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大阪高等裁判所 平成12年(行コ)81号 判決 2001年8月30日

控訴人

同訴訟代理人弁護士

林宰俊

被控訴人

東淀川税務署長

山本幸悦

同訴訟代理人弁護士

兵頭厚子

同指定代理人

鈴木和典

鴫谷卓郎

岡本章

大串仁司

主文

1  本件控訴を棄却する。

2  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由

第1本件控訴の趣旨

1  原判決を取り消す。

2  越谷税務署長が平成7年2月28日付けで控訴人の所得税についてした昭和62年分及び同63年分並びに平成2年分及び同3年分の重加算税の賦課決定処分(以下「本件各処分」という。)をいずれも取り消す。

3  訴訟費用は、第1、2審とも被控訴人の負担とする。

第2事案の概要

次のとおり訂正等するほかは、原判決の「事実及び理由」中の「第二 事案の概要」に記載のとおりであるから、これを引用する。

1  原判決3頁末行の「有価証券の譲渡益のうち」を「有価証券の譲渡益は原則として非課税であるが」と同4頁4行目の「昭和63年政令第356号」を「昭和62年政令第356号」とそれぞれ改める。

2  同5頁7行目の「租税特別措置法」の前に「昭和63年法律第109号による改正後の」を加える。

3  同5頁9~10行目の「当該株式等の譲渡利益金額に対して一定税率で課税され、」を「当該株式等の譲渡代金の一定額を利益があったものとみなし、その利益に一定税率で課税され(結果的には当該株式等の譲渡代金に一定の比率で課税され)、」と改める。

4  同9頁2行目末尾に「そしてA証券の担当者から株式売買に係る所得の課税要件について説明を受けていた。」を、同10頁6行目の「税理士に」の前に「税理士からの株式取引があるかどうかの質問に対し、株式取引はない旨答えて、」をそれぞれ加える。

5  同11頁6行目末尾に「控訴人は、A証券の担当者から株式売買に係る所得の課税要件について説明を受けたこともないし、税理士からの株式取引があるかどうかとの質問を受けたこともない。」を、同12頁4行目末尾に「当時、控訴人の株式取引はほとんど信用取引であり、信用取引による株式保有は直ちに処分するものがほとんどなので、明細書に記載する必要はないと考えていた。」をそれぞれ加える。

6  同12頁6行目の次に改行のうえ、次のとおり加える。

「(五) 控訴人は、税務申告に当たり、税理士から具体的に株式取引の有無について尋ねられたことはないし、平成2年分及び同3年分の申告に際し、税理士が控訴人の申告内容を精査できないように、資料等を確定申告期限ぎりぎりに持込んだこともない。また、控訴人が申告後の本件調査に際し、全く非協力的な態度に終始したということはない。」

7  同12頁7行目の「(五)」を「(六)」と改める。

第3当裁判所の判断

当裁判所も、控訴人の請求は失当であり、棄却すべきものと判断する。その理由は、次のとおり訂正等するほかは、原判決の「事実及び理由」中の「第三 当裁判所の判断」に記載のとおりであるから、これを引用する。

1  原判決の補正

(1)  原判決15頁8行目の「甲三、」から同行の末尾までを「甲3、4、6、7、12~15、乙4の1~4、5~8、9の1~3、16、17、19、20、」と改める。

(2)  同16頁1行目の「昭和四六年」を「昭和48年」と改める。

(3)  同16頁8行目の「一八」を削り、同行目の次に改行のうえ次のとおり加える。

「控訴人の株式投資は、成長株に投資し、株価の上昇によって利益を上げることであり、成長株の選定やその売却時期等については自己流の判断で行っており、他から継続的に助言を得ていたことはなかった。また、株式取引につき他人名義や架空名義を使用したことはなかった。」

(4)  同16頁10行目の末尾に「上記開設は、控訴人の会社の顧問をしていた丙の「将来はこういう職業も伸びるのではないか、登録するに当たり、ヒヤリングがあり、誰でも受かるというものではないが、君なら受かるからやってみたらどうか」との勧めによるものであった。しかし、上記研究所は開設以来、実質的な活動は行っておらず、平成7年6月1日廃業した。」を加える。

(5)  同16頁末行の「昭和六二、三年頃」を「昭和61年暮れから昭和63年にかけて」と改め、同18頁10行目の「実際の保有株式」の次に「(現物取引により取得した株式又は信用取引から品受けにより現実に取得した株式)」を加える。

(6)  同20頁7~8行目の「租税特別措置法」の前に「昭和63年法律第109号による改正後の」を加える。

(7)  同24頁8行目から同25頁2行目の末尾までを次のとおり改める。

「控訴人は、A証券の担当者から株式売買に係る所得の課税要件について説明を受けたこともなく、株式売買に係る所得について所得税が課されることを認識していなかった旨主張をし、乙1によれば、控訴人と税金のことを話題にしたことはなく、所得税の確定申告をするよう指導したことはないとの趣旨のA証券の担当者の陳述書が国税不服審判所に提出されていることが窺えるし、その主張に副う控訴人本人の供述が存在する。しかし、上記A証券の担当者の陳述書は、乙19や証人乙の証言に照らしたやすく採用できない。また、前記認定のとおり、控訴人の株式投資は、成長株に投資し、株価の上昇によって利益を上げることであり、成長株の選定やその売却時期等については自己流の判断で行っており、他から継続的に助言を得ていたことはなかったのであり、このことや、前記認定の控訴人の株式取引は回数及び量とも膨大であることに照らすと、このような株式取引を行うに当たっては、控訴人は、新聞や雑誌等の様々な経済記事から情報を得ていたものと考えられるところ、前記認定のとおり昭和61年暮れから昭和63年にかけて株式取引に対する課税をめぐって多くの報道がなされていたのであり、控訴人において、これを知らずに頻繁な株式取引を行っていたとは考えられない。また、控訴人は、投資顧問業であるBを開設しており、実質的な活動をしなかったとしても、投資顧問業の登録にはヒヤリングを受けることが必要であり、控訴人は投資顧問業に必要な知識を有していたと認められること等に照らせば、控訴人の株式売買に係る所得について所得税が課されることを認識していなかったとの供述部分は到底採用することができない。」

(8)  同25頁4~5行目の「前記認定のとおりであるが、」から7行目末尾までを次のとおり改める。

「前記認定のとおりであり、また、上記認定事実によれば、昭和62年分及び同63年分についても、株式取引につき課税対象となることを十分認識しながら、その課税を免れるため、株式取引について当時の顧問税理士に対し、何ら説明しなかったものと認めることができる。」

2  その他、控訴理由やその他の原審及び当審における準備書面記載の主張に照らして、全証拠を改めて精査しても、原判決の認定・判断(ただし、当審において補正後のもの)を覆すものはない。

第4結論

以上の次第で、上記と同旨の原判決は相当であるから、本件控訴を棄却し、控訴費用は控訴人の負担とすることとして、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 浅野正樹 裁判官 東畑良雄 裁判官 浅見宣義)

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