大阪高等裁判所 平成13年(行コ)33号 判決 2003年5月08日
控訴人
甲
訴訟代理人弁護士
近藤忠孝
岩佐英夫
荒川英幸
被控訴人
右京税務署長 柴山文雄
指定代理人
小林邦夫
山口宏明
衛藤弘正
島田昌英
主文
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1当事者の求めた裁判
1 控訴人
(1) 原判決を取り消す。
(2) 被控訴人が平成6年6月22日付で控訴人に対してした平成4年1月1日から同年12月31日までの課税期間(以下「平成4年課税期間」という。)及び平成5年1月1日から同年12月31日までの課税期間(以下「平成5年課税期間」といい、これらを合わせて「本件各課税期間」ともいう。)に係る控訴人の消費税の各更正処分(以下「本件更正処分」という)のうち、納付すべき税額が平成4年課税期間については45万6300円、平成5年課税期間については119万3300円をそれぞれ超える部分、及びこれらに対する過少申告加算税の各賦課決定処分(以下「本件賦課決定処分」といい、本件更正処分と合わせて「本件各処分」という。)を取り消す。
(3) 訴訟費用は第1、2審とも被控訴人の負担とする。
2 被控訴人
主文同旨
第2当事者の主張
1 当事者双方の主張は、次に付加するほか、原判決の「事実」中の「第二 当事者の主張」(原判決2頁10行目から10頁22行目まで)記載のとおりであるから、これを引用する(ただし、原判決5頁22行目の「である」の後に「(なお、当審において別紙の該当部分のとおり課税仕入金額を補正)」を加える。)。
2 当審における控訴人の補足主張(控訴理由)
(1) 本件調査に当たり、控訴人が帳簿書類等をきちんと用意し、提示したことは証拠上明らかであって、被控訴人の部下職員の臨場は調査の実質を伴わないものである。控訴人は、調査対象となる帳簿をダンボール箱に入れて調査の現場に置き、再三にわたり「調べてほしい」と要請したが、被控訴人の部下職員は、帳簿等の調査が可能であったにもかかわらず、終始、立会い排除の話をしただけで、帳簿等の確認を頑なに拒否したものであって、帳簿類に関する話も、帳簿類を見せてほしいという発言もなく、仕入税額控除についての充分な説明もなかった。被控訴人の部下職員が、「守秘義務」に関係しないにもかかわらず、第三者が立ち会いしていることにこだわり、調査確認しないで立ち帰ってしまったものであるから、控訴人の「調査拒否」には当たらず、むしろ、調査を放棄したものであって、裁量の範囲を逸脱しているものというべきである。
したがって、本件は、帳簿類の提示があったというべき事案である。本件のような場合にまで、「提示がないから保存がない」として、実際にいつでも見ることができる状況で、提示のためにその場に置いてあった帳簿の保存を否定するのは不当であり、仕入税額控除を否認するのは、正義・公平に反するものである。ちなみに、控訴人の気持ちは、わざわざ準備した帳簿類を確認してほしい、自分が納得できる状況で調査してほしいという素朴なものであって、自主的に提示し、見てほしいと要請していたものである。しかるに、原判決は、「原告は、明確に、強固に、本件税務調査に対して、帳簿類の提出を拒絶したものと認められる。」旨認定しているが、不当な認定といわざるを得ない。
ア 平成5年9月28日の調査経過
原判決は、「原告は、上記の箱の中身を取り出して乙に見えるように提示したり、箱の中身の書類を提示して具体的な説明をすることはしなかった。」と認定する。しかし、控訴人は、帳簿類一切を入れた箱を乙の左側に置いていたから、乙はそれが見える状況であった。にもかかわらず、乙は最初から最後まで立会い排除の話をしただけで、帳簿類に関する話をしたり、それを見せて欲しいという発言すらしていない。
イ 平成5年10月20日から平成6年2月15日までの調査経過
原判決は、「乙は、原告に架電し、第三者の立会いのない状態で調査に応ずるよう協力を求めたが、原告は、あくまで立会いがある状態での調査にしか応じられないとの態度で終始した。」旨認定している。しかし、乙は、控訴人方に架電し、控訴人が不在であったのに、次に架電するまで2か月空けており、速やかに帳簿を確認しようとする姿勢は些かも認められない。これに対し、控訴人が不在であったことから、控訴人の妻は乙に対し、控訴人の携帯電話番号を教えるなどして誠実に対応している。また、控訴人は、「立会いの下で堂々と(調査を)やっていただきたい。」と伝えており、調査拒否と非難されるものではない。
ウ 平成6年5月10日の調査経過
原判決は、「原告は、再度、帳簿類らしき書類の入った箱を机上に置いていた」「原告は、箱に入った書類を取り出して丙に提示したりまではせず、また、上記の書類の具体的内容の説明もしなかった」と認定している。しかし、控訴人は、帳簿類を座敷机のすぐ脇の、控訴人の右横、丙の左横に置き、提示していた(検甲2)。それにもかかわらず、この日の調査も、立会い問題に終始し、丙からは帳簿類に関する話が何も出ないまま20分前後という短時間で終わった。
エ 平成6年6月7日の調査経過
原判決が、「帳簿類らしき書類」としているのは不当である。控訴人は、それが帳簿類であることを詳細に立証し(検甲1ないし96、原審第13回控訴人調書23頁以下)、かつ、丙も「せっかく「帳簿類」揃えてもろうてきてはるらしいんやけどね」と発言している(甲8の11頁)。控訴人が帳簿類でないものを「見てほしい」などというはずがない。
控訴人は、この日、3度にわたり、帳簿類を見るように要請した。また、控訴人が終始調査に協力する態度であり、丙が少し手を伸ばせばすぐに手が届く位置に控訴人が提示した帳簿類が置かれていたことは、丙も認めているところである。
なお、丙の「帳簿の提示がないと仕入税額控除の計算ができなくなることを何度も控訴人に説明した」旨の証言は偽証であり、原判決の「控訴人が仕入税額控除を認めないことについて十分に説明を受け、そのことを十分認識していた」旨の認定は誤りである。
オ 上記のように、控訴人は、帳簿類の入った箱を被控訴人の職員の眼前に置いて「見てほしい」と重ねて要請したのであるから、職員はその気になれば、内容を確認できる状態であり、このことと帳簿類を取り出して見せることとの間には、調査への協力という観点において差はない。にもかかわらず、職員は一貫して頑なな態度を取り、かつ、帳簿を見ようともしなかったのである。このように、控訴人は帳簿類のすべてを包括的に税務職員の確認にゆだねようとしていたにもかかわらず、原判決が「控訴人が、箱に入った書類を取り出して、提示したりまではせず、また、上記の書類の具体的内容の説明もしなかった」などと判示するのは、不当である。
カ また、原判決は、「(控訴人は)民主商工会に税務の相談をしていたもので、課税庁側の前記のような方針が変更される可能性は極めて少ないことも十分認識していたものと認められる」と判示するが、これは、具体的な証拠に基づかない認定である。そもそも民主商工会は、立会人がいない場では調査を受けないなどという頑なな方針を持っているわけではなく、事案に応じて柔軟な対応をしている。また、控訴人が何をしようと職員が応じないことが自明であったというのであれば、「取り出しての提示」や「書類の具体的内容の説明」も全く無意味になるはずである。したがって、原判決が「控訴人が、箱に入った書類を取り出して、提示したりまではせず、また、上記の書類の具体的内容の説明もしなかった」と判示し、控訴人を非難するのは自己矛盾である。
(2) 税務調査における立会人の必要性と正当性について
ア 税法の領域では租税法律主義の原則が支配し、この原則の下では、税法は、納税者側の「権利立法」としてとらえることが求められる。したがって、できるかぎり被調査者の人権を守る立場に立って、質問検査権の法理を構成すべきである。質問検査権は、納税義務を確定する目的のものであるが、被調査者が調査の受忍義務を負い、応じないときは刑事制裁による間接強制を伴う権力的作用であって、被調査者の営業や私生活、人権に重大な影響を与える。したがって、税務行政の場においては、憲法13条や31条の適正手続の要請が強調されるべきであり、税務調査は、調査担当者の裁量にゆだねられるものではないというべきである。
イ 納税者の多くは、税について素人であり、徴税手続やそれについての納税者の権利についても、全く無知の状態であるのに対し、調査担当者は、税務の専門家であり、知識、経験に雲泥の較差がある。また、税務職員に対する教育や指導は、効率よく税金を取り立てることに重点が置かれ、納税者の立場や権利について、教育、指導されていないのが実態である。このような状態の下で、納税者が自己の権利を守るために、納税者の権利について知識を持っている者に同席してもらい、税務調査が正しく行われるように監視することは国民の基本的人権である。
立会い排除には、その法的論拠がない。まず、立会人の税理士法違反については、立会いは「税理士の業務」に当たらず、禁止されるはずはないから、立会人排除の理由にならない。また、公務員の守秘義務違反も根拠がなく、理由にならない。税務調査への立会いは国際的にも当然のこととされている。
ウ 第三者の立会いを認めるということは、調査官と被調査対象者たる納税者だけの密室調査を排除することであり、これは調査過程を第三者に情報公開することを意味する。ちなみに、調査過程における調査官の違法行為や汚職腐敗行為は少なくないし、情報公開は民主主義の原点そのものであり、現代の時代の大きな流れでもある。
(3) 仕入税額控除の要件事実について
ア 仕入税額控除の要件事実は、「国内における課税仕入」を行ったという事実であり(消費税法(ただし、平成6年法律第109号による改正前のもの、以下「法」という。)30条1項)、同条7項は、課税仕入の事実の立証方法を「帳簿又は請求書等の保存」に限定しているにすぎない。すなわち、法30条7項は、仕入税額控除を推計する余地を排除し、課税仕入の事実の立証方法を上記のとおり限定したものである。法30条7項によれば、納付税額は、「売上にかかる税額」から「帳簿又は請求書等を保存している仕入税額」を控除した金額であるということになり、この意味で同条項は実体法的規定と解される。
イ 保存(所持・保管)がいわば静的な状態を示す概念であるのに対し、提示(提出して示すこと)は一定の行動を伴う動的な概念であり、両者は全く異なる概念である。提示は保存を前提とした概念であるから、提示があれば、保存が立証されたことになるが、提示されないからといって、保存されていないということにはならない。その意味で、仕入税額控除の要件事実の主張、立証責任は納税者にあるが、「不提示」は「不保存」を推認させる間接事実の一つにすぎず、反証としての意味をもつにすぎないものである。
これに対して、法定帳簿等を保存していないことを独立の要件事実とする見解は、立証方法の問題を要件事実の問題としている点で誤りである。「帳簿又は請求書等の保存しない場合」の主張、立証は、「帳簿又は請求書等の保存」という主要事実の主張、立証(本証)に対する否認であり、反証にすぎないものである。
国内における課税仕入の存在の立証方法は「帳簿又は請求書等の保存」であり、この立証は、調査時点での立証ではなく、それより後の段階である訴訟段階での立証である。もし、上記立証のために提出された証拠が後から作成されたもの、あるいは、偽造変造されたものであるというのであれば、課税庁において、それを立証する責任がある。これに対して、納税者は、調査段階にも存在したことを間接事実の立証の積み上げによって行うことになる。
ウ 原判決のように、保存と提示を混同し、「保存」を「提示」とすり替えることは、仕入税額控除否認を制裁的に運用する政治的判断であり、納税者は、調査官の提示要求が適法でないことを証明しない限り、「不提示」が「不保存」と同視されることになってしまう結果、訴訟段階で「税務調査及び提示要求が適法でなかった」ことの立証を強いられることになり、納税者にとっては、極めて不利、不公平である。
そもそも調査手続が適法か否かと、帳簿又は請求書等を保存しているか否かは、全く別問題である。また、保存と提示を明確に区別して解釈しても、課税庁は不提示の納税者に対して、更正処分をするだけで済むし、所得税の場合と異なり、消費税の場合は、帳簿書類の提示がなかったとしても、課税は可能であり、仕入税額控除について否認するだけのことである。これに対し、納税者は更正処分を不服として、不服申立手続や訴訟を遂行するために大変な手間と費用を要する上、不服申立てや訴訟で争っていても、更正処分の公定力により、まずは更正処分の税額を納税しなければならず、納付しなければ14パーセントもの延滞金を課されることになる。したがって、保存と提示を明確に区別する解釈をしても、不提示の納税者を何ら優遇することにはならない。
原判決は、その理由として、大量迅速処理の必要性を挙げるが、所得税の場合も大量処理が要求されるのは全く同じであり、調査時における立会いの問題は、消費税の導入以前から大きな争点になっていたから、「帳簿又は請求書等の保存、かつ調査時の提示」と明示することが可能であった。にもかかわらず、消費税法にはそのような規定が設けられなかったのであるから、大量迅速処理の必要性を理由に、法的解釈の域を超えた政治的解釈、運用をすべきでないことは明らかである。
(4) 帳簿等の記載要件の具備等について
ア 控訴人が提出した帳簿については、原判決の認定によっても、一部帳簿について法30条8、9項の要件該当性に疑問があるというにすぎず、全部の帳簿等について同条項の要件該当性を否定することができないから、本件においては、これらの帳簿等について保存は明らかである。
イ したがって、少なくとも法30条8、9項の要件該当性に疑問のない帳簿等については、これによる仕入税額控除が認められるべきである。
第3当裁判所の判断
1 当裁判所も、当審における証拠を加えて検討するも、控訴人の被控訴人に対する本件請求は理由がなく、本件請求をいずれも棄却すべきものと判断する。その理由は、次のとおり付加するほか、原判決の「理由」(原判決10頁23行目から21頁14行目まで)記載のとおりであるから、これを引用する。
(1) 原判決11頁18行目の末尾に「戊税理士は、乙に対し、控訴人の都合を確認してから連絡する旨、回答した。」を、同頁20行目の「連絡を受け、」の後に「事務員に対し、ちょっと待って欲しい旨を伝えたが、事務員が変更できないと言ったことから、従前、戊税理士から3年間は申告の必要がないと聞いていたため、対応の変化に驚き、」を、同頁21行目の末尾に続けて「戊税理士は、同月1日、右京税務署に架電し、電話に出た乙の上司のA統轄官に対し、控訴人の件に関与しなくなったことを伝えた。その話をA統轄官から聞いた乙は、翌2日に、戊税理士に架電し、控訴人に調査日時を伝えてあることを確認したが、控訴人に対して直接確認しなかった。他方、控訴人は、戊税理士に依頼するのを取り止めたことで、話が元に戻ったと考え、右京税務署に対し日程についての連絡をしなかった。」を、同頁22行目の「原告宅を訪れ」の後に、「、身分を名乗り、所得税と消費税の調査のために来訪したことを伝え、調査への協力を依頼し」を各加え、同頁23行目の「調査日」を「調査の希望日時」と改める。
(2) 原判決12頁2行目の末尾に続けて「乙は、控訴人に対し、上記5名の名前等を尋ねたが、名前は言えないということであった。他方、控訴人が、乙に対し、調査の理由を尋ねたのに対し、乙は、申告額が正しいか否かを確認するための調査である旨を説明した。」を加え、同頁3行目から4行目にかけての「原告がこれに応じなかったことから」を「控訴人(原告)はこれに応じないで、同席のままでの調査を要求した。乙は、守秘義務に違反するおそれがあったことや、上記5名のうちの何人かが、勝手に発言し、控訴人との話が途切れたりすることがあったため、このままの状況では調査を続けることはできないと判断し、その日の調査を打ち切り」と改め、同頁5行目の「原告は、」の後に「帳簿を見るように要求したり、」を加える。
(3) 原判決12頁8行目の「同年」から同頁11行目末尾までを次のとおり改める。「その後控訴人から連絡がなかったため、同年10月20日、控訴人の自宅に架電したところ、電話に出た控訴人の妻から、控訴人が不在で、携帯電話に電話するように言われ、同日、控訴人の携帯電話に2回電話したが、通じなかった。さらに、乙は、同年12月27日、控訴人の自宅に電話したところ、電話に出た控訴人の娘から控訴人が不在であると聞き、控訴人の携帯電話に電話した。そして、乙は、電話に出た控訴人に対し、関係のない第三者のいない状況での調査に協力するように求めたが、控訴人は応じなかった。その後、乙は、平成6年2月2日と同月15日に、控訴人の携帯電話に電話したところ、同月2日は応答がなかったが、同月15日は控訴人と話をすることができた。そして、乙は、控訴人に対し、再度、調査についての協力を求めたが、応じてもらえなかった。」
(4) 原判決12頁12行目の「平成6年4月、」の後に「統括官からの指示により、」を、同頁14行目の「訪れたが、」の後に「控訴人の妻は在宅していたものの、」を加え、同頁15行目の「連絡をとり、」の後に「担当者が乙から丙に替わったこと、」を、同頁16行目の「反面調査」の前に「取引先に対する」を各加え、同頁18行目の「同年5月」から同頁19行目末尾までを「翌週には、調査希望日を連絡してくれるように依頼した。そして、控訴人は、平成6年4月18日、右京税務署に架電し、電話に出た職員に対し、調査を5月の連休明けに延ばしてほしい旨伝えた。その話を職員から聞いた丙は、同日、控訴人の携帯電話に架電し、平成5年の課税期間の消費税の確定申告に計算の誤りがあること、消費税の関係で、帳簿書類の提示がなければ、保存をしていることが確認できないので、仕入額控除ができなくなることを指摘した上、平成6年4月中の調査日を連絡してくれるように依頼した。その後、控訴人から連絡がなかったため、丙は、控訴人の携帯電話に架電し、控訴人の希望を入れて控訴人の実家で5月10日に調査することを控訴人と約束した。」と改める。
(5) 原判決12頁21行目の「同席させていた。」の後に「丙は、控訴人に対し、同席者の中に税理士の資格を持っている人がいるか否かを尋ねたが、控訴人は答えなかった。」を加え、同頁22行目の「机上」を「控訴人の席の右側」と改め、同行の「丙が」の後に「調査に関係のない第三者が立ち会うと、守秘義務や税理士法に違反するおそれがあるので、控訴人に対し、同席者の退席を」を加え、同頁23行目から24行目にかけての「丙は、己及び辛の同席を理由に、」を「丙は、控訴人に対し、帳簿書類の提示がないと、仕入額控除の計算ができなくなることを説明した上、調査に関係のない第三者の立会いのない状態で帳簿書類を見せるように要求したが、控訴人が、終始、そのままの状態で調査を進めるように要求したため、」と改め、13頁1行目の末尾に続けて「丙は、同日、右京税務署に帰った後、控訴人に電話し、再度、調査への協力を依頼し、このままだと消費税について仕入税額控除ができない旨を伝えた。」を加える。
(6) 原判決13頁3行目の末尾に続けて「なお、丙は、同年5月23日、控訴人の携帯電話に電話し、控訴人に対し、5月26日か27日に訪問したい旨を伝えた。控訴人は、同月24日、右京税務署に架電し、職員に対し6月7日午後1時に控訴人の実家に来てもらいたい旨を伝えた。」を加え、同頁4行目の「原告から連絡を受け、」を削除し、同頁5行目の「原告は、その際も、民主商工会の前記己ほか1名を同席させていた。」を「控訴人以外に1名が同席していて、話の途中から、更に1名が入って来た。そして、丙が控訴人に対し、同席者の名前や控訴人との関係等を尋ねたところ、同席者自身から民商の辛、己であるとの回答があった。」と改め、同頁9行目の「このままでは、」の後に「所得税及び消費税の更正をせざるを得なくなること、」を、同頁13行目の末尾に「他方、丙も控訴人に対して箱の中身について何も尋ねなかった。」を、同頁14行目の「15 丙は、」の後に「調査に関係のない第三者の立会いのために調査を進めることができないので、統括官から指示を受け、事前に控訴人に対し連絡することなく、」を各加え、同行の「原告が不在」を「控訴人(原告)宅が留守」と改め、同頁18行目の末尾に続けて「丙は、その後、控訴人から連絡がなかったため、同月13日、控訴人の自宅に架電したところ、控訴人は不在で、控訴人の妻が電話に出たので、同人から6月10日に郵便受けに投函した連絡せんの内容が控訴人に伝わっていることを確認した。」を加える。
(7) 原判決14頁19行目の「応じた事実」を「対して具体的かつ詳細に説明した事実」と改め、同頁20行目の「理由を」の後に「具体的かつ詳細に」を加え、同頁末行の文章を次のとおり改める。
「3 前記認定事実によれぼ、<1>被控訴人の部下職員は、控訴人と事前の打ち合わせをして、控訴人宅に赴くように努め、調査の日時や場所を控訴人の都合や希望に合わせていること、<2>丙は、調査に立ち会おうとした第三者をいきなり排除しようとしたわけではなく、その第三者の氏名や控訴人との関係等を尋ねた上、控訴人に対し、税理士等の資格を有する者以外の、調査に関係のない第三者の立会いがある状態では調査を進めるわけにはいかないことやその理由を説明し、このままでは、結局、控訴人が帳簿類を提示しなかったことになる旨を何度も説明していること、<3>控訴人が一貫して第三者の立会いの下での調査を求めたのに対し、被控訴人の部下職員は直ちに調査を打ち切ることをしないで、再三にわたって、控訴人に対し、関係のない第三者の立会いのない状態での調査に協力するようねばり強く求めたが、控訴人は第三者の立会いに固執してその協力要請に応じなかったことが認められ、これらの事実関係に照らせば、本件調査の方法、態様は社会通念上相当な範囲にとどまるものと認められるから、本件調査の手続は適法なものであったというべきである。
なお、控訴人は、「税務調査は、調査担当者の裁量にゆだねられるものではない。納税者が自己の権利を守るために、納税者の権利について知識を持っている第三者に同席してもらい、税務調査が正しく行われるように監視することは国民の基本的人権であるし、税理士法違反や守秘義務違反は、立会人排除の理由にならない。税務調査への第三者の立会いは、国際的にも当然のこととされており、調査過程を第三者に情報公開することは民主主義の原点そのものでもある。」旨主張するが、前記説示のとおり、税務調査による質問権(法62条)の範囲、程度、時期、場所等実定法上特段の定めのない実務の細目については、質問検査の必要があり、かつ、これと相手方との私的利益との衡量において社会通念上相当な限度にとどまる限り、権限ある税務職員の合理的な裁量にゆだねられているものと解するのが相当であるところ、第三者の立会いを許すか否かについては、<1>その第三者が、税理士に雇用されている者か否か、守秘義務を有する者か否か、確定申告書の記帳等を具体的に行った者か否かなどの帳簿等の作成との具体的な関わり合いの内容及びその程度、<2>立会いを許した場合にその帳簿等に名前等が記載されている第三者の権利を侵害する可能性があるかないかなどについての個別的、具体的な状況判断を要するものであるから、調査権限のある税務職員の合理的な裁量にゆだねられているものというべきである。控訴人の上記主張は、立法論の問題としてはともかく、現行法の解釈としては、採用するに由ないものである。ちなみに、控訴人が当審において提出した甲214(ビデオテープ・別件における調査状況を撮影したもの)の撮影内容及び甲215(「税務調査における第三者立会と守秘義務」と題する書面)、甲216(三木義一教授の意見書)、甲217ないし甲221(新聞記事抜粋)、甲222(書籍「知事が日本を変える」)、甲223ないし甲230(判例時報抜粋、判決正本等)の記載内容をもってしても、前記認定判断を左右するに足りない。」
(8) 原判決16頁14行目の「税務職員」から同頁15行目の「解すべきである。」までを「法及び消費税法施行令(ただし、平成7年政令第341号による改正前のもの、以下「令」という。)の規定する期間を通じて、定められた場所において、税務職員の質問検査権に基づく適法な調査に応じて提出し、税務職員がその内容等を検査・確認することができるような状態、態様で保存していることを意味するものと解するのが相当である。」と改める。
(9) 原判決16頁23行目の末尾に続けて「なお、控訴人は、「仕入税額控除の要件事実は、「国内における課税仕入」を行ったという事実であり(法30条1項)、同条7項は、課税仕入の事実の立証方法を「帳簿又は請求書等の保存」に限定しているにすぎない。保存と提示は全く異なる概念であって、提示は保存を前提とした概念であるから、提示があれば、保存が立証されたことになるが、提示されないからといって、保存されていないということにはならない。その意味で、仕入税額控除の要件事実の主張、立証責任は納税者にあるが、「不提示」は「不保存」を推認させる間接事実の一つにすぎず、反証としての意味をもつにすぎない。」旨主張するが、前記のような仕入税額控除制度の趣旨及び目的や法30条7項が法定帳簿等を「保存しない場合」に仕入税額控除をしない旨を規定し、「保存する場合に限り」仕入税額控除をするとは規定していないこと、同条項ただし書に規定する保存することができなかったことについての「災害その他やむを得ない事情」を納税者が税務署長に対して立証したときは、同条項本文に規定された仕入税額控除の消極要件の効果が覆滅され、その積極要件(法30条1項)の立証により仕入税額控除が認められることなどに照らすと、被控訴人は、処分の適法性を基礎付ける消費税の発生根拠事実として、控訴人である事業者が当該課税期間において国内で行った課税資産の譲渡等により対価を得た事実につき、主張、立証責任を負う(法4条、5条、28条)のに対し、仕入税額控除を主張する控訴人は、仕入税額控除の積極的要件として、当該課税期間中に国内で行った課税仕入れの存在及びこれに対する消費税の発生の各事実につき、主張、立証責任を負い(法30条1項)、さらに、仕入税額控除を否定することになる「法定帳簿等を保存しない場合」に該当することは、被控訴人において主張、立証責任を負うのに対し、保存できなかったことについて「やむを得ない事情」が存在する事実につき、控訴人が主張、立証責任を負うものと解するのが相当であり、したがって、控訴人の上記主張は採用することができない。」を加える。
(10) 原判決18頁20行目の末尾に続けて「なお、控訴人は、「帳簿類の提出を拒絶しないで、自主的に提示し、見てほしいと要請していた。」旨主張するけれども、前記認定事実によれば、本件調査に際し、被控訴人の部下職員が法定帳簿等の保存及びその内容を検査・確認するために社会通念上当然に要求される程度の努力を尽くしたにもかかわらず、控訴人は、第三者の立会の下でなければ調査に応ずることができないとして、調査に立ち会っていた第三者をその場から退席させず、結果的には、正当な理由もなく適法な調査に応じなかったのであるから、法定帳簿等の提示を明確に拒否したものであるというほかない。したがって、控訴人の上記主張は採用することができない。」を、19頁6行目の「不明である」の前に「本件証拠上」を各加える。
(11) 原判決20頁19行目の末尾に続けて「なお、控訴人は、」控訴人の対応は「調査拒否」には当たらず、本件は、帳簿類の提示があったというべき事案である。本件のような場合にまで、「提示がないから保存がない」として、実際にいつでも見ることができる状況で、提示のためにその場に置いてあった帳簿の保存を否定するのは不当であり、仕入税額控除を否認するのは、正義・公平に反する」旨主張するけれども、乙や丙の調査に際し、控訴人において法定帳簿等を傍ら又は机上に置いていたとしても、前記認定のように、己等の第三者の立会いがない状態での調査を一貫して拒否し続けた控訴人の対応は、調査に際し正当な理由なく法定帳簿等の提示を拒絶したものというほかなく、これによって、法定帳簿等を適法な調査に応じて提出し、調査官がその内容等を検査・確認することができるような状態、態様で保存していなかったものと推認され、その結果として、仕入税額控除の適用がないことになったのであるから、このことをもって正義・公平に反するものとは到底いえず、控訴人の上記主張は失当というほかない。」を加える。
(12) 原判決20頁23行目の末尾に続けて「なお、控訴人は、「少なくとも法30条8、9項の要件該当性に疑問のない帳簿等については、これによる仕入税額控除が認められるべきである。」旨主張するけれども、前記認定のとおり、本件においては、法30条7項所定の法定帳簿等の保存がない場合に当たり、このことにつき同条項ただし書所定のやむを得ない事情があるとも認められないから、もはや同条項による仕入税額控除の適用はないものといわなければならず、したがって、控訴人の上記主張は、法の予定するところとはいえず、採用するに由ないものである。」を加える。
2 結論
よって、原判決は相当であって、控訴人の本件控訴は理由がないから、これを棄却することとし、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 大谷種臣 裁判官 島村雅之 裁判官佐藤嘉彦は、退官につき、署名押印することができない。裁判長裁判官 大谷種臣)
(別紙)
三、消費税仕入れ税額控除否認甲事件課税仕入金額の補正について
請求書等による課税仕入金額の訂正について(京都地裁被告第8準備書面への説明)
7ページ (2)について
甲第101号証の2の17に記載されている金額は甲第101の1の1~16及び甲第101の2の1~16に記載された金額の合計と一致し、甲第122の1の3行目に記載された金額とも一致する。
7ページ (3)について
甲第101号証の1の111及び甲第101号証の2の111は、伝票の形式及び通し番号さらに甲第122の114行目の金額と一致することから鈴貫の納品書及び請求書である。
7ページ (4)について
甲第101号証の1の1ないし262には金額の記載はないもの、作成者の名称の記載の無い物、年月日の記載のないものがあるが、甲第101号証の2の1ないし262には記載されており金額は明白である。
9ページ (二)B(1)について
甲第102号証の2の201ないし229の請求書に金額の記載はないが、この間の請求金額は甲第102号証の2の230の合計請求書で明らかであり、その金額を支払ったことは甲第122号証の2の2行目に記載されている。
9ページ (二)B(2)について
甲第102号証の1の1ないし178に金額の記載はないが甲第102号証の2の1ないし178の請求書に金額は記載されている
10ページ (四)C
甲第110号証の2の3の請求書に書類作成年月日の記載がないが甲第122号証の29の金額(振込み手数料料412円を差引き)と一致するため平成4年3月分の請求書である
14ページ 5 接待交際費について
<1>甲第201号証の12、13、36、41、45、57、66、69、76、77、89、90、106、110、119、120、129、141の支払い金額には「ゴルフ場利用税」が含まれているため補正する。
<2>甲第201号証の5、14、50、64、87、99、103、111、114、117、122、130、136、137、140の支払い金額には「特別地方消費税」が含まれているため補正する。
<3>甲第201号証の55、71、115、131、132、133、134は除外する
<4>甲第201号証の70号証は丁名義となっているが甲第201号証145、146(新規書証)「贈答品お届けリスト(お客様控え)」により控訴人が取引先にお中元として購入したことが明らかであり、甲第201号証の145の「1お届け先D」は甲第212号証の31、「6お届け先E」は甲第211号証3ページ12行目、「7お届け先(株)F」は甲第212号証の18、19、20、「8お届け先G(株)」は甲第212号証の8、9甲第201号証の146の「1お届け先H(株)」は甲第212号証の6、「2お届け先I」は甲第212号証の10で取引先であることが明らかである。よって甲第201号証の70の金額を43560円と訂正する。
16ページ 8旅費交通費について
<1>甲第204号証の6、30、53を削除する
<2>甲第204号証の31の金額には特別地方消費税及び入湯税が含まれているため補正する。
18ページ 9雑費について
甲第206号証2の「お受取人 戊」が控訴人の顧問税理士であることは被控訴人自明のことのはずであるが削除する
19ページ 11修繕費について
甲第208号証の1及び2を削除する
19ページ ガソリン代について
<1>甲第209号証の5ないし12(新規書証)「コスモ・ザ・カードご利用代金請求書」を提出する
<2>甲第124号証の3上から8行目の金額に灯油代3555円、同じく下から4行目の金額に灯油代7774円が含まれているため補正する
20ページ 通信費
甲第205号証の2を削除する
甲第112号証の1ないし41「手数料」は、振り込み金額を際引いた金額で振り込んでいるため削除する
経費集計
<省略>