大阪高等裁判所 平成12年(行コ)15号 判決 2001年10月19日
平成12年(行コ)第15号事件控訴人、同年(行コ)第16号事件被控訴人
芦屋市教育委員会(Y)(以下「第1審被告」という。)
同代表者教育委員長
稲畑汀子
同訴訟代理人弁護士
俵正市
同
寺内則雄
同
井川一裕
平成12年(行コ)第16号事件控訴人
X1(以下「第1審原告X1」という。)
平成12年(行コ)第15号事件被控訴人、同年(行コ)第16号事件控訴人
X2(以下「第1審原告X2」という。)
平成12年(行コ)第15号事件被控訴人
X3 (ほか6名)(X4~X9)
上記9名訴訟代理人弁護士
村田喬
同
在間秀和
主文
1 平成12年(行コ)第15号事件控訴及び同年(行コ)第16号事件控訴をいずれも棄却する。
2 平成12年(行コ)第15号事件の控訴費用は、同事件控訴人(第1審被告)の負担とし、同年(行コ)第16号事件の控訴費用は、同事件控訴人(第1審原告X1・X2)らの負担とする。
事実及び理由
第4 当裁判所の判断
1 当裁判所の判断は、次のとおり付加・訂正するほかは、原判決「事実及び理由」の「第四 争点に対する判断」欄の(98頁7行目から203頁5行目まで)記載のとおりであるから、これを引用する。
(1) 103頁9行目の次に改行して、次のとおり付加する。
「 第1審被告は、本件転任処分の不利益性について上記第2、2、(2)、アのとおり主張する。しかし、転任先の地位・職務に即応する給与・手当が支給されるのは当然であり、本件転任処分によりその支給総額に減少があることをもって、受忍限度の範囲内のものであると即断することはできない(上記第2、2、(2)、ア、(イ)について)。そして、教員から指導員への異動が希なものであることを、上記の不利益性の判断をなす際の一事情として斟酌しても不相当であるということはできない(同ア、(ウ)について)。また、異動先の職務が教育職員に深く関係するという抽象的な説明だけでは、どのように深く関係するのかは不明であって、このような程度の説明をもって上記の不利益性の存否の判断に資するものということはできない(同ア、(エ)について)。さらに、係長以上の職に就かせることは、職の変更により可能であるとしても、本件転任処分により就任した指導員とこれからさらに変更がなされることにより就くことになる指導主事とは明らかに異なるといえる(同ア、(オ)について)。以上のとおりであって、当該処分によりその身分・俸給に具体的な不利益を生ぜしめ、勤務場所・勤務内容において何らかの不利益を伴うものか否かという観点から検討すると、本件転任処分は、第1審原告らの身分ないし俸給に不利益を生ぜしめるものであるということができ、第1審被告の上記主張は理由がない。」
(2) 104頁8行目の次に改行して、次のとおり付加する。
「 第1審被告は、この点について、上記第2、2、(2)、イのとおり主張する。しかし、前項(原判決99頁1行目から103頁9行目まで。本判決で付加した内容を含む。)で認定・説示したとおりであって、本件第1審原告3名における不利益を回復するためには、本件転任処分の効力を排除する判決を求めることが必要となるのであって、上記主張は理由がない(第1審被告は、上記手当等相当分の支払を求めるためには、異別の訴訟によるべきであると主張するが、第1審被告が主張するような上記異別の訴訟だけで目的を達することができるものではないといえる。)。」
(3) 118頁9行目の「X2」を「X3」と訂正し、121頁8行目の次に改行して、次のとおり付加する。
「 第1審被告は、本件転任処分(X3)について、上記第2、2、(2)、(ア)ないし(ウ)、(エ)のa、bの(b)、c、(オ)のとおり主張する。しかし、転任処分につき一般論的には、同ウの(ア)、aのとおり各要素を勘案して総合的に判断すべきであり、また、同ウの(オ)のとおり各市の取組の姿勢・方針に左右されることがあること、さらに、本件転任処分(X3)の後、市立芦屋高校を中心とする異動につき、同ウの(エ)、cのとおりその過員解消の要請、異動先が第1審被告所管下に限定されること、支障なき学校運営の維持等を考慮すべきであったいうことはできるが、前記で認定・説示する(原判決109頁末行から121頁8行目まで)とおり、本件転任処分(X3)について、過員解消の必要性は認め難く、学期途中という異例の時期に、第1審原告X3の意に反する学校教育以外の職場への転任処分であるにもかかわらず、事前の通知もなかったのであって、第1審被告が第1審原告X3の社会科の教員としての教育経験を活かして、芦屋市準備委員会での連絡調整係としての宿泊衛生・輸送警備部門での業務の充実を図る目的を有していたとはいえず、第1審原告X3が現実に従事していた業務が第1審原告X3の教員としての経験を活かすものであったとも到底いい難い。したがって、結論として、第1審原告X3を指導部学校教育課(六三総体芦屋市準備委員会)に転任させる必要性・合理性は乏しかったといわざるを得ない。また、同ウの(ア)、d、同ウの(イ)、同ウの(エ)、a、bの(b)、cの主張については、第1審原告X3は、昭和61年10月から平成11年4月まで、12年6か月間、学校教育の現場から離れていたのであって、この間、阪神淡路大震災が発生し、その直後から一定期間は、その復興・復旧を最優先とする人事異動をなすべき時期もあり、これに加えて第1審被告が原審・当審で述べる第1審原告X3及びその他の者の人事異動に関する上記阪神淡路大震災以外の種々の要素が存在したことを勘案しても、第1審原告X3が上記12年6か月間、学校教育の現場から離れていたことは異常であるといわざるを得ないのであって、これらの点を勘案すると、上記主張は言い逃れ的な主張であるといわざるを得ず、理由がない。そして、何よりも、後記(原判決159頁5行目から180頁10行目まで)のとおり、分会における組合活動に対し、前田校長及び松本教育長が中心となってこれを嫌悪したことにより本件転任処分(X3)がなされたものであることを重視せざるを得ず(この点は、第1審原告X3以外の第1審原告らの本件転任処分についても同様である。)、これは、社会通念上、著しく妥当性を欠き、任命権者に与えられた裁量権を逸脱する違法な処分であるというべきであり、同ウの(ア)、b、同ウの(ウ)の主張も理由がない。同ウの(ア)、cの主張は、本件転任処分(X3)において、上記のとおり第1審原告X3を上記の転任をさせる必要性・合理性が乏しいとする認定・判断を左右するものではない。」
(4) 127頁4行目の次に改行して、次のとおり付加する。
「 第1審被告は、本件転任処分(X4)について、上記第2、2、(2)、ウ、の(ア)ないし(ウ)、同ウの(エ)、a、bの(a)、c、同ウの(カ)のaないしfのとおり主張する。しかし、転任処分につき、一般論的には、同ウの(ア)、aのとおり各要素を勘案して総合的に判断すべきであり、同ウの(カ)、aないしeのとおり過員解消の要請、異動先が第1審被告所管下に限定されること、支障なき学校運営の維持等を考慮すべきであり、さらに、同ウの(カ)、fのとおり本人の資質向上を期待し、教育行政目的の達成に寄与することを企画して転任処分が行われることがあるということはできるが、本項(原判決123頁8行目から127頁4行目まで)で認定・説示したとおり、本件転任処分(X4)において、第1審被告が第1審原告X4の教育経験を活かして購入図書の選定・読書指導等の業務の充実を図る目的を有していたとはいえず、また、第1審原告X4が現実に従事していた上記業務が第1審原告X4の教員としての経験を活かすものとも到底いい難く(第1審被告が主張するように、異動先での業務分担が、その所属長において割り当てられるものであったとしても、本来、高校の英語科の教員として採用され、それまで長期間、英語科の教員として勤務を続けていた第1審原告X4を市立図書館に転任させるのであれば、転任先の所属長に対し、第1審被告が主張するような当該転任処分の意味・教員としての経験を活かすという目的に即して第1審原告X4に対する期待等を連絡し、第1審原告X4がどのような業務に従事することが望ましいものと理解しているのか、あるいはどのような業務に就くことを期待しているのかという点について第1審被告側から転任先の所属長に対して連絡等がなされても不可思議ではないところ、このような内容の連絡等がなされた事実は窺えないのであって、第1審被告の同ウの(カ)、dの主張は、本件訴訟になってからの第1審被告の立論であるといわざるを得ず、採用できない。なお、この点については、第1審原告X4以外の第1審原告らについても同様のことがいえる。)、結論として、第1審原告X4を市立図書館に転任させる必要性があったとは到底いえず、第1審原告X4を転任処分の対象に選択したことにつき合理的理由は見いだすことはできない。同ウの(ア)、b、同ウの(ウ)の主張については、後記(原判決159頁5行目から180頁10行目まで)のとおりであって、理由がない。また、同ウの(ア)、d、同ウの(イ)、同ウの(エ)、a、bの(a)、cの主張については、本件転任処分(X4)の後、英語科について、前記(原判決11頁2行目から7行目まで)及び後記(原判決171頁9行目から172頁3行目まで)のとおりの異動があり、また、阪神淡路大震災が生起したのが平成7年1月17であり、その時点までで本件転任処分(X4)から既に約8年が経過していることを勘案すると、上記主張は言い逃れ的な主張であるといわざるを得ず、理由がない。そして、同ウの(ア)、c、同ウの(エ)、aの主張は、本件転任処分(X4)において、上記のとおり第1審原告X4を市立図書館に転任させる必要性があったとはいえず、第1審原告X4転任処分の対象に選択したことにつき合理的理由は見いだすことはできないという認定・判断を左右するものではない。」
(5) 131頁1行目の「原告X4」を「発掘調査担当者であるA」と訂正し、132頁5行目の次に改行して、次のとおり付加する。
「 第1審被告は、本件転任処分(X5)について、上記第2、2、(2)、ウ、(ア)ないし(ウ)、(エ)のa、bの(b)及びc、(カ)のaないしfのとおり主張する。しかし、転任処分につき、一般論的には、同ウの(ア)、aのとおり各要素を勘案して総合的に判断すべきであり、同ウの(カ)、aないしeのとおり過員解消の要請、異動先が第1審被告所管下に限定されること、支障なき学校運営の維持等を考慮すべきであり、さらに、同ウの(カ)、fのとおり本人の資質向上を期待し、教育行政目的の達成に寄与することを企画して転任処分が行われることがあるということはできるが、本項(原判決127頁6行目から132頁5行目まで。本判決で訂正した内容を含む。)で認定・説示したとおり、本件転任処分(X5)において、第1審被告が第1審原告X5の社会科教員としての教育経験を活かして(第1審原告X5が博物館学芸員資格を有していたとしても)緊急開発に伴う発掘調査に関する国庫補助の予算関係書類の作成、環境整備、文化財資料等の寄贈があった場合の書類作成、補助的業務としての発掘に関する大半の業務等の充実を図る目的を有していたとは到底いえない。また、第1審原告X5が現実に従事していた上記各業務が第1審原告X5の教員としての経験を活かすものともいい難く、結論として、第1審原告X5を社会教育文化課に転任させる必要性があったとは到底いえず、第1審原告X5を転任処分の対象に選択したことにつき合理的理由は見いだすことはできない。同ウの(ア)、b及び同ウの(ウ)の主張については、後記(原判決159頁5行目から180頁10行目まで)のとおりであって、理由がない。また、同ウの(ア)、d、同ウの(イ)、同ウの(エ)、bの(b)、cの主張については、本件転任処分(X5)の後、社会科について前記(原判決11頁8行目から10行目まで)及び後記(原判決171頁5行目から8行目まで)のとおりの異動があり、また、阪神淡路大震災が生起したのが平成7年1月17日であり、その時点までで本件転任処分(X5)から既に約8年が経過していることを勘案すると、上記主張は言い逃れ的な主張であるといわざるを得ず、理由がない。同ウの(ア)、c、同ウの(エ)、aの主張は、本件転任処分(X5)において、上記のとおり第1審原告X5を社会教育文化課に転任させる必要性があったとはいえず、第1審原告X5を転任処分の対象に選択したことにつき合理的理由は見いだすことはできないという認定・判断を左右するものではない。
(6) 135頁7行目の「原告の担当が、」を「みどり学級乳幼児部の担当内容は」と訂正し、136頁5行目の次に改行して、次のとおり付加する。
「 第1審被告は、本件転任処分(X6)について、上記第2、2、(2)、ウ、(ア)ないし(ウ)、(エ)のa、bの(b)及びc、(カ)のaないしfのとおり主張する。しかし、転任処分につき、一般論的には、同ウの(ア)、aのとおり各要素を勘案して総合的に判断すべきであり、同ウの(カ)、aないしeのとおり過員解消の要請、異動先が第1審被告所管下に限定されること、支障なき学校運営の維持等を考慮すべきであり、さらに、同ウの(カ)、fのとおり本人の資質向上を期待し、教育行政目的の達成に寄与することを企画して転任処分が行われることがあるということはできるが、本項(原判決132頁7行目から136頁5行目まで。本判決で訂正した内容を含む。)で認定・説示したとおり、本件転任処分(X6)において、第1審被告が第1審原告X6の社会科教員としての教育経験を活かしてみどり学級乳幼児部における重度心身障害児の担当業務等の充実を図る目的を有していたとは到底いえない。また、第1審原告X6が現実に従事していた上記業務が第1審原告X6の教員としての経験を活かすものともいい難く、結論として、第1審原告X6を上記みどり学級乳幼児部に転任させる必要性があったとは到底いえず、第1審原告X6を本件転任処分の対象に選択したことにつき合理的理由は見いだすことはできない。同ウの(ア)、b、同ウの(ウ)の主張については、後記(原判決159頁5行目から180頁10行目まで)のとおりであって、理由がない。また、同ウの(ア)、d、同ウの(イ)、同ウの(エ)、bの(b)、cの主張については、本件転任処分(X6)の後、社会科について前記(原判決11頁末行から12頁1行目まで)及び後記(原判決171頁5行目から8行目まで)のとおりの異動があり、また、阪神淡路大震災が生起したのが平成7年1月17日であり、その時点までで本件転任処分(X6)から既に約8年が経過していることを勘案すると、上記主張は言い逃れ的な主張であるといわざるを得ず、理由がない。そして、同ウの(ア)、c、同ウの(エ)、aの主張は、本件転任処分(X6)において、上記のとおり第1審原告X6を上記みどり学級に転任させる必要性があったとはいえず、第1審原告X6を本件転任処分(X6)の対象に選択したことにつき合理的理由は見いだすことはできないという認定・判断を左右するものではない。」
(7) 143頁1行目の次に改行して、次のとおり付加する。
「 第1審被告は、本件転任処分(X7)について、上記第2、2、(2)、ウ、(ア)ないし(ウ)、(エ)のa、bの(d)、c、同ウの(カ)、aないしhのとおり主張する。しかし、転任処分につき、一般論的には、同ウの(ア)、aのとおり各要素を勘案して総合的に判断すべきであり、同ウの(カ)、aないしeのとおり過員解消の要請、異動先が第1審被告所管下に限定されること、支障なき学校運営の維持等を考慮すべきであって、さらに、同ウの(カ)、fのとおり本人の資質向上を期待し、教育行政目的の達成に寄与することを企画しで転任処分が行われることがあるということはできるが、本項(原判決136頁7行目から143頁1行目まで)で認定・説示したとおり、本件転任処分(X7)において、第1審被告が、第1審原告X7の保健体育科教員としての教育経験を前提として、本件転任処分をなし、本件出張命令を命ずることにより体育保健行政事務を学ばせ、行政運営の参考にするという研修目的を有していたとは到底いえない。また、第1審原告X7が本件転任処分及び本件出張命令に従い現実に従事していた業務が、(第1審原告X7の教員としての経験を前提として)第1審被告主張の上記事務を身につけることに資するものであったとはいい難く、結論として、第1審原告X7につき、本件転任処分をなす必要性・合理性は乏しかったといえる。同ウの(ア)、b及び同ウの(ウ)の主張については、後記(原判決159頁5行目から180頁10行目まで)のとおりであって、理由がない。また、同ウの(ア)、c、同ウの(イ)、同ウの(エ)、bの(d)、cの主張については、本件転任処分(X7)の後、保健体育科について前記(原判決12頁2行目から3行目まで)のとおりの異動があり、また、阪神淡路大震災が生起したのが平成7年1月17日であり、その時点までで本件転任処分(X7)から既に約8年が経過していることを勘案すると、上記主張は言い逃れ的な主張であるといわざるを得ず、理由がない。そして、同ウの(ア)、c、同ウの(エ)、aの主張は、本件転任処分(X7)において、第1審原告X7を体育館青少年センターに転任させる必要性・合理性が乏しいとする上記認定・判断を左右するものではない。」
(8) 148頁10行目の「原告」を「第1審原告ら」と、同10行目、同末行及び149頁2行目の各「本件転任処分」の次に「(X9)」を付加する。
(9) 150頁6行目の次に改行して、次のとおり付加する。
「 第1審被告は、本件転任処分(X8及びX9)について、上記第2、2、(2)、ウ、(ア)ないし(ウ)、(エ)のa、bの(c)及び(e)、c、(カ)のaないしf、iのとおり主張する。しかし、転任処分につき、一般論的には、同ウの(ア)、aのとおり各要素を勘案して総合的に判断すべきであり、同ウの(カ)、aないしeのとおり過員解消の要請、異動先が第1審被告所管下に限定されること、支障なき学校運営の維持等を考慮すべきであり、さらに、同ウの(カ)、fのとおり本人の資質向上を期待し、教育行政目的の達成に寄与することを企画して転任処分が行われることがあるということはできるが、本項(原判決143頁3行目から150頁6行目まで)で認定・説示したとおり、本件転任処分(X8及びX9)において、第1審被告が第1審原告X8及び同X9の理科(第1審原告X8)・美術科(第1審原告X9)の各教員としての教育経験を活かして、上宮川文化センターでの各業務の充実を図る目的を有していたとは到底いえない。また、第1審原告X8及び同X9が現実に従事していた上記業務が第1審原告X8及びX9各教員としての経験を活かすものともいい難く、結論として、第1審原告X8及び同X9を指導部学校教育課(上宮川文化センター)に転任させる必要性・合理性は乏しかったといえる。同ウの(ア)、b及び同ウの(ウ)の主張については、後記(原判決159頁5行目から180頁10行目まで)のとおりであって、理由がない。また、同ウの(ア)、d、同ウの(イ)、同ウの(エ)、a、bの(b)及び(e)、cの主張については、本件転任処分(X8及びX9)の後、理科及び美術科について前記(12頁4行目から9行目まで)及び後記(172頁4行目から8行目まで)のとおりの異動があり、また、阪神淡路大震災が生起したのが平成7年1月17日であり、その時点までで本件転任処分(X8及びX9)から既に約く8年が経過していることを勘案すると、上記主張は言い逃れ的な主張であるといわざるを得ず、理由がない。そして、同ウの(ア)、c、同ウ(エ)、a、同ウの(カ)、e、iの主張は、本件転任処分(X8及びX9)が上記のとおり第1審原告X8及び同X9を上宮川文化センターに転任させる必要性・合理性が乏しいとする認定・判断を左右するものではない。」
(10) 152頁5行目の「同年」の次に「3月」を付加し、159頁4行目の次に改行して、次のとおり付加する。
「 第1審被告は、本件転任処分(X2)について、上記第2、2、(2)、ウ、(ア)ないし(ウ)、(エ)のa、bの(c)、c、(キ)のとおり主張する。しかし、転任処分につき、一般論的には、同ウの(ア)、aのとおり各要素を勘案して総合的に判断し、また、同ウの(エ)、a、cの各要請、事情等を考慮すべきであり、さらに、同ウの(キ)のとおり本人の資質向上を期待し、教育行政目的の達成に寄与することを企画して転任処分が行われることがあるということはできるが、本項(原判決150頁8行目から159頁4行目まで)で認定・説示したとおり、本件転任処分(X2)において、第1審被告が第1審原告X2の理科の教員としての教育経験を活かして教育研究所における前記(五)ないし(七)(原判決153頁8行目から156頁2行目まで)の業務の充実を図る目的を有していたとは到底いえない。また、第1審原告X2が現実に従事していた上記業務が第1審原告X2の教員としての経験を活かすものともいい難く、さらに第1審被告が主張するとおり第1審被告に相当な範囲で人事権について裁量が認められるものの、四方行元教諭ではなく、第1審原告X2を選択した理由について何ら納得できる説明がなされていないのであって、結論として、第1審原告X2を教育研究所に転任させる必要性及び人員選択の合理性は乏しいといわざるを得ない。同ウの(ア)、b、同ウの(ウ)の主張については、後記(原判決159頁5行目から180頁10行目まで)のとおりであって、理由がない。また、同ウの(ア)、d、同ウの(イ)、同ウの(エ)、bの(c)、cの主張については、本件転任処分(X2)の後、平成7年1月17日に阪神淡路大震災が生起したが、その時点までで本件転任処分(X2)から既に約7年が経過していることを勘案すると、上記主張は言い逃れ的な主張であるといわざるを得ず、理由がない。そして、同ウの(ア)、cの主張は、本件転任処分(X2)において、上記のとおり第1審原告X2を教育研究所に転任させる必要性及び人員選択の合理性が乏しいという認定・判断を左右するものではない。」
(11) 185頁2行目の次に改行して、次のとおり付加する。
「 第1審原告らは、前記(一)、(二)の認定について、上記第2、2、(1)、イ、(ア)のとおり主張する。しかし、勤務の割り振りがなされ、これが周知されていたことは、前記1冒頭(原判決181頁5行目から7行目まで)掲記の証拠(特に、乙6号証の1ないし17)により、これを認めることができるのであって、「給与・勤務条件の手引き」に記載がなされているか否かによって左右されるものではなく、この認定を覆すに足りる的確な証拠はない。したがって、上記主張は理由がない。」
(12) 191頁10行目の次に改行して、次のとおり付加する。
「 第1審原告らは、この点について、前記第2、2、(1)、イ、(イ)のとおり主張する。しかし、支部執行委員会に出席する件について当時、第1審被告と組合との間で交渉中であったとする点については、本項(原判決190頁9行目から191頁10行目まで)で認定・説示したとおりであって、この事実を認めるに足りる的確な証拠はないから、上記主張は理由がない。」
(13) 196頁9行目の「言い難く、」の次に「仮に、教育委員会への奨学金支給申請において、一定の範囲で市立芦屋高校の奨学金に関する職務といいうる要素が存するとしても、」を付加する。
(14) 199頁8行目の次に改行して、次のとおり付加する。
「第1審原告らは、この点について、上記第2、2、(1)、イ、(ウ)及び(エ)のとおり主張する。しかし、第1審原告X1、同X2における前記認定の無断職場離脱行為が公務員の職務専念義務及び市教委服務規則に違反し、違法であることは明らかであって、その無断職場離脱行為につき、仮に、事前届出がなされず、また、出張についても事後申請がなされていたとしても、それは悪しき実体が事実上存在したにすぎないのであって、上記のとおり違法であることに何ら影響を及ぼすものではない。」
(15) 200頁10行目の次に改行して、次のとおり付加する。
「 第1審原告らは、この点について、上記第2、2、(1)、ア、(エ)のとおり主張する。しかし、被処分者の弁明を聞いていなければ、本件懲戒処分が違法となるとまでいうことはできず、第1審原告らの上記主張は理由がない。」
(16) 202頁2行目の次に改行して、次のとおり付加する。
「 第1審原告らは、この点について、上記第2、2、(1)、ア、(オ)のとおり主張する。しかし、懲戒処分を無効あるいは不相当とすべき第1審原告らの上記主張における見解は、第1審原告ら独自のものであって、当裁判所は上記見解を採用しない。そして、第1審原告X1、同X2にそれぞれ処分事由が存在したことは、これまでに認定・説示した(原判決181頁4行目から198頁1行目まで)とおりであるから、第1審原告らの上記主張は理由がない。」
(17) 203頁2行目の次に改行して、次のとおり付加する。
「 第1審原告らは、本件懲戒処分について、上記第2、2、(1)、アのとおり主張する。しかし、前記認定事実(原判決181頁5行目から190頁7行目まで)に照らすと、昭和60年、61年当時、芦屋市の教員の勤務態様の特殊性を考慮し、勤務時間の割り振りが弾力的に運用されていたこと、昭和61年9月1日まで勤務時間の割り振り自体が定められていなかったこと及び同日以降12月8日までは弾力的に運用されていたことといった事実はいずれも肯認することはできず、上記事実が存在することを前提とする主張は失当である(同(1)、ア、(ア)について。)。また、第1審原告X1、同X2以外の者の非違行為についてその具体的な内容・程度は不明であるから、それらの者と第1審原告X1、同X2の行為を比較して、第1審原告X1、同X2につきなされた本件懲戒処分は不平等であるとする主張は採用できない(同(1)、ア、(イ)について。)。さらに、第1審原告らは、懲戒処分は、それが首肯できる合理的なものでなければならないとして、本件懲戒処分については、(a)違法とされていないか、または少なくとも違法性の認識の程度は著しく低い、(b)勤務時間の運用は弾力的になされていた、(c)第1審被告と組合との間で勤務時間につき交渉中であった、(d)他の違反者は懲戒処分を受けていなかった、(e)支部執行委員会に出席していない日も出席したものとした事実誤認が多数含まれている、(f)第1審原告X1、同X2からの事情聴取は一切なされていない、(g)何らかの懲戒処分が避けれないとしても口頭訓告、文書訓告、戒告等で十分であったと考えられる、(h)本件懲戒処分は、第1審原告X1、同X2の活発な組合活動を嫌悪してなされている、以上の点から非合理かつ社会的相当性を欠いていると主張する(同(1)、ア、(ウ)、a)。しかし、上記の各点については、いずれもこれまで(原判決181頁3行目から203頁2行目まで。本判決で付加した内容を含む。)に言及したとおりであって、本件懲戒処分につき上記各点において問題があるとはいえないから、上記主張も理由がない(同(1)、ア、(ウ)、aについて)。
また、第1審原告らは、上記第2、2、(1)、ア、(ウ)、bのとおり主張する。第1審原告X1は、前田校長等から組合の団体交渉以外で職場を離れる場合には年休届を出すよう通告されていたが、(1)昭和60年4月16日、同月23日及び同月30日には、前田校長に対し事前に告げた上で支部執行委員会に出席し、前田校長は、同月23日及び同月30日には年休届の提出を求めたが、第1審原告X1は、これに応じなかった、(2)第1審原告X1は、同年5月14日には、前日から同日午前中にかけての年休届を提出していたが、同日午後の年休届を提出していないにもかかわらず登校しなかった。本件懲戒処分においては、以上の事実を重視せざるを得ず、第1審原告X1は、これらが勤務時間等に関する条例、市教委服務規則に反する非違行為になると認識しながら、これを反復して繰り返したといわざるを得ないのであって、これに原判決添付別紙3、(1)のとおりの無断欠勤の回数等を勘案すると、第1審原告らが指摘する処分の基準・扱いの上で、第1審原告X1について欠勤4日に相当するにすぎないという程度のものとは到底いえない。第1審原告X2については、前記(五)(原判決188頁2行目から189頁1行目まで)のとおりの事実が存在し、昭和61年5月15日以降6回にわたり文書により注意を受けたにもかかわらず、これを無視して無断職場離脱を繰り返したのであって、第1審原告X2が勤務時間等に関する条例、市教委服務規則に反する非違行為を確信的に反復したといわざるを得ず、これに原判決添付別紙3、(2)のとおりの無断欠勤の回数等を勘案すると、第1審原告らが指摘する処分の基準・扱いの上で、第1審原告X2について欠勤3日と3分の2に相当するにすぎないという程度のものとは到底いえない。以上のとおり、第1審原告X1、同X2のいずれについても、処分における比例原則に違反しているとはいえないのであって、第1審原告らの上記主張は理由がない。」
2 結論
以上のとおりであって、第1審被告及び第1審原告らの主張はいずれも理由がないから、本件各控訴をいずれも棄却することとし、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 見満正治 裁判官 辻本利雄 角隆博)