大阪高等裁判所 平成14年(ネ)1204号 判決 2002年11月29日
控訴人(1審原告)
A
同訴訟代理人弁護士
寺尾浩
同
芝原明夫
同
莚井順子
同
渡部孝雄
被控訴人(1審被告)
B
被控訴人(1審被告)
大榮ハウス株式会社
上記両名訴訟代理人弁護士
古川彦二
主文
1 本件控訴を棄却する。
2 当審における控訴人の被控訴人らに対する予備的請求をいずれも棄却する。
3 当審における訴訟費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1当事者の求めた裁判
1 控訴人
(1) 原判決を取り消す。
(2) 被控訴人Bは,控訴人に対し,5178万5066円及びこれに対する平成11年3月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(3) 被控訴人大榮ハウス株式会社は,控訴人に対し,1351万9940円及びこれに対する平成14年2月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(4) 被控訴人大榮ハウス株式会社は,「新羅会館家族亭」及び「新羅会館」の商号を使用してはならない。
(5) 当審において追加された被控訴人Bに対する前記(2)についての予備的請求の趣旨
被控訴人Bは,控訴人に対し,5178万5066円及びこれに対する平成11年3月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(6) 当審において追加された被控訴人大榮ハウス株式会社に対する前記(3)についての予備的請求の趣旨
被控訴人大榮ハウス株式会社は,控訴人に対し,1274万7372円及び平成14年5月1日から新羅会館家族亭(大阪市(以下略))の明渡済みまで,毎月末日限り,38万6284円の割合による金員を支払え。
(7) 訴訟費用は第1,2審とも被控訴人らの負担とする。
(8) (2),(3),(5)及び(6)につき仮執行宣言
2 被控訴人両名
(1) 主文1,2項と同旨
(2) 控訴費用は控訴人の負担とする。
(以下,控訴人を「原告」,被控訴人Bを「被告B」,被控訴人大榮ハウス株式会社を「被告会社」,原判決別紙「営業譲渡契約書」を「別紙「営業譲渡契約書」」,原判決別紙「不動産売買契約書」を「別紙「不動産売買契約書」」,同契約書添付の物件目録記載の不動産を「本件不動産」という。また,その他の略称については原判決のそれによる。)
第2事案の概要
次のとおり付加,訂正するほか,原判決「第2 事案の概要」に記載のとおりであるから,これを引用する。
(原判決の訂正等)
1 原判決2頁2行目から同13行目までを次のとおり改める。
「(原告の請求及び原審の結論等)
原告は,被告Bの欺罔行為により,金銭を詐取され,原告の経営していたレストラン(商号)「新羅会館家族亭」を同被告が代表取締役であった被告会社に乗っ取られたとして,被告両名を相手取って提訴し,被告Bに対し,民法709条に基づく損害賠償を請求し(第1の1(2)),被告会社に対し,民法704条に基づく不当利得の返還と商法20条に基づく同一又は類似の商号使用の差止めを請求した(第1の1(3),(4))。
原審は原告の請求をいずれも棄却し,原告がこれを不服として控訴した。
原告は,当審において,被告Bに対し,予備的請求として,上記不法行為に基づく損害賠償請求と同額の支払を求める民法704条に基づく不当利得の返還請求を追加し(第1の1(5)),被告会社に対し,予備的請求として,従前の請求とは内容が一部異なる民法704条に基づく不当利得の返還請求を追加した(第1の1(6))。」
2 原判決3頁23行目の末尾に改行の上,次のとおり加える。
「(争点)
1 被告Bの原告に対する詐欺
2 被告Bの債務不履行を理由とする契約解除
3 原告と被告らの間で締結された契約の公序良俗違反
4 被告Bの詐欺により原告の被った損害
5 原告の損失及び被告Bの利得
6 原告の損失及び被告会社の利得
7 商号使用差止めの可否
3 原判決3頁24行目の「(争点)」を「(争点に関する当事者の主張)」と,同25行目から末行にかけての「被告Bの行為の違法性及び被告会社の法律上の原因の有無(被告Bの原告に対する詐欺)」を「争点1(被告Bの原告に対する詐欺)について」と各改め,同5頁2行目の末尾に改行の上,次のとおり加える。
「ク 原告と被告Bの関係は,平成11年8月初めころあるいは遅くとも同年11月17日には決裂しており,以後は被告Bが原告のために行動するはずがないところ,被告Bは,あえてその後に株式会社整理回収機構(以下「整理回収機構」という。)への2228万円の支払等の債権者との交渉,支払を行っており,これらの行動は,原告の利益を図る目的ではなく,被告B自身の利益を図るための行動である。さらに,被告Bは,本件不動産を自らの名義で売却して利益を得ることも企んで行動していた。」
4 原判決5頁3行目及び同8行目の「契約」をいずれも「各契約」と,同18行目の「株式会社整理回収機構」を「整理回収機構」と各改め,同22行目の末尾に改行の上,次のとおり加える。
「2 争点2(被告Bの債務不履行を理由とする契約解除)について
(原告の主張)
(1) 原告と被告Bは,前記前提となる事実2の各契約の締結に当たり,以下の内容の債務整理委託契約(以下「本件債務整理委託契約」という。)を締結した。
ア 被告Bは,原告のために旧幸福銀行等の原告の債権者との和解交渉を有利に進め,原告に有利な和解を成立させる。
イ 被告Bは,原告に対し,生活費として月額100万円を支払う。
ウ 旧幸福銀行等との和解が成立した後,被告両名は,原告に本件不動産及び新羅会館家族亭の営業権を返還する。
エ 新羅会館家族亭の経営は被告会社が行い,その売上から上記イの生活費を被告Bが原告に支払うこととし,原告の債権者からの責任追及がやむまでこの体制を維持する。
オ 旧幸福銀行等との和解が成立し,本件不動産及び新羅会館家族亭の営業権が原告に返還されるまで,原告は被告両名が「新羅会館家族亭」の商号を使用することを許可する。
(2) 被告Bは,平成12年2月に本件不動産について債権者と示談交渉を行っているようであるが,全ての交渉はとん挫し,その後,一切の交渉をせず,他方では旧幸福銀行が破綻するに至っており,また,本件不動産を自らの名義で売却して利益を得ることを企んだ行動もした。さらに,被告Bは,原告に対する月額100万円の生活費の支払を平成11年7月7日以降行っていない。
(3) 以上のとおり,本件債務整理委託契約は,被告Bの責めに帰すべき事由により履行不能に至ったか,あるいは少なくとも被告Bは自身の責めに帰すべき事由により履行を行っていないものである。
そこで,原告は,遅くとも平成11年7月31日までに,被告Bに対し,同被告の責めに帰すべき事由による債務不履行を理由として,本件債務整理委託契約を解除する旨の意思表示をした。また,仮に,平成11年7月31日までの解除が認められないとしても,原告は,平成14年5月10日付け準備書面をもって,被告Bに対し,本件債務整理委託契約を解除する旨の意思表示をした。
(被告会社の主張)
原告が主張する債務整理委託契約の成立及び同契約の成立を前提とする被告Bの債務不履行,解除はいずれも否認あるいは争う。原告と被告Bとの間には,前記の新羅会館家族亭についての経営委託契約が成立しており,この経営委託契約では,原告の主張(1)イないしオの事項が合意されているが,他方で,原告の債務整理については,原告が調達した金員の額の範囲等の与えられた条件の下で被告Bが和解成立のために努力することが合意されていたにすぎず,原告主張の債務整理委託契約が成立したとは認められない。
3 争点3(原告と被告らの間で締結された契約の公序良俗違反)について
(原告の主張)
前記前提となる事実2の各契約は,いずれも原告の債権者からの追及を逃れるために仮装されたものであり,上記の各契約を含め,原告と被告らとの間で締結された契約は,すべて公序良俗(民法90条)に反し無効である。
(被告らの主張)
前記前提となる事実2の各契約が仮装されたもので無効であることは認めるが,前記の新羅会館の経営委託契約自体は実体を伴ったもので有効であり,公序良俗に反し無効ではない。」
5 原判決5頁23行目を「4 争点4(被告Bの詐欺により原告が被った損害)について」と改め,同末行末尾に改行の上,次のとおり加える。
「 よって,原告は,被告Bに対し,主位的に,不法行為に基づく損害賠償として,上記5178万5066円及びこれに対する最終の不法行為の日である平成11年3月16日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。」
6 原判決6頁5行目末尾に改行の上,次のとおり加える。
「5 争点5(原告の損失及び被告Bの利得)について
(原告の主張)
(1) 前記3のとおり,原告と被告らとの間で締結された契約はすべて公序良俗(民法90条)に反し無効であるから,被告Bは,法律上の原因なく悪意で上記5178万5066円を利得している。
よって,原告は,被告Bに対し,予備的に,悪意の不当利得に基づく返還請求として,上記5178万5066円及びこれに対する最終の利得の日である平成11年3月16日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。
(2) 被告Bの主張(2)は否認する。
(被告Bの主張)
(1) 原告の主張(1)は否認ないし争う。
前記の新羅会館の経営委託契約自体は,実体を伴ったもので有効であり,公序良俗に反して無効ではなく,上記5178万5066円の利得は法律上の原因を欠くものではない。
(2) 被告Bは,平成11年8月7日,原告に対し,原告の毎月の生活費の名目で100万円を(Cを通じて)別途支払った。」
7 原判決6頁6行目冒頭から同18行目末尾までを次のとおり改める。
「6 争点6(原告の損失及び被告会社の利得)について
(原告の主張)
(1) 被告会社は,新羅会館家族亭の営業により利得を得ており,他方,原告は,これらの利得と同額の損失を被っているところ,前記1ないし3によれば,上記の利得は法律上の原因がなく,被告会社は悪意の受益者として原告に対し返還義務を負う。
(2) 新羅会館家族亭の営業による平成7年から同10年までの月額平均収入は38万6284円であった。
(3) よって,原告は,被告会社に対し,主位的に,前記1,3の詐欺を原因とする取消又は公序良俗違反に基づく無効による法律上の原因の欠如に基づき,平成11年3月1日から平成14年1月31日までの間(35か月間)の利得合計1351万9940円(386,284×35)及びこれに対する最終の利得の日の翌日である平成14年2月1日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,予備的に,前記2の解除による法律上の原因の欠如に基づき,解除の後である平成11年8月1日から平成14年4月30日までの間(33か月間)の利得合計1274万7372円(386,284×33)及び平成14年5月1日から新羅家族亭明渡済みに至るまで,毎月末日限り38万6284円の割合による利得の支払を求める。
(被告会社の主張)
(1) 原告の主張(1)のうち,被告会社による新羅会館家族亭の営業の事実は認めるが,その余の事実は否認する。
(2) 原告の主張(2)は知らない。
(3) 原告の主張(3)は争う。
8 原判決6頁19行目を「7 争点7(商号使用差止の可否)について」と改める。
第3当裁判所の判断
1 事実経過
次のとおり付加,訂正するほか,原判決「第3 判断」1に記載のとおりであるから,これを引用する。
(原判決の訂正等)
(1) 原判決7頁20行目の「被告B」から同21行目末尾までを「被告Bも被告会社の設立当初代表取締役に就任したが,まもなく辞任し,その後平成11年1月29日に再び代表取締役に就任するまでは被告会社の役員に就任したことはなかった(乙4の1・2,55)。」と改める。
(2) 原判決9頁11行目冒頭から同13行目の「あったが、」までを次のとおり改める。
「 原告と被告Bとの間では,被告Bに新羅会館家族亭の経営を委託して「新羅会館家族亭」の商号使用を許諾し,平成11年3月1日以降,新羅会館家族亭の経営は被告会社の独立採算制として行われ,また,被告Bは原告の債権者と交渉を行い,債権者からの責任追及がやむまでこのような態勢を維持するという内容の一種の経営委託契約が締結されたが,」
(3) 原判決9頁20行目の「前記(4)の合意」を「前記の経営委託契約」と改める。
(4) 原判決10頁6行目の「あった」の次に次のとおり加える。
「。その後,原告と被告Bとの間で,前記経営委託契約において,被告Bが原告に対し生活費として月額100万円を支払うことが追加して合意され,同年4月以降,上記の生活費として前記前提となる事実3(2)の各金員が支払われた」
(5) 原判決10頁20行目の「全額負担とするまでの合意」を「全額負担とし,被告らが和解成立を請け負うことまでの合意」と改める。
(6) 原判決10頁22行目の「被告Bは」から同23行目の「功を奏せず,」までを「被告Bは,原告のために,前記の経営委託契約に基づき,複数の原告債権者との和解交渉を続けたものの,必ずしも功を奏せず(乙32の1・2,33,整理回収機構及び東城町に対する各調査嘱託),その間,」と改める。
(7) 原判決11頁5行目の「同営業譲渡契約」から同6行目の「すぎず、」までを「同営業譲渡契約が正当な交渉権限を取得したという外形を作出するための手段として締結されたものにすぎず,」と,同9行目から10行目にかけての「2728万円」を「2228万円」と,同11行目の「株式会社整理回収機構」を「整理回収機構」と,同21行目の「同被告」を「被告ら」と各改め,同12頁14行目の末尾に「。」を加える。
(8) 原判決16頁15行目末尾に改行の上,次のとおり加える。
「ク 原告は,被告Bが原告との関係が決裂した後に原告の債権者との交渉等を行ったのは,原告の利益を図る目的ではなく,自己の利益を図る目的があったからであると主張する。しかし,被告Bは,原告との関係が悪化した後も原告の債権者との交渉等を行っているが,債権者との交渉等の実施は前記の経営委託契約の趣旨に沿うものであるし,交渉等の内容も上記契約の趣旨に反して原告に不利益な内容であるとは認めがたく,被告Bによる欺罔を推認させるものではない。なお,原告作成の陳述書(甲59)には,被告Bが本件不動産を自らの名義で売却して利益を得ることも企んで行動していた旨の記載があるが,被告Bの供述や弁論の全趣旨に照らし信用できない。」
2 争点1(被告Bの原告に対する詐欺)について
前記1の認定事実によれば,被告Bは,原告からの再三の依頼に基づいて,原告をその債権者の責任追及からかばい,有利な和解交渉を図るために,Dのアドバイスに従い,債権者との交渉を有利に展開すべく営業譲渡契約及び不動産売買契約の締結という形式を採りつつ,原告との間で,経営委託契約を締結しようとしたもので,同被告による原告に対する欺罔があったとは認めることができない。したがって,被告Bの行為は違法性の要件を欠き不法行為を構成せず,原告の被告Bに対する主位的請求である損害賠償請求は,争点4について判断するまでもなく理由がない。また,原告において被告Bの詐欺による意思表示もないので,上記各契約の取消権も発生しない。
3 争点2(被告Bの債務不履行を理由とする契約解除)について
前記1の認定事実によると,原告と被告Bとの間では,契約の呼称はともかくとして,被告Bが新羅会館家族亭の経営を委託され,原告の債権者との和解の交渉に当たることなどを内容とする経営委託契約が成立しており,この経営委託契約は原告の主張する本件債務整理委託契約と同一性を有すると認められるが,和解交渉資金について被告らの全額負担とし,被告らが和解成立を請け負うことまでの合意があったとは解されない。そして,被告Bは,必ずしも功を奏しなかったが,複数の債権者との和解交渉を行い,特に整理回収機構に対しては被告会社振出しの約束手形に連帯保証の趣旨で裏書して交付し,自らの出捐で現在も支払を継続しているのであって,債権者との交渉に関し被告Bの責めに帰すべき事由による債務不履行があったとはいえない。また,上記契約では,被告Bが原告に対し生活費として月額100万円を支払うことが合意されていたところ,平成11年8月7日の支払を最後に以後その支払がなされていないが,これは,原告が被告Bが新羅会館家族亭を乗っ取ったのではないかと邪推し,被告Bに対する脅迫行為等を行ったことによるものであり,不払いにつき相当な事由があって,この点に関しても被告Bの責めに帰すべき事由による債務不履行があったとはいえない。その他,被告Bに解除の原因となるまでの債務不履行はなく,原告には被告Bの債務不履行に基づく上記契約の解除権は発生しない。
4 争点3(原告と被告らの間で締結された契約の公序良俗違反)について
前記1の認定事実によると,前記前提となる事実2の各契約は,いずれも原告の債権者からの追及を免れつつ被告Bが正当な交渉権限を取得したという外形を作出するための手段として締結された仮装の契約であり,原告と被告Bとの間で締結された前記の経営委託契約も,上記各契約を手段として,被告Bが新羅会館家族亭の経営を委託され,原告の債権者と和解交渉に当たることを内容とするものである。しかしながら,このような前記前提となる事実2の各契約の問題点については,原告の債権者との関係において,これらの契約のみを通謀虚偽表示により無効として扱うことなどにより対処することができ,他方,被告Bは原告からの再三の依頼により上記の経営委託契約を締結するに至ったものである上,同契約は基本的には委任契約に当たるところ,被告Bがその委任事務である債権者との交渉を行った結果,現に原告の債権者に対し被告らが多額の債務を負担して返済を継続しており,その清算を含め委任契約の当事者間の法律関係として扱うのが相当であるから,上記の経営委託契約が公序良俗に違反し無効であるとはいえない。
以上によると,本件につき,原告には,被告Bの詐欺による前記の営業譲渡契約及び不動産売買契約の取消権も,被告Bの責めに帰すべき事由による債務不履行に基づく前記の経営委託契約の解除権も生じず,また,この契約が公序良俗に違反し無効とはいえないので,原告の被告らに対する不当利得返還請求は,法律上の原因の不存在の要件を欠き,争点5,6について判断するまでもなくいずれも理由がない。
5 争点7(商号使用差止めの可否)について
前記1の認定事実のほか,証拠(後掲各書証,証人D,被告B)によれば,被告会社が,「新羅会館」のほか,(「大榮ハウス株式会社」,「株式会社日栄電気工業分室」と並び)「新羅会館file_2.jpg(宗右衛門町本店)」と記載された看板を掲げ(乙13の1、2),同様の挨拶状(乙14の1、2)を作成交付した事実は認められる。
しかし,被告会社が「新羅会館家族亭」の商号を使用することは,原告と被告Bとの間で成立した前記の経営委託契約の内容となっており,被告会社による前記各商号の使用も上記契約に基づくものというべきであるから,被告会社に「不正ノ競争ノ目的」(商法20条1項本文)があるとはいえない。同条2項によれば,同市町村内において同一の営業のために他人の登記した商号を使用する者は,不正の競争の目的をもってこれを使用するものと推定されるが,上記事実によれば,この推定は覆るものというべきである。この点に関する原告の主張も採用することができない。
6 その他,原審及び当審における原告提出の各準備書面記載の主張に照らして,原審及び当審で提出,援用された全証拠を改めて精査しても,当審の認定判断を覆すほどのものはない。
第4結論
よって,原判決は相当であるから本件控訴を棄却し,また,当審で追加された原告の被告らに対する予備的請求はいずれも理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 竹原俊一 裁判官 小野洋一 裁判官 黒野功久)