万8400株を受領し,A組株式を交付したが,同年9月27日には,上記3回の売買代金の支払いのために受領していたD企画振出の約束手形の支払期日を平成7年12月22日と書き換えた。さらに,キョート・ファイナンスは,同年12月13日,A組株式200万株を34億円で,D企画に売却し,D企画振出の,支払期日平成8年3月31日の約束手形を受領し,A組株式を交付したが,上記の手形書換で受領していたD企画振出の約束手形の支払期日平成7年12月22日を,更に平成8年3月31日に書き換えた。その後もD企画振出の約束手形は,書き換えが続き,平成8年3月29日,先に200万株の売買代金として受領していた支払期日平成8年3月31日とする約束手形の支払期日を同年6月30日に書き換えた。」

<3> 同12頁1行目の「第三取得者」を「D企画」と改め,同頁4行目の「承継させる」の次に「(前記平成7年4月26日付け協定書による地位を含む。)」を加え,同頁10行目の末尾に続けて次のとおり加える。

「 なお,上記4月18日の契約では,株式は実際には移動せず,また,同契約に際しては,キョート・ファイナンスが既に他に担保に供している分を含めた残りの405万株全部を72億4950万円でH社に譲渡する旨の合意がされたが,実際には前記のとおり6月5日に270万株が譲渡され,キョート・ファイナンスからT弁護士に交付された。そして,証券取引法による大蔵省への届出と有価証券取引税納付の必要から,同年6月13日,715万株と270万株の合計985万株をH社へ譲渡する旨の契約書に差し替えられた。

キョート・ファイナンスは,平成8年4月19日,H社振出,I産業裏書(但し,取締役会議事録なし),額面130億8450万円及び72億4950万円,支払期日はいずれも白地の約束手形を受領した。なお,キョート・ファイナンスは,前記平成7年4月12日の150万株の譲渡の際に担保として差し入れられたI産業の株式14万2650株を返還する趣旨でT弁護士に交付した。」

<4> 同13頁4行目の「係属している。」を次のとおり改める。

「 係属したが,異議訴訟で,手形判決が取り消されて,キョート・ファイナンスの請求は棄却され,キョート・ファイナンスは控訴したものの控訴も棄却され,現在は上告審が係属中である。」

ウ 以上のような複雑な段階を経て,A組株式985万株がT弁護士,Kに渡った。その経緯からすると,当初の平成7年4月26日のD企画に対する売却に際して,その振出にかかる約束手形を受け取っただけで,A組株式を交付してしまったことは,極めて不自然ないしは軽率な行為であり,その後の経緯にも問題が多いと言わざるを得ない。

ところで,A組株式の譲渡について,被控訴人らは,控訴人が事前に知っていた旨主張し,キョート・ファイナンスの代表取締役社長J(以下「J」という。)は,同人及び前キョート・ファイナンス代表取締役で,当時は顧問であったが実質的には同社の経営を支配していたS(以下「S」という。)が,A組株式をD企画に引き渡す前の平成7年3月17日に,KやT弁護士らも交えて控訴人のC専務と面談して,D企画へのキョート・ファイナンスの経営権譲渡とA組株式の譲渡をしたいと伝え,その了解を得,さらに控訴人の理事長甲野一郎の了解も得ていたと陳述し(<証拠略>),J作成の控訴人とキョート・ファイナンスとの交渉経緯を記した書面(<証拠略>)も存するが,C,Bら控訴人関係者はこれを否定しているところ(<証拠略>,証人B),Jの陳述を裏付ける的確な証拠は存せず(被控訴人丙川の陳述書(<証拠略>)の一部にはこれに副う部分も存するが,結局のところそれはJらからの伝聞に止まるものであり確たるものとはいえない。),他に被控訴人らの上記主張事実を認めるに足りる証拠はない。かえって,証拠(<証拠略>)並びに弁論の全趣旨によれば,そのような事実はなかったことが認められる。

エ 平成8年3月1日付けキョート・ファイナンス作成の金融機関への報告書(<証拠略>)には,大口貸出先回収交渉延長に伴う任意回収可能額として,A組株式1120万株が単価3000円として計上されているが,この時点では既にキョート・ファイナンスの下には270万株しかなかった。しかし,同書面のこの記載はキョート・ファイナンスが現にA組株式を所持しているとの趣旨ではなく,その資産価値を把握しているとの趣旨で記載されているものと解されるから,キョート・ファイナンスの説明と矛盾するとまではいえない。また,平成8年3月31日の貸借対照表にはD企画振出分の受取手形は計上されていないが(<証拠略>),H社と正式契約を交わしたとされる同年6月13日の後である同月30日現在の残高試算表(<証拠略>)には受取手形として計上されているので,この点でもキョート・ファイナンスの説明と矛盾するとまではいえない。

オ K,T弁護士を被告人とする刑事事件の冒頭陳述書(<証拠略>)においては,キョート・ファイナンスは,K,T弁護士に騙された被害者であるとされている。

キョート・ファイナンスのH社,I産業に対する手形金請求訴訟(第1審判決が乙75,控訴審判決が乙88)においては,請求自体はKらの詐欺によるH社,I産業の取り消しが認められ,請求は棄却されたが,キョート・ファイナンスがKと詐欺を共謀したとは認定されていない。キョート・ファイナンスは,Kの詐欺について容易に知り得たと認められるので,少なくともKの詐欺を知らないことにつき過失があったと認定され,あるいは,H社,I産業がKに騙されて錯誤に陥っている可能性を認識しながら,Kの詐欺を容易にさせるような行動をとり,その結果を容認し,むしろ歓迎していたと評価されるとされている。

これらの判決からは,キョート・ファイナンスは,Kらの詐欺の被害者であったということができるし,また,キョート・ファイナンスやJ,S,あるいは,被控訴人らが本件で利益を得たと認めるに足りる証拠はない。

カ 被控訴人丙川は,キョート・ファイナンスでは,J,Sが方針を決めており,控訴人の意思はJに示され,控訴人への報告や折衝もJを通じてされていた,Jからは,A組株式は仕手株であるので株式市場で売却すると株価が大幅に下落すると予測され,D企画の社長が株式会社M組の社長でもあるMであり,資金的バックに宗教法人A宗が付いていると聞いていたと陳述する(<証拠略>)。被控訴人丙川が,Jのこのような説明を鵜呑みにしたのはいささか軽率であったとはいえるが,被控訴人丙川がD企画との交渉を行っていたことを認めるに足りる証拠はなく,したがって,同被控訴人が入手できる情報も限られており,また,このA組株式の譲渡問題は前記のとおり経営を支配するSの意向でもあることに,同被控訴人のキョート・ファイナンス内での立場も考慮すると,J社長にD企画ないしH社への売却をとりやめさせなければならないと判断できるほどの情報も持ち合わせておらず,またそのような力があったとは到底いえない状況にあったというべきである。

キ なお,証拠(<証拠略>)によれば,次のとおり,被控訴人丙川がA組株式の譲渡に関して直接関与したことが認められる。

<1> 平成8年1月25日の日本経済新聞に,A組の筆頭株主であったK綜合の株数が減少した旨の記事に関する東海財務局,近畿財務局からの問い合わせに対して,被控訴人丙川が説明した。

<2> 同年6月13日には,H社,I産業と,A組株985万株の譲渡契約を結び,K綜合には担保権実行の通知をし,同月14日には,控訴人本店で,有価証券取引税約4000万円の納付手続をした。

<3> 同月18日,被控訴人丙川は,J社長とともに,控訴人のC専務に,A組株式譲渡の経緯を説明し,資料を渡そうとしたが,控訴人側はその受け取りを拒否した。

<4> 同月21日,被控訴人丙川は,J社長とともに,控訴人のBの要請で,A組株式譲渡の経緯を説明し,資料を渡した。

<5> 被控訴人丙川は,J社長から,A組株式の所在についての債権者からの問い合わせへの対応に苦慮していると聞いていたので,平成8年10月ころ,T弁護士に尋ねたところ,同弁護士が株券の所在を把握している旨聞き,Y弁護士の指導で,同月24日,T弁護士にA組株式をキョート・ファイナンスに担保に入れてもらうよう依頼したところ,同年11月中旬に,A組株式985万株の株券の記番号を記入した一覧表を渡されたので,T弁護士がA組株式を保管しているものと確信して,H社のキョート・ファイナンスに対するA組株式の譲渡代金支払いのために振出された約束手形の支払期日を変更し,その支払の担保として,H社はキョート・ファイナンスにA組株式985万株を提供し,同株式はT弁護士において占有保管する旨の同年10月25日付け合意書を作成した。

しかしながら,これらの行為は,既に決まった方針を実行したか,Jの指示で行われたかであると認められ,被控訴人丙川において自ら決定したものでもないし,これを行うべきではなかったともいえないものである。

さらに,K,Tらに対する刑事事件の冒頭陳述書(<証拠略>)には,被控訴人丙川の行動として,次の記載があり(なお,RとあるのはH社のことである。),控訴人は,そこで指摘された丙川の行動を非難する。

<1> 被控訴人丙川は,平成8年4月12日,J社長とともに,Tが経営する法律事務所を訪ね,「I産業がA組をグループに入れてW建設と提携させる意図である旨Kから聞いているが,担保として取得していたA組株のうち715万株についてはK側に引き渡し済みで,うち129万6000株については売却されてすでに第三者に名義変更までされてしまっている。また,残りのA組株405万株のうち合計135万株については,金融機関2社への担保として差し入れていることから,キョート・ファイナンスの実際の手持ち株は270万株にすぎない。それにもかかわらず,キョート・ファイナンスの手元にないA組株の代金について,I産業の裏書がなされたR振り出しの約束手形の交付を受けられるのか。」と相談し,T弁護士が,「キョート・ファイナンス,D企画,Rの3社の協定書を作成し,RがD企画のキョート・ファイナンスとの契約上の地位を承継したことにすれば,A組株を実際にRに引き渡さなくても株全部をRに引き渡したことになる。R振出しの手形にI産業の裏書きをもらうことについてはN会長(Kのこと)から聞いている。RがI産業のダミーだから当然だ。でもこれはN会長も承諾していることだから協定書に入れなくても口頭で頼めば大丈夫だろう。」「N会長からこれまでのことはよく聞いているし,RやI産業との交渉については,今後,一切私が間に入って行う。キョート・ファイナンスがRやI産業と直接やり取りすると混乱するから,私が窓口を引き受ける。」などと言われた。

この点について,控訴人は,T弁護士が,Kの意向で動いていることはTの上記発言で明らかであり,T弁護士のなす説明は不自然なものである上に,いずれも,Kの利益となる内容のものであることを考えると,これを安易に信じたこと自体が理解しがたいところであると主張する。しかし,T弁護士が,Kの利益のために動いているにせよ,弁護士という立場である以上,被控訴人丙川としては,同人が詐欺,横領といった犯罪行為に加担しているとまで疑うべきであったとまではいえない。

<2> 被控訴人丙川は,同年6月12日ころ,T弁護士に対し,手形が決済されるまでの間,一時的にH社に有価証券取引税を立替払いしてもらいたいと申し入れたが,A組株式の名義上の取得者になるにすぎないH社において立替払いの申入れに応ずるはずのないことを承知していたT弁護士は,H社に問合わせることなく,被控訴人丙川を説得してH社に対する立替払いの申入れを諦めさせた。

この点について,控訴人は,正当な取引であれば,キョート・ファイナスの要求は当然のことであるはずであるにもかかわらず,被控訴人丙川は,拒絶を簡単に受け入れたとして,被控訴人丙川を非難するが,これまでのT弁護士の交渉における地位,同人を信用できる者として考えてきた被控訴人丙川の立場を考えるとやむを得ないとも解される。

ク ところで,披控訴人丁原のA組株式の譲渡についての関与に関しては,譲渡契約がされた後に保管先の銀行の貸金庫から出庫するなどして関与したことは認められる(<証拠略>)が,同被控訴人がキョート・ファイナンス内での同株式を譲渡することの意思決定に直接関与したことを窺わせる証拠はなく,D企画との協定締結等については取締役として関与したことがあるとしても,同人がSらの意向に反してこれを差し止めたりするなどの立場になかったことは明らかである。

ケ Eの点については,証拠(<証拠略>)によれば,控訴人とキョート・ファイナンス間の取引約定には控訴人主張のとおりの規定が存することが認められる。しかし,証拠(<証拠略>)によれば,被控訴人丙川は,前記のとおりJらからA組株式の譲渡に関して控訴人と協議をしている旨を聞き,これを信じていたことが認められる。

また,Fの点について判断するに,Cの陳述書(<証拠略>)中には,キョート・ファイナンスが,平成8年5月,控訴人に対して,D企画に対する融資を押しつけようとした旨の部分が存するが,前記のとおり,その当時は既にH社との契約が締結され,D企画はA組株式の取引からは外れていたことに照らすと,上記Cの陳述は直ちに採用しがたく,他に同事実を認めるに足りる的確な証拠はない。

コ 以上検討したとおり,キョート・ファイナンスにおけるA組株式の譲渡に関する取引はS及びJの主導で行われたものであり,被控訴人丙川が,債権管理の責任者であることを考慮に入れても,それを取りやめさせることは困難であり,しかも結果的にはT弁護士らの詐欺に遇ったとして種々の不注意な点が存したことが指摘できるが,当時としてはそれを疑わなかったとしても,その点を強く非難できないところであり,また,被控訴人丁原は,A組株式の譲渡に関わる意思決定には何ら直接関与していないのであるから,被控訴人らには,キョート・ファイナンスがA組株式の譲渡により損害を蒙ることにつき悪意又は重大な過失があったとまではいえない。また,控訴人にA組株式の譲渡についての報告をしなかったとの点についても,被控訴人丙川は,前記のとおり,控訴人とも協議されたとの情報を信じていたのであるから,同被控訴人が報告をしなかったことが同被控訴人の悪意又は重過失によるものとは言い難い。

以上のとおりであるから,D,E,Fの各点についてみても,被控訴人らが,悪意又は重過失により,控訴人との雇用契約を継続することを困難にさせる状況を作出したものということはできない。

(3)  控訴人主張のGの点について判断する。

Gの点は,当審になって主張されたものであるが,新たな証拠調べを必要としたものではなく,この主張によって審理に遅延が生じたとまではいえないから,時機に後れた主張として却下すべき場合であるとはいえない。

証拠(<証拠略>,証人A)によれば,控訴人とキョート・ファイナンスとの間の覚書(<証拠略>)があり,同書面では,キョート・ファイナンスが経営上困難になるなどして,移籍出向者の給与及び賞与の一定水準の確保が困難な(ママ)った場合には,キョート・ファイナンスと控訴人は協議の上,キョート・ファイナンスが控訴人に対して支援を要請することができ,控訴人はその要請に対して必要な措置を講ずることとされているところ,確かにこの覚書に基づいて,キョート・ファイナンスが控訴人に対して直ちに金員請求ができると解することは困難ではあるが,控訴人にもキョート・ファイナンスの要請に応じる義務があるようにも解する余地があることからすれば,提訴がおよそ根拠を欠いているとまではいえないことに,この訴訟提起についての被控訴人らの具体的関与は何ら明らかではないこと,さらに,短期間で訴えが取り下げられていることなどを考慮すると,このキョート・ファイナンスの行為をもって被控訴人らの背信行為であるとの主張はにわかに採用することができない。

(4)  控訴人主張のHの点について判断する。

ア 証拠(<証拠・人証略>)並びに弁論の全趣旨を総合すれば,次の事実が認められ,この認定を覆すに足りる証拠はない。

<1> C社は,ゴルフ場を経営する会社で,ゴルフ場施設を有していた。平成元年4月に,キョート・ファイナンスが,控訴人の関連会社であった滋賀ファイナンスから,C社株式2000株を1株5万円の額面どおりで譲り受けた。これは,C社の全株2400株の86パーセントであり,キョート・ファイナンスはC社の支配株主であった。控訴人は,キョート・ファイナンスに対する貸付金の担保として,キョート・ファイナンスが所有しているC社の株式2000株の現物を保有していた。

<2> 控訴人は,従前C社に融資を続けてきたが,平成9年1月に,Cは,C社のY社長に対し,今後C社の業務説明の必要はないとして,一切融資をしない姿勢を示した。C社はキョート・ファイナンスから1億5000万円の融資を受けるなどして営業を続けた。

<3> 平成10年3月,C社は株式会社S(以下,「S社」という。)から1億7000万円の融資を受けたが,その後,C社は,2600株増資し,これをS社に1株当たり5万円(額面)で引き受けさせた(以下,「本件引き受け」という。)。

<4> キョート・ファイナンスは,C社の支配株主であって,派遣役員等を通じて,本件引き受けの実現につき,影響を与えた。すなわち,キョート・ファイナンスは,平成10年3月に,O不動産鑑定士によるC社所有不動産の総額が84億円程度であるとの鑑定(<証拠略>)を得,また,平成8年4月には,H税務会計事務所による平成7年3月31日時点でのC社株式1株あたりの価額が2万1200円であるとの評価(<証拠略>)も得ていた。C社の負債は平成10年3月31日時点で保証金返還債務を含めて81億円以上にのぼっていた(<証拠略>)。

以上の事実からすると,C社がS社に本件引き受けをさせた目的は資金調達であり,S社に額面での引受権を与えることがC社にとって不利益であると断定することはできない。

本件引き受け価格の決定についてO不動産鑑定士の鑑定に依拠したことも,確かに,控訴人の依頼した鑑定人による評価(<証拠略>)と比すると低額ではあるが,別件訴訟における鑑定の結果(<証拠略>)に照らせば,未だ不当に低額であると認めるには足りない。

さらに,平成10年3月11日,控訴人が,キョート・ファイナンスに対し,担保権実行としての競売申立や担保外預金についての相殺権行使を通知した(<証拠略>)直後に新株発行がされたとしても,その目的が控訴人の有する担保権の価値を減ずることにあったものと推認するには足りない。

イ 被控訴人丙川は,平成10年3月20日のキョート・ファイナンスの取締役会で,C社の増資と役員選任につきJ副社長に一任する決議に賛成した。被控訴人丁原は当時は既に取締役ではないのでその決議に参加していない。すなわち,被控訴人丙川は,キョート・ファイナンスの本件引き受けの実現の意向に反対しなかったといえるが,本件引き受けが結果的に控訴人の担保権に不利益を与えるとしても,被控訴人丙川が,悪意又は重大な過失により控訴人との雇用関係継続を困難にするような状況を作出したとまではいえない。また,控訴人は,本件新株発行を控訴人に通知をしなかったのは,キョート・ファイナンスと控訴人との間の取引約定に違反する旨主張するが,控訴人としてもすでに新株発行は事前に知っていたのであるから,通知がなかったとしても取引約定に違反するものともいえない。

以上のとおりであり,H社の点についてみても,被控訴人らが,悪意又は重大な過失により控訴人との雇用関係を継続することを困難にする状況を作出したものとはいえない。

(5)  控訴人主張のI,J,K,L,Mの各点について判断する。

ア I,J,Kは,当審になって主張されたものであり,必ずしも原審で主張できなかったとはいえないものではあるが,そのために特に証拠調べを要することもなく,特に訴訟を遅延させるものとまでは認めることはできないから,時機に後れた主張として却下すべき場合であるとはいえない。

そして,そのうちJ,K,Lは,いずれも移籍出向期間満了後の事情であるから,これをもって移籍出向期間満了時において被控訴人らと控訴人との信頼関係を破壊するに足りる背信・背任行為であるとはいえず,移籍出向期間満了時に被控訴人らと控訴人との間の信頼関係が破壊されていたことを示す間接事実としての意味をもつに止まるものと解するのが相当である。

イ 先ず,Iについて検討するに,証拠(<証拠略>)及び弁論の全趣旨によれば,平成5年7月に控訴人は,キョート・ファイナンス,被控訴人丙川を含むその代表取締役ら,S,C社らを被告として,C社の新株発行による担保物毀滅について損害賠償請求訴訟を提起したが,その訴訟でキョート・ファイナンスは,そもそも控訴人によるC社株式への担保権設定は虚偽表示である旨を主張したことが認められる。しかし,訴訟を提起された者が,その訴訟手続において,全く根拠を欠くような場合はともかく,主張すること自体を非難されるものではないというべきところ,本件においては,控訴人が主張する虚偽表示の主張の具体的な内容も,それが全く根拠を欠くものであるかについても明らかではないうえ,被控訴人丙川がその主張にいかに関わっているのかについてもこれを認めるに足りる証拠はない。

したがって,上記訴訟において,控訴人の主張するような虚偽表示の抗弁が提出されたとしても,そのことをもって,被控訴人丙川が,悪意又は重大な過失により雇用関係を継続することを困難とするような状況を作出したものということはできない。

なお,被控訴人丁原は,同訴訟で被告とされていない。

ウ Jについて,(証拠略)は,J作成の「京都信用金庫と株式会社キョート・ファイナンスとの交渉経緯」と題する書面であるが,被控訴人らがこれを虚偽文書であると知って提出したと認めるに足りる証拠はない。

Kについては,証拠(<証拠略>)によれば,株式会社Cが控訴人の役員に対して控訴人主張の訴えを提起したことが認められるところ,それがキョート・ファイナンスが提起させたとしても,被控訴人らの関与の内容については,控訴人において主張・立証しない。

また,Lについてみると,証拠(<証拠略>)並びに弁論の全趣旨によれば,キョート・ファイナンスは,控訴人に対し,平成12年1月末に,根抵当権実行禁止の仮処分を申し立てたが,その理由は,同根抵当権は他からの差し押さえを免れるためにした通謀虚偽表示であって無効であるというものであったこと,その理由はその決定で否定されたこと,同決定の理由中において,その申立ての疎明として提出されたキョート・ファイナンスのJ作成の文書は信用できないとされたことが認められる。しかし,キョート・ファイナンスは,平成3年4月ころ,債権者の一部からの強硬な取立てや担保差し入れ要求に対抗して債権者平等返済の原則を維持するため,控訴人と通じて,キョート・ファイナンス所有の不動産や有価証券の大半を,後日担保抹消することを予定して,控訴人に担保提供したとの主張も,控訴人とキョート・ファイナンスの関係からすればあり得ないことではなく,被控訴人らが,仮処分が虚偽の理由に基づいて申し立てられていることを知っていたとはいえないし,そもそも被控訴人丁原については,当時既に取締役の地位になかったのであるところ,同被控訴人が同仮処分申立てに関与したことを認めるに足りる証拠はない。

エ そして,Mの点について検討する。

ところで,出向は,通常出向先企業が出向させた企業の子会社であるなど,その影響下にあり,したがって,両者の関係が円満な場合に,その人的支援や影響力の保持などを目的として行われるものと解され,その限りにおいては,出向を命じられた者がいずれの企業への利益に沿った行動をとるべきかなどという問題は生じない。これと異なり,両企業の間で,出向先企業が出向させた企業の影響下から離れ,さらに両者間に対立関係が生じた場合には,出向の基礎が失われたというべきであり,出向させた企業としては,その時点で在籍出向であればこれを解消し,移籍出向の場合であっても,出向をうち切ることを前提として,出向者に対して,今後の就労先の意向を打診すべきであろう。特に,本件確認証が存することを考慮すれば,被控訴人らに対して,そのような措置がとられるべきであったと解されるが,控訴人はそのような措置を全く講じなかった。

控訴人は,出向させた企業と出向先企業とが対立する場合も,出向が継続している以上は,その従業員は,出向先企業への忠誠ではなく,出向させた企業への忠誠を尽くすことが求められると主張するが,それは両企業が対立関係にあることを無視したもので,特に移籍出向の従業員との関係では,出向先企業との雇用契約上の責務に反するとすれば懲戒の対象となり得ることになり相当でない。また,被控訴人らは,キョート・ファイナンスの取締役であったのであるから,同会社に対する忠実義務及び善管義務を負っているのであり,控訴人に対してそのような義務を負っているのではなく,その間における同社の経営に対して商法上の責任を控訴人に対しても負うべき場合が存するとしても,それはあくまで,債権者の一人である控訴人への間接責任に止まるのである。これらの点を併せ考慮すると控訴人の前記主張は採用できない。

なお,被控訴人らは,控訴人とキョート・ファイナンスが未だ円満な関係にあった時点で,当時は控訴人の子会社ともいえるキョート・ファイナンスに出向し,被控訴人丙川は代表取締役に,被控訴人丁原は取締役に昇進したが,証拠(<証拠略>)並びに弁論によれば,その経営は,実質的には控訴人へも大きな影響力を有していたSが支配し,社長であるJはその了解を得つつ経営を行っていたが,平成8年になって控訴人とSとの関係が悪化し,控訴人としては,そのころ起こった控訴人の内紛や控訴人への攻撃が,Sの意思に基づくものと考え,Sの側の者と見られる者への対応が厳しくなっていったことが認められる。被控訴人らは,当時,経理関係の担当者として,バブル期のKらへの融資問題や,その後の不良債権問題,また,その処理の一環としてのA組株式の処理の問題等に直接,間接に関与していたことから,控訴人から厳しい対応を迫られるに至ったのであるが,被控訴人丁原についてみると,経理担当責任者ではあったとしても,前記認定のとおり,キョート・ファイナンスにおいてKへらの融資についても,A組株式の譲渡等についての意思決定に実質的に関与したことはなく,しかも,D企画との関係が強まった平成8年10月には,取締役を退任していることからすると,一時経理担当の取締役の地位にあったことが控訴人への復帰の障害になるものとは到底解しがたいところである。一方,被控訴人丙川についてみると,キョート・ファィナンスの代表取締役として,控訴人と対立が深まるなか,キヨート・ファイナンスの中枢として活動してきたものであることからすると,必ずしも被控訴人丁原と同様に考えられない点が存しないわけではない。しかし,前記認定のとおり,同被控訴人の具体的関与が明らかではない部分も多く,しかも関与した点についても,極めて強力なSの実質支配の下で,それに沿った限られた情報の中で,これを覆す立場にないままにとられた結果であるとも解されるのであり,これをもって,控訴人への復帰の障害になるものとは解しがたい。

(6)  まとめ

以上認定したことからすると,信義則上,控訴人が被控訴人らの復帰を拒否しうるような被控訴人らと控訴人間の信頼関係を破壊するような事情は存しない。したがって,被控訴人らには,本件確認証により移籍出向期間満了時に控訴人への(ママ)復帰したものというべきである。

6  以上によれば,被控訴人らの請求はいずれも理由があり,被控訴人らの本訴請求を認容した原判決は相当であり,本件控訴は理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 吉原耕平 裁判官 小見山進 裁判官 瀧file_2.jpg聡之)

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