大阪高等裁判所 平成12年(行コ)43号 判決 2001年4月20日
控訴人
甲
同所
控訴人
乙
上記両名訴訟代理人弁護士
富田康正
被控訴人
加古川税務署長
沢村暁
同指定代理人
近藤幸康
木村訓受
上谷美佐夫
吉良賢司
島村茂
今井景子
主文
1 本件控訴をいずれも棄却する。
2 控訴費用は控訴人らの負担とする。
事実及び理由
第1当事者の求める裁判
1 控訴人ら
(1) 原判決中控訴人ら敗訴部分を取り消す。
(2) 控訴人甲の平成4年7月29日相続に係る相続税について、被控訴人が平成6年6月28日付けでなした更正処分のうち、納付すべき税額251万8200円を超える部分を、控訴人乙の平成4年7月29日相続に係る相続税について、被控訴人が平成6年6月28日付けでなした更正処分のうち、納付すべき税額1758万5500円を超える部分をいずれも取り消す。
(3) 訴訟費用は、第1、2審とも被控訴人の負担とする。
2 被控訴人
主文同旨
第2事案の概要
1 本件事案の概要は、下記及び次の2項及び3項のとおり付け加えるほか、原判決「事実及び理由」中「第二 事案の概要」記載のとおりであるから、これを引用する。
原判決55頁3行目の次に行を改めて、次のとおり加える。
「4 その他の相続財産
本件各土地以外の相続財産の種類・内容及び価額は、原判決別表Vの準号①の「上記以外の土地」から⑦までのとおりである。したがって、相続財産の合計額は、5億0396万4811円である。
5 債務及び葬式費用
債務及び葬式費用の合計額及び控訴人らの負担額は、原判決別表Vの準号⑨記載のとおりであって、合計額は453万6008円、控訴人甲の負担額は32万4001円、控訴人乙のそれは226万8004円である。なお、控訴人らには、相続税法18条ないし21条により加算又は控除すべき金額はない。
6 相続税額
そこで、課税される遺産総額は、相続財産の価額から債務及び葬式費用を控除し、これから法定相続人8名の基礎控除額1億2400万円を控除した残額3億7542万5000円となる。同金額を法定相続人の法定相続分に応じて案分し、これに平成6年法律第23号による改正前の相続税法16条所定の税率を乗ずると、その納付すべき相続税額は、控訴人甲が680万3400円、控訴人乙が4762万4200円となる。
7 したがって、本件更正処分は、上記金額の範囲内でなされたものであるから、適法である。」
2 控訴人らの当審における補充主張
(1) 公道から5号土地への自動車進入路としては、別紙図面1表示No.2の土地(以下「No.2土地」という。)しかなかったところ、同土地は、A株式会社の私有地である。そして、同会社は、原判決後同土地を封鎖し、そのため自動車通行が不可能となった。
また、4号土地についてもNo.2土地が進入路として認められない以上、建物を建てることができず、宅地見込地として評価されるべきものではない。
(2) 仮に、別紙図面1表示No.1の土地(以下「No.1土地」という。)及びNo.2土地が、いずれも建築基準法42条2項の道路(以下「2項道路」という。)であるとしても、その南ないし南西側に延びた道路状土地は2項道路ではなく、また、公道でもないから、これら道路状土地に接する土地は建築基準法上の接道要件を満たさない。したがって、5号土地に建物を建築することはできない。
(3) 5号土地周辺の多くの田畑は生産緑地の指定を受けており、宅地化が見込めないことは明らかである。
(4) No.1土地の南端の西側に存する一連の土地(別紙図面1の黄色の道路部分で囲まれた部分の土地)は新興住宅地であり、建築基準法上の道路に接しておらず、同土地上の建物は違法建築である。
(5) 別紙図面2の黄色の道路部分の南端から南西に延びる道路(丙宅の東側を南に延びる道路)は農道であり、自動車が通行できる道路ではなく、建築基準法上の道路の要件を満たさない。
3 被控訴人の反論
(1) No.1土地及びNo.2土地は、いずれも2項道路であり、また、A株式会社がバリケードを設置した土地は、No.1土地であり、No.2土地ではない。
(2) No.1土地及びNo.2土地は、2項道路であるが、これら土地に接する土地は建築基準法43条の接道要件を満たさないから、同土地に建物を建築することはできないが、その反面、同法42条1項所定の道路が開設されることにより宅地としての利用が可能になるから、4号土地及び5号土地を宅地見込地と評価することは不当でない。
(3) 5号土地周辺の農地等において生産緑地の指定を受けた土地はなく、これら土地も宅地への転用は容易である。
(4) No.1土地の南端の西側、別紙図面1の黄色の道路部分は、建築基準法42条1項5号の道路であり、したがって、これら道路に囲まれている土地は建築基準法上の接道の要件を満たしており、同土地上の建物も建築確認を受けている。
(5) 別紙図面2の黄色の道路部分の南端から南西に延びる道路(丙宅の東側を南に延びる道路)は、周辺住民が自動車の通行に供しており、控訴人らの主張は事実に反する。
第3当裁判所の判断
1 当裁判所の判断は、次の2項のとおり付け加え、以下のとおり付加・補正するほか、原判決「事実及び理由」中「第三 当裁判所の判断」記載のとおりであるから、これを引用する。
(1) 原判決79頁6行目「一項」を「本文」に改める。
(2) 同80頁9行目「とおりであるが」の次に「(この点は、控訴人らは明らかに争わないから、これを自白したものとみなす。)」を加える。
(3) 同81頁4行目「(弁論の全趣旨)」を「ことは被控訴人が認めるところである」に改める。
(4) 同82頁11行目「(」の次に「平成6年法律第23号による改正前の」を加える。
(5) 同83頁9行目「金額に」の次に「平成6年法律第23号による改正前の」を加える。
2 控訴人らの当審における補充主張について
(1) 控訴人らの当審における補充主張(1)及び(2)について
乙6のfile_2.jpg、7の②によれば、No.1土地及びNo.2土地は、いずれも2項道路であり、また、No.2土地は、加古川市道良野20号線に認定されていることが認められる。
もっとも、乙6のfile_3.jpg及び弁論の全趣旨によれば、No.1土地及びNo.2土地の幅員は4メートル未満であると認められるけれども、建築基準法42条1項所定の道路が開設されることによりNo.1土地及びNo.2土地に接する土地も宅地としての利用が可能になるから、4号土地及び5号土地を宅地見込地地域内の宅地見込地と評価することが違法・不当とまではいえない。
なお、甲14ないし16、乙6のfile_4.jpg、file_5.jpgによれば、A株式会社が道路上に物品を置いて自動車の通行を困難にしたのはNo1土地であり、No.2土地ではないと認められる。
(2) 同(3)について
乙7の③によれば、5号土地周辺で、市街化区域内である野口町良野地区にある農地等で、生産緑地の指定を受けた土地はないことが認められる。
(3) 同(4)について
乙7の①、9及び弁論の全趣旨によれば、No.1土地の南端の西側、別紙図面1の黄色の道路部分は、平成3年ないし同7年にかけて、建築基準法42条1項5号の規定により位置指定を受けた道路であり、したがって、同道路に接する土地は同法43条の接道要件を満たしており、同土地上の建物も建築確認を受けていること、なお、開発業者は別紙図面1の「8-37」から南方に向かう道路として道路位置指定申請がしたが、同業者が倒産したため、工事が中止されていることが認められる。
(4) 同(5)について
乙10の③及び弁論の全趣旨によれば、別紙図面2の黄色の道路部分の南端から南西に延びる道路(丙宅の東側を南に延びる道路)は、周辺住民が自動車の通行に供していることが認められる。
(5) 以上によれば、4号土地及び5号土地周辺は、宅地として利用されており、4号土地及び5号土地を宅地見込地と評価することは違法でないというべきであるから、控訴人らの当審における補充主張は、いずれも採用できない。
第4よって、控訴人らの本訴請求は、原判決主文第1項及び第2項の限度で正当として認容し、その余は理由がないから棄却すべきであり、これと結論を同じくする原判決は相当であって、控訴人らの本件控訴は、いずれも理由がないから、これを棄却することとし、控訴費用の負担について行政事件訴訟法7条、民訴法67条、61条、65条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 大喜多啓光 裁判官 安達嗣雄 裁判官 橋本良成)
file_6.jpg別紙