大阪高等裁判所 平成12年(ネ)3026号 判決 2001年2月02日
大阪市<以下省略>
平成一二年(ネ)第三〇二六号事件被控訴人
第三〇二七号事件控訴人
X
(以下「第一審原告」という。)
右訴訟代理人弁護士
山﨑敏彦
東京都千代田区<以下省略>
平成一二年(ネ)第三〇二六号事件控訴人
第三〇二七号事件被控訴人
株式会社大和証券グループ本社
(以下「第一審被告」という。)
右代表者代表取締役
A
右訴訟代理人弁護士
林義久
主文
一 本件各控訴をいずれも棄却する。
二 控訴費用は各控訴人の負担とする。
事実及び理由
第一当事者の求めた裁判
一 第一審原告
1 原判決を次のとおり変更する。
第一審被告は、第一審原告に対し、一三六八万一四三七円及びこれに対する平成九年八月二六日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は第一、二審とも第一審被告の負担とする。
3 仮執行宣言
二 第一審被告
1 原判決中第一審被告敗訴部分を取り消す。
2 第一審原告の請求を棄却する。
3 訴訟費用は第一、二審とも第一審原告の負担とする。
第二事案の概要
本件事案の概要は、以下のとおり改めるほか、原判決の「事実及び理由」の「第二 事案の概要」(原判決三頁九行目から一六頁四行目まで)のとおりであるから、これを引用する。
原判決一六頁四行目の次に行を改めて以下のとおり加える。
「(第一審被告の当審における予備的主張)
仮に、第一審被告に損害賠償責任が認められるとしても、第一審原告には、DDI株取引については五割、京成電鉄及び三井不動産の各取引については各三割を超える過失相殺が認められるべきである。」
第三争点に対する判断
一 当裁判所は、第一審原告の請求は、第一審被告に対し不法行為に基づく損害賠償請求として五二五万二二二二円及びこれに対する不法行為の後である平成九年八月二六日から支払ずみまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからその限度でこれを認容すべきであるが、その余は理由がないからこれを棄却すべきものと判断する。その理由は、以下のとおり改めるほか、原判決の「事実及び理由」の「第三 争点に対する判断」(原判決一六頁六行目から三六頁末行まで)のとおりであるから、これを引用する。
1 原判決三〇頁七行目から末行までを次のとおり改める。
「 Xは、第一審被告においては、もともと、神栄石野証券での取引によって生じた含み損を解消するための手堅い取引を志向し、Bのアドバイスを受けて、分散投資を心掛け、リスクの低減を図っていたのであって、そのようなXが、何故に、DDI株の取引に関してのみ一点に集中して急に大きな取引(五三〇〇万円)を手掛けるに至ったのか、それは、株価が値上がりしていたことがあったとしても、BがDDI株の値上がりの確実性や関西セルラーの上場の確実性について相当断定的な説明をして勧誘したためとしか考えるほかないものというべきである。」
2 原判決三〇頁末行の「考えられない」の次に「(乙第九号証ないし第一五号証のようないわゆる株取引の業界紙の記事に関西セルラーの株式公開に関するうわさが掲載されているとしても、投資家がこれを鵜呑みにすることは考えにくいというべきであるから、右認定を動かすものではない。)」
3 原判決三五頁一行目の「いうまでもない」の次に「(第一審原告は、自己責任の原則とは、証券会社に向けられた規範であり、「投資家が自己責任を負えるような環境を整える義務がある」という原則であると主張するが〔甲第一四号証〕、当裁判所の採用するところではない。)」を加える。
4 原判決三六頁六行目の「認識し得たはずである一方」の次に「(第一審原告の代理人であるCとしては、同じ失敗を二度繰り返さないためにも、より慎重に対応すべきであったことはいうまでもない。)」
5 原判決三六頁七行目の次に行を改めて以下のとおり加える。
「 第一審原告は、DDI株取引に関する第一審被告担当者らの不当勧誘行為は、会社ぐるみの違法販売行為の一環としてなされた疑いが強いのであるから、第一審原告との関係で過失相殺により損害賠償額を大きく減じることは不当であると主張する。しかし、前記説示のとおり、第一審被告が証券取引法五〇条一項五号の大量推奨販売を行っていたとか、違法勧誘行為を会社くるみで行っていたとまで認めるに足りる証拠はないから、失当である。
また、第一審原告は、本件の違法性はワラント勧誘の際に証券マンがその危険性を隠すために、故意にワラント説明書を渡さなかったようなものであるから、過失相殺を行ってはならないと主張する。しかし、本件をワラントの取引に例えることの当否は措くとしても、第一審原告の過失相殺を論じてはならないような事情は見い出し難い。第一審原告の主張は採用できない。」
二 結論
以上によれば、第一審原告の請求は、第一審被告に対し、五二五万二二二二円及びこれに対する平成九年八月二六日から支払ずみまで年五分の割合による金員の支払を求める限度で理由があるからその限度でこれを認容すべきであるが、その余は理由がないからこれを棄却すべきである。よって、原判決は相当であり、本件各控訴は理由がないからいずれもこれを棄却することとし、控訴費用の負担につき民訴法六七条一項、六一条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 根本眞 裁判官 鎌田義勝 裁判官 松田亨)