大阪高等裁判所 平成13年(行コ)37号 判決 2001年9月28日
主文
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1当事者の求める裁判
1 控訴人
(1) 原判決を取り消す。
(2) 被控訴人が控訴人に対し,平成10年11月26日付けでした被相続人Aに係る相続人B,同C及び同Dの滞納した各相続税の連帯納付責任額の督促処分を取り消す。
(3) 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。
2 被控訴人
主文同旨
第2事案の概要
本件事案の概要は,次のとおり付加・補正するほか,原判決「事実及び理由」中「第2 事案の概要」記載のとおりであるから,これを引用する。
1 原判決3頁6行目「万」の次に「9100」を加える。
2 同頁11行目「17」を「15」に改める。
3 同6頁12行目「梅田新道支店」の次に「(以下「三和銀行」という。)」を加える。
4 同頁20行目「課税価格」を「当該相続に因り受けた利益の価額」に改める。
5 同頁21行目「原告の」から同頁22行目「あった。」までを「被控訴人は,同金額を前提に連帯納付金額を算出すべきであった。」に改める。
6 同頁26行目の次に行を改めて,次のとおり加える。
「 そして,本件は,控訴人の固有の相続税納付額についての課税価格を争点とするものではないから,相続税法14条1項の「控除すべき債務は,確実と認められるものに限る」との要件は,相続開始時の現況ではなく,本件連帯納付責任を履行すべき旨の督促が告知された時点において判断すべきである。」
7 同8頁9行目「できない。」の次に「仮に,延滞税を含むとしても,被控訴人において,Bら3名に対する徴収手続上,原判決添付別紙1のような延納申請に対し延納の許否等を決定するにあたり,担保の適否や延納申請者の資力の変化を判断するなど,同申請の都度行使すべき権限を懈怠なく適切に行っていたとする事情のない以上,法定納期限から7年2か月以上の長期間を経過して督促された本件督促処分のうち,徴収手続上の任務の懈怠により控訴人に対して延滞税として加算される金額の督促は,信義則に違反し,違法というべきである。」を加える。
第3当裁判所の判断
当裁判所の判断は,次のとおり付加・補正するほか,原判決「事実及び理由」中「第3 当裁判所の判断」記載のとおりであるから,これを引用する。
1 原判決14頁8行目「原告らは,」を「控訴人は,本件は,自己固有の相続税の納付額について,その課税価格を争点とするものではないから,相続税法14条1項の「控除すべき債務は,確実と認められるものに限る」とあるのは,相続開始時の現況ではなく,本件連帯納付責任を履行すべき旨の督促が告知された時点において判断すべきものと解すべきであり,」に改める。
2 同頁9行目「主張するが,」の次に「上記判示のとおり,相続税法14条1項の「確実と認められる債務」とは,相続開始時の現況により,債務の存在のみならず履行が確実と認められる債務をいうと解すべきであり,また,」を加える。
3 同頁11行目「認められるところ,」の次に「前認定のような控訴人が三和銀行に対する保証債務を履行するに至るまでの経緯に基づけば,」を加える。
4 同頁15行目「である。」の次に「したがって,控訴人が本件相続に因り受けた利益の価額を3億7250万2536円として,控訴人の連帯納付責任額を算出した本件処分を違法ということはできない。」を加える。
5 同頁21行目「である。」の次に「なお,控訴人は,本件督促処分のうち,被控訴人の徴収手続上の任務の懈怠によって控訴人に加算される延滞税についての督促は信義則に違反すると主張するが,本件徴収手続上被控訴人に任務の懈怠があり延滞税として加算される金額の督促が信義則に違反すると認めるに足りる証拠はない。したがって,控訴人の上記主張は採用できない。」を加える。
6 同15頁7行目「場合は,」の次に「信義則違反もしくは」を加える。
7 同頁15行目「認められない。」の次に「また,本件延納申請変更許可処分につき被控訴人が重大な任務違背を行ったためBら固有の納税義務者に対する本件相続税等の徴収が不能に帰したと認めるに足りる証拠はなく,その他本件処分が信義則に違反し,あるいは国税徴収権の濫用に該当すると評価しうるような事実を認めるに足りる証拠はない。」を加える。
第4よって,控訴人の本訴請求は,理由がないから棄却すべきであり,これと結論を同じくする原判決は相当であって,控訴人の本件控訴は,理由がないから,これを棄却することとし,控訴費用の負担について行政事件訴訟法7条,民訴法67条,61条を適用して,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 大喜多啓光 裁判官 安達嗣雄 裁判官 橋本良成)