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大阪高等裁判所 平成14年(行コ)1号 判決 2002年7月09日

控訴人

控訴人

被控訴人

左京税務署長

貴田英治

同指定代理人

山上富蔵

鴫谷卓郎

吉良賢司

今井景子

主文

1  本件控訴を棄却する。

ただし、控訴人甲の請求の減縮により、原判決主文第一項及び第二項を次のとおり変更する。

控訴人らの請求をいずれも棄却する。

2  控訴費用は、控訴人らの負担とする。

事実及び理由

第1当事者の求めた裁判

1  控訴の趣旨

(1)  原判決を取り消す。

(2)  被控訴人が、控訴人甲(以下「控訴人甲」という。)に対し、平成11年12月22日付でした相続税に関する更正処分(以下「本件更正処分1」という。)のうち納付すべき税額2403万8800円を超える部分(納付すべき税額2403万8800円を超えない部分については当審で訴えを取り下げた)及び過少申告加算税賦課決定処分(以下「本件賦課決定処分1」という。)をそれぞれ取り消す。

(3)  被控訴人が、控訴人乙(以下「控訴人乙」という。)に対し、平成11年12月22日付でした相続税に関する更正処分(以下「本件更正処分2」という。)及び過少申告加算税賦課決定処分(以下「本件賦課決定処分2」という。)をそれぞれ取り消す。

(4)  訴訟費用は、第1、2審とも被控訴人の負担とする。

2  控訴の趣旨に対する答弁

主文同旨

第2事案の概要

1  事案の概要は、後記2のとおり付加するほかは、原判決「事実及び理由」の「第二事案の概要」欄記載(原判決2頁8行目から4頁11行目まで)のとおりであるから、これを引用する。ただし、原判決3頁7行目末尾の次に「(原判決添付別紙目録記載の保険契約に基づく解約返戻金請求権及び名古屋市東区の土地上の構築物)」を付加する。

2  当審における控訴人らの主張

(1)  本件申告漏れ納税額は50万円余であって、税務調査実施の必要性に欠ける。また、申告漏れ財産とされる本件返戻金請求権については、税務署備え付け相続税申告案内冊子に記載がないから、申告納税の必要性はなく、本件構築物については、売却換金不能のものであって、相続税実務上課税対象としないのが一般的であるから、税務調査実施の必要性はない。

(2)  本件税務調査は、控訴人甲を疾病及び犯罪事件等に陥れるために、調査の名を借りて実施された一種の犯罪行為であるから、本件各処分は取り消されるべきである。

第3当裁判所の判断

1  当裁判所も、控訴人らの本訴請求は理由がないと判断するが、その理由は、次のとおり補正するほかは、原判決4頁21行目から9頁5行目までに記載のとおりであるから、これを引用する。

(1)  原判決4頁21行目の「二」を「一」と、6頁22行目の「三」を「二」と、8頁23行目の「四」を「三」と訂正する。

(2)  同5頁10行目末尾の次に「したがって、本件返戻金請求権及び本件構築物は未分割の相続財産である。」を付加する。

(3)  同15行目末尾の次に「(本件返戻金請求権については、丙の平成8年分の所得税に関し、損害保険料控除の適用を受けるために、この保険契約の存在が記載されていたため把握するに至り、本件構築物については、その所在土地の貸付にかかる、平成9年分の不動産所得に関し、減価償却資産として記載されていたことから把握したものである。)」を付加する。

(4)  同9頁4行目の次に行を改めて次のとおり付加する。

「 すなわち、丙の相続財産の価額は原判決添付別表⑦の合計額欄の2億8834万9351円であり、この額は、控訴人らの申告額に本件返戻金請求権の価額336万1400円及び本件構築物の価額184万7274円を加算した額である。そして、相続税法上、各相続人はこの加算額を法定相続分により取得したとして、課税価格に算入されることとなるから、控訴人らの課税価格は、同表⑨のとおり、控訴人甲が1億5458万9000円、控訴人乙が1億2511万3000円となる。そうすると、控訴人らの納付すべき相続税額は、同表⑱のとおり、控訴人甲が2461万7700円、控訴人乙が41万7700円となる。

本件各処分は、控訴人甲の納付すべき相続税を2457万5100円、控訴人乙の納付すべき相続税を39万2200円とするものであって、上記の納付すべき相続税額の各範囲内でされているから適法である。」

2  控訴人らの当審における主張について

(1)  控訴人らの主張(1)について

本件調査の必要性については、原判決説示(6頁23行目から7頁9行目まで)のとおりであり、申告漏れによる納税額が申告納税額に比して少額であるとしても、税務調査の必要性が失われるものではない。また、控訴人らは、本件返戻金請求権及び本件構築物が丙の相続財産であっても、申告納税の必要はなく、実務上課税対象としないのが一般的である旨主張するが、同主張は失当である。したがって、控訴人らの上記主張は理由がない。

(2)  控訴人らの主張(2)について

本件全証拠によっても、本件調査が控訴人ら主張の調査に名を借りて実施された不当なものであることを認めるに足りず、したがって、控訴人らの上記主張は理由がない。

3  結論

よって、本件控訴を棄却することとし、控訴人甲は、当審において、本件更正処分1のうち納付すべき税額2403万8800円を超えない部分については訴えを取り下げたから、その旨を明らかにし、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 下方元子 裁判官 森本翅充 裁判官 一谷好文)

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