大阪高等裁判所 平成14年(ネ)2447号 判決 2003年1月31日
控訴人・附帯被控訴人
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被控訴人・附帯控訴人(原告)
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主文
一 本件控訴及び本件附帯控訴をいずれも棄却する。
二 控訴費用は控訴人の負担とし、附帯控訴費用は被控訴人の負担とする。
事実及び理由
第一申立て
一 控訴
(一) 原判決中、控訴人敗訴部分を取り消す。
(二) 上記取消部分にかかる被控訴人の請求を棄却する。
二 附帯控訴
(一) 原判決を次のとおり変更する。
(二) 控訴人は、被控訴人に対し、二、〇〇〇万円及びこれに対する平成一二年一二月一七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
第二事案の概要
一 事案の概要は、二及び三に当事者の当審における主張を付加、訂正するほか、原判決の「事実及び理由」中の「第二 事案の概要」に記載のとおりであるから、これを引用する。
ただし、原判決二頁八行目の「A(」の次に「昭和○年○月○日生。」を加え、同三頁一三行目の「一〇パーセント」を「最大四割」と改める。
二 控訴人の当審における付加主張
(一) 亡Aの過失割合は六割が相当である。すなわち、亡Aは、日没後、東側約四〇メートル、西側約九〇メートルの地点に信号機が設置された横断歩道があるにもかかわらず、中央分離帯の植栽東端から片側三車線の本件道路を横断する途中で本件事故に遭ったものであり、極めて危険な行為であるといえること、他方、控訴人としては、横断歩道の先約四〇メートル付近から歩行者が横断して来るのを予見することは困難であるといえることなどからすると、本件事故の過失割合は、控訴人が四割、亡Aが六割と判断すべきである(なお、控訴人は本件事故につき不起訴処分となっている。)。
(二) 亡Aは、本件事故当時、一人暮らしであり、当初親類縁者が見当たらなかったところ、本件事故による賠償問題の処理の過程において、亡Aの相続人として被控訴人が存在することが判明したものにすぎず、被控訴人は民法七一一条による固有の慰謝料請求権を有する者ではないことを考慮すると、慰謝料額は四〇〇万円程度が相当である。
三 被控訴人の当審における付加主張
(一) 亡Aの過失割合は一割五分を上回ることはない。すなわち、本件事故は、道路前方約一〇〇メートルから視認しうるほど見通しは良好であったにもかかわらず、控訴人は、わずか約一一・二メートル手前で亡Aを発見したものであり、控訴人に極めて大きな前方不注視の過失が認められることは明らかであって、亡Aの年齢等を考慮すると、本件事故の過失割合は、控訴人が八割五分、亡Aが一割五分と判断すべきである。
(二) 被控訴人は、亡Aの慰謝料請求権を相続したものであり、被控訴人に固有の慰謝料請求権が認められるか否かは、慰謝料額に影響を与えるものではない。控訴人は、被控訴人に固有の慰謝料請求権が認められないから損害の賠償には応じられないとの主張に固執し、被控訴人との示談交渉を拒否するなど、加害者として不誠実な対応をとったものであり、この点は慰謝料額の増額事由として考慮されるべきであって、慰謝料額は少なくとも二、〇〇〇万円が相当である。
第三当裁判所の判断
一 当裁判所も、被控訴人の請求は、原判決が認容する限度で理由があり、その余は理由がないものと判断する。その理由は、次項に理由を補足するほか、原判決の「事実及び理由」中の「第三 裁判所の判断」に記載のとおりであるから、これを引用する。
二 控訴人及び被控訴人の当審における主張に鑑み、以下、理由を補足する。
(一) まず、過失割合について検討するに、控訴人が主張するように、本件道路は片側三車線(片側の幅員約九メートル)であり、衝突地点から約四〇メートル東側には信号機の設置されている横断歩道があるにもかかわらず、亡Aは、安全確認不十分のまま本件道路を横断した点に相当な過失を認めることができるが、他方、被控訴人が主張するように、本件事故当時、約一〇〇メートル前方の見通しが可能であり、本件事故地点には、道路横断者の発見を妨げる中央分離帯等がなかったにもかかわらず、控訴人は、車道上にいる亡Aを約一一・二メートル手前に至って初めて発見したものであり、控訴人に前方不注視の過失が認められることも明らかであって、両者の過失を比較すると、本件事故による過失割合は、控訴人が七割、亡Aが三割と見るのが相当である。
(二) 慰謝料額については、上記認定の本件事故の態様、亡Aの年齢、家族構成等、本件訴訟に現れた一切の事情を考慮すると、原判決が認定するとおり、一、七〇〇万円をもって相当と認めることができる(なお、控訴人は被控訴人が自己固有の慰謝料請求権を有しないことを理由として、被控訴人は控訴人が被控訴人との示談交渉を拒否するなどしたことを理由として、それぞれ慰謝料額の減額あるいは増額事由になると主張するが、本件請求は、亡Aに生じた損害賠償請求権を被控訴人が相続により取得したことに基づくものであり、上記の各事情は、慰謝料額の認定にあたり、特に斟酌すべきものとは解されない。)。
三 よって、原判決は正当であるから、本件控訴及び本件附帯控訴をいずれも棄却することとし、主文のとおり判決する。
(裁判官 太田幸夫 川谷道郎 大島眞一)