大阪高等裁判所 平成12年(ネ)4339号 判決 2001年4月11日
控訴人 A野有限会社
代表者代表取締役 A野太郎
被控訴人 B山松夫
訴訟代理人弁護士 荒川英幸
主文
一 本件控訴を棄却する。
二 控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第一本件控訴の趣旨
一 原判決を取り消す。
二 被控訴人は、控訴人に対し、金二一九万五三三五円及びこれに対する平成一二年二月二八日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
三 訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。
第二事案の概要
一 当審における控訴人の主張を二に付加するほか、原判決「第二 事案の概要」記載のとおりであるから、これを引用する。
二 当審における控訴人の主張
本件事故の発生については、被控訴人に一〇〇パーセントの過失がある。したがって、修理費用については、五五万五三三五円全額を損害と見るべきである。
仮に、原判決のとおり、信義則上相当と認められる限度において損害の賠償を請求し得るにとどまるとしても、原判決は、上記限度を判断するに当たり、重視すべきでない事情(控訴人が車両保険に加入していなかったこと、労働条件に問題があったことなど)を重視している点で不当である。少なくとも上記修理額の三〇パーセント相当額は、損害と認められるべきである。
第三当裁判所の判断
一 当裁判所も、控訴人の本訴請求は理由がなく、棄却すべきであると判断する。その理由は、原判決「第三 争点に対する判断」記載のとおりであるから、これを引用する。
控訴人は、当審において、第二の二のとおり主張する。しかし、本件のように、使用者が、その事業の執行につきなされた被用者の加害行為により、直接損害を被った場合には、使用者は、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において、被用者に対し、上記損害の賠償を請求することができるにとどまること、本件において、信義則上相当と認められる限度を判断するに当たっては、控訴人の車両保険加入の有無、控訴人における労働条件、被控訴人の勤務態度等の諸事情を総合的に考慮すべきことは、原判決の説示するとおりである。そして、これらの諸事情に関し原判決が認定した事実に照らせば、控訴人が本件事故により被った損害のうち被控訴人に対して賠償を請求し得る範囲は、信義則上、修理費用五五万五三三五円のうちの五パーセント相当額にとどまるというべきである。控訴人の主張は理由がなく、採用し難い。
二 以上によれば、原判決は相当であり、本件控訴は理由がない。よって、これを棄却することとし、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 松尾政行 裁判官 熊谷絢子 坂倉充信)
<以下省略>